第22回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年12月24日(木曜日)17時44分~18時14分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第22回経済財政諮問会議が、今年最後でありますが、先ほど終了いたしました。本日は伊藤議員、新浪議員が欠席であります。
概要を報告申し上げます。
最初の議題は、「経済・財政再生アクション・プログラムについて」であります。事務方から資料1について説明があり、その後意見交換を行いました。
主な意見です。
まず、麻生財務大臣から、「明確かつ具体的なプログラムと評価できる。今後、諮問会議において各省の取組を進捗管理、検証していくことが重要である。」
菅官房長官から、「安倍政権になって税収は21兆円増えた。このような改革成果を具体的な数字で分かりやすく説明し、国民の理解を得ながら改革を進めていくべきではないか。」
民間議員から、「工程表の実効性を確保することが重要である。しっかりしたPDCAを回していく仕組みの構築に取り組んでもらいたい。」
同じく、民間議員から、「「見える化」によって改革の浸透を図ること、改革効果の定量的な把握・分析を行いながら進捗管理をしていくことなどが、今後特に重要になってくる。その上で、一体改革を予算編成に反映する仕組みについて議論していきたい。」
意見交換の後に、事務方から説明がありましたアクション・プログラムを、諮問会議として決定することを議決いたしました。
2番目の議事といたしまして、森山農林水産大臣に御参加いただきまして、「TPP協定の経済効果分析」について議論を行いました。私及び事務方から資料2について説明いたしました。
TPPによる経済効果では、ネットで実質GDP2.6%増、約14兆円の拡大が見込まれます。さらに、先ほどの数字はTPPだけでありますが、既存のEPAの効果を除かずにグロスで試算しますと、約20兆円になります。
今回の分析では、TPPを契機とする成長メカニズムを具体的に示したことが特徴でありまして、TPPの効果実現を加速させるため、今後、国内の投資促進も含めまして、我が国を貿易・投資の「グローバル・ハブ」にしていくことが重要であることを私から申し上げました。
その後、意見交換を行いました。主な意見を紹介いたします。
民間議員から、「経済効果は、更に大きくすることが可能であると考える。いかに日本を「グローバル・ハブ」にして、TPPの圏域の成長を取り込んでいくかが重要である。経済界を挙げて取り組んでいくので、強力な官民連携の推進をお願いしたい。」
続いて、民間議員から、「成長メカニズムの発揮の道筋が示された。日本ブランドを打ち出すチャンスであり、対日投資の拡大等により「グローバル・ハブ」になることが重要である。我が国の医療データや特許権は宝の山であり、これらを十分に活用すべきである。農業は1兆円の輸出目標を大胆に見直すべきであり、6次産業化をはじめ、強力に取組を進めることが必要である。また、農業生産量は維持される見通しであるが、これに要する財政コストの分析もしっかり検証すべきである。高い技術力を持つ中堅・中小企業と外国企業のニーズとのマッチングを進め、投資連携を進めるべきである。」
続いて、農水大臣から、「輸出拡大1兆円の前倒しに向けて努力をしている。今年も前年比24%程度の伸びとなっており、目標の前倒しに努めていきたい。」
ここで、総理からの発言です。「農産品の海外輸出には大きな可能性がある。このため、海外のニーズの把握をしっかり行うことが重要である。例えば、切り花なども輸出先のニーズ等、事前の調査をしっかり行い、良いものを作っているので、販路拡大につなげてほしい。」
