第11回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年5月16日(木曜日)18時42分~19時14分
  • 場所:合同庁舎4号館2階220会議室

1.発言要旨

第11回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。概要を御報告申し上げます。
本日は、議題の一つ目として「社会保障の効率化について」ということで、臨時議員として、田村厚生労働大臣をお呼びしまして御議論をいただきました。
伊藤議員から、有識者議員提出資料を御説明いただきました。その後、田村臨時議員から資料を御説明いただきまして、次に私から、「社会保障制度改革国民会議における検討状況について」御報告をいたしました。その後、出席議員の方々から御意見をいただきました。
主な意見を御紹介申し上げます。
民間議員から、「財政の健全化、経済状況、企業の国際競争力をいかに損なわないかを考えて社会保障改革を進めることが必要である。」そして、「社会保障について必要な共通保障機能は国が負担しつつも、それ以外は個人が負担する等ハイブリッドな機能を提案したい。その上で社会保障のような義務的経費についても抜本的に見直すべきである。そのためには、米国のpay as you go原則やトリガールールを導入する仕組みを検討すべきである。また、米国のCBO(議会予算局)のスコアリングやスコアキーピングを我が国のPDCAに組み込むべきである。」「後期高齢者医療の負担への総報酬割の導入については、浮く国庫負担金を協会けんぽへの支援にまわし、単なる付け替えとすることのないようにして欲しい。」
同じく民間議員から、「社会保障改革を進めるためには、国民の意識を変えることが重要。国民の間に誤解もあると思うので、政府広報をしっかりお願いしたい。」
麻生副総理から、「社会保障の重点化・効率化は待ったなしの課題である。医療の提供体制については、病院をグループ化していかないといけない。国保の都道府県化は、まずは知事に覚悟をしてもらわないといけない。地域によってニーズが異なるので、医療介護情報のデータベース化が重要である。70歳ぐらいになると、健康な人とそうでない人で全然異なってしまう。個人の健康維持の努力や予防の努力にインセンティブを与えることが重要である。」
続いて民間議員から、「社会保障改革については、給付の重点化をすることが必要だが、国民に必要性をしっかり説明することが必要である。効率化は当然のことだが世界に誇れる最先端の医療国家を目指して欲しい。」
続いて経済産業大臣から、「当たり前のことを当たり前にやることが重要である。日本は平均入院日数が長い。また日本ではジェネリック医薬品やITが十分活用されていない。長野県と福岡県でなぜ1人当たりの医療費が違うのか。日本だけ特殊なこと、医療だけ特殊なこと、ある地域だけ特殊なことはないはず。」
続いて日銀総裁から、「安定した社会保障と財政は、持続的成長の基礎である。持続可能な社会保障制度を作って欲しい。」
続いて官房長官から、「医療費の効率化のインセンティブを与えることが重要である。効率化したところは大胆なインセンティブを与えるべきだ。医療のIT化をしっかり進めて欲しい。」
ここで総理から、「小泉時代の反省を踏まえて、国民と思いを共有していきたい」、これは社会保障費の伸びを5年間平均で毎年2,200億円ずつ抑制するということだけが独り歩きしてしまって、どうも改革への思いをしっかり国民と共有できなかったということをおっしゃっているのだと思います。「より良い健康で長生きができる、その結果として医療費が安くなる。そして財政が良くなるというのが望ましい。IT化を進めることで医療水準は落ちないで健康で長生きできるという、いわばウィン・ウィンの形を作っていきたい」、つまり、IT化を進めることによって効率的になり、無駄が省け、結果として医療水準を落とさないで財政にも貢献し、そして健康で長生きできるというウィン・ウィン関係の形ができるのではないかというお話です。「医療介護情報をITで統合的に利活用する仕組みについては、インセンティブなど工夫をすることが必要だが、具体的に前進させる方向で検討していただきたい。」
続いて、今日の議題の二つ目として、「国・地方の在り方、地方財政等について」御議論をいただきました。
まず、高橋議員から有識者議員提出資料を御説明いただきました。次に、新藤大臣から資料を御説明いただきました。その後、出席議員の方々から御意見をいただきました。
主なものを御紹介申し上げます。
