第2回記者会見要旨:平成26年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成26年2月20日(木曜日)18時56分~19時18分
  • 場所:内閣府本府仮設庁舎講堂

1.発言要旨

第2回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。概要を申し上げます。
一つ目の議題として、本年第1回目の金融政策、物価等に関する集中審議を行い、黒田日本銀行総裁から資料1について、内閣府事務方から資料2について、高橋議員から資料3について、それぞれ説明がありました。その後、議員の方々からいただいた御意見について紹介いたします。
民間議員から、「米国のテーパリングや中国のシャドーバンキング等により、新興国の景気の先行きに不安が生じており、日本経済の好循環に支障となる恐れがある。こういう時には、喫緊の課題に大胆に取り組むことが必要であり、エネルギー、労働市場の柔軟化、法人税引下げについて、明確なコミットメントを示すべきである。さらに、社会保障制度改革に取り組むとともに、人口問題解消への強いメッセージを発信すべきである。」
続いて、前回の諮問会議で総理から御指示のあった法人実効税率引下げと税収との関係に関しまして、資料4に基づき伊藤議員から説明がありました。その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
麻生副総理から、「中長期試算では、高い成長の下でもプライマリーバランスは黒字化しない。財政健全化の目標との関係をどう整理するのか。民間議員の分析には、米・仏のものがない。これらの国では、法人税率を下げていないが、税収が伸びている。だから、いろいろな要因が働いているのではないか。政府税調でもこれから議論を始めていく。これから日本は何で稼ぐのかという議論が必要である。安価で安定的なエネルギーがなければ民間投資も出てこないと思う。」
民間議員から、「政府税調においても、国際水準と整合的な法人税率引下げに前向きの議論が多かった。法人税収のGDP比が日本で高いとか、様々な要因を総合的に勘案して、道筋を検討すべきである。消費税と法人税を2項対立的に考えるべきではない。納税者はどちらも企業であり、消費税は付加価値に、法人税は利益に課税をされる。誤解がないように説明する必要がある。」
民間議員から、「日本は何で食べていくかが問題。外国企業と比べて日本企業は利益率が低い。民間では、この点について問題意識はあるが、アクションには至っていない。」
民間議員から、「アベノミクスで構造が変わった。それによって増えた税収を還元して法人税率を下げてはどうか。財政健全化との両立を考えなければならないが、あまり単年度で考えるべきではなく、もっとダイナミックに考えるべきである。」
民間議員から、「中長期的な財政健全化目標を達成するためには、今後とも歳出に切り込んでいくことが必要であり、同時に経済体質改善に向けた取組を行っていくことが不可欠である。麻生副総理から米・仏の事例が示されていないという御指摘があったが、この2カ国の事例も含めて、経済と税収の関係、景気と税収の関係について、更に分析して御報告したい。」
