第7回記者会見要旨:平成26年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成26年5月15日(木曜日)18時43分~19時11分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・S103会見室

1.発言要旨

第7回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。概要を申し上げます。
一つ目の議題といたしまして、経済再生と財政健全化の両立に関し、伊藤議員から資料1について説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「法人税の実効税率の引下げは、経済再生と財政健全化を両立させる有力な施策であり、地に足の着いた議論が必要。過度に法人税収の上振れ分を先取りするのはよくないが、慎重になるあまり、対応を全くしないというのも問題である。本年3月末決算の上場企業の動向を見ると、更なる法人税収の伸びが確実な状況である。こうした中で、2015年度から法人実効税率の引下げを行うことは、更なる経済成長の切り札になるとともに、対日直接投資拡大のトリガーにもなる。国際競争力の観点から、他国に劣後している制度を改悪することは避けるべき。欠損企業への外形標準課税の拡大等を行うことは問題である。」
同じく民間議員から、「中長期試算のフレームを崩してまで、法人実効税率を引き下げろと主張しているわけではない。3月末決算の上場企業の動向を見ても、1兆円程度の税収増加は確実な情勢であり、こうした体質改善の部分を法人実効税率の引下げに充てるべきである。できるだけ早期かつ具体的な引下げの方向性を示すことで、アベノミクスへの信認を高めてほしい。」
上川総務副大臣から、「法人税改革の方向性は共有するが、国・地方を通じたプライマリーバランスの2020年度の黒字化も国際公約である。地方財政に穴を開けることはできず、代替財源の確保なくして実効税率を引き下げることはできない。引下げに当たっては、地方税において外形標準課税の拡充等を検討すべきである。」
麻生財務大臣から、「成長志向型の法人税改革に取り組んでいく際には、主要先進国と同様に、税率、課税ベースの双方を見直し、薄く広く負担をし、頑張った企業が報われるような仕組みを目指していくべきである。2020年度のプライマリーバランス黒字化を実現するには、現在の試算ではまだ12兆円程度足りない状況である。税収の上振れ分を法人実効税率の引下げに持っていかれると、目標の達成がおぼつかなくなるのではないか。税収の上振れについては、消費税の軽減税率の財源に充ててほしいという声が出ることも予想され、それらにどう対応するか、慎重に考える必要がある。単純に数年で法人税の実効税率を引き下げるという話には応じられない。」
茂木経済産業大臣から、「好循環を本格的、持続的な成長へとつなげていくことが重要である。そのために、成長志向型の法人税改革に取り組むことについては合意できるのではないか。改革の内容としては、グローバル化の中で競争力を高め、内外からの投資を促す効果が出るような、国際的に遜色ないところを目指すべきである。改革の時期としては、各企業は足元の高収益をこの夏から秋頃にかけて投資計画に反映をする。国内投資を促すためには、6月の「骨太方針」の段階で具体的な方針、来年度及びその先の見通しを示す必要がある。それが結果的に税収増にもつながるだろう。」
菅官房長官から、「来年度からの法人税率引下げの方針を明確にすべき。企業が好業績をあげているにも関わらず、国内投資につながっていない。投資の判断を後押しするような中長期の見通しを示すべきである。アベノミクスの成果は間違いなくあがっているので、具体的にその何割を回せるのか、副総理に検討をお願いしたい。」
民間議員から、「増収分で減税の財源にと、やみくもに主張しているのではない。アベノミクスの成果により構造的に増えているならば、それを確認して、全てでなくても三方一両得的に考えて、減税に充てる方向で検討すべきである。」
ここで総理から発言がありました。ポイントを紹介いたします。
