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第2章 世界経済の見通し

第1節 2006年の経済見通

2.アジア

 05年は中国を中心に景気拡大が続いた。06年は、世界景気の回復及び中国の堅調な景気の拡大等から、アジア経済全体は引き続き堅調に推移するものと予測される。

(1)北東アジア(中国、韓国、台湾、香港

 05年の北東アジアの経済成長率は7.9%となった。原油価格高騰の影響等から景気の拡大が緩やかになる国がみられたものの、引き続き中国の景気拡大が域内の景気をけん引する姿となっている。IT関連財の輸出を中心に輸出・生産が回復する中、原油価格高騰の影響等から、金融は引締められている。
06年は、原油価格の高止まりの影響があるものの、IT関連財等の輸出の回復が見込まれ、7.4%程度の成長になると予測される。

●景気の拡大が続く中国(台湾、香港)
 中国の05年の成長率は9.9%となり、政府目標(05年3月)の8%前後を大きく上回った。04年以降、政府は直接規制や金利引上げ等のマクロコントロールを実施しているが、固定資産投資(名目)等は依然として高い伸びを続けている。政府はマクロコントロールを通じたソフトランディングを目指して注意深い政策運営を続けている。物価の動向をみると、投資の拡大を背景に一部業種では供給過剰から製品価格が下落しているものと、原油価格や一次産品価格の高騰からインフレ的なものが混在してみられるが、生産者物価指数及び消費者物価指数ともに上昇率は低下し、安定的に推移するとみられる(第2-1-6図)1。06年1〜3月期の成長率は前年同期比10.2%と引き続き高い伸びとなった。06年の成長率は9.0%程度と予測されている。
 「第11次5か年計画(06〜10年)(06年3月5日公表)」では、従来の成長重視の方針を改め、全面的な小康社会(経済的にゆとりのある社会)建設に向け、あらゆる格差の是正や環境保護、省エネ等に重点を置き、持続可能な成長を目指す方針が示されている。また、輸出主導の成長による大幅な貿易黒字累積を是正するために消費等の内需拡大に力点を置く政策が示されている。この結果、期間中の経済成長率は年平均7.5%となっている。
 台湾及び香港の05年の成長率は、台湾は4.1%、香港は7.3%となった。06年はIT関連材の輸出の好調等から、景気は拡大を続けるものと予測され、台湾は3.9%程度、香港は5.2%程度の成長になると見込まれている。

●景気回復が続く韓国
 韓国では05年前半に輸出の減速や内需の低迷から景気の回復は緩やかになっていたが、後半よりIT関連財需要の回復による生産や輸出の堅調な伸びとともに景気は回復しており、05年は4.0%の成長となった。民間消費はクレジットカード利用優遇策に対する反動として生じた家計債務の調整が進展しており、所得も堅調に伸びていることから増加している。韓国銀行は、景気が予想よりも速いペースで回復していること、また原油価格高騰や一部地域での住宅価格上昇による潜在的なインフレ圧力を理由に金利を引き上げている。その結果、ウォンは05年10月下旬以降ドルに対して増価しており、輸出への影響が懸念されている。
 06年の経済成長率は、世界経済及びIT関連財需要の回復による輸出の堅調な伸びが期待され、5.0%程度と伸びが高まると予測される。

(2)ASEAN:シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン

 ASEAN各国は、原油価格変動の影響を受けやすい国が多いことから、05年は原油価格の高騰により経済成長率は5.4%へと減速した。また、物価上昇率の高まりがみられ、インフレ懸念を理由に金利引上げが行われている。06年は世界経済の回復による輸出の増加が期待されるものの、成長率は5.1%程度と予測される。

●原油価格高騰の影響が強く、景気の拡大は緩やかになっている
 シンガポールは、建設投資の減少による内需の伸び悩みから成長率の鈍化がみられたものの、IT関連財及びバイオ製品輸出の拡大等による外需の増加から、経済全体としては高い成長を続けており、成長率は05年の6.4%から06年には5.4%程度になると見込まれている。
 インドネシアは、原油価格高騰を受けて金利と燃料価格の引上げが実施され、これに伴い物価が急騰するなど景気への影響が大きかったものの、05年の成長率は04年からやや加速して5.6%となり、97年のアジア通貨危機後では最高の成長率となった。06年も5.7%程度の成長が見込まれる。
タイは、自然災害、原油価格高騰及び金利引上げの影響から景気の拡大は緩やかになっており、成長率は05年に4.5%に減速した。06年は4.9%程度へと回復が予測されている。
 マレーシアは、05年前半は世界的なIT関連財における在庫調整の影響等により成長は鈍化したものの、年後半は消費・設備投資等の内需が好調であり、IT関連財輸出も回復したことから、景気は拡大している。成長率は05年の5.3%から06年も5.3%程度になると予測されている。
フィリピンは、海外労働者からの送金増加により消費が増加しているものの、設備投資及び輸出の鈍化により成長率は鈍化しており05年の成長率は5.1%となった。06年は4.7%程度にやや減速すると予測される。


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