第20回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年11月27日(金曜日)17時54分~18時15分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

まず、第20回経済財政諮問会議について、概要を報告申し上げます。
最初の議事は「来年度の予算編成の基本方針について」であります。事務方から説明があった基本方針案を経済財政諮問会議の答申とすることを議決いたしました。
続いて、2番目の議事として、加藤一億総活躍担当大臣に御参加いただきまして、「600兆円経済の実現」に向けた議論を行いました。伊藤議員から資料2について説明・問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
麻生財務大臣から、「名目GDP600兆円の実現に向けて、過去の実績も見ながら構造的課題に取り組んでいく。消費税率を10%に引き上げる際には、福祉給付金も支給されるし、介護保険料も軽減される。こういったことを国民にきちんと説明することが重要である。反動減対策も過去の教訓を踏まえて検討すべきである。」
加藤大臣から、「来年春の「ニッポン一億総活躍プラン」の策定に向けては、第一、第二、第三の矢を分けることなく、甘利大臣と協力しながら、「成長と分配の好循環」を生み出す新たな経済社会システムをトータルで描きたい。」
麻生大臣から、「教育資金への贈与税非課税制度の導入は多大な効果があった。お金を使うニーズのある世代が相続できるような手立てをうまく考えなければならない。」
続いて、民間議員から、「消費税率の引上げを大過なく乗り切るため、2016年度中に、引上げを吸収できる抵抗力、地力を強化する必要がある。駆け込み需要とその反動減を起こさないよう、過去の経験も踏まえて企業としても積極的に取り組むので、政府としても後押しをお願いしたい。反動減対策として自動車、大型家電の購入に対して税制を活用できないか。期限付でもいいが、早く、来年の夏頃までに対応策を打ち上げるべきである。」
同じく民間議員から、「アベノミクスの成果による税収増を活用し、構造問題に切り込むべきである。「成長と分配の好循環」を生み出すために、踏み込んだ議論を行うべきである。成果の税収増は、恒久財源と考えてもいいのではないか。キャッシュアウトを促進するためには、機関投資家についても、安定指向でない成長指向のガバナンスが求められる。」
同じく民間議員から、「賃上げをしても、その分保険料等が増加し、手取りが減ることがないように、実質所得を上げていくことが必要である。130万円の壁をなだらかにする仕組みをぜひ検討していただきたい。企業のガバナンスを変えていくために、機関投資家としてのGPIFをうまく活用できないだろうか。」
3番目の議事として、石破地方創生担当相に御参加いただきまして、「経済・財政一体改革」の各論のうち、地方行財政等の分野について、議論を行いました。高橋議員から資料3、高市総務大臣から資料4、石破大臣から資料5について説明・問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
まず、民間議員から、「一体改革について高市大臣の踏み込んだプレゼンをいただき心強い。今、経済・財政一体改革推進委員会でKPI・工程表を作成中である。社会保障についても、全項目についてKPI・工程表を作るが、地方財政についても全ての項目についての作成をお願いしたい。「見える化」を全面的に進めるという御説明も心強い。今まで見えなかった課題を浮き彫りにするためにも、自治体の「見える化」も推進してほしい。」
