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7 シンガポール     Republic of Singapore

<2007年>
シンガポール経済のこれまで

2007年の経済>
  2007年の経済成長率は7.7%となり、06年の8.2%より鈍化したものの高成長を維持した。年前半は、総固定資本形成や民間消費を中心に内需が景気をけん引した一方で、輸出は医薬品は増加したが主要輸出品目であるIT関連品目が半導体を中心に減少し、純輸出の成長への寄与は前年に比べ低下した。7〜9月期は業種別では建設・製造部門と金融部門が高い伸びを示し、需要項目別では建設投資と民間消費が好調を維持したほか輸出も前期から改善したため、前年同期比9.5%の高成長となった。10〜12月期には、建設部門と金融部門は好調であったが製造部門での医薬品の生産が落ち込み、需要項目別では建設投資と民間消費が引き続き堅調な一方で純輸出がマイナスとなり、同5.4%の成長へとやや鈍化した。失業率は堅調な成長を背景に年後半に1.7%と10年ぶりの低水準に低下した。消費者物価上昇率は、商品・サービス税(GST)の引上げやエネルギー価格の上昇等の影響から上昇し、12月には4.4%と過去最高水準に達した。

シンガポールの主要経済指標

2008年の経済見通し>
  2008年の経済成長率は5%程度になると見込まれる(政府見通し4〜6%(08年2月時点)、民間機関24社の平均5.2%(08年5月時点))。民間機関の見通しは、半年前(07年11月時点5.8%)からやや下方修正されている。
  08年は、輸出は、IT関連品目を中心に鈍化すると見込まれる。内需は、総合リゾート開発やインフラ整備等の国家プロジェクトが雇用を創出することにより、建設投資の拡大とともに個人消費の堅調な伸びが期待される。08年1〜3月期の成長率は、純輸出の寄与が前期に続きマイナスとなったが、堅調な民間消費に加え、設備投資が大幅に増加したことが成長に大きく寄与し前年同期比6.7%と前期から加速した。
 下方リスクとしては、シンガポール・ドルの増価と世界経済の減速による外需の伸び悩みと物価上昇に伴う内需の減速が挙げられる。

<財政金融政策の動向>
  財政政策については、2008年2月、08年度予算が可決された。歳出は前年度比12.5%増の374.5億シンガポール・ドル、歳入は同0.5%増の398億シンガポール・ドルが見込まれている。政府は、8.65億シンガポール・ドルにのぼる「成長配当」と呼ばれる給付金の支給、3億シンガポール・ドル規模の中学卒業後の学生口座への増額支給、3.8億シンガポール・ドル規模の個人所得税還付(08年度の個人所得税の20%。ただし2,000シンガポール・ドルを上限。)、遺産税廃止、研究・開発活動(R&D)に対する推進税制(損金算入を100%から150%に拡大等)、ストック・オプション促進のための要件緩和、金融部門に対する税制優遇措置等を講じている。
  金融政策については、シンガポール通貨庁(MAS)は為替レートを通じた金融政策を実施している。原油・食物価格の高騰と住宅価格・賃料の値上がりを受けて消費者物価は上昇し続けており、08年5月時点で前年同期比7.5%と26年ぶりの高い伸びとなっている。MASは07年10月の半期経済報告において従来の金融政策を維持しつつもシンガポール・ドルの増価ペースを速めたことに続き、08年4月には名目実効為替レート(NEER)の許容幅(バンド)の中心値を引上げ、引き締め政策を一段と強化している。


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