黒田日本銀行総裁から、「2020年のプライマリーバランス黒字化目標については、物価上昇率や実質経済成長率の目標を実現しても、まだ達成の見通しは立たない状況である。今後ともアベノミクスによる大胆な成長戦略の実行が必要であるが、こうした見通しが立っていない中で法人税の実効税率の引下げを実現するためには、社会保障制度の改革と税制全体の抜本的な見直しについて考えていかなければいけない。」
菅官房長官から、「世界で最も企業活動しやすい国を目指して取り組んでいるが、対日投資はいまだ十分に進んでいない。ビザの要件緩和もあって、1月の訪日観光客数が過去最高になったが、このように工夫次第で大きな改善が図られると思われるので、対日投資の件についても、民間議員にはよく検討してもらいたい。」
続いて、二つ目の議題として、長期投資の促進に関し、小林議員から資料5について説明がありました。
本件につきましては、時間の関係上、本日議論は行わず、諮問会議と産業競争力会議が合同で行う戦略的課題の中で再度取り上げ、その際に議論することといたしましたが、民間議員から一言だけ発言がございましたので、紹介いたします。
「インフラ・ファイナンス市場の実現が重要だが、実際にはタマがない。愛知県の道路公社でPFI/PPPのコンセッション事業を準備しているが、構造改革特区法の改正が必要であり、今国会で是非改正をしていただきたい。」
私から、「民間議員から指摘のあったコンセッションの実施の件は、半年遅れるだけでも影響は大きい。こうした投資案件は一日も早く実現するよう、特区担当大臣におかれては対応をお願いしたい。また、種類株について、どうして我が国で十分な利用がなされていないのか、経済産業省で検討して報告してもらいたい。」
最後に、私の方から、配付資料の「経済財政諮問会議の今後の課題」について、今後、このペーパーに基づいて議論を進めていく旨申し上げました。
続いて、総理から御発言がありました。ポイントを紹介いたします。
「いよいよ春闘も始まったところであり、賃上げに向けた労使の御努力に期待したい。今後、その成果について、諮問会議でしっかり確認をしてまいりたい。法人実効税率に関して、民間議員から、法人税率と税収の関係について、早速御報告をいただき、また、長期資金の必要性、投資家の育成、そして市場機能の拡充など幅広く提言をいただき感謝を申し上げる。長期にわたって活力ある日本経済を実現すべく、2020年までに解決すべき課題について取り組んでいく必要がある。産業競争力会議と連携しつつ、議論を進めてほしい。」
以上を踏まえ私から、「春闘の状況については、4月には経済界、労働界の代表をお招きして、御報告いただきたいと考えている。民間議員から提案のあった、景気動向と法人税収の関係についての分析については、検討の上、速やかに諮問会議で報告をお願いしたい。諮問会議の今後の課題については、配付資料の取りまとめのとおり議論を進めることとし、諮問会議と産業競争力会議が合同で行う戦略的課題についても、順次検討を進めてまいりたい。対日直接投資の促進については、お手元の配付資料のとおり、前回の諮問会議での総理からの御指示を踏まえ、佐々木議員にも御参画いただき、私の下に「対日直接投資に関する有識者懇談会」を設置する。来週27日に第1回会合を開催し、今春に取りまとめを行い、その結果を諮問会議に報告してまいりたい。」
以上です。

