第8回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年4月18日(木曜日)10時39分~10時59分
  • 場所:合同庁舎4号館2階220会議室

1.発言要旨

第8回の経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。
概要を御報告申し上げます。
本日は、「持続的成長を実現する市場経済システムの構築に向けて」というテーマでございまして、アライアンス・フォーラム財団代表理事の原丈人さん、アメリカを中心に世界中で御活躍でありますけれども、その原さんをお招きしまして議論をいただいたところであります。
まず、原さんから資料1を御説明いただきました。そして、その後、議員の方々から御意見をいただいた次第であります。
原さんと議員からいただいた主なやりとり、御意見を御紹介申し上げます。
まず、原さんが自分としてやりたいことは2つだと、1点目は世界の人類にとって絶対必要でありながらアメリカであっても実現できないこと、それは中長期の投資により、革新的技術を実用化し、新しい産業を創出できるようにすること。つまりアメリカの投資が極めてスパンの短い、足の短いものにどんどんなりつつあるという御指摘でありました。基幹的ベンチャーの育成には5年間くらいの忍耐強い投資が必要だけれども、最近では2年以内に結果を求めるような投資になりつつあるという御指摘でありました。
2点目として、アメリカ型の規制緩和が各国固有の伝統、歴史を壊すことのないようにプラットホームを作ることである。短期のために進められてきた規制緩和がむしろ長期投資の規制につながっていることを認識すべきである。アメリカ型の株主資本主義でも、中国型の国家資本主義でもない新しいルールを我が国が主導して作り、途上国への民間企業の進出を促進できる制度を作ることが肝要ではないか。
これに対して、民間議員からは、「日本だけが制度を変えると海外の人が日本に投資しなくなるのではないか、この点についてどう考えるか。」
それから、「日本では中長期的観点から研究開発などに投資していることが短期のROEが低いことの言い訳にされているのではないか。」
これに対して、原さんからの答えは、「世界の中で中長期の投資資金は2割しかないけれども、その行き場がない。つまり世界の投資資金は8割が極めて忍耐力のない資金であるが、それでも2割くらいは足の長い中長期の投資資金である。それは2割しかないといっても、世界の2割というのは大変大きな額になるという意味であります。中長期の投資が集まる環境を作れば、その2割の資金は日本にやってくる。そして、しっかりと中長期の投資をしたことが株価に反映されないのはおかしいと考えている経営者は確かにいる。新しい制度を作るべきである。つまり短期のリターンこそ、株主利益への反映、経営者が目指すべきものと考えている経営者は確かに多いけれども、しかし、中長期の投資でこれからを担っていくような新たな基幹産業ができていく。そのことを支持する新しい制度が必要ではないか」というお話であります。
更に、民間議員からの意見でありますが、「サブプライム・バブルのように金融資本主義の行き過ぎが見られたのは確かであるが、アメリカに比し、日本は公益を重視した経営を現在でも行っているのではないか。税制、会計基準などによる中長期投資の促進といった御提案を検討する際には、それが新たな非関税障壁と受け取られないような配慮をする必要があるのではないか。」
むしろ、「法律で縛るということだけではなくて、企業の自主的な取組を促すことも必要ではないかと、今後、議論していくべきではないか。」という御意見。
原さんからの回答でありますが、「持続的成長を目指し日本で作り上げたものは世界でも受け入れられるのではないだろうか。そうすれば非関税障壁とはならない。日本の法制が広まり日本の契約書がそのまま世界で使えるようになれば、中小企業などにもメリットも大きい。」
続いて私の方から、お手元の資料2に基づいて、目指すべき市場経済システムに関する専門調査会、これを諮問会議のもとに新たに設置することを発案し、了解をいただきました。
最後に、総理からの発言でありますが、これはカメラが入っている前でお話をされました。いつも総理は御自身の言葉で発言されていますが、今日の発言は非常に素晴らしいものだったと思います。これは是非動画を見ていただいて、全て総理の言葉を確認されるのが一番いいかと思います。
ここに書いてあることは、その多分2割ぐらいしか表現していないと思います。安倍内閣というのは、何か市場原理主義のような捉え方をされるけれども、その安倍内閣だからこそ原さんをお呼びしたのである。原さんは公益資本主義と呼ばれていますけれども、会社は株主だけのものではないと、ステークホルダー全員のものであるという主張をアメリカで展開をされて、アメリカで成功されているわけであります。「瑞穂の国の資本主義」とよく総理はおっしゃっていますけれども、自由な競争と開かれた経済を重視しつつ、道義を重んずると、真の豊かさを知る、そういう市場経済を目指したいということを考えている。そういう理念、哲学は、日本から発信すべきではないか。今日、専門調査会を設置する決定を行ったけれども、早急に陣容を固めて、日本が世界に誇れるような目指すべき市場経済の姿を議論してほしい。ルール作り等について、サミットやG20などの場で発信をしていきたいというお話でありました。
以上が今日の主な発言であります。
なお、本日議決をされました専門調査会につきましては、今週中にもメンバーを確定し、月内には第1回目の会合を開催できるように準備をしまして、あらまほしき市場経済の姿というのをそこでしっかりと議論していきたいと思っております。
以上です。

