第20回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年10月1日(火曜日)18時45分~19時10分
  • 場所:官邸記者会見室

1.発言要旨

本日、産業競争力会議における「成長戦略の当面の実行方針」に関する議論、また、経済財政諮問会議における「経済状況等の総合的な勘案に向けた意見」の取りまとめの後に、これらを踏まえて与党との調整を経た上で、先刻の閣議におきまして消費税率及び地方消費税率の引上げと、それに伴う対応として「経済政策パッケージ」が閣議決定をされました。先ほど総理からも記者会見におきまして御説明がありましたが、私からもポイントを説明させていただきます。
今回の消費税率引上げの判断に当たりましては、税制抜本改革法附則第18条の規定に基づきまして、経済状況等を総合的に勘案するため、諮問会議で取りまとめた意見に記されているとおり経済状況、財政状況、社会保障制度改革をめぐる状況等について検討を行いました。その結果は、閣議決定の記載のとおりであります。
我が国経済は、デフレ状況ではなくなりつつありますが、デフレ脱却はまだ道半ばであります。こうした中で、消費税率の引上げによる反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図り、持続的な経済成長につなげていくために、「経済政策パッケージ」に掲げた施策にしっかりと取り組んでまいります。
まず、成長力の底上げのために、「日本再興戦略」に掲げられた達成目標を実現していくため、「成長戦略の当面の実行方針」に基づき、成長戦略の実行の加速と強化を図ってまいります。具体的には、国家戦略特区・企業実証特例制度・適法性確認制度の創設、更には、全国単位の規制改革を併せた3層構造で構造改革を加速化いたします。
また、民間投資の活性化をするために、投資減税措置等を講じてまいります。このために、国家戦略特区関連法案、そして産業競争力強化法案をはじめとする成長戦略に関連をする一連の法案を臨時国会に提出いたします。
政労使の連携による経済の好循環実現につきましては、9月20日に立ち上げました「政労使会議」におきまして、政労使三者が好循環実現のための課題とそれぞれの取り組むべき対応について共通認識の醸成を図ってまいります。
併せて、所得拡大促進税制を拡充するとともに、足元の経済成長を賃金上昇につなげるということを前提に、復興特別法人税の1年前倒しでの廃止について検討することとし、その検討に当たっては、税収の動向などを見極めて、復興特別法人税に代わる復興財源を確保すること、国民の理解、なかんずく、被災地の方々の十分な理解を得ること、及び復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげていく方策と見通しを確認すること等を踏まえた上で、12月中に結論を得ます。政権の最重要課題であるデフレ脱却と経済再生に必要な取組を実施するという基本的考え方に立って、やる方向で結論を得ていくということであります。
また、新たな経済対策を12月上旬に策定をいたします。来年度4-6月期に見込まれる反動減、4月に消費税を引き上げると駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る5兆円規模といたします。今後具体化をしてまいります。
これらの取組によりまして、デフレ脱却と経済再生に向けた道筋を確かなものとしてまいります。
なお、消費税率の引上げに際し、政府といたしましては、転嫁対策等に万全を期してまいりますが、今般初めての取組として、政府共通の相談窓口を設けることといたしました。明日10月2日から業務を開始することといたしました。お手元にプレスリリースで配布をしておりますので、御参照いだきたいと思います。詳細につきましては、内閣府消費税価格転嫁等相談対応準備室にお問い合わせをください。
私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)終盤、財務省や党税調とかなり激しいやりとりをされているように見えましたけれども、大臣がやるべきとお考えだったことは、全て今回盛り込めたという御認識か、百点満点でいうと何点ぐらいの経済政策パッケージだというお考えか聞かせていただけますでしょうか。
(答)基本的に、政府として考えていたものは、与党の御理解をいただいて、ほぼ全て盛り込めたのではないかと思っております。点数をつけるというのは難しいのですが、100点に近いものになったのではないかと思っております。
(問)復興特別法人税の廃止の1年前倒しについて、確実に賃金上昇につなげていく方策を確認することということなのですけれども、今、大臣が具体策として何か考えていらっしゃることがあればお願いいたします。もちろん、政労使での会議の結果ということもあると思うのですが、それ以外に何かあればお聞かせください。
(答)まず一番大きなのは政労使の会議であります。この会議には形容詞がついておりまして、「経済の好循環実現に向けた政労使会議」ということであります。何のためにやるかということは、参加者全てが御理解をいただいていると思います。
