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まえがき

 「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告です。昨年秋のリーマン・ブラザーズ破たんを契機とする世界金融・経済危機が示しているように、グローバル化の中で、日本経済は世界の経済の動きにますます影響を受けるようになっています。世界経済の流れを的確にとらえ、見通すことは、日本の経済財政政策運営の上でも非常に重要です。こうした中にあって、「世界経済の潮流」では、「月例経済報告」を始め経済に対する政府の見方のバックグラウンドとなる分析を行っています。
 今回公表する「世界経済の潮流2009II」の特徴は、欧米の金融資本市場が昨年来の危機から脱して落ち着きをみせつつある一方、金融危機の影響が実体経済に広がり、雇用面で危機的な様相を呈しつつある現況と先行きの展望について分析するとともに、緊急避難的に採られた財政金融政策の「出口戦略」の考え方について整理したことです。こうしたことから、副題を「雇用危機下の出口戦略:景気回復はいつ?出口はどのように?」としました。
 また、今回の第1章「世界経済の回復の持続性」では、従来の構成にとらわれず、日本経済の持ち直しを支えるなど、日本経済を考える上で重要度を増しているアジア経済に関する分析を重視しました。
 さらに、第2章「緊急避難的な経済政策からの出口戦略」では、世界金融・経済危機に対処するために講じられた大規模で異例の財政政策・金融政策を、平時の政策運営に戻す際の「出口戦略」を取り上げています。この中で、アメリカやヨーロッパにおける政策の在り方について考察し、具体的に取り組む際の課題について指摘している点も、今回の新しい取組です。
第3章「世界経済の見通しとリスク」も、今後の日本経済の展望を考える上で重要なポイントとなります。第1章と第2章の分析を踏まえ、世界経済の先行きについて、想定されるシナリオを提示するとともに、そのリスクについて検討しています。
 本書が、世界経済の現状や今後の展望について、理解を深める一助となれば幸いです。

  平成21年11月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
齋藤  潤


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