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ユーロ圏経済のこれまで

<2006年の経済>
  2006年の経済成長率は、2.8%となり、05年から成長のペースが加速し、2000年代で最も高い成長率となった。ユーロ圏経済は、主要国のドイツを中心に輸出の伸びや企業のバランスシートの改善等を背景に設備投資が06年も継続して拡大した。また、失業率が歴史的に低い水準となるなど改善を続ける雇用情勢を背景に、付加価値税引上げ前の駆け込み需要といった要因もあって消費が底堅く推移した。
   06年に入っても原油価格の高騰が続き、消費者物価上昇率は、年初には前年比2%を上回る水準で推移していたが、年半ばに原油価格が下落したことにより一時同1%台半ばに低下し、その後は「2%より低くかつ2%に近い」というECBの参照値に近い水準で推移した。また、リスボン戦略等の労働市場改革の努力が徐々に実を結び、失業率は06年を通じて改善した。為替については、ユーロ相場は特に円に対し過去最高値を更新し(12月29日1ユーロ=157.12円)、米ドルに対しても過去最高値近傍まで増価した(同131.99ドル)。

ユーロ圏の主要経済指標

<2007年の経済見通し>
   2007年の経済成長率は、2%半ば程度となる見込みである(欧州委員会見通し2.6%、民間機関26社の平均2.3%(07年4月時点))。欧州委員会の見通しは、前回の2.1%から、民間機関の見通しは1.9%から、それぞれ上方修正されている。なお、07年1〜3月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率2.3%となった。
   07年に入っても企業景況感は高水準で推移しており、企業収益の改善や良好な資金調達環境、また、設備稼働率のタイト化等を背景に企業は生産能力増強のための投資を行うとみられる。加えて、雇用情勢がさらに改善し、これまでドイツ等で抑制されてきた雇用者報酬が緩やかに上昇すると見込まれること、また、消費者物価が安定的に推移するとみられることなどから、消費は緩やかに増加することが予想される。外需の先行きに不透明さが残る中で、07年も内需主導の成長が続くとみられる。
   こうした見通しに対する下方リスクとしては、住宅価格が著しく上昇していた圏内の一部の国で住宅市場の急速な調整によって消費や雇用への悪影響等も通じて経済全体が下振れすること、また、アメリカ経済が一層減速する場合に貿易、金融市場へ悪影響を及ぼすことが懸念される。さらに、今後も地政学的リスク等が排除できないことから原油価格の再騰も下方リスクとして残っている。 

<金融政策の動向>
   欧州中央銀行(ECB)は、2005年12月に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を2年半ぶりに0.25%ポイント引き上げ2.25%として以降、07年3月まで合計7回にわたり0.25%ポイントずつ引き上げて3.75%とした。トリシェ総裁は、07年5月の政策理事会後の記者会見において、「中期的な物価安定に対するリスクが顕在化しないように、強い警戒が非常に重要であることを確認した。好ましい経済状況を考慮すると、主要政策金利は穏当な水準にあり、マネーと信用の伸びや潤沢な流動性を背景に、我々の政策は引き続き緩和的な側にある。先をみると、断固たるタイムリーな行動が正当化される。」と述べ、経済成長に対する強気な姿勢と物価動向に対する警戒感から追加的な利上げの可能性を示唆した。


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