その中で、好循環を実現していくためには、それぞれが果たす役割があります。政府としては、経済環境を良くしていくということであります。そして、良くなった経済環境を好循環に向けていくための背中を押していくということであります。経済対策を各種講じまして、経済の底上げをしてまいります。そして、企業が収益を上げられるような環境整備をしていく。その上で、政府はこれこれこういうことをいたします。その上で、企業は果たせる使命を果たしていただきたいというふうに呼びかけるわけであります。具体的には、正直言ってこういう国ですから、強制はできません。しかしながら、背中を押すことはできますし、実際にそういう行動をとったか、とらないかということの検証もできるわけであります。経済産業省等を通じて、我々の要請に応えていただいたかどうかの経緯については、適切な方法で把握し、適切な方法で公表できるのではないかと思っております。
(問)国家戦略特区の検討の中で、解雇のルールをめぐって規制緩和に積極的な声がある一方で、厚生労働省をはじめ、ルール導入に反対する声もあります。今後この法案に関連しまして、どういった対応をとられるのでしょうか。
(答)変なタイトルをつけられてしまうと、そのイメージがずっとつきまとってしまうのですが、どこかの新聞に、「解雇特区」みたいな話が載りましたが、そういうことではありません。
例えば、これから東京オリンピックに向けていろいろなプロジェクトが立ち上がると思います。オリンピックまでは7年ありますから、このプロジェクトに向けて大きなプランを作っていこうとする際に、そのプロジェクトが終わると、その経営資源は必要なくなるわけであります。一定の期間、例えば7年とか8年、こういうプランに向けて、優秀な人材を募りたい。ただし、その間の給与は通常の2倍出すよというようなことがあります。しかしながら、今の労働法制では、なかなか5年を超えて、6年、あと1年、7年、8年、もちろん御本人が、それでいいと言った場合には、いろいろ手だてがあるようなことも承知いたしておりますけれども、企業側も、こういうプランとして安心して優秀な人材を募れるという雇用環境には大変日本は使い勝手が悪いし、応募する方も、そういう機会を持ちにくいということもあります。ですから、雇用環境の悪化ではなくて雇用環境の改善とか、あるいは、より良いプロジェクトの推進のために、ある種の柔軟性というのは持ってもいいのではないか、それが特区における雇用についての柔軟性、そうしたことも政労使の場で、これは強制ではありません。日本の経済の再生にとって何が必要かという基本認識を共有してもらいたいというふうに思っております。
(問)過去の消費増税の時との違いについてお伺いしたいのですが、97年の時は金融不安やアジア通貨危機が重なって、翌年からデフレ状態に入ってしまったと思うのですが、今回は対策によって景気の腰折れを避けられる経済情勢にあるとお考えでしょうか。
(答)総理が消費税率引上げ判断に極めて慎重になられたのは、別にしたくないということではないのです。成功裏に引上げをしたいというふうに思っておられたからです。ですから、過去の歴史を検証して、それから今の日本のバックグラウンドと照らし合わせて必要十分な、つまり対策が不十分な場合失敗することがあっても、対策が十分過ぎて失敗することはないはずであります。そこで、十二分な対策を準備して、法律どおり実行して腰折れがないのか、それとも、いかなる対策をしても3%、2%という設定では無理なのか、その辺りのところを、専門家を集めてしっかり議論をしたいということであったと思っております。
日本の現在の状況下で忘れられがちなのは、今経済状況がかなり良くなってきていますから、実は、デフレの中で実行していくということを忘れがちなのです。過去の実施は、これほど長期にわたるデフレ下での消費税率引上げという環境ではなかったと思います。このバックグラウンドをしっかり見つめながら、かつてドイツやイギリスが消費税率を引き上げた時に行った対策と今回の我々とは基本的にバックグラウンドが違うという認識を持って、それをしっかり乗り越えていって、円滑に法律どおりにやっていくために何が必要か、そこにしっかりとした対応を総理は考えたかったということではないかと思います。
(問)2点お聞きします。1点目は、法人税の実効税率の引下げについては、先ほど総理も会見の中でおっしゃっていましたけれども、閣議決定の内容などには今回盛り込まれてはいないわけです。この点については、与党の大綱には盛り込まれているわけですけれども、なぜ入らなかったのか、その辺りのお考えをお聞かせいただければと思います。
2点目は、少し細かな話で恐縮ですが、諮問会議の参考資料の中で、消費税を引き上げた場合のイメージなどのところで、社会保障の充実で0.5兆円と盛り込まれていたのですけれども、これは消費税を引き上げた場合の使い道、社会保障の充実には、5,000億円程度を来年度充てるという理解でよろしいですか。