最後に、3番目の議事の「平成28年度の経済財政運営」についてと、これと関連する最後の議事の「経済財政諮問会議の今後の検討課題」について、併せて議論いたしました。
また、加藤一億総活躍担当大臣に御参加いただきました。事務方から資料3、麻生大臣から資料4、榊原議員から資料5について説明、問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
主な意見を紹介いたします。
まず、林経済産業大臣から、「積極的な投資、賃上げ、取引価格への転嫁を広く経済団体にお願いしているところであるが、フォローアップ調査もしっかり行いたい。消費税率再引上げへの対応は、駆け込み需要の平準化に加え、負の所得効果に対して需要を喚起する、という国民へのメッセージが必要である。」
続いて、加藤一億総活躍担当大臣から、「新三本の矢の実現に向けて、甘利大臣と協力しながら、生産性革命、働き方改革、安定財源の確保といった具体的テーマについて、経済財政諮問会議と一億総活躍国民会議とで連携して議論していきたい」。
続いて、民間議員から、「成長力の底上げのためには、新分野への投資に積極的な企業を後押しする政策が必要である。統合報告の作成、公表や、GPIFによる投資などが考えられるのではないか。シルバー市場関連の規制改革の推進、シルバー市場の財・サービスの輸出促進などの取組も重要である。成長と分配の好循環を作っていくためには、働き方改革などの効果を計測できるモデルの開発も検討課題ではないか。消費税率引上げに向けては、駆け込みと反動減を生じさせない具体策を、来年早期に検討していく必要がある。また、再来年の引上げの前には、適切な対応策の検討も重要である。財政運営の面では、アベノミクスの果実を成長分野に投入し、供給サイドを強化していく発想が必要である。なお、軽減税率の財源確保はアベノミクスの果実とは別枠として検討されるべきと考える。」
同じく、民間議員から、「平成28年度予算は、社会保障関係費の抑制、特に診療報酬のマイナス改定などに厳しく対応し、国債発行額をリーマン・ショック前の水準まで抑えるなど、高く評価できる。この枠の中で600兆円実現に向けた政策を進めていくことが重要である。」
ここで、総理から発言がありました。「本日、経済・財政一体改革の工程を具体化した、「経済・財政再生アクション・プログラム」を決定した。民間議員をはじめ、関係者の尽力に感謝申し上げる。
関係大臣においては、本プログラムに基づき、政府一丸となって制度改革を実施してほしい。その際、この改革の鍵である「見える化」を、単なる情報公開に終わらせることなく、改革の推進力にしていただきたい。
TPPについては、極めて大きな経済効果を持つという試算が示された。これを現実のものとしていく。「総合的なTPP関連政策大綱」に沿った施策を展開し、真に強い経済を実現させる。我が国を貿易・投資の「グローバル・ハブ」とするための政策については、甘利大臣を中心に更に具体化していただきたい。
来年は、一億総活躍社会の実現に向けた取組を本格化させる重要な年である。成長と分配の好循環の確立に向けて、経済財政運営の在り方や成長と分配をつなげていく仕組みの構築等について議論を進めてほしい。
甘利大臣には、本日の議論を踏まえ、諮問会議のアジェンダの取りまとめをお願いしたい。」
総理からは以上です。
最後に私から、「お示ししたTPPによる効果の実現に向けた動きを加速し、我が国経済を新しい成長経路に乗せていけるよう、関係大臣とも協力して取り組んでまいります。
また、本日の議論を踏まえ、次回、来年前半の諮問会議の検討課題を提示したいと考えます。」
以上です。


