第16回記者会見要旨:平成26年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成26年10月1日(水曜日)19時21分~19時52分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
16回目になります経済財政諮問会議が終了いたしました。概要を報告申し上げます。
1つ目は、「経済再生と両立する財政健全化に向けて」であります。高橋議員から資料1について説明、問題提起がありまして、その後意見交換を行いましたので、主な御意見等を紹介いたします。
麻生財務大臣から、「平成27年度予算では、政府の経済運営に対する市場の信認をきちんとしていくためには、プライマリーバランスは重要な要素である。そのために、予算の査定や歳出削減を行う必要がある。その中で社会保障は踏み込んだ議論を諮問会議でしていただき、予算に反映させたい。2020年の先を見据えてという指摘はごもっともである。諸外国の財政再建が進んでいく中で、日本でもきちんとしていく必要がある。受益・負担についての御指摘もごもっともであり、諮問会議での議論を査定に反映させていきたい。」
民間議員から、「社会保障は規模も大きく、放っておくとブラックボックスになってしまう。徹底的な見える化が必要。例えば、薬価は公定価格なので、徹底的な市場の実態調査が必要で、ブラックボックスに光が当たれば、どこに改革が必要かはわかる。」
同じく民間議員から、「公共事業は、資材・人件費の高騰もあり執行度が低い。優先度をつけていくことが必要である。日本再興戦略に基づき、女性の活躍に資する保育園や観光など、重要なところに絞り込んだ公共事業を行うべきだ。公助・互助の活性化が重要。駅前の商店街を活性化させるなど、コンパクトに活性化をさせていくことが必要である。経済の規模が集まると、人口が集まり、民間企業の投資活性化も期待できる。社会保障の見直しは賛成。社会保障の分野に民間企業の創意工夫が入るような規制改革が重要である。75歳以上の労働をどうするか、年金改革と絡めて議論することも重要だ。」
同じく民間議員から、「社会保障改革のポイントとしては、1、全世代型に改良し、高齢世代から若い子育て世代への給付へと振り向けていくべきである、2、医療費抑制のためには、ICT化・見える化による効率化、医療・介護を一体化した給付の抑制、地域において支出目標の設定を制度化するなどを検討。これらが重要だ。」
同じく民間議員から、「非社会保障分野は全体として横ばいないし物価上昇分程度の増加に抑制せざるを得ない。それ故に重点化・効率化を図り、真に重要な支出に振り向けることが重要だ。公共事業によるクラウディングアウトについては、国の事業が民間の事業だけでなく、地方自治体の事業をクラウディングアウトする可能性にも注意が必要である。」
私から、「社会保障改革については、安倍内閣では見える化を進めて重複をなくす、先回りして抑えるという手法をとっている。一律にカットするといったアプローチはとっていないことを強調していかなければいけない。」
民間議員から、「地方交付税の算定の仕組みが、現在の社会構造などに本当に合っているのか、総務大臣に検討をお願いしたい。また不交付団体になることを目指すインセンティブ、頑張るところが報われる仕組みを検討してもらいたい。」
高市総務大臣から、「既に地方交付税の算定にあたり、地域の元気創造事業費として、行革努力や地域経済活性化の成果を反映した算定を行っており、今後とも努力をしたい。」
次に、私から、経済の好循環に関連して2点、簡単に御報告をいたしました。
総理御出席のもと、再開後第1回となる「経済好循環実現に向けた政労使会議」を一昨日、9月29日に開催したことと、休み方改革ワーキンググループの第1回会議を9月26日に開催したことを報告いたしました。
続けて、2つ目の議事として、前回の諮問会議で問題提起がございました、夏の天候不順の影響を含め、景気の現状について議論しました。内閣府事務方より資料2について説明をし、その後意見交換を行いましたので、主な御意見等を紹介いたします
私から、「今夏の天候不順の影響は、2千億円~7千億円程度、GDPを押し下げる効果があり、中間値で言うと四半期で0.4%ポイント押し下げる。これを年率換算すると、1.6%ポイントを押し下げるということ。これは、内閣府が様々なデータを分析して、一定の仮定のもとに試算をしたものである。」という報告をしております。
