付注2-2-3()  GDPギャップの推計

推計式(コブ・ダグラス型生産関数)

Y=γeλT(KS)a(LH)(1-a)

   但し、Y  :生産量(実質GDP)

KS:稼動資本量(K:資本ストック、S:稼働率)

LH:稼動労働量(L:就業者数、H:労働時間)

γ  :効率パラメータ

λT:技術進歩パラメータ

a  :資本分配率

両辺をLHで割り、対数変換した下記の式を推計する。

    ln(Y/LH)=lnγ+λT+aln(KS/LH)

 ここで、aに1975年以降の資本分配率の平均値(0.42、平成11年版「日本経済の現況」第2-3-8図参照)を代入し、また、トレンドについては、第11景気循環(バブル期)を考慮して、以下のように設定した。

1 75年第1四半期から86年第4四半期まで一次増加、以降横ばい

2 87年第1四半期から93年第4四半期まで一次増加、以降横ばい

3 94年第1四半期以降一次増加

2.推計結果(推計期間:75年第1四半期~00年第1四半期)

   ln(Y/LH)=-0.0309+0.0009T+0.0029T-0.0014T+0.42ln(KS/LH)

         (-10.10) (9.08)(19.50) (-6.34)

2(自由度修正済)=0.933 D.W.=0.661

3.要素投入量及びGDPギャップの計算

以下の「現実投入量」を用いて2の推計を行い、その結果に対し「平均投入量」を代入して平均的なGDPを計算した。(平均GDPを求める際、推計誤差を上乗せして調整したものと、調整しないものと2通り試算した。)

(1) 資本投入量

現実投入量:民間製造業資本ストックに製造工業稼働率を乗じたものと、民間非製造業資本ストックに100を乗じたものを加えた。

平均投入量:上記の製造工業稼働率について、85年第1四半期以降の平均を用いた。

(2) 労働時間

現実投入量:所定内労働時間と所定外労働時間の合計。

平均投入量:上記の所定外労働時間について、85年第1四半期以降の平均を用いた。

 (3) 就業者数

現実投入量:就業者数。

平均投入量:労働力人口に、85年第1四半期以降の(就業者数/労働力人口)の平均を乗じた。

   GDPギャップは、以下の式により求めた。

   GDPギャップ=(現実のGDP-平均的なGDP)/平均的なGDP

4.潜在生産能力に対応したGDPと平均GDPの関係について

 潜在生産能力に対応したGDP(潜在GDP)とは、資本を完全に稼動し、労働を完全雇用した場合のGDPをいい、生産要素をフルに利用したら潜在的にはどのような生産が可能か、を意味している。また、生産要素のフル利用とは、通常、稼働率は中長期的に維持達成可能な正常水準、失業率は均衡失業率の状態を意味する。

 資本や労働の平均的な稼動状況は、上記の稼働率や均衡失業率とは違うため、その下で達成されるGDP(平均GDP)の水準は、潜在GDPの水準とは異なる(例えば労働については完全雇用水準ではない状態での推計になる)ものの、中長期的に見た場合、平均GDPは潜在GDPとおおむね同様の動きを示すと考えられるため、本試算では平均GDPを用いて潜在GDPの動きをみることとした。

5.データの出典

  実質GDP  :経済企画庁「国民経済計算」

資本ストック :経済企画庁「民間企業資本ストック」の取付ベース前期末値

(NTT、JRの民営化について調整した)

製造工業稼働率:通商産業省「通産統計」

  就業者数   :総務庁「労働力調査」

労働時間      :労働省「毎月勤労統計調査」