民間議員から、「頑張る地方を支援するスキームを新藤大臣より示していただき、感謝を申し上げる。資料5-2の1ページ目で紹介された有識者会議については、地方の視点を反映すべく省庁横断的に検討を進めて欲しい。」
麻生副総理から、「地方自治体に経営感覚が必要だ。市長、助役によって大きな違いが出ている。リーマン・ショック後の危機対応として行った措置を平時に戻していくことが必要。国については既に本年度予算で危機対応の予備費をばっさりと切った。本年度予算が成立したが、地方にお金が回り出し、地方も平時に戻せるよう期待している。」
続いて民間議員から、「総務大臣の資料にある地方法人課税の見直しについては、税源の偏在の是正に資するので、産業競争力の改善に資する方向で検討いただきたい。」
最後に総理からの発言です。「我が国の国民皆保険制度は、保険証1枚で誰でもどこでもしっかりとした水準の医療サービスを受けることができるなど、世界に冠たる仕組みである。他方で、社会保障給付は、名目成長率を上回って伸びている。世界で類を見ない少子高齢化の中で、国民皆保険制度を将来にわたり堅持し、国民の安心を支える社会保障制度や財政の持続可能性を維持していかなければならない。本日、民間議員から、第一に、国民意識や生活様式を変え、健康長寿社会、生涯現役社会、頑張るものが報われる社会としていくこと、第二に、保険者機能を強化するとともに、医療介護情報をITで統合的に利活用し、都道府県単位で医療の取組を進める福岡県の先進事例を横展開することが極めて重要であるとの提案をいただいた。田村大臣、甘利大臣には、社会保障制度改革国民会議の議論も踏まえ、これら民間議員からの提案に積極的に対応し、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の構築に向けて必要な検討を進めてほしい。特に医療介護情報をITで統合的に利活用する仕組みについては、具体的に前進させる方向で検討いただきたい。
日本経済の再生は、地域経済の再生なくして実現できない。民間議員から、第一に、地域の知恵と努力を活かせるよう、頑張る地方自治体が報われる仕組みを作ること、第二に、少子高齢化に伴い、地域の経済・社会構造が大きく変化する中、必要な公共サービスの効率的な提供を行うことが重要であるとの提案をいただいた。新藤大臣には、麻生大臣をはじめ関係大臣と連携をして、こうした点を踏まえ、地方行財政制度を見直して欲しい。また、財政健全化への取組については、財政状況が厳しい中、国・地方が歩調を合わせてしっかりと進めて欲しい。」
最後に、私から、「経済財政諮問会議と社会保障制度改革国民会議を担当する大臣として、社会保障制度改革国民会議と連携しつつ、本日の議論を『骨太の方針』の策定に活かしていきたい。医療介護情報のIT化は、成長戦略としても今後重要になる。田村大臣と連携して、私としても尽力をしたい。今朝公表された1-3月期GDP速報では、実質成長率は前期比年率3.5%と、2四半期連続のプラスとなった。個人消費の増加を中心に安倍内閣の経済政策の効果が現れているものと考えている。引き続き『三本の矢』によりデフレから早期に脱却し、雇用と所得の増加を伴う経済成長を実現してまいりたい。」
以上であります。

2.質疑応答

(問)日本国債の信用を保っていくために、社会保障費の大幅な削減は避けられないと思うのですけれども、今日、医療情報のIT化というお話が出ましたが、もう少し具体的に、どうやってこの社会保障費を削減していくかというお考えを聞かせていただけますでしょうか。
(答)まずは、レセプトの完全電子化ということであろうと思います。これが達成されますと、どこに無駄や重複があるかというのが非常に分かりやすくなります。そして、福岡の事例がありました。ここは介護情報、医療情報を電子化でつないでいっているわけであります。それぞれどういう病気から介護状態に入っていくか等々の流れは分かると思いますし、それが、今、厚生労働大臣が取り組んでいる糖尿病をはじめとする成人病の予防を通じて、このようなアプローチから医療費を削減するというトライにもつながっていくのではないかと思っております。頭から無理やり予算を強引に削っていくというやり方よりも、医療の質を落とさず、あるいは医療に接する国民の利便性を落とさず、結果として医療費が削減されていくという道につながっていくということで非常に大事な提言だと思っております。