同じく民間議員から、「一体改革の推進について、高市大臣の取組に敬意を表する。更なるリーダーシップを2つの点においてお願いしたい。1つは、「アウトカムの見える化」は、所管省庁において検討との御発言があったが、地方交付税は総務省の所管であり、高市大臣にもアウトカムがきちんと出ているかチェックしてほしい。もう1つは、住民のQOLが上がり、ワイズスペンディングになっているかの確認をよろしくお願いしたい。」
民間議員から、「「まち・ひと・しごと創生事業費」の算定への成果の反映についてシフトの時期を決めるのは困難と発言があったが、お金を使うのだから、集中改革期間の3年で何も出てこないのは良くない。成果を見ていること自体がガバナンスにもなるので、経済財政一体改革推進委員会でも見ていくが、よろしくお願いしたい。」
高市大臣から、「総務省には行政評価機能もあるので、各省庁の分野が効果的に進められているか、しっかり見ていきたい。「まち・ひと・しごと創生事業費」は始まったばかりであり、地域の成果ができるだけ早く上がることを期待している。」
続いて、民間議員から、「アウトカム指標は、内閣府が見ていくことも必要である。総務省は、データ提供などに協力してほしい。石破大臣には、地域の自主性を表す基準を数値化して示していただきたい。」
石破大臣から、「定量化していくことも大切であり、手法の開発を検討したい。」
ここで総理から発言がありました。「アベノミクス「三本の矢」によって日本の経済は再び成長を取り戻し、デフレ脱却まであと一息というところまできた。これを一層強化し、「戦後最大のGDP600兆円」に向けた歩みを確固たるものとしつつ、少子高齢化という構造的課題に取り組み、「一億総活躍社会」を目指す。アベノミクスの成長の果実により、子育てや社会保障の基盤を強化し、それが更に経済を強くするという「成長と分配の好循環」を構築していきたいと考えている。これまで、「成長」か「分配」か、という議論が積み重ねられてきたが、これに終止符を打つ。「一億総活躍社会」とは、まさに「成長と分配の好循環」を生み出す新たな経済社会システムの提案である。
本日、「平成28年度予算編成の基本方針」の答申をいただいた。来年度は、「経済・財政再生計画」の初年度にあたる。「一億総活躍社会」の実現に向けた取組を始め、各般の政策の実行に当たり、来年度から「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」の双方をともに前進させるという基本的考え方を的確に予算に反映させるよう、関係大臣におかれては、しっかりと対応してほしい。
地方行財政改革については、他の自治体の先進的な取組とその成果を、地域の実情に応じた形で取り入れるトップランナー方式によって、地方交付税の改革を進めていく。高市大臣にはその趣旨を着実に具体化してほしい。また、公共サービスの優良事例の横展開を具体的かつ強力に進めるとともに、IT総合戦略本部と総務省が地方と連携し、地方においてIT戦略等を推進する人材の育成やCIOの役割を果たす人材の確保に向けた取組をしっかり促進してほしい。」
それから、臨時閣議についてであります。
経済財政諮問会議終了後に臨時閣議が行われまして、お手元に配布してありますとおり、「平成28年度予算編成の基本方針」が決定されました。臨時閣議における私からの発言はお手元の資料のとおりです。
以上です。


