付注2-2-2(4) 財政のサステナビリティに関する検定
財政のサステナビリティをみるテストとして、ここでは本章に述べられている第一の基準(国債発行残高の対名目GDP比が無限大にまで上昇するか否か)に関する検定を行う。
・Hamilton and Flavin(1986)の方法
1 モデル
検定に用いるモデルは、Hamilton and Flavin(1986)、浅子和美他(1993)に紹介されている、政府の予算制約式を国債発行残高に関する一次の差分方程式とした際の一般解
(1)
Bt≡t期における中央政府の国債発行残高(以下添え字のtはt期を意味する)
r ≡名目利子率
Et ≡政府のt期における情報に基く条件付期待値
St ≡(T:一般会計における税収+その他税収)
-(G:一般歳出+地方交付税等[1])
A ≡無限期先の国債発行残高の0期における割引価値(億円)
を原型とする。(1)を変形し、
(2)
とし[2]、検定すべき仮説をH0:A=0,H1:A≠0とする。帰無仮説が棄却されれば、国債発行残高が無限大にまで累積し、財政はサステナブルではなくなる。なお名目利子率は外性的に0.01から0.06までの6パターンとする。
2 推計期間
1965年度~99年度。
3 推計結果[3]
最小二乗法で推計した結果、r=0.04以下のときA=0となる。すなわち名目利子率が4%以下のときのみ、国債発行残高は無限に累積しない。
(参考文献)
浅子和美他(1993)「日本の財政運営と異時点間の資源配分」『経済分析第131号』、
経済企画庁経済研究所。
Hamilton, James D. and Flavin, Marjorie A.(1986)"On the limitations of government borrowing: a framework for empirical testing," AER Vol.76, 808-819.
[1] 利払費は、データの制約上考慮していない。
[2] ラグ付き内生変数は、撹乱項の系列相関を除去するために挿入。
[3] ここでは第3項は1期前まで、第4項は2期前までを計算。