第21回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年12月7日(月曜日)17時54分~18時21分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第21回経済財政諮問会議について、概要を申し上げます。
最初の議事は、「優良事例の創出・全国展開について」であります。塩崎厚生労働大臣に参加いただきました。事務方から資料1、2について説明がありまして、その後意見交換を行いました。主な意見を紹介します。
経済産業大臣から、「昨年度より、「健康経営銘柄」を選定している。今後は、中小企業についても健康経営の認定制度を創設し、資金調達のインセンティブを付与することを考えている。」
民間議員から、「健康増進の先行事例である呉市には、多くの視察があるが、なかなか調査から先に進んでいないようだ。今後様々な仕掛けで取組を進めていく必要がある。」
同じく民間議員から、「公共サービスのイノベーションについて、先行事例では大変大きな効果があがっている。何としても、全国展開にしていく必要がある。」
同じく民間議員から、「健康増進の無関心層に関心を持ってもらうために、インセンティブ付与を検討すべきである。」
総理から、「呉市の事例が展開されにくい理由は何なのですか。」
つまり、視察はたくさん来るが、それを自分のところに適用していくという展開に至らない理由は何ですか。
民間議員から、「呉市は、地元医師会との意思疎通を相当程度図った。そこが大切ではないか。」
厚労大臣から、「呉市には、良いリーダーがいた。保険者機能が重要であり、リーダーシップのある人がトップになり引っ張っていくことが必要である。」
2番目の議事として、塩崎厚労大臣、馳文部科学大臣、河野行政改革担当大臣に御参加いただき、「経済・財政再生アクション・プログラム」の原案について議論をいたしました。
内閣府事務方及び経済・財政一体改革推進委員会の新浪会長から資料3、馳大臣から資料4、河野大臣から資料5、麻生大臣から資料6について説明がありまして、その後、意見交換を行いました。主な意見を紹介します。
民間議員から、「歳入改革についても、今後、諮問会議で議論させていただきたい。アベノミクスの成果を何にどう活用していくかが重要である。」
同じく民間議員から、「次は実行の段階である。社会保障分野では関係審議会の審議に委ねている項目もあるが、緩まないように所管大臣のリーダーシップをお願いしたい。」
同じく民間議員から、「教育分野では2007年度以降、教職員の中期的な見通しが示されていない。今回、エビデンスに基づいて中期的な見通しを示していただくことになったのは画期的である。着実に進めていただきたい。また、行政事業レビューや総務省の政策評価との連携はPDCA構築において非常に重要である。関係大臣の協力をお願いしたい。」
馳文科大臣から、「教育の資質向上に向けてつくばの教育研修センターで様々な事業を実施している。どういう教員を養成していくか打ち出していきたい。コミュニティ・スクールの意義は大きくなっている。加配定数の必要性は地域によって異なっている。エビデンスに基づいて、全体の配置を検討していきたい。」
民間議員から、「エビデンス志向は評価したい。教員定数の議論は、少人数教育の効果の議論も重要だが、教育の質の議論が必要である。様々なケース毎に費用対効果を考えていくべきである。」
総理から、「教員免許の更新制度について、負担が増えた、という議論があるが、導入の趣旨は、教える側が新しい知識に基づく教育方法を身につける機会を提供するものであり、最先端の教育方法を、一人の教師の腕前に終わらせることなく、研修により、これを全体で共有できるようにすればいい。」
続いて、これまでの諮問会議で何度か議論になりましたが、いわゆる「130万円の壁」について、対策の議論が行われました。塩崎大臣から資料7について説明がありまして、その後意見交換を行いました。
まず民間議員から、「事業者への助成を評価したい。制度がパートの方々によく理解されるよう、広報対策が重要である。制度も使いやすく、3年間程度使えるように、また、助成の上限額や20万人の対象者数も改善に向けた検討をしてほしい。」
同じく民間議員から、「四半期毎に利用の状況を広報してほしい。また、130万円の壁以外にも、配偶者手当の在り方について、来年の夏には改革の方向性を明らかにしてほしい。」
厚労大臣から、「1回だけの利用か、との御指摘は事業者に踏み出していただくことがまず必要と考えています。キャリアアップ助成金は事業所単位で行っているので、今回も事業所単位で上限を設けている。利用者数は推計で20万人とみているが、広報を進めれば変わってくるものである。」
総理から、「広報は誰に対して行う予定ですか。」
厚労大臣から、「事業主と働き手の双方に知ってもらえるようにしたい。」
総理から、「複雑な仕組みなので、事業主の方々に説明して、事業主から説明していただくようにすると良い。」
民間議員から、「前向きなメッセージの発信をしてほしい。20万人の対象者数なども、より大きくできるといい。」
厚労大臣から、「対象となり得るのは60万人位で、そのうち20万人が利用すると推計している。しっかり事業主に周知していきたい。」
できれば60万人全員が、という話でありました。
総理からの発言です。ポイントを御紹介申し上げます。
「経済再生と財政健全化を両立するためには、歳出や政策効果を、自治体や保険者といった単位で比較・分析する「見える化」の徹底が極めて重要である。
これにより、政策効果が高い歳出に重点化をする「ワイズ・スペンディング」を全国に広げていく。
そのための改革工程表や「KPI」を、関係大臣が協力して年内に取りまとめ、28年度予算にも反映していただきたい。また、この会議において、歳出改革の進捗管理を進めていただきたい。
「一億総活躍社会」の実現に向け、「強い経済」を創り出すためにも、「経済・財政再生計画」をしっかりと具体化し、実行していく。
健康増進・予防サービスや公共サービスの分野において、目指すべき改革の方向性が明らかになった。スピード感を持って先進的な優良事例の全国展開を進めてほしい。
塩崎大臣、甘利大臣には「短時間労働者の就業促進のための対策」の取りまとめに御尽力いただいた。
これにより、事業者が、短時間労働者の労働時間や賃金を増やし、手取り額が増えていくことを期待している。
短時間労働者の方々が、より労働参加を進められるよう、塩崎大臣には、事業者や短時間労働者に対する制度の周知徹底をお願いしたい。」
以上です。