「OECD閣僚理事会で、経済再生、財政再建、社会保障改革を同時に達成すると申し上げた。「骨太方針」において、27年度予算案編成に向けて、歳出・歳入両面からの更なる改革の方針を示してほしい。これまでの民間議員の提案や諮問会議での議論も踏まえて、法人税を成長志向型の構造に変革していくための方向性を、年末を待たずに「骨太方針」に示してほしい。」
続いて、二つ目の議題として、本年第2回目の金融政策、物価等に関する集中審議を行い、黒田議員から資料2について、内閣府事務方から資料3について、高橋議員から資料4についてそれぞれ説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「経常収支の数字について、悪化しているのは輸入が急増したことが原因。特に、鉱物燃料が急増していること。顕在化している労働力不足対策、法人税改革、安価で安定したエネルギー供給の確保等が重要である。」
同じく民間議員から、「需要だけでなく、今後は供給サイドの改革が重要である。そのためには、アベノミクスをきちんと実施することを示して、民間の期待を高めることが必要である。」
麻生財務大臣から、「エネルギーが確実にあるかどうかということをはっきり示すことが、日本国内に投資をするかどうかを企業が意思決定する際に重要である。また、国際的な問題も喚起している。」
茂木経済産業大臣から、「電力コストをいかに引き下げていくかは重要な課題である。原発の再稼働に向けて、順次安全審査を行っているところ。ベースロードとなるエネルギーということでは、石炭火力の技術が日本は優れている。LNGについても、アジアにスポットで出るように努力している。アメリカのシェールガスの輸入が増えれば、今後、コスト改善に寄与する。」
続いて私から、「今年の夏も原発再稼働しなくても乗り切れるのではないかというのは、古い火力発電所を稼働させている現状を踏まえると、かなり危うい議論だと認識すべきである。」
最後の議題として、「選択する未来」委員会の中間整理について、同委員会の三村会長から説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「地域の問題が一番難しいとのことだが、なぜか。」
これに対して三村会長から、「働く場所をどうつくるかが第一だが、それをやっても地域の人口減少は避けられない。地域を今のまま残すのかどうかという難しい選択を迫られる。首長にこうした危機感をしっかり持ってもらいたい。」
民間議員から、「国民に共有されるようなしっかりしたビジョン、コンセプトの取りまとめを年末に向けてお願いしたい。」
茂木経済産業大臣から、「報告のメッセージは国民に共有可能なものでないか。人口減少への対応としては、非連続的な制度の変更が必要となる。それくらいやらないと人口減少のトレンドは変えられない。」
私から、「出生率を目標にするというよりも、結婚している人たちの希望する子供の数は2.4人、また、結婚していない人たちの結婚希望率を考えると、そういう人たちの希望が実現すれば、50年後の1億人が達成できる計算になる。どういう考え方をするかについては、今後検討したい。」これについては、2.07という数字が掲げられると、産む、産まないは個人の自由という問題とぶつかります。私が申し上げたのは、結婚している夫婦の希望する子供の人数は2.4、それから独身者の結婚したい願望を実現するということと掛け合わせると、2.07近傍になる。だから、皆の夢を実現するとこの数字になるという表現がよいのではないかと申し上げたわけであります。
最後に私から、「本日公表された1-3月期の実質成長率は、年率換算5.9%となり、また、多くの企業で賃上げが実現している。4-6月期の反動減も乗り越え、デフレ脱却と経済再生の実現を目指す。このため、引き続き「好循環実現のための経済対策」の早期執行に努めていくことが重要である。本日は、総理から、「骨太方針」において、歳出・歳入両面からの更なる改革の方針を示してほしいとの重要な指示をいただいた。関係大臣、与党とも調整をしながら、「骨太方針」の取りまとめに向けて進めてまいりたい。三村会長には、「選択する未来」委員会の中間整理を御報告いただき、感謝申し上げる。「人口急減・超高齢社会」への流れを変え、日本発の成長・発展モデルを構築することは可能だという、この三村レポートのメッセージは、大変に前向き、かつ中長期的な観点からも重要なものである。そうした方向性を、本年の「骨太方針」に盛り込んでいきたい。」