2.質疑応答

<財政健全化のプログラム>

(問)財政健全化のプログラムは閣議決定の予定はあるのでしょうか。

(答)閣議報告であります。


<財政健全化目標とGDP改定>

(問)GDPの基となる経済統計の見直しの関係で、財政健全化計画においては、2018年度の中間指標として、基礎的財政収支の赤字のGDP比を1%程度とするという目安が設定されているかと思いますが、一方で現在、経済統計の見直しが進められており、より実態を反映したものにする検討が進んでいると思うのですが、2018年度の中間段階でのPBと対比させるGDPというのは、見直し後のGDPという理解でよろしいのでしょうか。

(答)おっしゃっていることは、研究開発投資を設備投資に組み入れるという意味だと思いますが、従来統計で目標に向けて取り組んでいくというのは、基本にはなっています。


<来年度予算案の評価>

(問)政府として名目GDP600兆円目標を掲げていますが、今回の予算がそれに向けて成長率を高める予算になっているかどうかと、なっているとすれば、具体的にどの予算の、どの項目が効果が高いと期待されているのか、評価をお願いいたします。

(答)一言で言いますと、経済再生と財政健全化を両立させる。成長と財政健全化は、お互いがお互いをエンカレッジする関係、好循環ということを当初から申し上げている次第であります。例えば、一億総活躍の第二、第三の矢に関連する子育ての支援や、介護サービスの充実、それから石破大臣のところで取り組んでいるローカル・アベノミクス、これは、新型交付金の創設です。いわゆる交付税と違って、財政の基準値でカバレッジを掛けるということではなくて、先進的なアイデアに対して2分の1の補助でその施策を推進していくということでありますから、これは正に自治体間の競争の差が出る、アイデア競争の差が出るという取組であります。あるいは、諸課題の取組があります。事前防災・減災、それから老朽化対策などです。それから、TPPと関連してきますが、攻めの農林水産業、あるいは、伊勢・志摩サミットを見据えた外交の充実等であります。それが、経済再生の方です。
財政健全化に関しては、社会保障費全体を、高齢化の伸びの範囲、つまり、5,000億円にするために6,700億円から1,700億円縮めているわけであります。その中で、診療報酬本体は500億円プラス改定をしているということであります。つまり、質を落とさず、無駄を省くという改革工程に沿った社会保障改革を進めております。
それから、公債発行は、前年度から2.4兆円減額しました。34兆4,000億円です。政権交代前は40数兆円であった公債発行を34兆4,000億円まで縮めている。財政再建は一挙に進んでいるわけであります。正に「経済・財政再生計画」の初年度にふさわしい予算になっているのではないかと思います。


<TPP発効時期の見通し>

(問)TPPの試算の関連で、14兆という数字が示されて、そうすると今度は、TPPがいつ発効されるのかということが非常に気になってくるところです。署名、通常国会の審議、承認などの手続はあると思いますが、発効時期について大臣の見通しをお伺いできますでしょうか。

(答)アメリカ次第です。署名からのタイムリミット条項がありますので。もちろん、それまでにアメリカ、日本が議会承認を取っていることが前提条件になりますが1年半から2年ぐらいの間には発効するのではないかと思っております。


<TPP協定の国会提出時期>

(問)TPPの協定は、この通常国会の後半に提出するということでよろしいのでしょうか。

(答)自然体で考えますと、予算の成立後に出していくということになろうかと思います。

(問)ということは、アメリカの議会の情勢が不透明ですが、それとは関係なくやっていくということでしょうか。

(答)はい。各国が国会承認をみんな取って、後はアメリカ待ちということになれば、アメリカは個別のプラスマイナスではなくて、TPP協定全体のアメリカに与える影響を総合的に判断するということになってくると思います。TPPは、どこの国もマイナスになりません。全てがプラスになる協定でありますし、そのことを議会が認識するに従って、やるべしという圧力が高くなってくると思います。


<TPP協定の経済効果分析>

(問)今回のTPP協定の経済効果の試算なのですが、例えば、農業生産額・量が変わらず一定であるという前提が少しおかしいのではないかということや、もしくは、労働市場が完全雇用だということを前提にすると、労働力が増えるので生産性が上がってきて経済成長するというような試算があまり妥当しないのではないか、という批判もあり得ると思うのですが、その辺についてはどのようにお考えになっていますか。