2.質疑応答

<消費税率の引上げについて>

(問)経済・財政再生アクション・プログラムの原案のうち消費税率について1点確認したいのですが。「経済・財政再生計画」には、2018年度の中間地点で改革の達成状況を今回原案が示されたKPI等で評価し、必要な場合には歳出歳入で追加措置を検討するとあると思います。大臣はかつて安倍内閣では消費税率10%の先は想定していない、少なくとも2020年度まではそういうシナリオはないと発言されたことがあるかと思います。2018年度の中間評価の結果、消費税率10%以上が検討の俎上に乗る可能性があるのでしょうか。

(答)安倍内閣、2018年度は総裁任期中ですね。その安倍内閣においては、3度消費税率を引き上げるということは想定していないということであります。2018年度の中間評価で、達成に必要な施策、歳出改革、歳入改革、成長戦略等々その時点で総合的に考えることであろうと思います。
仮に安倍内閣の継続中、今年は15年、16年、17年、18年、あと3年ありますね。安倍内閣の任期中であるとすると、消費税の再々引上げ以外の手法のプライオリティを先に考えられるのだと思います。それから先はその時の総理自身がお考えになることだと思います。


<130万円の壁について>

(問)130万円の壁の問題で、これまでの諮問会議では130万円の壁をもっと高くしたら良いとか、なだらかにしたら良いとか、色々な意見があったかと思うのですが、それらが難しくてこういうことになったのかなと思うのですが、その辺の議論が今日あったのかと、甘利大臣御自身のお考えを教えてください。

(答)経済財政諮問会議で民間議員から、この壁によって就労が抑制されてしまい、働き手もそういう判断をして働かなくなると、賃金を引き上げることが逆に労働時間を短縮させてしまうというマイナス効果になってしまうということで、それを一挙に引き上げられないかという提言がありました。
これを第1号から第3号まで色々な立場の方々への影響であるとか、あるいは公平性等々議論いたしました。それから、制度自身、もう既に法律が決まっていて、130万円の壁が106万円まで部分的に下りてくるわけです。それを全部なしにして対応するとなると、これはまた大変なことになるということで、現状の法改正の推移の中で最もスムースに行える方法を厚労大臣と色々と相談し、厚労省で策を練っていただき、今日の案になったわけでございます。
つまり、できるだけ早く手取りが現状の限界を超えていくように、給与と就労時間を引き上げていくことによって、早くその壁を乗り越えてもらうと。そして、そういう対応をとった企業に対しては雇用保険の二事業で支援するということです。
ただ、この中身を更に充実させる手はないかという意見は、もちろん今日も出ております。内容と期間の両方で意見は出ております。
それから、一番大事なことは、きちんとこの制度が採られないと意味がないということです。事業者が、自分が雇用しているパートタイマーに対して、こういう制度だから選択したほうがいいですよ、手取りも今までのペースとはやや違うペースで増えていくことと、年金は自分に返ってくるということを、きちんと説明していただき、この制度を選択してもらい、一刻も早くその壁を通り越えて、更に乗り越えていけば、更に時給が上がった分だけ、それから先は手取りが上がっていくということになります。

(問)同じく130万円の壁に関してですが、既存の助成金を手直しする形での対応ということで、一時的な対応のように映りますが、本格的な改革に関しては、議論が出たように来年の夏頃に結論を出すというお考えでしょうか。

