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15 フランス           French Republic

フランス経済のこれまで

<2005年の経済>
  2003年後半から回復局面に入り、05年も回復が続き経済成長率は1.2%となった。前半は政府の消費促進策縮小に伴う一時的な調整局面に陥ったものの、年間を通して内需を中心とした緩やかな回復となった。エネルギー価格の上昇、輸出産業の競争力低下を背景に純輸出は年間を通してマイナスとなった。一方、雇用情勢の改善が消費にプラスの影響を与えた。また低金利を背景とした住宅投資が引き続き活発であり、住宅価格並びに着工件数とも増加が続き、消費を下支えした。

<2006年の経済見通し>
  2006年は2%程度の経済成長が見込まれる(政府見通し2.0〜2.5%、民間機関27社の平均2.0%(06年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(05年10月時点1.9%)に比べて上方修正されている。06年5月に発表となった1〜3月期の実質GDP成長率(速報値)は、前期比0.5%、前期比年率2.2%となった。内需は、個人消費が前期比0.9%増と伸びが加速した。一方外需は、輸出が同3%増と輸出以上の伸びを示し、成長に寄与した。

フランスの主要経済指標

  景気回復を支える要因としては、政府の雇用対策による消費者コンフィデンス改善並びに低金利を背景とした住宅市場の活況等による消費の増加が挙げられる。
  下方リスクとしては、原油高の継続やユーロ高等が企業景況感を悪化させ、設備投資の回復を遅らせる可能性があり、雇用、所得環境の悪化が消費者マインドに悪影響を与えて、消費の伸びを抑制する可能性がある。またECBの政策金利上昇に伴う住宅金利上昇が顕在化する場合(06年3月の住宅金利は4.35%)、住宅市場を冷却化させる懸念がある。

<財政政策の動向>
  2005年の財政収支は、景気の回復により税収が増加したこと等から、前年のGDP比3.7%から改善して、同2.9%の赤字となり、4年ぶりにEUの「安定成長協定」で定める3%内に収まった。ただし、05年は電力公社の株式会社化により職員年金が一般制度に移行することに伴う清算金受取という特殊要因で同比率は0.5%程度改善したとみられている。また政府債務残高のGDP比は66.8%となり、同協定で定める60%の上限を超えた。
  経済財政産業省の発表した06〜07年経済見通し(06年3月)では、06〜07年の財政赤字を各々GDP比2.9%、2.6%と見込んでおり、同協定の基準を遵守する見通しとなっている。一方で、同年の政府債務残高は同66.1%、65.7%と同協定で定める60%の上限を上回るとしている。ただし財政赤字削減の決め手とされる「政府支出に天井を設ける新ルール(LOLF)」の具体策が無いことから、欧州委員会は06年1月に提出された「安定プログラム」よりも厳しい見通しを立てている。 05年6月に就任したドビルパン首相が新政権の最大の課題として掲げた雇用対策を推し進めた結果、06年2〜3月には財政を用いない若年者雇用促進策である初回雇用契約(CPE)の導入を巡り大規模なストライキやデモが発生した。結局、財政を使った既存の若年者雇用促進策強化に差し替えることになり、政府からの補助金依存体制は改まらなかった。こうした状況の中で07年の大統領選をにらみ、与党内でドビルパン首相とサルコジ内相との対立が深まっており、財政再建に向け首相のリーダーシップが発揮されるか不透明になっている。


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