平成18年度

年次経済財政報告

(経済財政政策担当大臣報告)

−成長条件が復元し、新たな成長を目指す日本経済−

平成18年7月

内閣府


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第5節 まとめ

 本章では、今回の景気回復期間を通じて変化してきた家計部門の課題として、正規・非正規など雇用形態の多様化や若年雇用問題、地域雇用の問題など雇用情勢の変化や、職業能力取得の観点からの人間力強化に向けた課題について概観した。家計からみた経済的格差の現状について、様々な分析手法を用いてそれを把握することを試みた。最後に以上を踏まえる形で政府部門の対応の在り方を検討した。

●雇用形態の多様化や若年雇用問題に対しては、しっかりした政策対応が必要
 雇用形態の多様化については、企業のリストラによる人件費削減圧力を背景として非正規雇用が増加してきたことを指摘した。今回の景気回復局面では、正規雇用以外の様々な形態(パートタイム労働者のほか、派遣労働者や契約社員など)の非正規雇用が増加した。企業の意識をみると、主に人件費削減を目的に非正規雇用を活用した。こうした動きは、パート比率の高まりや、2001年前後の正規雇用者を含むフルタイム労働者の賃金の低下により、定期給与を低下させ、労働分配率の低下に寄与した。非正規雇用については、女性や高齢者を中心に現在の就業形態を続けたいとする層が存在している一方、景気回復が続く中で正規雇用についても回復の兆しが見えてきている。
 若年の非正規雇用者等が増加してきている。こうした若年雇用問題については、企業側の非正規雇用者への職業教育訓練機会の提供に関する意識は低いため、特に教育機会が必要とされる若年時において、非正規雇用者が職業能力を蓄積できない点は懸念される。実態としてもフリーターなど非正規雇用からの離脱がさらに困難になっている。
 以上の雇用の多様化の進展や若年雇用の問題については、将来の我が国経済に与える影響も考慮しながら対応が必要である。
 地域の雇用情勢については、失業率の変動係数をみると、長期的にはほぼ横ばいとなっており、ばらつき度合いに改善がみられない。日本全体の雇用情勢が改善するなか、地域の雇用情勢は引き続き課題である。

●就業前・就業後の職業教育訓練双方の充実が人間力強化に重要
 職業能力取得の観点からの人間力強化については、就労前の学校教育や就労後の職業教育訓練の双方ともに重要であることを指摘した。企業がリストラを進める中で企業の職業教育訓練に対する役割は変化し、個人の役割が高まる傾向がある。こうした変化に対応して、今後の人間力強化に向けて就労前の学校教育における職業教育訓練を強化するとともに、就労後の職業教育訓練機会を整備することも重要である。具体的には、就労前の学校教育段階では、大学をはじめとする高等教育機関への進学率が上昇した現状のもと、従来の役割に加え、個々の多様な教育ニーズに合わせて、仕事に関する実践的な専門的知識や技能を取得することができるような多様な教育サービスの提供が求められる。就労後の職業教育訓練については、企業における職業教育訓練機能の役割変化が懸念される現状においては、そうした状況に対応できるよう、就労後も多様な職業教育訓練をうける機会を如何に確保していくかが重要な課題である。こうした施策は、フリーター、ニートなど若年雇用問題への対応にも役立つと考えられる。

●経済的格差の観点からも雇用面での環境変化への対応が必要
 経済的格差については、経済統計データを基に把握できる所得格差は、ジニ係数、あるいは他の不平等指数を計算したところ、統計上は全体として緩やかに拡大していることが確認された。この結果については世帯人員数の縮小などの家族形態の変化要因、あるいは高齢者世帯の増加という人口動態要因などが寄与している部分が大きいことが示された。
 単身世帯も含めた総世帯の動向を見ると、ジニ係数は99年から2004年にかけてわずかながら低下したことが示された。しかし、この動きは平均所得が低下するなかでの所得分布集中によるものである可能性がある。低所得者層に対しては就労支援などの自立支援施策を実施することにより対応しており、セーフティーネットの確保には万全を期しているところである。
 年齢階層別のジニ係数の動きをみると、若年層において所得格差や労働所得格差の拡大の動きが確認された。こうした動きは、フリーター、ニートなどの若年層の雇用情勢を反映しているとみられ、将来経済全体の格差拡大につながる可能性があるという観点からも対応が必要である。労働所得でみた格差拡大が非正規雇用の増大とも関係している可能性も示された。現時点では、こうした動きは世帯所得の格差拡大までは直接つながっていないが、正規・非正規雇用に関する動向も、格差の観点からの配慮も必要である。
 最後に、格差の動向について、きめ細かな分析を可能とするような経済統計の一層の整備充実が必要であると考えられる。

●雇用面での環境変化の対応にあたっては積極的な雇用政策が重要
 最後に、以上の家計を取り巻く環境の変化への政策支援として、特に雇用面の環境変化への対応を述べた。ここでは、非正規雇用から正規雇用への政策として、現在行われているトライアル雇用などの仕組みの活用を今後とも企業に促す等、正規雇用の登用を促進することや、新卒採用時に不利な状況にあった世代に対する再挑戦の機会の提供が必要であることを指摘した。厳しい若年雇用情勢への対応として、若年雇用問題に取り組んでいる欧州諸国の例を踏まえながら、学校教育時からの職業教育訓練、職業体験によるキャリア形成とともに、若年失業者等に対して就労を促す施策やきめ細かい就職支援などの積極的雇用政策を中心とする「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」の取組について検討した。こうした取組を継続的に実施していくとともに、定期的な点検を行っていくことが必要であると考えられる。


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