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13 ユーロ圏             Euro Area

ユーロ圏経済のこれまで

<2008年の経済>
  2008年の経済成長率は1%程度となる見込みである(欧州委員会の見通し1.2 %(08年11月時点)、民間機関24社の平均1.0%(08年12月時点)、いずれも前回見通し(08年05月)に比べて下方修正されている)。
  サブプライム住宅ローン問題に端を発する国際的な金融資本市場の混乱により、ユーロ圏の景気は弱含んでいたが、08年4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続で経済成長率が前期比マイナスとなり、景気は後退局面にあることが確認された。景気が悪化した背景としては、(1)住宅バブルの崩壊、(2)消費の冷え込み、(3)輸出の減速といった要因が挙げられるが、特に9月半ばの世界的な金融危機以降は、信用収縮や世界的な需要の冷え込みにより、景気は一段と悪化している。
  受注の減少や業況の急速な悪化等から企業は投資を手控え、製造業では減産の動きも広がっている。08年秋まで高い物価上昇率となったことなどから実質賃金上昇率は伸び悩んでおり、景気の先行きや雇用情勢の悪化、株安による金融資産の目減り等もあって家計は貯蓄性向を高めている。景気後退下でも低下が続いていた失業率は、08年半ばには下げ止まり、悪化に転じている。通貨ユーロは08年夏頃までおおむね増価傾向で推移していたものの、金融危機後は主要通貨に対し減価、名目実効為替レートでみて年初から約5%減価している。

ユーロ圏の主要経済指標

<2009年の経済見通し>
  2009年の経済成長率は、マイナス成長となる見込みである(欧州委員会0.1%(08年11月時点)、IMF▲0.5%(08年11月時点)、民間機関24社の平均▲0.6%(08年12月時点)といずれも前回見通し(08年春)から下方修正)。金融危機の深刻化による信用収縮、雇用・所得環境の悪化、住宅バブル崩壊に伴う逆資産効果等により、消費、投資といった内需の柱は低迷が続くと見込まれ、輸出先の需要減退から、外需の伸びも低調なものとなると考えられる。09年中に金融危機の影響が収束すると仮定すると、09年後半頃に緩やかな持ち直しの動きが現れると予想される。
  上方リスクとしては、物価下落による個人消費の回復、アメリカ及び世界経済の早期回復、財政政策による景気の下支え等が考えられるものの、リスクの多くは下方に偏っているとみられる。すなわち、金融危機の長期化・深刻化、金融機関の隠れた不良資産の顕在化、住宅市場の調整の長期化、輸出先の景気回復の遅れなどが懸念され、これらが顕在化した場合、ユーロ圏の景気後退は長期化・深刻化すると予想される。

<財政金融政策の動向>
  08年9月半ば以降、銀行間金利や信用リスクの急速な上昇から短期金融市場が機能不全に陥り、資金繰りに窮し経営が悪化する金融機関が相次いだ。また、10月以降金融危機は深刻化し、実体経済へも急速に波及しているため、財政金融政策による対応が発動されている。
  財政をみると、欧州委員会及び各国政府は金融機関の救済を含む金融システム安定化策や経済対策を発表しており、今後財政収支の悪化が予想される。このため、安定成長協定における財政規律(財政赤字のGDP比3%以内)は、10月の欧州理事会において「現在の例外的な状況」を反映した形で適用されることが確認されている。なお、12月にはEU全体で総額2,000億ユーロ規模の経済対策(EU予算:300億ユーロ、各国予算:1,700億ユーロ)を行うことが合意されている。
  金融政策をみると、05年12月から08年7月にかけて金融引締めを行った欧州中央銀行(ECB)は、08年秋以降、消費者物価上昇率の急速な鈍化や金融危機による景気後退を受けて、大幅な金融緩和に転じている。10月には他の主要国中央銀行と協調して0.5%の利下げを行い、その後、11月にも0.5%、さらに、12月4日には99年のECB設立以来最大の下げ幅となる0.75%の利下げを行い、3か月の間に累計1.75%の利下げを実施している。


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