(答)いえ、これが本格的な対応です。単純に現状の130万円の壁を引き上げるということは、色々検討しましたが、制度上無理です。
扶養に入らず単身で働いていらっしゃる方等々、既に何らかの対応をしていらっしゃる方に対して公平性を欠く、あるいはいずれにしても社会保障の枠内に入っていくので、いつまでも引き上げるわけにはいかない。暫定措置として引き上げていくわけにはいきませんし、既に法律も通って、130万円の壁が106万円まで一部事業者では下りてくるわけであります。その法律を改正するのかという話にまでなってしまいますから、今後の方向の整合性がとれなくなってしまうということもあります。
壁を乗り越えてしまえば、それから先は賃上げと就労時間の加算がそのまま手取りに乗っかってくるわけです。ですから、そこの間をできるだけ早く乗り越えていくことが重要です。壁から先は手取りが下がるということではなく手取りが上がっていく世界ですから、乗り越えるまでは賃金と手取りとの差があるけれども、乗り越えた先は賃金と手取りとの差がもっと縮まっていくわけですから、早くそこの壁を皆が乗り越えていって、それから先に進んでもらうということが大事だという結論です。

(問)つまり、壁を高くする、低くする、壊すとかという議論ではないのでしょうか。

(答)皆が早く壁を乗り越えるということです。

(問)それを乗り越える後押しをするということですか。

(答)そして、事業者にそういう賃上げをしてもらう。また、労働時間を増やしてもらうことに協力をしてもらう。その両方ないし片方を選択した事業者に対して、それに見合った助成をしていくということです。
助成の幅や対象者については議論がありました。

(問)今、議論があったということですが、厚労大臣が示した内容よりも、更に額を増やすといった議論があったのでしょうか。

(答)対象者となり得る60万人のうち20万人が利用するというのを、全員がその対象となるように説得してくれた方がいいではないかという議論がありました。それはもちろん、そうなればそう対応しますということです。
それから、1年限りでなくて、2年目も、3年目もその当事者に対して継続するような仕組みにすれば、企業はよりそちらの選択をしていくという議論や、助成幅が拡大できないかというような話も含め、この制度自身は評価するが、より定着するような努力もできないか、という注文です。

(問)130万円の壁の絡みで、若干、ネガティブな聞き方になってしまうかもしれませんが、賃上げされたことによって壁に近づくスピードが上がり、早く飛び越えるという発想もあるのですが、壁が早く近づいてきてしまうということで、労働者がより早い段階で労働時間を抑制してしまうという心配もあるのではないかと思いますが、その辺りはどう考えますでしょうか。企業からの説明でそこをフォローするという狙いなのでしょうか。

(答)賃上げをすれば130万円の壁は労働時間的には早く近づくわけです。そこで、労働人口が放っておくと減っていく中で、更に人手が減っていくという問題提起がなされたわけです。
130万円の壁を150万円や200万円に引き上げると、制度論として、税の方ではなくて、年金対象者の所得が下がってくる。法律はもう既に通っているわけです。向かっていく方向と逆の方向に法律改正をするというのも整合性が取れない。それから、既にそのような対象になっている人に不公平感が生じます。より御苦労されている方もいらっしゃると思いますが、そういった人が社会保険料、税を払い、より恵まれている人がそれらを全て免れるということは、社会通念上通らないのではないか、という議論もあるわけです。
そこで、全ての整合性を取っていくためには、できるだけスピード感を持って、つまり所得が増えたにも関わらず、手取りが減るということがないように、その期間を早く乗り越えていくという措置を取るということです。
なかなかこれ以外に、三方がきれいに収まっていく案が、色々考えてみましたが、見つかりません。


<7-9月期のGDP改定値の見通しについて>

(問)昨日、大臣はテレビ番組で「7-9月期のGDP改定値がゼロぐらいになる」という発言をされていましたが、GDP所管大臣が数字について見通しをおっしゃるのは異例のことかと思うのですが、発言の狙いと、どういった根拠でこの見通しをおっしゃられたのか教えていただけますでしょうか。

(答)民間の調査機関の見通しが改定値ではプラスで0.0ぐらいになるのではないかという発表をされています。あの時は2期連続マイナスで、これから先もマイナスになるかのような誤解を与えかねない話でしたので、これから先は反転していきますというお話をしました。現に民間見通しでもマイナス0.8は、改定値でマイナス0.0というような見通しも出ています。ですから、明るい方向に行きますよ、ということを申し上げたわけです。
改定値が幾つになるかは当然知っている由もないです。ですから、このままマイナスが続いていきそうな中でどうするのですか、といった話でしたので、そうではありませんよ、というお話をしたわけです。


(以上)