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11  フィリピン     Republic of the Philippines

フィリピン経済のこれまで

<2002年の経済>
 2002年の経済成長率は、政府見通し(4.0〜4.5%)を上回り4.6%となった。個人消費などの内需が拡大したことなどから、97年の5.2%以来の高い伸びとなった。2001年に落ち込んでいたIT関連を中心とした製造業部門の生産が拡大し、輸出の半分を占める電子機械・同部品が増加した。また、2001年に引き続きサービス部門生産が前年比5.4%増と高い伸びを示した。農林水産業はエルニーニョの影響を受けたものの、同3.5%と増加を維持した。雇用については、サービス部門の好調に加え、輸出回復に伴い製造業部門でも拡大した。これらの結果、所得が増加し、個人消費が拡大するという好循環が生じている。

フィリピンの主要経済指標

<2003年の経済見通し>
 2003年は4%程度の成長になると見込まれる(政府見通し4.2〜5.2%、民間機関6社の平均3.9%(2003年4月時点))。民間機関の見通しは、半年前(2002年10月時点4.0%)に比べてわ
 ずかに下方修正されている。
 成長を支える要因としては、個人消費を中心とした内需の堅調さが挙げられる。
 下方リスクとしては、財政赤字の拡大を背景に海外投資家の投資意欲の低下から資金調達が不安定になること、アジアを中心に流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)により観光客の減少が見込まれ、観光業が打撃を受けることなどが懸念される。

<財政金融政策の動向>
 財政は97年まで黒字を維持していたが、アジア通貨危機後税収が減少し、98年以降赤字が続いている。政府は、支出の削減を図る一方で徴税制度を整備し税収確保に努めるなど赤字削減に取り組んでいる。しかし、2002年の徴税状況は政府の目標を下回り、財政赤字は2,127億ペソ(GDP比▲5.3%)と、2002年当初見込額の1,300億ペソ(GDP比▲3.3%)を大幅に上回った。また、2003年の財政赤字見込み額も、1,420億ペソから2,107億ペソ(GDP比%▲5.1%)へと、昨年10月頃の時点の見込み額から引き上げられた。予算管理省が財政運営の指針としている中期開発計画では、財政赤字額を2001年から5年かけて徐々に減らし、2006年までに財政均衡を図る計画であったが、事実上達成が困難と見込まれたため、2009年までに財政均衡を図ることに先送りした。また、政府はアジアを中心に流行しているSARSの国内侵入を防ぐため、対策チームを発足させ、そのための準備金として15億ペソ(約6億円)を政府対策チームに割り当てた。
 金融政策については、政策金利である翌日物借入金利及び貸出金利は、2002年半ば以降それぞれ7.0%、9.25%と10年ぶりの低水準のまま据え置かれている。通貨は、2002年5月以降米ドルに対し減価していたが、2003年3月下旬から増価基調に転じている。
 2002年の消費者物価上昇率は、食品価格が安定的に推移したことから前年比3.1%となり、2002年1月に導入されたインフレ目標の4.5〜5.5%を下回り安定して推移した。2003年のインフレ目標は4.5〜5.5%、2004年のインフレ目標は4〜5%としている。


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