もう一点、「実質所得と支出の関係であるが、実質所得が下がったことが消費に影響があったのではとの指摘があるが、パラレルに下がっているとは言えない。データの数がそう多くはないが、30代の子育て世代では収入がそれほど下がっていないが支出を下げている。これは防衛的なことだったのではないかと思うが、世代別などみると一概に消費が減っているとは言えないということである。」
民間議員から、「気候の影響については、このままずっと減り続けていくわけではないと思われる。」
同じく民間議員から、「7、8月の天候不順の影響はこれより大きいと思うが、過度に悲観する必要はない。」
高市総務大臣から、「天候要因が大きいと認識を持っておくのは大事である。」
民間議員から、「この天候要因の押し下げ効果は、年率換算で1%ポイント以上なので、マインドへの影響等も含めて、天候要因は小さくないと考える。ただ、天候要因もあるが、自動車の落ち込み、子育て層、中小企業、地方の数字等が良くないのは実質所得の落ち込み等が効いているのではないか。」
同じく民間議員から、「あるエコノミストは現状の景気は風邪を引いている状況であると表現している。体質は改善しているが、天候と実質所得が目減りをして体力が落ちている。肺炎にしてしまわない手だてが必要。カンフル剤を打てばいいのか、賃上げ等体質改善の施策を優先するのか、政策の選択肢を考えないといけない。天候の一時的な要因だからと安心するのは危険。日銀総裁から短観の見方を教えてほしい。」
黒田日銀総裁から、「今朝、短観を発表したが、予想していたものより良かった。比較的高水準を維持した。収益も改善傾向が続き、設備投資も増加している。企業の姿勢は前向きである。家計の方は賃金・所得はいいし、失業率は3.5%に低下したが、消費が弱めの数字である。企業の方はあまり悲観しておらず、好循環が続くだろうとみている。企業規模、業種によって反動減からの回復が遅れていたり、天候により弱い部分があり、それがある程度企業の業績に反映されている状態である。」
続いて官房長官から、「これだけの円安にもかかわらず、輸出が動いていない。企業は先行きに対しての見通しが立っていないためではないのか。」
黒田日銀総裁から、「要因としては、アジアなどの輸出マーケットがもたついていることや、リーマンショック後に自動車産業などが海外移転を進めたことが原因ではないかと思われる。一方で、海外での利益は為替レートが修正されると円建てでの利益が増えるし、輸出についても、その分だけ利益が増える。大企業、製造業の収益状況は日銀短観でも良くなっている。」
官房長官から、「80円前後で円高が続いていたので、それに対応できる体質になっている。しかし、円安になっても設備投資は上がっていないし、日本に企業が戻ってこないという状況はどうしたものか。」
黒田日銀総裁から、「海外に出た企業が戻ってくるということはなかなか難しいと思われる。しかし、設備投資は日銀短観でみるとかなり強い。特に大企業の設備投資意欲は久方ぶりに強い。国内での設備投資を増やすという傾向はあるが、タイムラグの問題がある。」
安倍総理から、「今後国内に生産を戻すなど、これがどれくらいのスパンで起きるのかということをある程度調査することが必要ではないか。」
ここで、最後に総理から御発言がございました。ポイントを御紹介いたします。
「本日は、平成27年度の予算編成に向けて、具体的に議論を開始した。経済再生と財政健全化の両立は、来年度予算のみならず、中長期の観点からも極めて重要な課題である。今後、社会保障支出を含め聖域を設けず議論を進め、歳出抑制にしっかり取り組んでいただきたい。また、この夏、一部に弱い動きがみられた景気動向については、今後どう回復していくのか、将来の見通しはどうか、等について十分に注視していく必要があるので、引き続きしっかり諮問会議で議論していただきたい。」
最後に私から、「経済財政諮問会議では、次回以降、歳出効率化に向けて具体的なテーマについて議論してまいりたい。景気動向については、民間議員からいただいた御意見も参考にして、しっかり分析をし、諮問会議にも報告をしてまいります。」
以上です。
2.質疑応答
<薬価調査について>
