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17 イタリア         Republic of Italy

<2004年>
イタリア経済のこれまで

<2004年の経済>
  2004年の経済成長率は1.0%となり、前年に比べて伸びは加速したものの、ユーロ圏全体の成長率より低く、景気回復は弱いものとなっている。年前半は、競争力強化のための投資促進税制(研究開発投資費の10%を税控除等、2004年のみ導入)の導入により設備投資が増加し、また雇用環境の改善により消費が緩やかに増加したため、1〜3月期の経済成長率は前期比年率2.0%増、4〜6月期は同1.5%増となった。7〜9月期は同1.5%増となったものの、その後、ユーロ高の影響等により輸出の勢いが弱まるとともに、設備投資は減少し、10〜12月期は同1.8%減とマイナス成長となった。雇用面では、労働市場改革の結果、雇用者数が増加傾向にあり、2004年を通じて失業率は低下し続け、10〜12月期は8.0%となった。消費者物価上昇率は、賃金上昇率の伸びの低下や企業の労働コスト負担の低下により、緩やかに低下し、前年比2.1%となった。

<2005年の経済見通し>
  2005年の経済成長率は約0.4%となり、緩やかながらも景気の回復は続くものの、ユーロ圏全体と比べて低い成長にとどまると予想される(民間機関6社の平均0.4%、2005年5月時点)。

イタリア経済の主要経済指標
民間機関の見通しは、半年前(2004年10月時点1.9%)から大幅に下方修正された。回復の鍵を握る輸出については、機械、衣料製品分野での中国を始めとしたアジア諸国との競合によりイタリア産業の国際競争力が低下しつつある結果、世界貿易に占めるシェアが低下しており、産業競争力強化が課題となっている。成長を支える要因としては、雇用環境の改善と年初に実施された所得税減税の効果が消費に好影響を与えると見込まれる。
  下方リスクとしては、原油価格の高騰やユーロ高が続いた場合、輸出や生産に悪影響を与えるおそれがある。

<財政政策の動向>
  2004年の財政赤字について、政府はGDP比3.0%と発表していたが、欧州委員会で計数調査が行われた結果、5月下旬、欧州委員会は、イタリアの財政赤字は2003年、2004年ともGDP比3.1%と発表した。
  2005年1月から、消費刺激策として、65億ユーロの減税(所得税減税分60億ユーロ、法人税減税分5億ユーロ)が実施された。所得税減税については、最高税率を45%から43%に引下げ、税率を5段階から4段階に簡素化した。また最低税率の課税限度額を引き上げ、基礎控除額も引き上げた。代替財源は、過去の違法建築について一定の違約金を支払うことでそれらの罪を免じる「違法建築違約金」の徴収や印紙税の増税等により確保することとなっている。
  また、欧州委員会は、財政赤字見通しについて2005年は同3.6%、2006年は4.6%に悪化するとしている。2005年6月、欧州委員会はイタリアについて、「安定成長協定」に基づく過剰財政赤字是正手続き開始の第一段階として、報告書を作成した。早ければ7月にもEU経済財務理事会(ECOFIN)においてイタリアに対する過剰財政赤字是正手続きが進められる見通しとなっている。政府の財政赤字削減のための対応策が注目されている。


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