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まえがき

「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。

世界経済は、アメリカでは雇用情勢の改善を背景に景気が緩やかに回復傾向にあるなど先進国では明るい動きがみられ、中国でも輸出などにけん引される形で拡大テンポが安定化してきています。他方、一部の新興国では13年半ばより資金流出等を契機として景気減速の動きもみられています。このように、世界経済は弱い回復が続いていますが、先進国の動向など一部に底堅さもみられています。

第1章の「主要国・地域の経済動向と見通し」では、13年以降の世界経済の現状を概観した後、特にアメリカ及びヨーロッパについてはディスインフレ傾向の背景や景気の回復力、財政・金融政策の影響について整理しております。加えて、中国経済と新興国経済との連関の高まり等も問題意識に加えつつ、各国・地域の経済動向について掘り下げております。また、世界経済の今後の見通しについて想定されるシナリオを描くとともに、アメリカの金融政策変更に伴う波及効果等、主要な下振れリスクについても整理しております。

第2章の「中国の成長力の変化と世界経済」では、高度経済成長が一段落した中国が「中所得国の罠」に陥るのではないかの懸念もある中、イノベーションの寄与を高めつつ安定成長へ移行していくための課題について点検しています。この分析では、中所得国の成長経路を規定する要因として、製造業を核とした好循環が重要であることを示しています。それとともに、過剰生産能力や住宅市場過熱もみられる中国経済がソフトランディングするための課題について各国の経験を基に概観し、最後に中国経済の構造変化等が世界経済に及ぼし得る影響についてまとめております。

我が国の経済財政政策の適切な運営に当たっては、その前提としてこうした我が国を巡る世界経済の現状や先行きを的確に把握することが極めて重要です。本報告書がその理解を深める際の一助となれば幸いです。

平成25年12月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

西崎 文平

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