付注2-2 設備投資と不確実性について

1. 概要

 企業の設備投資行動が、不確実性に影響されるのかを、東証、大証、名証の一部・二部上場企業のパネルデータにより分析を行った。

2. データ

(財)日本経済研究所・日本政策投資銀行「企業財務データバンク」、日経NEEDS、内閣府「国民経済計算」、「民間企業資本ストック」、経済企画庁「国富調査」、財務省「法人企業統計年報」、日本銀行「企業物価指数」、日本不動産研究所「市街地価格指数」により作成。

3. 推計方法

推計方法

推計方法

j企業のt期の実質設備投資:j企業のt期の実質設備投資   j企業のt期末の実質資本ストック:j企業のt期末の実質資本ストック

j企業のt期のトービンのq:j企業のt期のトービンのq  j企業のt期の実質キャッシュフロー:j企業のt期の実質キャッシュフロー

j企業のt期の不確実性:j企業のt期の不確実性  企業ダミー(固定効果):企業ダミー(固定効果)

撹乱項 :撹乱項

4. 推計結果

(1)推計期間・対象企業数

 1996~2005年度、1,041社

(2)上記推計モデルによりパネル分析を行い、推計方法としてはFixed effectモデルを採用。

(3)結果

1,041社 グローバル型企業
263社
国内型企業
274社
係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差
q 0.005 0.001*** 0.006 0.002*** 0.006 0.001***
キャッシュフロー 0.037 0.007*** 0.036 0.014** 0.052 0.017***
不確実性 -0.067 0.028** -0.102 0.046** -0.028 0.057
定数項 0.069 0.003*** 0.082 0.005*** 0.063 0.006***
R2 0.036 0.039 0.049

(備考)1.

標準誤差は不均一分散を考慮した値。

2.

***は1%水準、**は5%水準で有意であることを示す。

5. データ作成

(1)設備投資

名目設備投資は当期有形固定資産増加額から当期除却資産取得原価を差し引き、当期除却資産に関する償却累計額を戻すことで算出。これを建物、構築物、機械装置、工具器具備品、船舶・車両運搬具、その他有形固定資産ごとに算出し、実質化。実質化には、日本銀行「企業物価指数」のうち、建物、構築物は「需要段階別・用途別指数」の建設用材料価格を、機械装置、船舶・車両運搬具、工具器具備品、その他有形固定資産は資本財価格を使用した。

(2)トービンのq

企業の市場価値に負債総額を加えたものから、時価評価した土地、その他の資産(流動資産、建設仮勘定、無形固定資産、投資その他資産、繰延資産)の簿価を差し引き、資本ストックの再取得価格で除すことにより算出した。

(3)実質資本ストック

 ベンチマークとなる実質資本ストックと、資産別に実質化した実質設備投資から、実質資本ストックを推計する。ベンチマークとなる実質資本ストックは、1980年時点を使用した。1980年度の実質資本ストックは以下の要領で算出した。経済企画庁「昭和45年国富調査」を用いて1970年度の産業別純資本ストック額を、内閣府「国民経済計算」の純固定資産デフレータを用いて、現在の基準に転換する。これをベンチマークとし、恒久棚卸法により、1980年度まで作成する。設備投資は内閣府「民間企業資本ストック」の新設設備投資を使用した。ここで使用する固定資本減耗率は、内閣府「国民経済計算」の純固定資産と形態別の総固定資本形成から、建物、構築物、輸送機械、機械器具等のそれぞれについて求め、それを「国富調査」における各資産の構成ウエイトにより加重平均し、算出した。

 以上より、求めた純資本ストックと、産業別資本ストック簿価(財務省「法人企業統計年報」における非金融法人・有形固定資産簿価(除く土地・建設仮勘定))から、1980年度時点での時価簿価比率を求めた。

 各産業別に求めた時価簿価比率を、それぞれ各企業に乗じて、1980年度の実質資本ストックを推計した。これを元に、各企業の実質設備投資と物的減耗率を用い、実質資本ストックを作成した。物的減耗率は、Hayashi and Inoue (1991)において作成された値を使い、それぞれ、建物4.7%、構築物5.64%、機械装置9.489%、船舶・車両運搬具14.7%、工具器具備品8.838%、その他有形固定資産8.838%を用いた。

(4)企業の市場価値

 発行済株式総数に株価をかけて算出。株価は、期中最高株価と期中最低株価の平均を使用。

(5)時価評価した土地

当期末土地ストック時価=(前期末土地ストック時価-当期土地減少簿価)×当期地価上昇率+当期土地増加簿価

ベンチマークを1980年度とし、ベンチマーク時点における内閣府「国民経済計算」の民間非金融法人の土地と、財務省「法人企業統計年報」全産業の土地(簿価)から時価簿価比率を算出し、時価換算を行った。地価の上昇率には、日本不動産研究所「市街地価格指数」の6大都市市街地価格指数(総平均)を用いた。

(6)キャッシュフロー

 税引後当期純損益から、配当と役員賞与を控除したものに、減価償却費を加えたものを名目キャッシュフローとし、各企業の属する産業別算出デフレータで実質化した。

(7)不確実性

 田中(2004)を参考に各企業の実質売上高増減率の標本標準偏差を不確実性指標とした。先行研究を踏まえ、標本標準偏差は5年間のものを採用した。

(8)異常値の処理

 前年との階差をとり、それぞれの平均から標準偏差の3倍の範囲を逸脱するものを異常値とみなし、除去している。

(9)グローバル型・国内型企業の区分

 2005年度の連結売上高比率が25%以上の企業をグローバル型企業とし、25%未満の企業を国内型企業とした。