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まえがき

「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。

2012年に入り、世界経済は先行き不透明感が依然高い中、減速の動きに広がりもみられ、弱い回復が続いております。欧州政府債務危機の抜本的な解決に向けた道のりは遠く、アメリカでもいわゆる“財政の崖”問題を巡る緊張がにわかに高まっているなど、先行きについての大きな下振れリスクが絶えない状況が続いています。こうした景気動向に対応して各国・地域で既に実施されている経済政策や金融緩和により、一部で改善の兆しもみられておりますが、減速局面からの脱却に向けその効果の着実な発現が期待されるところです。

第1章の「主要国・地域の経済動向と見通し」では、弱い回復が続く世界経済の現状を概観した後、各国・地域毎に減速局面に陥っている背景や要因を掘り下げるとともに、財政や金融面での対応策とその効果について取り上げています。また、世界経済の今後の見通しについて想定されるシナリオを描くとともに、主要な下振れリスクについて検討しております。

第2章の「欧州通貨統合の評価と課題」では、今般の欧州政府債務危機により、その真価を問われている共通通貨ユーロやそれを支えるユーロシステムについて、これまでの成果や問題点を総合的に検証しています。その際、特に、国際通貨としてのプレゼンス、経済パフォーマンスや貿易・資本取引への影響、リスクやショックに対する耐性・許容度といった3つの視点を重視しました。さらに、近隣非ユーロ加盟国やかつて通貨危機を経験したアジア地域との多面的な比較・分析を踏まえつつ、通貨制度を安定的に維持するための課題について整理しております。

我が国の経済財政政策の適切な運営にあたっては、その前提としてこうした我が国を巡る世界経済の現状や先行きを的確に把握することが極めて重要です。本報告書がその理解を深める際の一助となれば幸いです。

平成24年12月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

西崎 文平

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