2.質疑応答

(問)官房長官から、来年度からの法人税率引下げ方針を明確にすべきという発言もあって、総理からも、「骨太方針」に方向性を示してほしいという発言があったようですが、来年度から引き下げるということは、これは政府としても事実上方針は固まっているということでよろしいのでしょうか。
(答)今日の時点でその方針が固まったわけではありません。党税調、政府税調、与党税調等とのすり合わせ、打ち合わせもあろうかと思います。最終的には、総理の御決断によるものであろうと思います。
(問)今日の民間議員の法人税に関する提言ですけれども、この位置づけについてお伺いをします。今後、党税調でも議論が本格化していくと思いますけれども、この提言をベースに議論をしてほしいというお考えなのか、お願いいたします。
(答)経済財政諮問会議の民間議員には、出来るだけエッジの効いた提案をしてほしいと発足時から申し上げているわけであります。民間議員としては、民間議員間で一致した、エッジの効いた提言をされているわけであります。これをどこまで我々が受け取ることができるかということだと思います。ぜひ重要な参考とさせていただきたいと思っております。
(問)甘利大臣は、これまで法人税率の引下げに関連して、5年かけて20%に引き下げることがマーケットに対するメッセージになるのではないかという御発言をされていましたけれども、今日はそういった発言はされなかったということならば、その理由等をもう少し教えていただけますか。
(答)私は進行役でございますので、慎重に議論を見守っておりました。私が今まで申し上げてきたことは、今35%強の法人実効税率を、30%を切る水準まで下げるということがメッセージになる。メッセージとしては、その実施を出来るだけ早くした方が良いということと、そして、5年を何年間も超えていくような着地点であるとすると、メッセージ性が弱くなってしまうのではないかと申し上げたわけであります。今日、財務大臣からは慎重な御意見が出ました。それも踏まえて、最終的に総理が判断をされると思います。
(問)法人税減税に関する民間議員の提言について、数年以内に20%台への引下げを目指すべきというのが盛り込まれているのですが、この「数年以内」について、大臣としては何年程度ととられたのでしょうか。
(答)私が従来から申し上げているのは、先ほども申し上げましたけれども、5年を大幅に超えていくようなことだと、メッセージ性に乏しくなるのではないかというところであります。5年に近ければ近いほど良いと思います。
(問)5年よりも短ければ、さらに良いということでしょうか。
(答)それは、出来ればね。
(問)菅官房長官の発言の趣旨をお伺いしたいのですけれども、麻生大臣に対して、何割がやれるか検討していただきたいという趣旨の発言がございましたけれども、これはどういう意味でおっしゃっているのか、教えていただきたいのですが。
(答)官房長官の御発言は、来年度からの引下げの方針を明確にし、着手すべきだとした上で、アベノミクス効果による上振れ分の全部でないにしても、その何割かは減税財源に充てて良いのではないかという発言だと思います。もちろん減税財源はそれ以外にも広く薄くどう確保するか。租特も、重要なものの機能は当然確保しなければなりませんけれども、歴史的使命を果たしたようなものについては見直しをするということも含めて財源を確保する。その際に、上振れ分の何割かは減税財源に充てて良いのではないか、検討してほしいということを官房長官は副総理に対してお願いしたという発言であります。
(問)確認ですけれども、恒久減税の財源としては、政府税調で議論しているような課税対象を拡大していくことと、加えて、税収の上振れ分の何割かを充てるという、両方を充ててはどうかという趣旨の発言であったということですか。
(答)はい。そのように理解しております。
(問)それに対して、甘利大臣御自身も賛成でいらっしゃるのかどうか。
(答)私もそう思います。
(問)法人減税を下げていく期間ですが、5年に近ければ近い方が良いというのは、7年、6年、5年という意味で近い方がいいということでよろしいでしょうか。
(答)そうです。私は、財政健全化の担当大臣でもあります。財政健全化へ向けた税収の確保、それから、それを超える上振れた分はどれくらい出るのか。6月の確定前でもある程度の推測は出来ると思います。それによって、当然、法人税率を引き下げていく期間は決まってくると思います。しかし、それでも5年を超えて8年、9年というプランでは、投資家に対するメッセージ性は弱いのではないかという考えです。
(問)逆に5年より短い期間についての質問に対して、できればというお話ではありましたけれども、その想定もなくはないのですか。
(答)それは、そういう余力、税収力があれば、早くできればできるほど魅力的には当然なります。
(問)先ほどの上振れ分を法人税減税の財源に充てるということについて、経済というのは、毎年いろいろな外的要因もあってなかなか読めない部分もある。税収を減税の財源に充てるということを期待することは、計画としてなかなか想定できない部分でもあるのではないかとも思うのですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
(答)そもそも、財政健全化目標を、中長期試算とともに作っております。2015年度のプライマリーバランス赤字半減、2020年度のプライマリーバランス黒字化を目標にしています。それは税収がどれくらいあるか、法人税収がどれくらいあるかを割り振っているわけですね。そして、その税収がそれだけ確保されるためには、経済成長がこれくらい必要だということも裏打ちとして計算しているわけです。
しかし、経済成長というものは、経済成長への対応がなければ確保できません。税収が減るということは、経済成長が計画したペースで進まないで、むしろマイナス成長になっていくという危険性があります。そうしたら、そもそも税収は割り当てようと割り当てまいと、財政再建できないということになります。ですから、財政再建と経済成長というのは表裏一体の関係になっていると。一定の成長率、2020年度でいうと、名目で3.6%の成長率を確保していかなければならないわけですね。つまり、成長率を確保しなければ財政再建はできないと。これは歳出の削減と歳入の増加と併せてやっているわけであります。その成長を図るために、法人税減税をどう使うかということになるわけであります。
これは3次元方程式で表されると思いますけれども、そういった中では、税収が減ったらどうするか、成長が落ちたらどうするか。成長が落ちたら、みんなプランは練り直さなければならないのです。法人税減税に充てようが充てまいが関係なくです。ですから、その2020年度の財政健全化目標を達成するために、成長しなければならない。成長するためには、その予定していた健全化の計画を上回るものについては、その成長を確保するために使うというのが賢明なやり方だというのが私の思いです。
(問)今週の初めに、伊藤元重教授が法人税率の引下げについて、3年から5年をかけて毎年1%、2%ずつ落とすのが良いのではないかということをおっしゃっていたのですけれども、そういったお話は出ましたか。
(答)今日の説明以外の具体的な数字は出ていません。民間議員の総意としてまとめたペーパーにあるとおり、法人税の実効税率については、将来的には25%を目指しつつ、当面、数年以内に20%台への引下げを目指すべきだということです。

(以上)