(問)1点、地方財政の関係でお話を伺えればと思っております。本日、伊藤議員ほか4人の議員の方が、平時モードへの切り替えということをおっしゃっておられると思います。これは歳出特別枠と、地方財政計画の収入の別枠加算のことを恐らく意味しているのではないかと思われます。これは「骨太の方針」、あるいは今後の中期財政計画といったものを見据えて、歳出特別枠と別枠加算というものを削減していくという方向で今後諮問会議として議論していくことになるのかどうか、担当大臣のお考えを伺えればと思います。よろしくお願いします。
(答)リーマン・ショックのときに、危機対応モードで国も地方も対応いたしました。平時に戻っていく中で、その危機対応モードから平時モードに予算の各般の分野で平時に戻していく、危機対応モードのままということになりますと、この歳出増に歯止めがかかりません。ただし、税収自身が全くリーマン・ショック前に戻る状況でないまま即刻手が引かれるということになりますと、これは大変な衝撃になると思いますから、地方税収が回復しつつあるのを見ながら、それでもそれを残してしまうということがないようにしていくということになるのだと思います。
(問)地方税収ということで、アベノミクスの効果もあって、恐らく本日のQEもそうですが、13年度民間シンクタンク予想を見てもかなり高い成長率、恐らく2%あるいは3%行くのではないかと見られている状況だと思います。そのような状況から税収弾性値で考えていけば、当然、地方税収も来年増えてくる。その後の、いわゆる消費増税分の地方の取り分も入ってくると思います。そういった中で、今大臣おっしゃられたような、この14年度以降というのは、この地方税収というのがリーマン・ショック前の水準に戻ってくるというような条件が満たされることになるのかどうか、そこについて伺えればと思います。
(答)経済、景気は生き物でありますから、単純な予測はできません。GDP統計で予測をしていって堅調な経済になっていくということは期待をしますし、その中で大事なことは、まだ経済を、景気を支える大事な要素の中で回復していないところをどうエンカレッジしていくかだと思います。具体的には、設備投資の背中を押していくかということになります。それらを通じて企業の所得が上がれば、国の税収も、地方法人関係の税収も上がってくる。企業の従業員の所得が上がれば当然税収も上がってくるわけであります。
要は、何が言いたいかといいますと、危機対応モードから平時モードに移していく際には、自治体を支える税収が平時に戻りつつあるのをしっかり目配りしながら危機対応のツールはフェードアウトしていくという姿が大事だ。これでいただいたままということであっては国・地方のプライマリーバランスは改善をしていかないと。その辺は国と地方としっかり息を合わせて協力していきたいというふうに思っております。
(問)社会保障分野のことでお尋ねします。国民健康保険の再編のところの議論で、念のため確認させていただきたいのですが、麻生副総理の発言の紹介のところで、都道府県化は、まず知事に覚悟をしてもらわないといけないということで、「地域」ではなく「知事」でよろしいでしょうか。
(答)知事です。
(問)この話は、医療保険制度改革の中で結構大きな話になるかと思うのですが、今日これ以外にこの辺について何かもう少し議論もあったのかどうかということと、あと今後、「骨太の方針」をまとめていく中で、この話は社会保障制度改革国民会議でもかなり議論されていますし、厚生労働省でも、審議会でも議論がある程度されていますけれども、これは「骨太の方針」にこういった方向性を政権として打ち出していくことになるかどうかということの見通しを併せてお伺いしたいのですが。
(答)社会保障制度改革国民会議では、検討する4項目について順次議論をしております。その議論の骨子を座長に取りまとめていただいております。私は両方を担当する大臣でありますから、社会保障制度改革国民会議でコンセンサスを得ているものについて極力、「骨太の方針」に取り入れていくという役割を担っているわけであります。もちろん整合性をとって取り入れていきますから、そこは総理をはじめ関係大臣と良くすり合わせをしながら、取り入れるものは極力取り入れていきたいというふうに思っております。
(問)あともう1点ですが、財政運営の中で社会保障の話、最初の方の質問にもありましたけれども、極めて大事だと思うのですが、総理の発言の中で、かつて小泉政権の時、社会保障費の自然増を5年間で1.1兆円抑制するというフレームを打ち出してやってこられて、最終的にはそれを5年間はやらなかったわけですけれども、こういった手法について総理は、国民とともに共有できなかったことについては反省の弁を今日おっしゃられたわけですが、それに代わるような、こうした社会保障費の膨張を抑えるような仕組みについて何か大臣のイメージがありましたらお伺いしたいのですが。
