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第1章 歴史的転換期にある世界経済:「全球一体化」と新興国のプレゼンス拡大

第3節 世界の労働市場

3.世界の労働市場の構造変化への対応

  世界の労働市場では、先進国に比べアジアの就業者数が大きく増加するなど、新興国のプレゼンスが次第に高まってきている。世界全体で貿易や投資の拡大に伴い、製造業就業者の重心は先進国から新興国へ移っており、先進国と新興国の賃金水準は貿易や投資を通じて格差縮小の方向に向かうなど全球一体化が進んでいる分野もある。一方、国際的な労働移動は増加する傾向にあるものの、国・地域によってばらつきがあり、人の移動に関しては、財、資本ほど全球一体化が進んでいるとは言い難い。
  今後の世界の労働市場には、2つの課題がある。
  1つは、現時点で生じている先進国における就業者数の伸び悩み、高い失業率といった厳しい雇用情勢への対応である。このため、労働者の能力の向上、高度な専門分野への労働移動が重要となる。また、新たな雇用を生み出す工夫も必要となっている。
  もう1つは、今後、世界の人口の伸びや生産年齢人口の伸びは急速に低下し、生産年齢人口の総人口に占める割合も早晩ピークアウトする見込みであるなど、豊富な労働力を活用できる時代は終焉していくことを前提とした対応である。2025年頃には、アフリカ地域を除く全世界が人口負担期となる。このため、労働生産性の引上げや、各地域の労働力を効率的に活用することが必要である。


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