第10回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年5月7日(火曜日)19時06分~19時25分
  • 場所:合同庁舎4号館2階220会議室

1.発言要旨

第10回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしましたので、概要を御報告申し上げます。
本日は、議題の一つ目といたしまして、本年第2回目の「金融政策、物価等に関する集中審議」を行いました。この集中審議に黒田議員・日本銀行総裁が御出席をされるのは初めてでした。
まず、黒田議員から提出資料の御説明をいただきました。続いて、内閣府事務方から「経済再生に向けた政策の進捗状況」について説明をさせました。その後、自由討議の中で、冒頭に伊藤議員から、有識者議員提出資料を御説明いただいた後に、議員の方々から御意見等をいただきました。
主な御意見を紹介します。
まず、麻生副総理から、「日本銀行が展望レポートの見通し期間を1年延長して2015年度までとしたことは、2%の物価安定目標に向けた道筋について一定の説明責任を果たすものとして高く評価をする。物価上昇と同時に賃金が伸びることが重要である。内閣府の資料2の5ページ目を見ると、諸外国では、リーマンショックの後も名目賃金が2%程度伸びており、物価上昇率よりも高い。そして、日本のみ名目賃金が減少している背景は何なのか。企業のビジネスモデルであるのか、雇用を守ろうとする労働組合の行動なのか、政労使それぞれが見直しをしていくことが必要ではないか。」
次に民間議員から、「金融緩和に伴うリスクの芽を摘むという観点からは、企業向け貸出しのうち不動産投機につながるものが増えていないか、注意をする必要がある。」
同じく民間議員から、「円安の進行が国内よりも海外の資金、実需よりも投機によるものであると、不安定化した場合には成長戦略にも影響を与える可能性もある。物価上昇と実体経済の改善が良いスパイラルで着実に進み、安定的な環境のもとで成長戦略や財政健全化が進んでいくことが望ましい。」
同じく民間議員から、「企業の六重苦のうちCO2の問題、経済連携の問題、円高是正の問題については道筋が見えてきた。コモディティ系の産業でも4月から温かくなり、8月頃からかなり良くなると思う。副総理がおっしゃった賃金引上げについては、経済界においても明らかに賃金を上げていこうという流れになってきている。こうした中で、財政再建の具体的なプランを構築するチャンスが来ている。逃げないで明確に示すべき良いチャンスであると思う。」
続いて議題の二つ目として、「社会資本整備、ナショナル・レジリエンスについて」について、臨時議員として太田国土交通大臣、古屋国土強靱化担当大臣をお呼びし、御議論いただきました。
まず高橋議員から、有識者議員提出資料を御説明いただきました。その後、太田臨時議員から資料を御説明いただきました。次に、古屋臨時議員から資料を御説明いただきました。その後に議員の方々から御意見をいただきました。
主な意見を御紹介申し上げます。
民間議員から、「どこかを明確に指定をして、首都がやられたときに、行政が移れるようにすべきである」、古屋大臣からの説明についてですが、「BCPはBusiness Continuity Planであるが、行政などではACP(Administrative Continuity Plan)ではないか。」
民間議員から、「アベノミクスを前提とする社会資本のグランドデザインでは、回復の10年で豊かさを実感できるようシナジーのあるところに集中をすべきだ。例えば、首都高の老朽化対策の場合は、容積率の割増しを、道路周辺だけではなくて任意の場所でできるようにして欲しい。社会資本整備は、民間需要誘発のために確実なゴールを設定すべきである。例えば、空港なら確実に整備をするなど。」
麻生副総理から、「国土交通大臣の提案した、首都高を地下に埋めること」、これは蓋をして地上を利用するという意味ですが、「これはいいアイデアだ。これによって民間が得る利益を老朽化対策に充てて欲しい。」
古屋大臣から、「これまでの都市機能の分散は単なる公共投資の誘致であった。ナショナル・レジリエンスは、まさに国家のリスクマネジメントであり、全く異なる。しっかり優先順位をつけて行う。」
太田大臣から、「民間議員の指摘を踏まえ、しっかり検討いたします。」
最後に、総理から以下の発言がございました。
まず、金融集中審議に関して、「本日、黒田総裁には、2%の物価安定目標実現への道筋を示していただいた。この実現に向け、引き続き尽力して欲しい。日銀が示した2%の物価上昇率への道筋は、まさにマクロ経済環境のレジーム・チェンジである。このチェンジが所得や雇用の増加を伴う経済成長に着実につながるよう、各府省とも奮闘努力してもらいたい。うまく国民生活の向上につながる好循環が拡大しているか、諮問会議で点検をして欲しい。」
そして、社会資本整備に関して、「太田大臣には、限られた予算の中で、真に必要な公共サービスをいかに効率的・効果的に供給していくか、また、地域自らが公共事業とソフト施策をパッケージ化する地域戦略の仕組み作りについて検討していただきたい。また、甘利大臣を中心に、関係大臣と連携して、民間資金を活用したインフラの維持・更新などを推進するため、PPP/PFIの抜本改革についてのアクション・プランを早急に取りまとめていただきたい。特に、PPPを活用した高速道路の大規模改修方策は、都市と高速道路の一体再生に向けた起爆剤である。太田大臣には、具体的な検討を進めていただきたい。古屋大臣には、国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)について、ハード・ソフトの連携、重点化・優先順位付けを行うという考え方のもとに、当面必要な対応を検討していただきたい。」
これを踏まえ、私からは以下の発言をしました。
「政府・日本銀行の共同声明に基づき、今後も、諮問会議の集中審議における『検証』を通じて『2%』に向けた歩みを確実なものとしたい。その際、総理からの御指示どおり、国民生活の向上につながる好循環が拡大しているか、点検をしてまいりたい。本日の総理からの御指示に沿って、PPP/PFIの抜本改革についてのアクション・プランを早急に取りまとめてまいりたいので、関係大臣の協力をよろしくお願いしたい。太田大臣、古屋大臣には、社会資本整備、ナショナル・レジリエンスの在り方や具体的な方策について検討をいただきたい。骨太方針の策定に活かしていきたいと考える。」
以上であります。

