第10回記者会見要旨:平成27年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成27年6月22日(月曜日)19時19分~19時48分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

まず、本日夕刻の産業競争力会議、そして、この報告の後に、経済財政諮問会議、この概要について、続けて報告申し上げます。

<産業競争力会議の概要について>

第22回産業競争力会議についてであります。
本日は、日本再興戦略の改訂に向け、「「日本再興戦略」改訂2015」の素案をお示しし、西村副大臣から説明を行いました。 改訂の素案は、1.基本的なメッセージをまとめた「第一「総論」」、2.進捗状況と新たな施策を記載した「第二「3つのアクションプラン」」及び「第三「改革のモメンタム~「改革2020」の推進~」」、3.工程表、4.「「改革2020」プロジェクト及び工程表」の4つのパートから構成をされております。
再興戦略改訂に当たっての基本的な考え方について、御説明をいたします。
アベノミクス3本の矢の取組の成果が現れ始め、経済の好循環が着実に回り始めています。しかしながら、人口減少社会の到来により、生産性が向上しなければ、いずれ成長の限界にぶつかってしまうことは明らかであります。
このため、アベノミクスはデフレ脱却を目指して、需要不足の解消に重きを置いてきたステージから、人口減少下における供給制約を乗り越えるための新たな「第二ステージ」に入ります。
供給制約を克服し、生産性を高めることで「生産性革命」を起こすための鍵は「投資」であります。すなわち、将来投資を行う「民間の出番」であり、「今こそが行動の時」であります。
また、地方の活性化なくして国全体の成長やアベノミクスの成功はありません。地方にとっても今こそ「地方自らが自分の将来を決める」ための「行動を起こす時」であります。
このために、アベノミクス第二ステージは、「未来投資による生産性革命の実現」と、「ローカルアベノミクス」を車の両輪として進めていきます。
具体的には、「未来投資による生産性革命の実現」のため、企業と投資家の建設的な対話の促進、国際的イノベーション・ベンチャー創出拠点形成に向けた新たな大学・大学院制度の創設、大学改革と研究資金改革の一体的推進、第四次産業革命とも呼ぶべきIoT・ビッグデータ・人工知能による産業構造・就業構造変革の検討、サイバーセキュリティーの抜本的な強化、IT利活用を推進するための新たな法制上の措置、実践的な職業教育を行う高等教育機関の制度化を含む、雇用と教育の一体改革、これらに取り組みます。
また、「ローカルアベノミクスの推進」のため、官民共同の業種別サービス業生産性向上活動の展開、農林水産業における「攻めの経営」の確立、医療等分野における番号制度の導入等のヘルスケア産業の活性化、生産性の向上、日本版DMOの設立等の観光産業の基幹産業化、PPP/PFIの推進等に取り組みます。
さらに、成長戦略を加速する官民プロジェクトとして改革2020に取り組みます。
こうした改訂成長戦略の素案について意見交換を行いました。主な意見を御紹介申し上げます。
まず、民間議員から、「地域活性化・地方創生が柱になっているが、規制改革会議においても、自治体に地方版規制改革会議を設置することを提案している。規制改革会議本体との連携やホットラインでつながることで取組を進めていきたい。成長戦略の成果について発信力が必要という点はきちんと盛り込んでいただいた。」
同じく民間議員から、「経営者として総論に「民間の出番」、「今こそ行動の時」と記載されたことを重く受け止めている。今回、2回目の改訂だが、施策・KPIが非常に多岐にわたっており、いかにPDCAを回していくかが極めて重要である。」
