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まえがき

  「世界経済の潮流」は2002年春に創刊され、以後年2回公表しております。第9号にあたる本書は2章から構成され、第1章では「物価安定下の世界経済」として、原油価格の高騰にも関わらず、世界的に物価安定と景気回復が続いていることの要因について分析を行っています。第2章では2006年の見通し、及び世界経済の抱える今後のリスクについて分析しています。  第1章「物価安定下の世界経済」では、原油価格の高騰にも関わらず、世界的に物価安定と景気回復が続いていることの要因として、(1)原油依存度の低下、(2)グローバル化や規制緩和を背景とした企業の価格設定行動の変化に加え、(3)財政金融政策運営の変化を指摘しています。
  特に金融政策については、主要国の中央銀行(FRB、ECB、BOE)の最近の動向をみると、物価上昇率と需給要因の両方を考慮しつつ、フォワードルッキングあるいは予防的な政策運営が行われるようになっています。また、各国ごとの相違もみられるものの、物価安定の重要性の認識の高まり等を背景に、特に90年代半ば以降共通してみられる特徴として、中央銀行の独立性及び金融政策の透明性が向上していること、及び政策の先行きに関するシグナルを市場に与えることにより人々の期待形成に影響を働きかけることを重視するようになったことを指摘しています。そして、それらにより金融政策の有効性が高まり、これらが、中長期的な物価安定及び経済のボラティリィティの縮小にも寄与したと考えられます。
  第2章では世界経済の展望を扱っています。2006年の世界経済も引き続きアメリカ及び中国経済によって牽引され、前年並の着実な成長を続けるものと見込まれます。先行きリスクとしては、(i) 05年を通して過去最高値を更新し続けた原油価格高騰による物価上昇圧力の高まり、(ii) 住宅市場の急減速等によるアメリカ経済の失速、(iii) アメリカの双子の赤字の持続可能性に対する懸念から生じる為替レートの急速な調整と長期金利の上昇等の下方リスクを指摘しています。 本書が、物価安定下の世界経済における政策運営のあり方、さらには世界経済の展望について理解を深める一助となれば幸いです。

 平成18年6月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

高橋 進


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