2.質疑応答

(問)財政赤字が非常に大きい中、今日議論があったような社会インフラの整備に民間資金やノウハウを活用することの重要性について、改めて大臣のお考えを聞かせていただきたいのと、こういった考え方はかなり前からあったようですけれども、なぜ、それがあまり広まっていなかったか、それらについて聞かせていただけますでしょうか。
(答)インフラは公共が整備、維持するものというのは常識的な考え方でありました。しかし、財政事情が逼迫していく中で、高度成長期に大量整備したインフラの耐用更新時期が一斉に来るわけであります。財政事情も厳しいが、この更新・維持管理を放置するわけにはいかないというわけであります。そこで、海外で活用されているPPP/PFIを活用した方策を拡大していく。従来も確かに御指摘のようにありました。ありましたけれども、これは言ってみれば、税金の繰延支払いのようなもので、民間資金で整備をして、後で返していくという程度の話でありまして、本当の意味でPPP/PFIと言えるのだろうかという問題提起はありました。そこで、従来のPFI/PPPがステージ1であるならば、ステージ2はコンセッション方式と言われているわけであります。運営権を民間に譲渡することを通じて、より効率的な運営を図っていく。それで得た利益を活用していくということでありますが、ステージ3に行きますと、周辺の公的な土地あるいは空中権の利用を民間に譲渡することを通じて、施設自身の維持・更新の費用も捻出していくという考え方。ステージ4は、公共空間を民間に提示をして、民間アイデアで更に民間資金の投入を自由闊達にしていくということになります。ステージ1の単なる延べ払いから、ステージ2、3、4に行くに従って民間資金の活用範囲は拡大していくわけであります。これを契機に、従来のステージ1にとどまっていたPPP/PFIをステージ2、3、あるいは場合によって4と拡大することによって民間の1,500兆円に及ぶ資金の活用範囲を拡大していく。併せて、公共インフラの更新に確実性を持たせるとともに、財政再建にも資するということにつながっていくであろうということで、民間議員からの思い切った提案を検討することとしたわけであります。
(問)本日は、金融政策に関する集中審議の第2回目ということで、それに関連して質問なのですけれども、幾つか民間議員の方から金融政策に関して御発言があったようですけれども、それに対して黒田総裁からは何か発言があったのかどうか。前回の第1回の時は、民間議員の方からいろいろ質問があって、それに対して白川前総裁がお答えになった場面もあったのですけれども、本日はそういう場面があったのかどうかというのが1点。あと甘利大臣が御覧になって、今日の議論というのは、前回の白川前総裁がいらっしゃった時の集中審議の議論と比べて、雰囲気的に何か違うところを特に感じられたことがあればお願いいたします。
(答)議員からの発言は、先ほど御紹介したとおり、麻生副総理からの発言と、それから民間議員からの幾つかの発言が主なものです。それらに対する黒田議員の発言はありません。
日銀が物価安定目標に向けて確固たる決意をして、それを諮問会議で一定期間ごとに検証していくということの第1回目が行われた。これにつきましては、政府側、そして民間議員側もかなり満足をするものであったと思っております。
従来からの違いについては、白川総裁時代、新政権ができて日が浅い頃でありますから、白川総裁自身も従来の日銀の考え方を、ある程度御自身が踏み込んだ捉え方で御説明をされておられたと思いますが、黒田総裁になって、まさに次元の違うということを誰もが感じられる、マーケット自身が受け止められる、分かりやすく大胆な政策転換になったと。それを受けて政府側も、常に注文をつけるというよりも、出された意思表示を見守っていく、検証していくというスタンスに若干変わったかなと思っております。
(問)今日の経済財政諮問会議の内容とは直接関係はないのですけれども、成長戦略に関しての限定正社員について、今までの正社員の労働条件の引下げにつながるのではないかとか、解雇しやすい正社員を作り出すことにつながるのではないかといった懸念の声が上がっているのですけれども、大臣はどのようにお考えですか。
(答)民間議員からいろいろな提案があります。それは、要するに、正社員と非正規の二分化されている。しかしながら、時間を限って、職種を限って、場所を限って働きたいという要望もありまして、そのような働き方に対して、社会保障をより充実していこうという提案だと思っております。ですから、これは被用者に対してはマイナスというよりもプラスの方向ではないかと理解しております。

(以上)