(答)まず、実効税率の話は税制大綱の方に盛り込まれ、復興増税の前倒し廃止が閣議決定の文書に盛り込まれたということ、この意味合いということでありますが、具体的に今取りかかっていく政策と、これから先に向けて、政府はこういうことを目指していくのだという、内外に向けたメッセージを書き分けたと御理解いただきたいと思います。
総理は、この日本がビジネスにとって最も立地しやすい環境を整えるというメッセージを内外に出しておられます。それが海外からの対内直投を増やしていく目標にもつながっていくでありましょうし、国内の企業が外に出るのをやめて、国内に投資をしていこうという判断につながっていくとも思っております。
そして、復興増税の前倒し廃止につきましては、復興財源を予算的に確保するということが、まず第一にあるわけです。そして、その前提のもとに好循環を回していくということであります。好循環を回していくということは何を意味するかというと、例えば、被災地を支えていくのも、これから相当長いスパンで見ていかなければなりません。総額が25兆円で足りるのかという議論もあります。長期にわたって支えていくためには、強い経済が必要なのであります。強い経済なくして長期は支えていくことができません。1年、2年はどんな方法でも支えることができても、長期にわたる安心感を持っていくためには、強い経済を取り戻していくことであります。併せて、この強い経済は、財政再建を予定どおり実現していく、あるいは社会保障の持続性ともリンクをしています。それらが海外に対する日本の財政の信頼性、すなわち日本国債の信頼性にもつながっていくということになるわけであります。そういうふうに、それぞれの発信するメッセージの意味合いが若干違ってくるということで書き分けたというふうに御理解いただきたいと思います。
それから、もう1点の5,000億円については、初年度というのはフルに税収が入ってきません。例えば、住宅は昨日までに契約すると5%のままでいいということになる等々で、満額は入ってきません。5兆何千億円だと思います。そして、基礎年金の国庫負担割合について3分の1から2分の1への恒久的引上げ等に充てる金額などを除いていくなどしますと、初年度は5,000億円程度になる、という形で算定されていると承知しています。
(問)経済対策の規模について、「新たな経済対策の策定」というところで5兆円規模と書いてありますが、政策パッケージとして、今回示された全体を含めると、大体どのくらいの規模になりますか。
(答)5兆円規模というのは補正予算に向けた金額であります。予算措置でありますから、例えば、簡素な給付措置は3,000億円ぐらい。それから、住宅の10万円から30万円のローン減税で賄い切れない部分についての給付措置で3,100億円。それから被災者の住宅再建にかかる給付措置で500億円という数字が出ております。それに、大きなところでは、復興増税の1年前倒し部分の予算措置があります。これは最終的にはまだ額が確定をしません。それを確定した時点で予算措置としてやるわけであります。それから、いろいろな競争力強化措置、中小企業へ向けた投資補助金、オリンピックに向けた対応、あるいは高齢者・女性・若者向けの施策、復興・防災・安全対策等々の予算措置で、合わせて5兆円。それ以外に、税の措置がございます。これはまだ精査をしている最中かと思いますが、これは1兆円を超えそうだと承知しております。
(問)5兆円規模の経済対策について「反動減を大きく上回る」と書かれているのですが、そもそもなぜ5兆円規模なのか。それと、5兆円の財源は目途が立っているのか、教えてください。
もう1点が、今おっしゃったように、減税1兆円も含めると総額6兆円という規模で、中期財政計画が決めた来年度、再来年度の4兆円のPB(プライマリーバランス)の削減という目標と整合性をとれるのか、それが実現できるのか、ということを教えてください。
(答)反動減と言われているものは、民間がはじいている金額が1.8兆円から2兆円くらいの規模であります。要は、何をするかといいますと、反動減を埋め戻すだけではなくて、消費税なかりせば伸びていったであろう上昇直線に成長力を復帰させるということが必要であります。これが経済力の底上げであります。埋めただけでは、その埋めただけの状態がずっと横に続いていって成長になっていかない危険性がある。ですから、反動減の規模だけではなくて、成長直線に復帰させていく底上げとして十分なものということであります。5兆円で十分か、4兆5,000億円で十分か、5兆5,000億円か、それはいろいろ議論があるところでありますけれども、申し上げましたように、足りない場合は失敗するけれども、十二分にやって失敗はないという観点から、財務大臣が当初の事務方の考えを覆して十分な金額を考えたものと承知いたしております。
それから、PBに関しては、基本的に、税収の上振れ、あるいは、それを含めた決算剰余金、あるいは予算の不用部分等々、そうしたものを足し上げて、それくらいになるのではないかということを見越した5兆円という数字だというふうに思っております。

(以上)