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第4節 まとめ

本章では、消費税率引上げが我が国の景気に及ぼしている影響と持続的な景気回復に向けた条件、大胆な金融政策の効果と将来の「出口」をめぐる論点、経済成長と財政健全化の両立に向けた論点を取り上げた。要点をまとめると次のようになる。

景気は消費税率引上げ後も回復基調を維持

2014年4月の消費税率の引上げに伴い、我が国の景気は、1-3月に個人消費を中心に大きく押し上げられた後、4-6月には反動減によって押し下げられた。前回1997年4月の消費税率引上げ時と比べると、税率の引き上げ幅が大きかったことなどから、駆け込み需要による個人消費への押上げ効果は大きかった可能性が高い。このため、反動減による個人消費への下押し効果も大きいものとなる可能性がある。しかし、以下で述べるように、景気の緩やかな回復基調は維持されているとみられる。内需については、企業収益の改善を背景として設備投資が増加しているほか、経済対策の効果も発現している。個人消費を支える雇用・所得環境については、消費税率引上げなどによって家計の負担が増加していることには留意が必要だが、賃金引上げの効果が出始めており、雇用者報酬は着実に改善していくと期待される。一方、外需については、先進国経済を中心に世界経済が緩やかに回復するなかで輸出の伸びが高まっていくと期待されるが、新興国経済の減速などが輸出を抑制するリスクに引き続き留意が必要である。

大胆な金融政策の効果は徐々に発現

日本銀行による「量的・質的金融緩和」の導入から1年余りが経過した。この間、マネタリーベースは大幅な増加を続ける中で、家計・企業においても資金調達・運用の動きが活発化しており、マネーストックも増加している。予想物価上昇率は、これまでの物価上昇の動きを受けて、短期の見通しを中心に上昇した。また、長期金利は、日本銀行による国債買入れが続くタイトな需給環境の下で、低位で安定している。銀行のポートフォリオ・リバランスは、前回の「量的緩和政策」の実施時と比べてみると、着実に進みつつある。資金需要側に着目してみると、貸出先の規模・業種の広がりがみられるほか、企業におけるこれまでの手厚い現金保有スタンスに変化の兆しがうかがわれつつある。以上のように、大胆な金融政策の効果は、様々な主体・分野で徐々に発現しており、今後もそうした動きが続き、デフレ脱却の動きを確かなものとしてくことが期待される。

この間、アメリカでは、量的緩和政策の縮小が始まっているが、「出口」が意識される局面で、金利のボラティリティが増し、長期金利は上昇した。緩和的な金融環境を生み出すためのフォワード・ガイダンスについても、表現の仕方について、なお試行錯誤が続いている。我が国の金融政策については、物価安定目標の達成に向けてなお距離があることを踏まえると、デフレ脱却に向けた強力な取組が引き続き求められている。また、そうした姿勢が今後とも市場に的確に浸透していくことが重要である。「出口」についてはまだ先のことではあるが、アメリカの経験を踏まえると、「出口」へ向かう際には一層慎重なコミュニケーション戦略が求められる。また「出口」に関して予断を持たず、様々な可能性を念頭に置いた上で、必要な対応をバランスよく行っていくことも求められる。すなわち、金利上昇に備えるとともに、緩和的な金融環境の下で、資産バブルやマネタイゼーションの観測を生まないよう、プルーデンス政策や財政健全化に取り組んでいくことが重要である。

経済再生と財政健全化の両立が重要

我が国では、基礎的財政収支の赤字が続き債務残高が累増している。経済再生と財政健全化の好循環の実現のため、デフレから早期に脱却するとともに、成長戦略を着実に実施し成長力を引き上げていかなければならない。財政を持続可能なものとするための取組が必要となっており、金利が成長率を上回る傾向がみられることから、基礎的財政赤字を着実に縮減し、黒字化を実現していく必要がある。その際、成長を下支えする財政健全化策として、税による資源配分の歪みの是正や労働供給の拡大等に資する財政健全化を実施していくことが考えられる。

財政健全化のためには、歳入・歳出両面にわたる改革が必要である。歳入面については、社会保障・税一体改革の一環として、消費税率が2014年4月に5%から8%に引き上げられ、2015年10月には10%への引上げが予定されている。これによる社会保障財源の確保を進めることは財政健全化にも資するが、目標である2020年度までの国・地方の基礎的財政収支黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げのためには、更なる収支改善努力が必要である。なお、法人税に関しては、成長志向に重点を置いた法人税改革に着手することが決定された。我が国の法人税収の水準については、デフレ状況にあったことや、金融危機の顕在化、内外の経済ショック等による企業所得の伸び悩みにより低迷してきたところであり、デフレからの脱却と潜在成長率を高める成長戦略は、税収の回復を図る観点からも重要である。

歳出面については、とりわけ増加圧力が強い医療・介護費の効率化が急務である。医療費については、調剤医療費、入院医療費の伸びが顕著である。調剤医療費の増加は、薬剤への需要増加及び処方される薬剤の単価上昇によるところが大きいことから、医療保険財政への影響を踏まえれば、費用対効果評価を保険償還価格へ反映させることや費用対効果評価が一定水準を下回る医薬品については保険適用を行わないこと等が考えられる。入院医療費適正化のためには、病床数のコントロールと病床の機能分化・連携が重要であり、医療機能毎の病床数を政策的に誘導していく必要がある。地域の医療需要を考慮した地域医療計画の策定・体制再編、在宅医療・介護支援を進める地域包括ケアの推進等の医療・介護提供体制の見直しを進める必要がある。

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