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1  アメリカ           United States of America

アメリカ経済のこれまで

2007年の経済>
  2007年のアメリカ経済は、住宅投資の減少等により、通年で前年比2.2%と前年を下回る成長となった。成長減速の主因となった住宅投資はサブプライム住宅ローン問題が深刻化する中で、年間を通じて大きく減少した。また、設備投資は構築物投資の増加等から堅調に推移したものの、個人消費は雇用情勢が軟化するとともに年後半には伸びが緩やかになった。こうした中で、堅調な海外需要等を背景に純輸出が景気を下支えした。生産は年後半にかけて在庫の伸びが低下するなど出荷・在庫バランスが改善し、底堅く推移したが、年末頃には再び在庫の伸びが高まり生産も弱含んだ。雇用は製造業や建設業等で減少傾向が続いたため、増加が緩やかになり、失業率は年後半以降緩やかに上昇した。
  物価動向については、原油や穀物等の商品価格の急上昇を受けて上昇し、年末には消費者物価は前年同期比4%前後の上昇、生産者物価は同6〜7%台の上昇となった。一方、エネルギー価格等を除いたコア物価はおおむね安定して推移した。
  金融資本市場では、7月以降、サブプライム住宅ローン問題に対する懸念が高まったことから、証券化商品の値崩れや銀行間金利と国債金利のスプレッド拡大、株価の下落などの混乱がみられた。また、金融機関の損失拡大等を受けて、金融機関における貸出基準の厳格化が進み、信用収縮懸念が高まった。

2008年の経済見通し>
  2008年の経済成長率は前年比1%台となる見込みである(民間機関48社平均1.5%(08年6月)、議会予算局1.9%(08年2月))。民間機関の見通しは、半年前(07年11月時点2.4%)と比較して低下した。年前半は1%以下の低い成長率となるものの、年後半には、これまでの財政金融政策の効果が段々と出てくることなどから、金融資本市場の混乱が落ち着いてくれば、徐々に成長率が持ち直すことが見込まれる。下方リスクとしては、金融資本市場における混乱の深刻化や長期化、一次産品価格の高止まりや一層の高騰などが考えられ、こうしたリスクが顕在化した場合、アメリカ経済の低迷が長期化するおそれも考えられる。

<財政政策の動向>
   ブッシュ大統領は、2008年2月4日、2009会計年度(08年10月〜09年9月)の予算案をまとめ、議会に提出した。歳出は対テロ戦争への対応等のため、初めて3兆ドルを超え、3兆1,074億ドルとなった。国防、国土安全保障費は8.2%の増額(5,945億ドル)とされている。財政収支の見通しは、緊急経済対策の実施等から赤字幅の拡大が見込まれ、08年度に続いて比較的高水準の赤字となることが見込まれている。一方で、ブッシュ大統領は、昨年の予算教書に続いて、4年後の12年度までに単年度での財政収支の均衡という財政目標を表明した。
  また、実体経済の悪化を防ぐため、個人所得税を還付する戻し減税や企業の設備投資を促すための措置を柱とする緊急経済対策法(総額1,680億ドル)が、2月13日に成立した。

<金融政策の動向>
  FRB(連邦準備制度理事会)は2007年9月に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)において政策金利であるフェデラル・ファンドレート(FF金利)の誘導目標水準を06年6月以来維持してきた5.25%から0.25%ポイント引き下げ、以後、景気の減速に配慮した利下げを続けた。08年1月には、10日間弱で合計1.25%ポイントの歴史的にも大幅な利下げが実施された。その後、6月の会合ではインフレ懸念の高まりから、07年6月の会合以来となる金利の据置きが決定された。今後について、市場では、次に政策金利の変更が決定される場合には利上げになるとの見方が大勢となっている。


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