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まえがき

  「世界経済の潮流」は2002年に創刊され、年2回公表しております。今回は、第1章では、変化するグローバルな資金の流れを考察し、第2章では、世界の主要な地域の景気動向を概観し、2008年の展望を示しております。
  第1章では、「変化するグローバルな資金の流れ」と題し、2000年代に大きく拡大したグローバルな資金の流れを分析しています。グローバルな資金の流れは、世界経済の成長を支える重要なファクターであると同時に、その変化によって世界経済に大きな影響をもたらすことにもなります。本章では、まず、資金供給の担い手としての新興国の台頭や新たな金融技術によるリスク分散を通じた活発な信用創造等、グローバルな資金の流れを支えた要因とその背景を分析しています。そして、近年の注目すべき変化として、ソブリン・ウェルス・ファンドの動きとサブプライム住宅ローン問題発生後の資金フローの動向に焦点を当てて分析しています。ソブリン・ウェルス・ファンドは、グローバルな資金供給の担い手として存在感を増していますが、対日投資促進の観点からも動向が注目されています。一方、サブプライム住宅ローン問題以降の資金フローの変化は、金融資本市場の混乱をもたらすと同時に、商品市場への資金流入を通じて原油や穀物等の価格高騰を招いています。本章の最後では、こうした資金フローの背景や実体経済への影響等を分析した上で、必要な政策対応のあり方について検討しています。
  第2章の「減速しつつも回復を続ける世界経済」では、減速が続いているアメリカ経済とその影響を受けているヨーロッパやアジアの動向を概観するとともに、世界経済の連関について検討しています。サブプライム住宅ローン問題に端を発する金融資本市場の混乱は、世界経済に大きな影響を与えました。アメリカでは景気は弱含み、後退局面入りも懸念され、ヨーロッパでも景気回復が緩やかとなっています。また、景気拡大が続くアジアでも、世界経済の減速の影響を受けつつあります。東アジアにとっては、アメリカが最大の輸出先であり、アメリカ等の景気がさらに減速すれば、直接、間接に影響が及ぶ可能性があります。これまで、世界経済はアメリカ経済と連動して堅調に推移してきましたが、現在は、アメリカの実体経済の減速、金融資本市場の混乱、資源価格の高騰等に伴う物価上昇という三つのショックに直面しています。このため、08年の世界経済の成長率は、07年を下回るものと見込まれています。
  本書が、グローバルな資金の流れという世界経済の新たな潮流や、減速しつつも回復を続ける世界経済の動向とその展望について、理解を深める一助となれば幸いです。

  平成20年6月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
齋藤  潤


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