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イタリア経済のこれまで

2006年の経済>
   2006年の成長率は潜在成長率(1.3%程度)を上回る1.9%となった。需要項目でみると、ユーロ圏の景気回復や伝統産業でのリストラによる国際競争力の回復により、これまで伸び悩んでいた輸出が前年比5.5%と大きく増加し、純輸出は、2年ぶりにプラス寄与となった。また生産が好転し、設備投資も回復した。また、雇用は増加し、失業率も05年10-12月期の7.6%から06年10-12月期は6.5%に低下して、ユーロ圏の平均値を下回った。こうした雇用情勢の改善を受け、消費も堅調に推移した。また、消費者物価上昇率は2%前後と安定的に推移した。

2007年の経済見通し>
   2007年はユーロ圏全体と比べて低い成長にとどまるものの、06年と同程度の成長となると予測される(欧州委員会1.9%、民間機関5社の平均1.8%、07年4月時点)。民間機関の見通しは、半年前(06年10月時点1.3%)に比べて上方修正されている。成長を支える要因としては、良好な雇用環境を背景とした消費の拡大、最大の輸出先であるドイツの景気回復が挙げられる。また企業景況感は2000年以来の高水準にあり、設備投資も堅調に増加すると見込まれる。

イタリア経済の主要経済指標

   なお、非効率性が指摘されるサービス分野の競争促進と生産性改善などのため、規制緩和の政策パッケージ(いわゆるベルサーニ法)の策定が進められている。
   下方リスクとしては、原油価格の再高騰や米国経済の一層の減速、想定以上のユーロ高に伴う輸出の減少が挙げられる。

<財政政策の動向>
   2006年の財政赤字はGDP比4.4%となったと見込まれ、4年連続でEUの「安定成長協定」で定める3%を大きく超えた。ただし、これには、政府が社用車への付加価値税を経費として認めてこなかったことに対して、欧州裁判所が06年9月の判決で過去4年分の還付を命じたことなど06年限りの一時的要因(欧州委員会の試算でGDP比1.25%の財政赤字増)の影響が含まれている。政府は06年12月に欧州委員会に提出した「安定プログラム」の中で07年に同2.8%まで財政赤字を削減する方針を打ち出しており、欧州委員会も07年予算の着実な実行を前提に07年には過剰赤字が是正されるとしつつも、中期的な財政戦略が不透明なままであると指摘した。また、政府債務残高対GDP比は05年度末で106.2%と依然100%を超えており、06年の純利払いはGDP比4.2%と見込まれるなど利払い費の負担は重い。
   足元では景気回復と政府による脱税対策が奏功し、06年の歳入はGDP比で3年ぶりに増加した。07年春の欧州委員会の見通しでは、引き続き歳入が高水準を維持するとして07年と08年の財政赤字をそれぞれGDP比2.1%及び2.2%と、06年秋の見通しに比べ大幅に上方修正した。ただし、年金改革や公務員人件費の削減といった歳出抑制策については、連立与党内の足並みの乱れから、課題の多くを2007年以降に先送りしており、この点に対しては、批判が見受けられる。


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