同じく民間議員から、「長時間労働是正については「見える化」が大きく進んだ。女性の活躍は現在国会に提出中の法案とともに、企業側が動き出しムーブメントが起きている。長時間労働是正についてもムーブメントを期待したい。長時間労働是正は生産性の向上とともに、少子化や地方創生等のすべてに関係をしてくる。」
続いて、民間議員から、「今後の課題について、総論部分できちんと明記をしてほしい。「未来への投資」をキーメッセージにしているが、投資をより効果的に生かしていく仕組みも必要である。規制改革については引き続き政治のリーダーシップを期待したい。成長戦略で掲げた取組について、ファシリテートしていく仕組みを考えてほしい。」
同じく民間議員から、「施策についてはこれまでの議論をまとめてもらっているが、目標の引上げ等のKPI自身の見直しも必要ではないか。」
同じく民間議員から、「今回の素案とこれまでとの違いは、「投資」を求めていること。産業界でも気運が高まっていると感じている。一方で、企業はどこに投資をしてよいかについて自信がないという声もあることから、英知を結集して議論をする場を設定すべきである。また、長期的なイノベーションを担うのは大学の役割であり、イノベーション・ナショナルシステムを、大学改革を通じて実現していく。さらに、ベンチャーが起きるような失敗を恐れない社会をつくっていくことも必要である。ICT化については、民間からの投資が期待できる分野であるため、施策のスケジュールを明確にすべきである。」
同じく民間議員から、「総論でこれからはサプライサイドの対策が必要という旨を明記したことは結構であると認識している。投資も研究開発投資や更新投資、増強投資等、様々な投資がある。また、少子化対策には財源が必要な部分もある。検討を深めてほしい。」
続いて、石破大臣から、「今回の改訂で地方創生を明確に柱に立てていただいている。また、国家戦略特区については、改革の成果が目に見える形で実現してきており、残りの集中取組期間で大胆な規制改革等の突破口を開いていきたい。
今月中を目途に、「まち・ひと・しごと創生基本方針」を取りまとめる予定であるが、成長戦略と両輪となって取り組みたい。また、新型交付金の創設についても作業を進めたい。」
続いて、藤井文部科学副大臣から、「国立大学経営力戦略について取りまとめている。教育はまさに未来への投資であり、取組も進めていきたい。」
最後に、総理から発言がございました。紹介いたします。
「安倍内閣の成長戦略は新たなステージに入る。これまでのマクロの需給ギャップの解消から、今後は人口減少下における供給制約を克服していくことが課題となる。この克服のためには生産性を向上するしかない。日本が再び世界のフロントランナーとなるためには、「未来への前向きな投資」によって生産性革命を実現することが重要である。今こそが「民間の出番」であり、「行動の時」である。
生産性革命を実現するためにはイノベーション・ベンチャーを生み出すとともに、ITや人材、先端設備に対する思い切った投資を行うことが不可欠である。
同時に、ローカルアベノミクスを進め、サービス産業をはじめ、地方の潜在能力を発揮させることで日本全体の生産性の底上げの実現をする。この中で、地方も自らの将来を決めるために行動を起こす時が来ている。
私から一つ提案を行いたい。これまで賃上げや価格転嫁について関係者間で議論を重ね成果を上げつつある。今後はこうした取組に加え、未来への投資を生み出すため、新たに政府と産業界による「官民対話」の場の創設をする。民間が目指すべき投資の方向性と、そのための政府の取組について対話を行い、企業の大胆な経営判断を後押しする。この官民対話を成長戦略の改訂に盛り込みたい。」
総理のこの発言を受けまして、本日の資料1-1、「第一「総論」」の5ページに、日本経済が歩むべき道筋を明らかにし、政府として取り組むべき環境整備の在り方と民間投資の目指すべき方向性を共有するための「官民対話」を開始し、中長期的な企業価値の向上に向けた企業の大胆な経営判断を後押ししていく旨を明記しております。

