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まえがき

「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。

2012年後半から13年前半にかけ、ヨーロッパでは政府債務危機を巡る緊張が和らいだものの、南欧諸国を中心に財政緊縮と景気低迷の悪循環から依然脱出できずにいる一方、アメリカでは財政問題の影響が残る中でも雇用や住宅市場に明るい動きがみられ、金融資本市場も盛り上がりをみせています。他方、中国では一時、拡大テンポが持ち直す動きもみられましたが、その後はやや不透明な状況となっています。このように世界経済全体としてみると弱い回復が続いていますが、日本も含めて一部で底堅さもみられるなど、先進国間、新興国間それぞれでも景気にばらつきが目立つようになっています。

第1章の「主要国・地域の経済動向と見通し」では、昨年後半以降、弱い回復が続く中、底堅さもみられるようになってきた世界経済の現状を概観した後、特にアメリカ経済の回復の持続性、中国の成長安定化や欧州景気の持ち直しの可能性を問題意識としつつ各国・地域の経済動向について掘り下げております。また、世界経済の今後の見通しについて想定されるシナリオを描くとともに、主要な下振れリスクについても整理しております。

第2章の「先進国を中心とする成長力の変化と展望」では、08年の世界金融危機後、各国の内外需要の急減だけでなく供給面にも影響が及び、今後の成長力を左右する事態がもたらされていないか、主要先進国を取り上げて点検しています。この分析を通じて今後の成長力を規定する要因としてイノベーションの重要性を再認識するとともに、それを創出するための各国の具体的な取組についても概観し、最後にそうした経験から得るべき含意についてまとめております。

我が国の経済財政政策の適切な運営にあたっては、その前提としてこうした我が国を巡る世界経済の現状や先行きを的確に把握するとともに、各国の政策的な取組事例にも学ぶことが極めて重要です。本報告書がその理解を深める際の一助となれば幸いです。

平成25年6月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

西崎 文平

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