第9回記者会見要旨:平成26年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成26年5月27日(火曜日)19時21分~19時41分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・S103会見室

1.発言要旨

第9回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしましたので、概要を申し上げます。
まず一つ目の議題として、教育分野の重点化・効率化と教育再生に関し、小林議員から資料1について、そして西川文部科学副大臣から資料2について、それぞれ説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
まず民間議員から、「日本の教育の最大の課題は、質の強化をどうするかである。」
同じく民間議員から、「これまでの日本の教育は、知識偏重であり、本質的な議論ができる人材が育っていない。リベラル・アーツ、見識教育によりグローバル人材を育てる必要がある。」
麻生大臣から、「民間議員資料のとおり、「厳しい財政制約の下、各予算分野の歳出規模について、原則、見合いの財源なくして増やす環境にない」という認識が重要である。」これは、西川文部科学副大臣から、将来にわたって数兆円の更なる教育予算確保が必要だというような発言があったのを受けてであります。「教育の質の向上が必要。下村大臣資料の4ページで指摘があるように、適正規模を下回る学校は1万校あり、適正化を積極的に進める必要がある。」
民間議員から、「下村大臣資料11ページに、教育再生実現に4~5兆円必要となっているが、財源の具体案はあるのか。」
西川副大臣から、「児童・生徒の数が減れば、教員数を自動的に減らせるというものではない。特別支援を必要とする児童生徒が増加するなど、教員の質と量の両方を確保することが必要である。学校の統廃合は、小規模となるデメリットも示しつつ進めていくが、学校が地域の中心にあるといった事情を個々の自治体が判断して行っていく。大学改革については、出口を厳正にしつつ進めていくことが重要である。4~5兆円という額は、OECD並みの教育予算を確保するという観点からの計算である。日本の将来のためには、人づくりしかなく、文部科学省としては、予算を減らす考えはない。」この「OECD並み」という表現は、対GDPに対して、文教の予算が何%あるかという比較の仕方です。
そこで私から、「教員1人当たりの児童・生徒数は、既にOECD並みになっている。対GDP比で予算を見るのは、日本の予算規模自体が対GDP比で他国よりも小さいことがあるのであまり意味がない。むしろ予算における文教のシェアで見るべきである。」
続いて、二つ目の議題として、社会資本整備・国土強靱化の重点化・効率化に関し、高橋議員から資料3について、太田国土交通大臣から資料4について、古屋国土強靱化担当大臣から資料5について、それぞれ説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「官民を合わせた事業量の観点から、安定的・持続的な社会資本整備は重要だが、そのことが予算規模の確保を意味してはいけない。民間資金や民間の知恵の活用が重要である。このところ地域では、公共事業コストの増加が目立つ。民間設備投資をクラウドアウトしないよう、進捗管理に注意すべきである。」
同じく民間議員から、「レジリエンスには、防災・減災の観点以外に、1.地域活性化、2.非常時と平時の両方に有益なこと、3.ハードだけでなく常にソフトを組み合わせること、4.民間の資金・知恵を入れること、などが重要である。社会資本整備でも、国際競争力向上の名の下に、ハブ空港、ハブ港湾の整備を量的に進めるのではなく、運用レベルでの向上などのソフトと組み合わせて競争することが重要である。」
同じく民間議員から、「太田大臣の報告内容には賛同するが、PPP/PFIが報告内容の最後に来ているのは少し違和感がある。社会資本整備を進めていくためには、民間資金の活用しかない。」
麻生大臣から、「老朽化対策を人口減少・高齢化の中でうまく進めていくことが重要である。老朽化した施設をそのまま使用するか、選別していくかを見極めて取り組んでいくことが大切であり、国土交通省でしっかりとした対応をお願いしたい。」つまり、既存の施設をそのまま更新していくのか、あるいは選別して対応していくのかという意味であります。
太田大臣から、「民間資金の活用の重要性は認識している。このところ公共事業が増加して、供給面でボトルネックが生じているという報道もあるが、一部であると思う。今年と来年はしのげるが、東京オリンピックに向けた対応には注意をする必要がある。急増・急減を招かないよう計画的な取組が重要である。」
続いて古屋大臣から、「国土強靱化の基本計画では、民間議員からの指摘のあった、1.地域活性化、2.ハードとソフトの組み合わせ、3.平時に活用する工夫、4.民間資金を活用するなどの点は全て盛り込む予定である。これを実行していくことが重要。」
続いて、三つ目の議題として、地方財政の重点化・効率化と行政のIT化・業務改革に関し、高橋議員から資料6について、新藤総務大臣から資料7について、西村内閣府副大臣から資料8について、それぞれ説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
まず民間議員から、「地方法人関係税については、税収の地域格差が大きいので、法人事業税や法人住民税の所得課税部分については国税化し、適切な交付金措置により偏在是正を行うべきである。外形標準課税を拡充すべきとの提案が新藤大臣からあったが、付加価値割については報酬・給与に応じて課税されるので、アベノミクスによる経済成長の好循環を図るために賃上げをすれば、その分だけ多くの税金を納めないといけなくなってしまい、企業にとってはダブルパンチとなる。政労使の枠組みの継続性を危うくすることにもつながりかねないので、慎重に対応すべきである。」
同じく民間議員から、「行政のICT化で新藤大臣が提案をされた各施策を工程表に落としていただきたい。PPP/PFIの予備的調査に、公的な補助金等を活用することに、新藤大臣は消極的な発言をされたが、PPP/PFIの経験・ノウハウが乏しい現状にあって、モデル事例を創出するためにも、ある程度の支援は必要である。これをいつまでも続けるのはよくないが、立ち上げ段階での支援は重要である。」これは、PPP/PFIを実行していくことにまだ慣れていない自治体に対して、予備調査の予算を国が確保するべきではないかという意見に関して、民間委託をして費用を削減することのために公費が使われるのでは何の意味も無いという新藤大臣からの指摘でありますが、それに対して民間議員が答えたものであります。
麻生大臣から、「地方税収は過去4年間で2兆円程度上振れしているが、これを歳出増に振り向けるのではなく、借金返済に充てるべきである。地方法人関係税については、自治体間の偏在是正を適切に行うことが重要である。」
最後に麻生大臣から、財政制度等審議会における議論の状況について、財政健全化に関する資料9に基づき説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見等を御紹介いたします。
民間議員から、「政府税調に出された資料を見ても、歳出を抑えるだけではPBは改善をしない。成長が大事で、その要は法人税減税である。サムスンやアップルの実質的な税負担率を計算すると20%台だが、日本のメーカーは40%台。サムスンやアップルが日本にいれば1兆円多く法人税を払うことになる。国際競争力の観点からは、イコールフッティングが大事である。」
同じく民間議員から、「収支改善できる時に改善をするという考え方は理解するが、一方で、足元の経済再生を確かなものにすることも重要である。経済体質の改善にも振り向けるよう両立していくべきと考える。」これは上振れをどう使うかという話です。
同じく民間議員から、「近年の財政赤字の累増の原因としては、やはり経済の不調が大きい。経済再生を持続させながら財政再建との両立を図っていくべきである。」これも上振れはしっかりと法人税減税に一定割合は使うべきであるという視点からの発言です。
黒田総裁から、「アベノミクスの成果が現れて実質2%、名目3%成長が実現し、税収が増える前提に立ってもなお、対GDP比2%程度の赤字が2020年には残るというのが現在の見通しである。それを考えると、法人税減税の議論の際には、恒久的な代替財源について、社会保障をはじめとした歳出の見直しや税体系全体の見直しの中で議論を進めていかなければならない。それなしで議論が進むことを懸念している。」
茂木大臣から、「イコールフッティングの議論があったが、各産業界において収益を上げていく努力も欠かせない点である。今の体質のままでは、国際競争に勝てない状況に変わりはない。大胆な業界の再編などを検討していかなければならない。」
なお、麻生大臣の資料につきましては、現時点では非公表の内容を含みますために、本日の段階では非公表の扱いとし、後日、ホームページに公表をいたします。
ここで総理から発言がありました。ポイントを御紹介申し上げます。
「平成27年度予算編成では、歳出の無駄を徹底して省き、政策効果の高い分野にしっかりと重点化をしていくことが重要である。経済再生と財政健全化の両立に向けて、昨年同様、中期財政計画に則り最大限努力をしてほしい。
地域活性化に向けて、地方自治体それぞれの創意工夫や努力がより反映されるよう、行政サービスの提供の在り方、政策手段などを大胆に見直していくことが必要である。諮問会議でしっかりと議論を続け、方向性を出してほしい。
行政のIT化・業務改革は政府を挙げて取り組んでいく。工程表をまとめ、進捗をしっかりと管理していくことが重要である。地方自治体においても、国と歩調を合わせた取組が大事。新藤大臣のイニシアティブのもと、しっかり進めてほしい。」
最後に私から、「本日の議論を、今後の「骨太方針」の策定に活かしてまいりたい。」と発言をしました。