<経済財政諮問会議の概要について>

続きまして、第10回経済財政諮問会議につきまして申し上げます。
本日は骨太方針の素案について議論を行いました。事務方から資料1の説明があり、その後、意見交換を行いました。
主な意見を紹介いたします。
民間議員から、「この素案は「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」を両立させており、評価したい。社会保障改革については、すべての改革を早期実現していただきたい。諮問会議で、来年度の「予算の全体像」において、改革初年度からしっかり取り組んでいきたい。専門調査会で工程表、KPIを具体化していく。」
民間議員から、「歳出総額について、「経済・物価動向等を踏まえ」となったのは評価できる。7月の諮問会議で「予算の全体像」、概算要求基準の議論をすることになると思うが、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」について議論をしたい。また、地方財政については、集中改革期間中に平時モードに移行すべきである。
2018年でリーマンショックから10年が経つのだし、早期に行うべきである。」
高市大臣から、「地方財政について徹底した効率化を進めていく考えであるが、地方交付税の別枠加算や地財計画の歳出の特別枠などの危機対応モードからの切替は、あくまで経済再生の進展とあわせて対応すべきものであると考えている。」
麻生大臣から、「これまでの議論を踏まえた、具体的、実効的な案だと受け止めている。党の意見も聞いた上で、成案となるよう力を合わせていきたい。」
民間議員から、「社会保障改革について、踏み込んだ議論を行ってここまで来たことを評価したい。計画策定後、一つひとつの改革について、いつまでにどこまで実現していくか、しっかりと具体化に向けて議論をしていきたい。」
民間議員から、「現状は経済好循環がしっかり回っているが、デフレマインドに戻る可能性を徹底的に払拭することが必要である。常に成長する経済を実現するためにも公的サービスの産業化は重要であり、「官需」主体から「民需」主体にバトンタッチすることがアベノミクスの本質であり、財政健全化の進展にも資することになる。攻めの骨太の実現に向けて速やかに専門調査会を立ち上げ、KPIを設定し、3年という集中改革期間を前提に、しっかりPDCAを回していくことが重要である。」
最後に、総理から発言がありました。ポイントを御紹介します。
「本日議論いただいた骨太方針の素案においては、1.デフレ脱却を確実なものとし、経済の好循環を更に拡大させる取組を盛り込むとともに、2.成長戦略を拡充・加速すると同時に、歳出改革、歳入改革の推進を通じて、公共サービス分野を成長の新たなエンジンに育てることにより、我が国経済の潜在成長力について、2%程度を上回る成長に向けて高めていくことを示した。
さらに、安倍内閣の基本哲学である「経済再生なくして財政健全化なし」のもと、「経済・財政再生計画」を具体化し、この中で歳出改革として、1.幅広い国民の参加を求め、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」に、国民運動として取り組むことで、公共サービスの質や水準を低下させることなく、公的支出の抑制を実現させる。
2.歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの取組を強化し、聖域なく徹底した見直しを進め、地方においても、国の取組と基調を合わせた取組を進めることを盛り込んだ。
安倍内閣としては、財政に対する国の信認を確保するため、2020年度の財政健全化目標達成を堅持する。そのための「経済・財政再生計画」である。
甘利大臣には、この素案をベースに、本日の議論も踏まえつつ、与党との議論を進め、次回の諮問会議で取りまとめるよう、御尽力いただきたい。」
以上です。

2.質疑応答

<歳出水準の目安について>

(問)今回、脚注に安倍政権のこれまでの3年間の取組による1.6兆円の歳出増加額を今後3年間の歳出の目安とするということが盛り込まれております。甘利大臣はこれまで歳出の目安というのを数字で盛り込むことには反対されてきたと思うのですが、今回、このくだりが脚注に盛り込まれたことについてどう受け止めていらっしゃいますか。

(答)私は、将来の歳出総額を固定することは、成長による税収増とそれから歳出削減との連立方程式を縛ってしまうことになると申し上げました。社会保障について議論をしてきましたのは、安倍内閣のこれまでの取組について、そのトレンドをしっかり2018年までつなげていくと。ただし、その絵図を描くキャンパスは、経済・物価動向を反映したキャンパスの上に描いていくという意味であります。
つまり、今までデフレからの脱却にあたり、物価や経済動向はデフレの影を引きずっていたキャンパスに描いていました。そのキャンパスに描いた絵図から、同じ改革トレンドに持っていきますけども、これからを描くキャンパスは、経済・物価動向を踏まえたキャンパスの上に描いていくという意味であります。つまり、経済・物価動向というアローワンスを持って改革を進めていくということであります。

(問)今回、その経済・物価動向と1.6兆円という目安、両方併記されていますが。

(答)併記ではなく、経済・物価動向を加味すると書いてあるのです。つまり、トレンドとしては、過去3年間の改革トレンドをつなげていくと。しかし、そこには経済・物価動向というアローワンスを加味して絵図を描いていくということが合意をされたということでございます。これは私のかねてからの会見での主張そのものであります。

(問)つまり1.6兆円というのは、いわゆる歳出削減のキャップとか、骨太2006のようなイメージの数字ではないということですね。

(答)トレンドとして過去3年間の改革トレンドをそのまま進めていくと。ただし、経済・物価動向が変化、つまりプラスに変わっていきますから、その分のアローワンスは折込みながら、トレンドはそういうトレンドでいきますよということです。