(答)農業生産額は、要するにGDPが拡大する分があります。GDPが拡大するということは、輸出入が増えるということを意味します。人口が減っていく中で国内消費が縮んでも、その分が輸出に向かいます。日本の農産品は、いわゆる価格で勝負する価格帯とは別に、外へ向けて勝負していくということでありますから、国内消費が減っても、輸出が増えるということなどによって、生産は減らない、ということになります。
また、国内でのバランスが現状のままであるとしても、GDPが大きくなっていくに従って、輸入も増えれば輸出も増えるという関係にあります。ですから、生産量では変化がそうない。ただ、価格面では輸入の影響で総額が下がる。しかし、生産性が上がってくるから収益は減らない。むしろ、輸出で伸ばす分だけ収益は増えるという相関関係になっているのだと思います。
それから、雇用が80万人増えるということであります。短中期的には、人口が減る中で労働参加率を高めていくということを目指しております。長期的には、人口が減れば全員が働いても労働人口が減るじゃないかという議論もあるかと思います。短中期的には、未参加の人口を参加させていくという点で、働き方改革と併せて労働賃金が上がっていくと、労働市場に参加していない方が参加してくる。女性はもちろんでありますが、高齢者、若者も参加していくという効果を見込んで80万人とはじいてあるわけです。

(問)そうしますと、この14兆円という試算は、大臣の中では堅めに見積もってこのくらいなのか、それとも最大に見積もってこれくらいなのでしょうか。

(答)相当堅めに見積もっていると思います。
この試算では投資効果をはじいておりません。投資効果が明確に幾らということは現状はじいていませんが、投資効果がGDPに与える影響が一番大きいのではないかと思います。その分をカウントしておりませんから、相当手堅く見積もっている金額だと思います。


<経済効果分析の受け止めと対内直接投資促進策>

(問)率直にこの結果の数字をどう受け止めていらっしゃるのか。また、今お話のあった、投資を呼び込んでいくためのこれからの施策をどう考えていくのでしょうか。

(答)数字は期待したものになっています。前回は、関税を即時全廃した場合の試算で3.2兆でありました。今度は、関税部分は、全廃ではないし、残っている関税はあるわけであります。関税部分は小さいですけれども、関税以外の市場アクセスの改善、ルールの分野について随分改善が図られました。そこの部分が非常に大きい。GDP引上げ効果が大きいということです。加えて、申し上げましたように、投資による効果をプラスしておりませんから、この分を加えると非常に大きくなるということであります。
対内直接投資をどのように改善させていくのか。日本のGDP対対内直接投資というのは世界で最も低い部分です。3.8%です。こんなに低い国は他にないというぐらい低いです。ただ、それは、それだけ日本の工業製品に関する関税が元々開放しているという一面によるものである。つまり、関税障壁があれば、外から日本に輸出するよりも日本の中で作ったほうが良い。つまり、市場が大きくて関税障壁が高いと対内直接投資は増えるわけです。外から輸出するよりも中で作ったほうが有利になる。そして、市場が大きければそういうインセンティブが働くわけです。日本に関税障壁がないということは、対内直接投資を小さくしている原因の1つになっていると思います。
ただ、大事なことは、「グローバル・ハブ」と申し上げました。これは付加価値拠点として日本がどれくらい有望なところであるか。それから、日本から外へ向けていった場合に向かう先の障壁がどれくらいの範囲でなくなっているか。この2つが重要な点であります。
日本が1つの研究開発拠点として「グローバル・ハブ」と如何になり得るかという点では、このイノベーション・ナショナルシステムで基礎研究から実用化に最短距離でいくようにしていく。あるいは、医療全般に関する司令塔であるAMEDができた。あるいは、世界最大の医療情報の電子化が始まるわけです。これはもちろん機密情報でありますから、当事者の了解が前提でありますが、完全マスキングをした際には、電子化情報というのは創薬や医療機器の開発、新たな医療技術のもととなり、正に宝の山になるわけであります。そういうデータベースが世界で一番整っているという部分です。具体的に、それを規制緩和で実施していく国家戦略特区が動き出しているということです。あるいは、理屈はあってもモノができないというのがものづくりの世界です。理論を実際にモノの形にしていく環境では、日本は世界一であります。そういった魅力が展開されていけば、正に付加価値を生み出す投資先として世界一環境が良くなるということになると思っております。
今回の試算を一言で総括すれば、将来、歴史を振り返ったときに、今日の発表が大きなクリスマスプレゼントであったと言われるように、しっかり今後取り組んでいきたいと思います。


(以上)