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第 I 部 海外経済の動向・政策分析

第1章 サブプライム住宅ローン問題の背景と影響

第3節 主要国の住宅ブームの動向とリスク

3. 住宅市場の調整及びサブプライム住宅ローンが与える影響

 これまで主要国の住宅価格の動向とサブプライム住宅ローン市場も含めた住宅ローン市場の動向をみてきたが、今後の住宅部門の調整や経済活動全般にどのようなリスクがあるのかについて考察したい。
 住宅価格が過大評価されている場合は住宅部門の調整が大幅なものとなる可能性があるが、住宅価格の上昇がみられた国では、住宅販売・建設の活発な経済活動がこれまで経済成長を支えてきた面もあるため、住宅部門の調整は住宅投資の減少を通じて経済成長に対し下方圧力となるおそれがある(52)
 また、住宅価格の下落が生じた場合、住宅価格と個人消費の相関の度合いは国によって異なるものの、逆資産効果を通じて消費を押し下げる可能性がある。特にアメリカと同様、MEWによって住宅資産を担保とした追加的な借入れを行い消費に充てることが広く行われている国においては、担保資産の下落が消費に与える影響も大きいと考えられる(53)。さらに、住宅ローン市場の特徴として持ち家率や住宅ローン債務比率が高く、変動金利型ローンが主流となっているような国では、住宅価格や金利の動向に対して家計のバランスシートが変動しやすいと考えられるため留意が必要である(第1-3-8図)
 サブプライム住宅ローン市場が存在する国においては、アメリカ同様に延滞率の増加やデフォルトが発生するか否かが重要であるが、英国、オーストラリア、カナダにおいては、借手における住宅ローンの返済リスクが比較的低いことや、サブプライム住宅ローン市場の規模が小さいことなどを考慮すると、アメリカと比較すると住宅部門の調整や経済全般に与える影響は限定的と考えられる。ただし、これらの国でも、サブプライム住宅ローンの証券化は広範に行われていることから、貸付機関のインセンティブや情報開示に対する留意は必要である。またCMHCが保証を行っているカナダ以外の国では、アメリカのサブプライム住宅ローン問題と同様に、サブプライム住宅ローンのデフォルトが多数発生した場合、その損失が特定の金融機関に集中することは回避される反面、損失が分散されて所在・規模が不透明になり、金融資本市場における信用不安を高めるといったリスクは必ずしも排除できないと考えられる。


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