(問)新たに設けた中間目標というのは、この2018年度のPB赤字、対GDP比マイナス1%ということですね。

(答)そういうことです。18年度の縛りはまさにPB赤字対GDP比マイナス1%を目安にするということであります。


<成長戦略の進捗について>

(問)成長戦略の方についてお伺いしたいのですけども、今回で3回目の成長戦略ですけれども、実質2%、名目3%の成長率目標に、今回の成長戦略でどれだけ近づいたか。また、それに具体的にどの政策が近づけたと思うかという大臣の御見解を一つと、あと逆に、KPIの目標とかに比べて進捗が遅いな、これからもっと重点を置きたいなと思う政策はどのあたりでしょうか。

(答)KPI目標のうちの3分の2は予定どおり進んでいる、あるいは予定以上に進んでいます。残りの3分の1については、KPI指標等の遅れている理由の開示、原因究明、追加施策ということについて、担当大臣に指示が飛んでいるわけであります。
この成長戦略の改訂は、言ってみれば経済の好循環を確保し、2巡目が回り、3巡目に向かっていくということであります。経済の好循環の確保というのは、言ってみれば、日本経済を健康体に取戻しつつあるということです。
デフレという不健康な体、これについて私はよくギリシャを例に出して言いますが、ギリシャは歳出額を3年間ぐらいほとんど変更していません。つまり、それだけ抑え込んでいるわけであります。そして、例えば年金も一定金額以上については大幅なカットをしています。相当に踏み込んだことをやっているわけであります。そして、付加価値税も2%ポイント引き上げました。それから、軽減税率も引き上げました。つまり、増税をし、歳出カットをし、その結果どういうことが起きているかというと、税収が3年連続減っているわけであります。歳出カットが更なる歳出カットの必要性を呼んでしまっており、泥沼に入ってあがいているところだと思います。
でありますから、成長がいかに大事かと。ギリシャの再生には成長戦略が必要で、税収が減らない状況をつくっていく中で、歳出を効率化していくということが必要なのであります。やることはやっていながら、より苦しい状況に陥っていると、ギリシャの経済規模は小さくなってきました。こういったことから脱することを我々はやっているわけです。
ですから同じ轍を踏んでしまってはいけないのでありまして、現に安倍政権の3年間の中で、税収は12.2兆円増えました。今期に至っては更に所得税、法人税の上振れであと2兆円伸びるという予測があります。12.2兆円が14.2兆円にならんとしているわけであります。この税収の伸びのうち、消費税による収入というのは6.7兆円しかないのです。つまり、税収が14兆円以上伸びたうちの半分以上はアベノミクスで伸びている。この事実をしっかり認識していないと、歳出カットと増税だけでいけるのだということになると、そのとおりにやったギリシャは税収が減っているのです。それで更なる歳出カットを要求されているわけであります。この経済の原理・原則をしっかり認識できないと財政再建はできないということになります。
でありますから、安倍内閣の一丁目一番地は「経済再生なくして財政健全化なし」と、この総理の宣言は極めて正しい判断だと思います。


<官民対話について>

(問)総理が産業競争力会議で最後に発言した、投資を呼び込むための官民対話というところなのですけれども、これ具体的に、例えば閣僚レベルとかで促すようなイメージなのか、どういった対話をイメージされているのか現時点でお話しになれることがあればお願いします。

(答)産業界と関係大臣との会議なのかと思います。投資には設備の更新から研究開発から人的投資からいろいろあると思います。その必要性を認識し、共有し、投資を呼びかけていく。もちろん経営側、産業界の方から、そのための環境整備についての考え方も示されると思います。この経済界と政府の側が、共通の認識をもって投資を効果的に進めていくということになります。
競争力会議でも、投資はしたいけれども、どこへ投資していいか分からないということもあるという意見が民間議員からも出てきました。ポテンシャルの高いところにスポットライトを当てて、そこの規制緩和なり何なりも含めて環境整備をしていく。政府がやるべき役割、そしてそれを受けて民間がそこに思い切った投資をしていくという関係の好循環をつくっていきたいというふうに思っております。
秋頃には立ち上げたいと思います。

(以上)