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4.アジア経済の見通しとリスク

 アジア経済は、中国では景気の拡大が続いている一方、インドでは景気の拡大が続いているものの、拡大テンポがやや緩やかになっている。また、韓国、台湾、ASEAN地域では総じて景気は回復しているが回復テンポが緩やかになっている。以下では、アジア経済の先行きに係るメインシナリオとそれに対するリスク要因についてみていく。

(1)経済見通し(メインシナリオ)‐ 拡大ないし回復傾向が続くも、金融資本市場の動きや欧米向け輸出の動向に注意

 中国では、景気は内需を中心に拡大している。11年第3四半期の実質経済成長率が前年比9.1%となるなど、11年以降、成長率はやや低下してきているものの、11年の経済成長目標である前年比8.0%を上回る高い経済成長を維持している。先行きについては、引き続き内需が堅調に推移し、景気は拡大傾向が続くと見込まれる(第2-3-93図)。

第2-3-93図 中国の実質経済成長率と需要項目別寄与度
第2-3-93図 中国の実質経済成長率と需要項目別寄与度

 インドでは、景気は内需を中心に拡大しているが、回復テンポがやや緩やかになっている。先行きについては、引き続き内需が堅調に推移すると見込まれることから、拡大傾向が続くと見込まれる。

 その他アジア地域をみると、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、タイともに景気は回復しているものの、総じて輸出が減少傾向となる中、回復テンポが緩やかとなっており、特にタイでは11年7月以降、洪水の影響もみられる。

 アジア経済は、物価や中国における不動産価格等の上昇に加え、このところの金融資本市場の動きや欧米の景気減速による輸出への影響に留意が必要であるものの、適切な経済政策運営がなされれば、総じて拡大ないし回復傾向が続くものと見込まれる。

 また、国際機関の見通しをみると、12年に中国は前年比9%程度、インドは同7~8%台の成長率が見込まれている。その他のアジア地域についても、韓国、台湾、シンガポールは前年比4~5%台と、依然高い成長率が見込まれている(第2-3-94表)。こうした見方は、おおむね妥当と考える。

第2-3-94表 アジア各国の実質経済成長率の見通し
第2-3-94表 アジア各国の実質経済成長率の見通し

(2)経済見通しに係るリスク要因

 アジア経済の先行きに関するリスクに関しては、下方に大きく偏っており、不動産価格の上昇とそれに対応した引締め強化による内需への影響等、各種リスクが存在する。

(i)中国における不動産価格の上昇とそれに対応した引締め強化による内需への影響

 中国では、世界金融危機発生後の金融緩和を背景に、不動産向け貸出が急増し、09年半ば頃から不動産価格が上昇するなど、不動産市場過熱が懸念されてきた。10年4月から3回にわたって不動産価格抑制策が打ち出されたことにより、11年6月以降、不動産価格は北京、深セン、上海等大都市を中心に高水準ながら横ばいとなってきている。しかし、一部の地方都市を中心にいまだ不動産価格の上昇圧力は続いている。

 今後、現在横ばいとなっている大都市の不動産価格が急速に低下した場合、あるいは逆に不動産価格の上昇が加速して更なる金融引締め策が採られ、その効果が予想以上に強く現れた場合のいずれの場合においても、資産価格の急速な下落や内需の急激な冷え込みが景気減速につながるおそれがある。さらに、中国の景気減速により、近年中国向け輸出を拡大している韓国、台湾、ASEAN地域等の景気をも減速させるおそれがある。

(ii)欧米の景気回復の停滞に伴う輸出の低迷

 欧米では、景気は持ち直しのテンポが緩やかないし弱い回復となっており、ヨーロッパにおけるソブリン問題の深刻化等、下振れリスク要因も多い。欧米の景気が更に停滞すれば、輸出への影響を通じて、特に、国内市場の小さい韓国、台湾、シンガポール等においても景気回復のペースが更に緩やかとなるおそれがある。また、欧米向け輸出が10年の輸出総額の約4割を占める中国においても成長のペースが緩やかになるおそれがある。

(iii)金融資本市場の動向

 11年9月以降、ヨーロッパにおけるソブリン問題の影響で、アジア各国の金融資本市場は大幅な自国通貨安、株安となった。10月に入ってからは各国ともに持ち直しの動きはあるものの、自国通貨安が継続する場合には、輸入品物価の上昇や各国・地域が保有する外貨建て債務の返済負担の増加につながる可能性がある。また、株価下落など資産効果を通じた個人消費の抑制や、信用収縮に伴う資金調達コストの増加による設備投資の抑制などの影響も考えられる。

(iv)物価上昇の加速

 内需を中心とした景気拡大を背景に、主に中国、インドで物価上昇率の高い伸びが続いている。中国における10年秋頃からの金融引締めの加速や、インドにおける10年3月以降の政策金利の引上げの継続にもかかわらず、今後も更なる物価上昇が続いた場合には、消費への下押し圧力となることが懸念される。

(v)タイ洪水被害による生産活動等への影響

 11年7月以降、タイ北部、中部地方を中心に広い地域で冠水等の洪水被害が発生している。10月に入ってからはバンコク周辺にある7つの工業団地にも被害が拡大しており、特にタイに進出している自動車関係、ハードディスクドライブ(HDD)等の電子機器等の国内生産活動に影響が出始めている。また、生産活動の停止により、タイだけでなく、ASEAN地域等におけるサプライチェーン寸断の影響が懸念される。一部工業団地では復旧に向けた活動が開始されているものの、工業団地に入居している企業の操業再開はいまだ不透明な状況にある。今後、復旧、復興活動に遅れが出れば、生産活動への一時的影響だけでなく、生産活動の他国工場へのシフトなどにより、タイの国内経済全体への中長期的にも影響が及ぶおそれがある。また、ASEAN域内の経済活動に更なる影響が出るおそれがある。

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