2.質疑応答

(問)法人実効税率の引下げに向けて、今日、新藤総務大臣から外形標準課税の拡大が提案されておりますけど、この大臣の受け止めと今後の考え方、大臣の現時点の考え方を聞かせていただけますでしょうか。
(答)これは党税調でもそういう議論があろうかと思います。一方で、党内には中小企業の負担の上に法人税減税という単純な図式では理解が得られないという議論もあります。また、本来は便益を受けながら、それに対する対価を赤字法人は事実上、十分に払っていないという議論もありますし、また、法人の中には、いわゆる株式会社、有限会社等の法人以外の法人の中にも本来負担すべき部分があるのではないかという議論もあるということであります。そう長い時間はありませんが、党税調でもいろいろその点が議論されると思います。政府税調でも議論があろうかと思います。政府としても、総理の国内外での法人税減税の強い意思をしっかり受けて、それらの議論とかみ合うようにしてまいりたいと思っています。
(問)民間議員ペーパーに、見合う財源なくして歳出を増やせる状況にはないと強調されている一方で、議論の展開もそうだったようですけれども、法人税減税については、基本的にはネット減税をしてほしいと、民間議員が強く主張されているようですけれども、法人税と歳出でどうしてこれだけ考え方が違ってしまうのか、大臣なりの見方を教えてください。
(答)基本は、拡大する政策や新規の政策は、それに見合う財源を手当しないと財政健全化は難しい。そして財政健全化を描いているのは、成長を前提としているわけであります。成長によって上振れが生じてくるものについては、成長をしっかりと支える。成長が失速すると上振れを財政再建に使おうと何に使おうと土台が下がってしまう危険がある。2020年のプライマリーバランスはまだ対GDP比でマイナス1.9%、マイナス11.9兆円でつじつまが合っていませんけれども、そこを合わせるためにも底上げをしていく努力を続けていかなければならない。数字を出しただけで当然に成長が確保されているものとみなして財政健全化を図るのは危険であるという視点からだと思います。

(以上)