(問)来年度予算の主要三分野の重点課題の一つに挙がっている社会保障についての③の薬価の適正化、そのための実態調査とあるのですが、その他の説明資料等で薬価調査の資料がついているのですけれども、これは来年度予算に向けて薬価調査を実施すべきということが主張されたという理解でよろしいのでしょうか。
(答)薬価改定は2年ごとですが、1年ごとにすれば、それなりの適正な価格設定ができると。そうすることによって、国民負担が1,000億円減るという試算があります。ただ、その際に、薬価調査は、事業者の負担で行っており、これが40億円かかるというような話、それから、製薬会社の研究開発の力が落ちるとか、いろいろなことが言われているわけです。それらを勘案して、実態として1,000億円、国民負担が増えているということに対して、それをなくした場合にはどういう齟齬が、問題が生じるのかということ等をしっかり調査をする。それから、大きな医療機関には、後の段階で確定して精算するというような、そういう慣行も含めて、薬価を改善すべきという話と、改善するとこういう問題が生じるということをきちんと精査して、どこからも文句のつけようがないものを策定していくということについて、検討していくということであります。従来の慣行、悪しき慣行も含めて改善していく。そういう中でどういう新しい対応があるのか。ただやみくもに1年にするということではなくて、1年にした場合にはどういう問題があるのか、それはこういうふうに解決できるではないかということを、守るほうと攻めるほうの整合性をきちんとつけていくということであります。
<天候不順の影響>
(問)天候不順の個人消費への影響試算が今回出たわけですが、これについての大臣の感想をお願いします。
(答)内閣府の総力を結集して、算定をさせていただきました。幅がありますが、四半期ベースで、7-9月期でいいますと、0.4%GDPを押し下げると。4倍して年率換算しますと、1.6%押し下げるということです。7-9月期の民間見通しが4%です。これが仮に天候要因を加味したものであるならば、天候要因がなければ5.6%ということになるということでありますし、天候要因を加味していないのであるならば、それは2.4%になるということだと思います。天候要因が経済に与える影響というのは、あまり断定的には言えないのです。消費行動にどういう影響を与えるか。家電はかなりリニアに天候と売上げが直結しているようですけれども、テーマパークへの人の出はあまり天候と関係ないとか、あるいは、自動車はそうリニアに天候要因と売上げが直結をしてないとか、いろいろな要素があります。ですから、なかなか断定的には言えないので、それで幅を持って、このぐらいの影響があるのではないかということを試算させていただきました。
(問)この天候不順の試算ですけれども、数字自体も幅があるということですが、それなりのインパクトがあるというふうにお考えなのか。その上で、これが一時的なのかどうか。月例経済報告では緩やかな回復が続くということですけれども、それについての見方が特に変わってないのかどうか教えて下さい。
(答)意外と天候要因はかなり影響しているなという感じがいたします。民間議員の中から、「自分の業界からしても、実は天候要因というのはこんなものではないと思う。ということは、天候要因が外れると、成長軌道に返ってくる力も、ばねも強くなる。だから、むしろ悲観的になる必要はない。」というような発言もありました。
<諮問会議議員の発言について>
(問)2点あるのですが、一つは、交付税のところを指摘された民間議員がいらっしゃって、その後、高市大臣の回答が、何らか見直すという意思表示だったのかどうかということを教えて下さい。
もう一つは、二つ目の議題で民間議員が、景気は風邪を引いている状態であるから、肺炎にならないように手当てが要るとおっしゃったということですけれども、経済対策を足元の景気に対して打つべきだという考え方だという理解でよいのか教えて下さい。
(答)まず、交付税は危機対応モードから、つまりリーマンの後、急激に事態が悪化しているので、緊急危機対応対策として、たしか1兆円積んだわけです。それが平時モードになって、成長モードになってきたから、それを平時に、つまり段階的に1兆円を削減していくということであります。基本的に、交付税をそういうモードに既にしつつあるのですけれども、それに対して、そういう姿勢、あるいは、交付団体から不交付団体になるときに、頑張っただけのインセンティブが働くような設計が必要ではないかということに対して、高市総務大臣から、「地方の元気創造事業を今年度からやっている」と。新藤総務大臣のときに設計した地方振興策は、そういう要素を取り入れつつあると。だから、本体を大胆にやっていくというところまでおっしゃった発言ではなかったと記憶をしております。
