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13 ユーロ圏             Euro Area

ユーロ圏経済のこれまで

<2007年の経済>
  2007年の経済成長率は2.6%となり、06年の2.9%からは成長のペースが緩やかになったものの2%程度とみられる潜在成長率を上回る高い成長となった。07年の成長の原動力は内需、とりわけ2年連続でITバブル期以来の高い伸びとなった固定投資であるが、その他、個人消費や外需といった需要項目もすべて成長に寄与している。
  固定投資のうち、機械設備投資については、設備稼働率の上昇や企業収益の改善等を受けて、主要国のドイツを中心に力強く伸びた。建設投資も年後半には減速したものの堅調に推移した。個人消費は、年初にドイツの付加価値税率引上げの影響等から伸び悩んだが、雇用情勢がユーロ圏発足以来の水準にまで改善して消費を下支えしたこともあり、その後持ち直した。しかし、金融資本市場の混乱やエネルギー価格等の影響による秋以降の物価上昇により、消費者のマインドが顕著に悪化し、消費者の実質的な購買力が目減りしたことなどから、年末には消費の伸びは若干の減少となった。外需については、ユーロ高が進行する中で、アメリカ等主要輸出先の需要が減少したが、新興国等の需要が旺盛であったことから、通年ではプラス寄与となった。ユーロ相場は、年間を通じて増価基調で推移し名目実効為替レートで年初から約7%、年半ばから約4%増価した。

ユーロ圏の主要経済指標

<2008年の経済見通し>
  2008年は減速しつつも緩やかな回復が続き、経済成長率は1%後半程度となる見込みである(欧州委員会見通し1.7%、民間機関24社の平均1.6%(08年5月時点))。民間機関の見通しは半年前(07年11月時点2.1%)に比べて下方修正されている。08年に入り、企業や消費者の景況感は低下を続け、先行きの景気減速懸念を示唆している。生産・輸出等の企業部門については相対的に堅調さを維持しているものの、世界経済の減速により外需の減速が見込まれる。 
  内需については、雇用情勢が歴史的にみれば良好であること、また、高水準の設備稼働率や企業の財務状況の改善等を背景に、消費や投資は緩やかに回復すると見込まれるものの、住宅ブームを背景に伸びていた建設投資については、特にここ数年過熱がみられた国では調整が進むと予想される。
  こうした見通しに対する下方リスクとしては、想定以上のアメリカ経済の減速や足元の金融資本市場の混乱の長期・深刻化、また、さらなるユーロ高の進行など為替レートの急激な変動等が挙げられる。

<金融政策の動向>
  ユーロ圏への参加条件の一つである各国の財政目標(財政赤字の名目GDP比3%以内)の達成状況をみると、3%目標を超過していたドイツ、フランス、イタリア、ポルトガル、ギリシャ等の複数の国で、景気回復に支えられた歳入増と財政改革による歳出抑制等から改善が進み、07年にはユーロ圏内の全ての国において同目標を達成した。
  金融政策について、欧州中央銀行(ECB)は、2005年12月に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を2年半ぶりに0.25%ポイント引き上げ2.25%として以降、07年6月まで合計8回にわたり0.25%ポイントずつ引き上げて4.00%とした。その後07年半ばから金融資本市場の混乱による景気の下振れリスクとエネルギー価格等の上昇による物価の上振れリスクの中で、据置きを続けていたが、08年7月の政策理事会において、政策金利を約1年振りに引き上げ4.25%とした。これは、08年6月の消費者物価上昇率が前年同月比4.0%(ユーロ圏発足以来の高い伸び)となり、今後も高止まりが続くと予想されること、また、賃金上昇等の広範な二次的影響も懸念されることから、こうした中期的な物価安定へのリスクに対処したものとしている。


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