2.質疑応答

(問)今日、原さんのお話をお聞きになって、今後これは骨太の方針や成長戦略にも入ってくるのでしょうか。少し具体的にどういうふうな形で盛り込んでいかれるか、ちょっとお考えを聞かせていただけますでしょうか。
(答)週明けにもメンバーを発表できるようにしたいと思いますし、月内には1回目の会合を開きたいと思っております。精力的に議論をいたしまして、まとまった部分については、骨太方針の中で採用できるものがあれば、そこはもちろん組み込んでいきたいというふうに思っております。
(問)今の専門調査会の話なのですけれども、メンバーの方というのは、諮問会議の今のメンバーの方とは違う方をお選びになるというお考えなのでしょうか。どういうふうなイメージなのか、もしお考えがあればお聞かせください。
(答)一部重複してくるかとも思います。余り大人数でなくて、1人の時間がしっかりとれるぐらいのメンバー数にしたいと思っております。もちろん原さんのお話ですから、原さんに入っていただくのは当然であります。
(問)今回の新しい資本市場のあり方については過去の規制改革、小泉構造改革以降、格差の問題といった市場経済、市場資本主義の負の側面が強調されたと思いますが、今回この辺についても、そういったことがないように、新しい形のスタイルを、日本型でもっていくということなのか。それについて、かつて経産大臣をやられたこともあります大臣のお考えをお願いします。
(答)総理は、たびたび国会答弁で、日本人というのは、昔から日の出とともに起きて、田を耕し、皆で協力して取り組んできた。つまり自助の精神であり、互助の精神が豊富であった。病に倒れる人がいれば、その人の分まで皆でカバーして助け合ってきた。そして、秋になれば五穀豊穣を神に感謝をするという、そういう経済であるとされています。
つまり、総理のおっしゃりたいのは、a winner takes allではなくて、a winner takes most、勝者はもちろん一番多く取る権利があるのだけれども、根こそぎ持っていってしまう経済ではない。そして企業は、もちろん株主は重要な関係者、ステークホルダーでありますけれども、従業員、そして協力会社、顧客、地域社会、それぞれがあって初めて成り立っている存在であるということです。
そういう哲学、ルールが資本市場と整合性をとれるように、きちんと資本主義経済が健全な形で発展していくように、その中にあっても、ゼロサム・ゲームでない、ウィン・ウィンのゲーム、TPPもゼロサムではない、ウィン・ウィン、全員がプラスになるゲームであるということをおっしゃっていますけれども、資本主義市場経済の中にあっても、そういうゼロサムでない資本主義の道というのを総理御自身が求めたいというお考えだと思います。
(問)TPPなのですけれども、APECのインドネシア会合に先立って、甘利大臣が現地で最終調整をするという報道が一部でありましたけれども、その御意向がおありかということと、あとは先ほど総理と官房長官とTPPについてお話し合いをされたということを伺っておりますが、どのようなことをお話しされたかということをお聞かせください。
(答)国会の承諾がいただければという前提条件つきであります。仮にそうなった場合には、今夜半にも現地に飛びたいと思っております。
貿易大臣会合は、茂木経産大臣がもちろん出席をいたします。その事前に、残っている各国の了解がとれればということで、この意見交換、交渉をしていきたいと考えております。
(問)今の関係で、まだ国会の承諾つきではありますけれども、どういった方々と実際にお会いになって、お話をされる御予定でしょうか。
(答)アメリカ、カナダ、ニュージーランドはじめ、0泊3日とかいう強行スケジュールではありますけれども、できるだけ時間の許す限りバイ会談を通じて、意見交換をしていきたいと思っております。
(問)基本的には、承諾を得られていない4カ国の方々とお会いになるということでよろしいですか。
(答)今、各国との交渉状況がどこまでいっているかというのは、機微なお話でありますので、ここで発表はいたしませんが、かなり理解は進んできております。一刻も早く参加することが日本だけではなくて、TPP全体の利益につながるということの理解を求めていきたいと思っております。
(問)諮問会議の話ですけれども、原さんはいろいろなステークホルダーを守ることが大事だとおっしゃっていて、従業員のこともおっしゃっていると思うのですが、今日は具体的に例えば従業員の雇用だとか、あるいは解雇についてのお話というのは、言及がございましたでしょうか。
(答)そういう具体的なことはありません。例としては、アメリカン航空の再生の話を出されただけです。これは莫大な負債を負っているアメリカン航空が再建するときに、客室乗務員の理解を得て、給与を大幅にカットしたと。それで、再建したら、その利益の大部分を経営陣が持っていってしまったと、これは日本では絶対理解されないはずだと。しかし、アメリカでは、おかしいと言うと、おまえはコミュニストかという反論さえあったというようなお話がありました。

(以上)