2.質疑応答

<GDP600兆円に向けた議論について>

(問)「600兆円経済の実現」に向けてという資料が民間議員から出ましたが、この位置付けは、春に向けたプランのたたき台になるのかということと、もう一つ、加藤大臣から、春のプランに向けては3つの矢を分けることなく描きたいと言われていましたけれど、この辺りをどのように議論していくのか教えてください。

(答)民間議員の提案は、もちろん今後の経済財政の運営方針、今回の補正予算に向け、織り込める部分は極力織り込んでいくということになろうかと思います。それから、一の矢と二・三の矢を分けることなくというのは、まさに総理がおっしゃっています、「成長」と「分配」というのは対立構造ではなく相互補完構造であるという新しい提言であります。いわば、そういう点でも政策論争に終止符を打ちたいということです。つまり、経済成長を隅々まで分配し、そして将来の安心感からそれが消費に向かうようにし、成長を支えるという構図です。「成長」と「分配」は対立構造ではなく相互補完構造であるということですから、これらを一つひとつ分けることなく補完体制として組み入れていくということだと思います。

(問)いわゆる新一の矢は、諮問会議で分けて議論されてきましたが。

(答)新一の矢は、中心的には私がもちろんやっていきます。新一の矢というのは旧一・二・三の矢をまとめて補強したものであります。
新二、三の矢は、アベノミクスが届いていないと感じる人がいらっしゃるので、1つは少子化に真正面から立ち向かう。安心して結婚し、妊娠し、出産し、子供を産み育てられる社会を作っていく。そのために、不妊治療にも幼児教育の無償化にも言及しているわけであります。さらに、自己実現と、それから介護と子育てとを両立できるようにしていく。そのための実務を妨げるようなことがないようにする。あるいは、介護についても扱いづらい制度があります。介護休暇というのは93日もあるのですが、一遍に取らなくてはならず、1日取ったらそれで終わりとなります。残りの92日の権利も失われる、という非常に怪奇な仕組みであります。これも変更していくということであります。そして、非正規労働者もきちんと介護休暇にアクセスできるようにしていくなど、今抱えている課題を解決していき、アベノミクスの成果を今まで感じていなかったところまで届ける。そして、安心感を培い、それが消費を支え、成長を支える。成長が更に分配へと貢献していくという好循環です。

(問)自民党の結党60周年に絡んでなのですが、「成長」と「分配」を同時にやるという政策というのは、海外から見れば、すごく何か左派的な政策にも見えるのですが、総理がこういうことをここ最近言い始めているのは、ともすれば選挙のためだとかと書きがちなのですが、総理のお考えを大臣がどのように酌み取って解釈されているのかというところを教えていただきたいと思います。

(答)日本を称して「世界で最も成功した社会主義国」とおっしゃる方がいますけれど、総理の視点は、資本主義でも、公益資本主義といいますか、「瑞穂の国の資本主義」と言っておられます。瑞穂というのはお米のことですが、米づくりは、隣近所が助け合って、結局みんなが成果を共有するという文化であります。資本主義市場経済の中でも、A winner takes allではなくA winner takes mostという発想でよいのではないかということです。
それから、会社は誰のものかという質問に対して、商法、会社法では、「株主のもの」というのが正解の回答だと思いますけれど、安倍内閣においては、会社は誰のものかというと、それはステークホルダーのものということです。
ステークホルダーというのは、株主はもちろんですが、従業員がいて成り立つ、あるいは取引先がいて成り立つ、そして地域社会があって成り立つという、会社に関わってくるもの全てであります。経済社会というのは、そういう考え方でありますから、これは別に社会主義的発想というよりも、資本主義の本来の姿に立ち返るということだというように思っております。
私が経済産業大臣の時に、長く続く会社とはどのような理念の下に運営されているのかという議論をいたしました。その時に、アメリカの長く続いている会社を徹底的に調べて出た結論は、それこそ50年、100年と続いていく会社に共通する経営理念は「企業は世のため人のため」ということでありました。アメリカといえどもそうであった、ということであります。会社の存在意義というのは結局、最後は「世のため人のため」であり、その理念がある会社は長続きするという結論でありました。アメリカであってさえもです。その本来の姿を実践するのがアベノミクスの考え方だと思います。


<消費税率引上げを踏まえた予算編成基本方針の重要性について>

(問)先ほど言及があったように、2017年4月に消費税率10%への引上げを控えていて、そういう意味でも今回の基本方針は非常に重要だと思いますが、引上げを踏まえての今回の基本方針の位置づけ、重要性に関して、改めてお伺いできますでしょうか。

(答)2017年を踏まえて、経済財政運営上重要なことが2点あります。消費税率引上げの年は、駆け込み需要の反動減を極力平準化するということです。このための工夫を最大限する。5%から8%に引き上げた時は、対策が不十分だったから、そのまま苦しんでいるわけです。
それから、その前年の経済は消費税率引上げを乗り越えていく体力をつけるということです。来年の日本経済は、その次の年に控えている消費税率引上げを乗り越えていくだけの体力の強化を図る、経済全体の底上げを図るという発想が大事です。
前回消費税率引上げを実施した年は、駆け込み需要の反動減も含め、7兆円ぐらいだったかのインパクトがあったと言われています。しかし、財政・経済当局は、その幅を甘く見ていたところがありました。これは別に反動減対策に予算を目一杯つぎ込むというのではなく、もちろん予算も必要ですが、どうやって平準化していく工夫をするかということだと思います。これは税制上の取組も含めて駆け込み需要とその反動減を平準化し、消費税率引上げの前の年には体力をつける、という考え方だと思います。


(以上)