それから、民間議員からの指摘は、体質は強化されているけれども、風邪の状態というのは、要するに、あまりなめてかからない方がよいという意味だと思います。体質強化はしているのだけれども、風邪を引いているから、それが肺炎に移行するようなことがないような目配り・気配りをすべきだということで、それから先に具体的な、だから補正をどうしろというような発言はありませんでした。それに向けて、短期・中長期、政府としてはいろいろな目配りをすべきではないかというところまでの問題提起だと思います。
<為替相場に対する受け止め>
(問)今日の会合の趣旨とは少し変わるのですけれども、経済財政担当大臣として伺いたいのですが、今日、円ドル相場が1ドル110円の大台に乗りまして、急激な為替の変動について気になるところではあるのですが、受け止めをお願いいたします。
(答)為替の水準については、言及すべきではないということをまず前提としてお話します。その上で、かつては過度の円高だったわけで、過度の円高も過度の円安も、それがどこから過度かというのは、「経済実態を反映していない」ということだけにとどめておきますが、経済実態を反映していない過度の円高や過度の円安、あるいは急速過ぎるレートの変動というのは、その国の経済にとってプラスにはならない。これは日本に限ったことではない、どこの国でも言えることだと思います。その上限、下限がどの辺りにあるかということについては、言及しないことといたします。
<燃料コストの上昇と原発再稼働>
(問)とどめておくとおっしゃられたところで恐縮なのですけれども、特に燃料費の化石燃料の輸入等を考えると、燃料コストの上昇というのは気になるところなのですけれども、原発再稼働のお話も含めて教えていただければと思うのですが。
(答)為替が円安に進むと本来、プラスの面とマイナスの面がある。輸入物価は上がる、これは国民生活にとっては歓迎すべきことではない。しかし輸出力がついて収益が稼げる。それが還元されれば賃金なりの改定につながるので、上がった物価をオーバーライドしていける力になっていく。
要は輸出が期待したほど伸びていない。どこに原因があるかというのは、今日の議論でも何人かから出た話であります。その際、民間議員からのお話は、かつての過度な円高の時に生産基盤がかなり海外に行ってしまっている。すでに投資をしているわけですから、円安になってからすぐ戻ってくるというわけにもいかない。国内は、収益確保に今はいっている。それは企業戦術的にそうやっている部分もあるかもしれないけれども、実は、そういう国内に残って、つまり80円台でもやっていけるところを残して、やっていけないところは外に出ているので、そういう国内でそれで勝負できているというところを絞って残しているのだから、いきなり円安になったから輸出をドライブかけてという具合にはなかなか体制がとれていない。そこを今、こういうレートが続くのであるならば、外に向けてももう少し戦術強化をしていこうということで、今、転換を図りつつあるところだから、どうしても企業としては時間がかかるというようなお話がありました。
あわせて80円が110円ですから、何もしないで30円が円ベースでいえばもうかるわけだから、これはもう大変な企業の後押しにはなっているということでありました。
ですから、円安だからすぐ輸出ドライブがかかるという体制に国内の生産体制がなっていない。円高の時点に内外での生産の振り分けができているので、「円安です、はい、輸出ドライブ」という具合にはなかなかいかないのだと。そういうふうに少し輸出を伸ばす体制に国内の生産体制を見直すという期間が今であるというような表現でありました。
(問)それで化石燃料の高騰についてはどう対応を。
(答)国内外の企業、投資家が国内に投資する際の課題はやはり人の手配と税金、法人税と、それからエネルギーコストというのが非常に高い関心事でありますから、当然、安全が確認されたものは、地域の理解をしっかり得つつ再稼働していくということは、日本経済にとっては大いにプラスになることであろうと思います。
(以上)