(答)総理の今日のお話は、要するに、メリハリをつけずに一律カットしていくということは、いろいろなハレーションというか副作用が起きる。そうではなくて、メリハリをつける合理的なやり方があり、例えば、それは健康長寿、あるいは病気になる前に予防できるような仕組み等々、そのような社会にしていく。あるいは成人病に関して、生活習慣から成人病に入っていき、それが医療の世界に入っていってしまうということを元から断っていく。あるいは冒頭申し上げましたが、医療データの電子化、IT化を通じて、より効果的・効率的な医療体制を構築していく等々、その結果として医療費が削減をされていく手法をしっかり活用してほしいという指示が今日あったものと理解をしております。
(問)総理の御発言で、2,200億円というような額ありきの話は良くないのではないかとおっしゃられていたと思います。今後の「骨太の方針」なり中期財政計画の進め方として、社会保障の具体的な金額に対してキャップをはめるようなことはしないという御趣旨なのか、その確認をさせていただければと思います。確かに最初から数字ありきというのは、それにあわせて真空切りみたいな話になってくると思うのですが、一方で、どうしても切らなければいけない目標を達成するための大事な一つの手法でもあると思います。その辺について大臣のお考えを伺えればと思います。
(答)誤解があるといけないのですけれども、総理の発言は、小泉時代の反省を踏まえて、国民と思いを共有していきたいということです。これは、まず名目成長率を超えて社会保障費が伸びていくということは、ごく短期的には可能かもしれないけれども、中長期的には、その持続性はない。このような状況で、何のために今我々はこれをやっているのかということ、要するに国民皆保険制度、フリーアクセス、これを維持するためにやるのですよ、という思いの共有がないと、いきなり自分たちが謳歌している皆保険制度、フリーアクセスを政府が減じているのかというような反発を受けてしまう。そうではなくて、国民と一緒に取り組んでいく。これはいつでも安心して医療にかかれる体制を維持していくために必要だ、ということをまず共有していきたいということだと思います。加えて、メリハリをつけずにやみくもに上から強引にカットしていくということは、多分、国民との共有が得られないという思いではないかと思います。
このやるべきことというのは、レセプト情報のIT化をはじめ、福岡が取り組んでいるというのは介護の情報と医療の情報の統合活用というのですか、その成功事例を横展開をしていく等を通じて、相当無駄な分や、より効率的な対応が可能な部分が浮き出てきて、その結果、医療費が安くなるという道をしっかり徹底的に探るようにという御指示だと思っております。病気になって、それを治療するという体制はもちろん大事なのですけれども、より健康で長生きできるという社会に意識改革も含めて進めていく。意識改革というのは、国民が日頃から成人病予防に気をつけるような食生活をするとか、社会生活を送る、あるいは健診も進んで受けて、といったことです。重篤になり、高い医療費を払うことになる前に、早期に自分の体調不良を発見すると、そういう意識を社会全体で持つ等、いわば社会運動として自ら健康であることに気をつけるとか、自ら進んで健康診断を受けて事態の悪化を招かないように気をつけるとかですね、そういうことを皆で共有する。結果として健康長寿、生涯現役。生涯現役ということは、財政的にもそれを支える体制がより強固になるということでありますから、全体として社会運動として進めていこう、それを国民の皆さんと共有したいということだと思います。
(問)前回がインフラ、今回が地方財政、社会保障と、効率化すべき大きなタマが出揃いましたけれども、これから6月半ばの骨太の取りまとめに向けてどういう形で進めていくか、教えてください。
(答)成長戦略をサミット前に取りまとめるわけであります。成長戦略についても次第にフォーカスが絞られてきます。そのような中で、個別項目にぴったりフォーカスを合わせるというよりも、メリハリをつけるようなコンセプトというのをまず出していく。それから中期財政計画、来年度予算編成の時期が迫ってきますから、その時には更にフォーカスを絞った、つまり予算編成に反映できるようなところまで絞り込んでいく必要があろうかと思います。そうした過程をしっかりとっていきたいと思います。

(以上)