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第II部のポイント

1.2002年後半以降イラク情勢の緊迫がアメリカ経済の下押し圧力に

●イラク情勢の緊迫による先行き不透明感の高まりは、アメリカにおける株価下落や企業マインド悪化を強め、企業部門の回復を妨げた。その結果、設備投資や雇用に対する姿勢が慎重になった。 
●雇用の回復が遅れたことに加えて、イラク情勢の影響で原油価格上昇、株価下落、消費者マインドの悪化が起こったことで、個人消費の伸びも鈍化した。企業部門の回復の遅れと個人消費の伸び鈍化が重なり、2002年後半から2003年前半にかけてアメリカ経済の下押し圧力が高まり、景気の回復力を弱めた。

2.イラク戦争による深刻な悪影響は回避の見込み

●イラク戦争の開始前後に、原油価格・為替相場といった市場動向や、消費者マインドに大きな混乱はみられなかった。戦争による深刻な悪影響は回避されたと考えられる。
●ただし、雇用情勢の厳しさから消費者マインドの急速な改善は望み薄であり、2003年前半の消費の回復は弱いものと考えられる。設備投資は持ち直しの動きが続いているが、先行指標からみると年前半の回復は弱いものにとどまるとみられる。

3.双子の赤字拡大が懸念

●アメリカの財政収支は、2003年初の時点ですでに2003〜04年度は大幅な赤字が見込まれていた。イラク戦争の開始後、戦費調達を中心とする790億ドルの補正予算が可決され、さらに赤字幅が拡大するとみられている。
●一方、経常収支赤字も拡大傾向にあり、過去最大規模となっている。財政収支、経常収支の「双子の赤字」は、ドル相場の不透明感を増す一因となるほか、金利の上昇を通じ、長期的にアメリカ経済の成長力を低下させる懸念がある。

4.世界経済は2003年前半に弱い動き

●2002年後半以降イラク情勢の緊迫により不透明感が増加するなかで、欧米を中心に景気回復力は弱まった。とくに、欧米の企業部門は回復が遅れている。アジアにおいても、2003年に入って対米輸出を中心に輸出が鈍化しており、また流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響が先行き不透明感を高めている。
●こうしたことから、2003年の世界経済は、年前半は弱い動きとなることが見込まれている。
●今後の展望では、イラク戦争がマインドに与えた悪影響がどの程度の速さで改善に向かうか、また、欧米でみられる企業部門の弱さがどれほど克服されていくかがポイントとなる。中心シナリオとしては、主要国のマインドが改善に向かう一方で、アジアの成長が持続すれば、世界経済は年後半にかけて緩やかに回復を強めていくものと期待される。


第II部 世界経済の展望――2003年前半は弱い動き

 海外経済(日本に関係の深い22か国・地域)は、アメリカ経済の回復が牽引の主役となる中で、2002年央にかけて景気回復の動きが進んでいた。しかし、2002年後半になると、世界的にマインドが悪化し、景気回復の勢いが徐々に弱まりだした。秋時点では、2003年前半までは回復が緩やかになるが、後半にかけて成長率は高まると考えられていた。しかし、その後こうした見方は下方修正され、年前半は一層の低い成長が見込まれるようになっている。
 以下では、2003年の海外経済の中心的なシナリオを整理する。そして、2002年秋以降のイラク情勢の緊迫が世界経済、とりわけアメリカに与えた影響を明らかにする。


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