2.質疑応答

(問)今日、海外の事例が紹介されましたけれども、日本でもこのように税収が増える形で法人税を引き下げていくよう今後検討していくということでよろしいかどうか。あとは日本でも、法人税を引き下げながら税収は増やすことは可能とお考えかどうか教えていただけますでしょうか。
(答)外国事例が幾つか報告されました。実効税率を引き下げても税収は増えた例について報告がありました。また、副総理からは、実効税率を引き下げずとも税収が上がったというアメリカとフランスの例もあるではないかということで、様々な要因を引き続き分析していきたいというふうに思っております。
また民間議員からは、ある基準年を設定して、そこから上振れた法人税収、つまりアベノミクスの成果については、その分の一定割合を翌年の法人税の引下げに向けるという提案もありました。政府税調、それから党税調とも今後連携をとりながら、経済成長と財政再建という二つの課題を同時に解決するということでアベノミクスは進んでいるわけであります。その方向に資するような法人実効税率の取扱いがあればということで議論を深めていきたいと思っています。
(問)前回の経済財政諮問会議のときには、安倍総理から、法人税率の引下げが、経済をどう活性化させて、それが税収のプラスにどうつながるのか分析できればという御発言がありました。それで、今日の民間議員の方がされた報告というのは、この因果関係を十分に説明した内容になっているというふうにお考えでしょうか。
あと、財政健全化との兼ね合いですけれども、プライマリーバランスの目標の達成に向けて法人税率の引下げがどういうふうに影響していくのかということはなかなか見えづらいところがあると思うのですけれども、そういったことを今後、例えば内閣府で中長期試算などもやっていらっしゃいますが、そうしたところでシミュレーションをしていかれるようなお考えというのはおありでしょうか。
(答)総理の御指摘は、財務省の実効税率引下げの前提条件に対して、それ以外の可能性も検証してほしいという提案だったと思います。財務省の実効税率引下げの前提条件というのは、単年度の、ある種レベニューニュートラルみたいな、引き下げる分だけどこか法人税に関するところで財源を探してくるということでありました。それに関して、実効税率を引き下げるのに必要な原資を全て租特見直し等の課税ベースの拡大で充当するという方法以外でも充当されているのではないかということも含めて、外国事例も検証してほしいという御指示でありました。民間議員の調査結果では、成長要因が大きくあります。成長することによって法人税関連での財源探し以外の要素があるという調査結果でもありました。ただし、財務大臣からは、その成長要因について、法人実効税率を引き下げたから成長に起因して税収が増えたのか、引き下げなくても税収が増えたという、法人税と関係なく、単なる景気要因ということもあるのではないかという問題提起もされています。さらに、種々の提言を踏まえて調査を深めていきたいというのが結論だと理解しております。
(問)今日昼にJAの萬歳会長の訪問を受けていらっしゃいましたが、このお話について開示できるものがあれば教えていただけますか。
(答)萬歳会長からは、私が明日からシンガポールに行くことを踏まえて、衆参農林水産委員会の決議、それから自民党公約をしっかり踏まえて、それを実現する交渉を行ってきてほしいという要請でありました。私からは、今まで同様、シンガポールの閣僚会議に臨むに当たっては、当然、衆参の決議と公約をしっかり重く受け止めて、国益に資する交渉をタフにやってまいりますということをお答えいたしました。
(問)2点あるのですが、一つは、法人税減税をすることによって経済成長をして、それが法人税収を増やしたということについては本日の資料には示されていないという理解でいいのでしょうか。 もう一つは、社会保障と税の一体改革との関係で、今回、経済成長した部分は法人税減税に使っていいのだと民間議員が提言しており、ある意味、上げ潮っぽい議論のようにも聞こえるのですけれども、その一体改革のそもそもの始まりは、こういう考え方を否定するところから始まっている気がするのですが、そういう上げ潮のような、成長した部分を原資にして法人税減税をしていいのだというような考え方と整合的であるのか、それとも、ある意味、政策転換を図ろうとしているのか教えていただきたいと思います。
(答)法人税減税と経済成長の関わり、経済成長をすれば法人税収は上がるということは間違いないわけであります。法人税減税をすることによって、それが経済成長につながるかというのは、いろいろな例があります。実効税率を引き下げるということは、投資環境にとってプラスに働きますから、それは対内投資を呼び込む材料の一つにはなると思います。ただ、デフレ下で実効税率を引き下げても効かないという例があります。経済成長下では引き下げて、更に投資が進むという例はあるのだと思います。この辺りは、成長すれば税収が上がるというのは間違いない話ですけれども、減税すれば成長するというのは、まだいろいろな要素があると思いまして、これは精査をしているところであります。
それから、民間議員から提案がありました、ある基準年の法人税収を捉えて、そこから税収が伸びて、そこは次の年も確保して、それから上に伸びていく分については、アベノミクスの成果ということで実効税率の引き下げに向かわせて、更に成長を加速させていくということも一案ではないかという提案であります。
社会保障と税の一体改革というのは、消費税率を引き上げることによって社会保障を安定させていく。基本的に直接社会保障とつながっている税は消費税であります。ですから、全部社会保障に充てる。社会保障が安定してくると、消費にいい影響を与えるのではないか。将来にわたって社会保障の確実性、持続性が増していくとなると、安心して手持ちのお金などを消費に使える。それは、景気にまた資することになり、景気がよくなってくると、消費税収は更に上がってくるという関係なのだと思います。
法人税については、社会保障と税の一体改革とダイレクトに結びついていくことではありませんが、要するに、法人税の実効税率の引下げというのは、それを通じて更に経済成長に資することにならないかというアプローチで議論をしております。ですから、いずれにしても、社会保障の安定を支える要因に両方ともなっているのだと思います。

(以上)