第2章 官から民へ-政府部門の再構築とその課題

第2章のポイント

第1節■小さな政府とは

 大きな政府になると、官の非効率性や課税等による資本蓄積・労働供給への負の効果により、経済活動に抑制的な影響が及ぶことが懸念される

 国民負担に関する意識調査に基づいたコンジョイント分析によると、社会保障給付の増加による効用(満足)の増加と国民負担率の上昇による効用低下の程度はほぼ均衡。ただし、若年層では負担増による効用低下が相対的に大きい

第2節■官から民への様々な手法

 「官から民へ」により、官業を民間に開放し、民のノウハウを活用することは、公共サービスの質の改善や効率化に貢献

 指定管理者についての調査に基づいた分析によると、制度導入後に管理を行う現事業者は制度導入前の事業者と比べてサービスが改善。主体別では、民間営利事業者が最もサービスの質が高い

 NTTやJR等の民営化は、効率の向上、創意工夫によるサービスの多様化等に貢献

 政策金融の費用対効果は最近では横ばいとなるなど、その優位性はかつてと比べて低下している面もある

第3節■地方財政の改革

 「官から民へ」によって小さな政府を目指すには、公共財の利用者である住民に近い立場にある地方公共団体の裁量を拡大し、全国一律的な行政を改めるとともに、地方公共団体の行財政の効率を上げることが重要

 市町村合併には、規模が大きくなることに伴い住民単位当たりの行政費用が低下する効果がある

 全国655市・東京23区について行政改革の影響を推計すると、職員数の適正化等の改革により費用抑制効果がみられる

第4節■小さな政府を目指すための課題

 医療、介護、教育、保育のいわゆる官製市場については、構造改革特区の取組等を通じて、一部に民の参入が認められつつある。これらの市場においても、民の参入によって効率性の改善が見込まれる

 市場化テストは、官民競争入札によって直接官と民の効率性を比較し、より効率的な事業者に業務を任せるもの。2005年度から試行的にモデル事業を実施

 「官から民へ」を活かすには、官の側でさらに雇用面など制度を整備する必要がある。また、「官から民へ」が行財政の効率化に結びつくためには、行政サービスを提供する者が常に競争圧力に直面しているような競争環境の整備が重要

第2章 官から民へ-政府部門の再構築とその課題

我が国では、政府債務残高が先進国でも最も高い水準に達するなど厳しい財政状況が続く中で、今後も少子高齢化の進展等により国民負担が増大していくことが見込まれている。また、経済・社会環境の変化により、新たな行政需要が生じる一方で、官が行う必要性の低下した部門の縮小・撤退が遅れており、その結果、資源が限られたものであるにもかかわらず、その適正配分が十分に行われているとはいえない状況にある。加えて、国民負担が上昇するなかで、公的サービスの質や効率性に対する国民の目はより厳しいものとなっている。こうしたことを踏まえ、官は真に官が行うべき必然性のある業務に特化し、その他の公的サービスについては「官から民へ」移管することによって民の経験やノウハウを活かし、より効率的で質の高い公的サービスを提供することが重要な課題となっている。同時に、「国から地方へ」を進めることにより、公的サービスの受益と負担の関係を明確にし、真に住民に必要な行政サービスを地方自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大することも重要である。本章では、まず、政府部門の大きさについて考察し、それについての国民の意識を調べた後、新たな官と民の関係の在り方や国と地方の関係の見直しについて、現状とその課題を述べる。