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17 英国 United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland

イギリス経済のこれまで

<2005年の経済>
  2005年の経済成長率は、前年比1.8%と04年の同3.1%から大幅に鈍化した。個人消費がエネルギー価格上昇や、住宅市場の沈静化の影響によって低迷した。企業の投資も伸び悩んで、内需が減速した。しかし、堅調な所得、雇用環境等から、年後半から消費が緩やかに持ち直すとともに、公共サービス充実に伴う継続的な歳出増のため、政府支出も堅調に推移したことから経済成長を下支えし、景気は回復した。

<2006年の経済見通し>
  2006年の経済成長率は2%台前半となる見込みである(政府見通しは、2.0〜2.5%、民間機関28社の平均2.2%(06年4月時点))。いずれも過去の見通し(政府見通し2.5〜3.0%(05年3月時点)、民間見通し2.3%(05年10月時点))に比べて下方修正されている。なお、欧州委員会の春季経済見通し(06年5月)では、06年の経済成長率は2.4%と予測している。
  消費は、短期的には原油価格の高騰や高水準の家計債務の存在が悪影響を与える可能性もあるが、所得や住宅価格の底堅さなどを背景に今後緩やかながら回復していくことが見込まれる。

イギリスの主要経済指標

  設備投資は、エネルギー価格の不透明さや企業の高い負債比率等を背景に06年も弱含みが続くとみられるが、長期的には企業の財務状況の改善を受けて緩やかに回復していくと見込まれている。英国の主要輸出先であるユーロ圏経済が堅調に推移するとみられることから、輸出も安定して増加していくと予想される。また、継続的な歳出拡大が予定されていることから、政府支出は引き続き景気を下支えするとみられる。失業率は低水準ながらこのところ上昇している。
下方リスクとしては、原油価格の高騰が継続した場合、インフレ圧力により消費に悪影響を与える恐れや、ユーロ圏経済の成長が予想以上に鈍化した場合、輸出や生産の伸びが減速する可能性が挙げられる。

<財政金融政策の動向>
  2005年度は、金融・サービス部門や北海油田関連からの増収により法人税収が増加して前年比で大幅な歳入増となった。しかし、公共サービス拡充のため財政支出も拡大し、05年度の財政収支は、対GDP比3.2%の赤字となり、 04年の同3.3%からはわずかに改善したものの、引き続き3年連続でEUの「安定成長協定」に定められた3%の遵守基準を上回った。06年度予算案 (06年3月)によると、石油関連企業への増税、租税回避への対策強化、経済成長に伴う法人税収入の増加などにより今後も歳入増が続くとみられる。
    また、教育、環境、雇用等重点分野についての対策を続けるものの、財政運営上の規律を厳格に維持し、赤字は徐々に減少する見通しである。
  金融政策については、イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)は、2005年8月、景気下振れリスクに対する懸念から政策金利(レポ金利)を0.25%引き下げ、4.50%とした。その後9か月間、現状維持の判断を続けている。5月のMPCでは、多くの委員が成長と物価の双方でリスクは上下に均衡していると判断している。先行きについても、市場では当面は据え置きとの見方が有力である。なお、消費者物価上昇率は、06年1〜3月前年同期比2.0%上昇とインフレ目標の2.0%の水準で安定して推移しており、3月、4月は同1.8%、2.0%となった。BOEが5月に公表したインフレ・レポートでは今後、06〜07年1〜3月期にかけて消費者物価上昇率は2.0%を上回って推移するが、長期的には目標値である2.0%前後で推移するとみている。


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