第3章 豊かさを支える成長力

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需要面の拡大は供給面での対応があって初めて可能になる。家計にせよ、企業にせよ、支出のためには所得が必要である。その際、一時的な所得の改善にとどまらず、将来にわたって持続的な所得増が展望できることが、消費意欲、投資意欲を高め、需要の拡大を図るための条件になる。我が国のように人口が減少する経済では、将来の所得増は、適材適所のための人材配置、新製品の開発、海外での市場の開拓といった広い意味でのイノベーション、それを通じた生産性上昇なしには考えられない。
こうした問題意識から、本章では、次の3つの論点について検討する。第一が、質の高い雇用と生産性の向上の関係である。生産性の向上は「人減らし」ととられやすい。そうした批判を乗り越えて、広い意味での生産性向上を通じて一人当たり賃金を高める方途について考える。第二は、「環境」対策を逆手にとった生産性の向上と雇用の創出である。環境対策は将来のため、生活のために必要なことだが、当然ながらコストを伴う。環境規制と成長の関係を考える。第三は、新たな国際分業を前提とした競争力の在り方である。新興国の台頭などから我が国の比較優位も大きく変化しつつある。アジアの内需の取り込み、企業活動に相応しい国内ビジネス環境の整備などを考える。

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