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第 I 部 海外経済の動向・政策分析

第1章 先進各国の財政政策の動向

第2節 財政政策と景気変動・経済成長

2.金融政策との関係

 財政政策の在り方を考える上ではまた、金融政策との関係が非常に重要である。
 金融政策については、近年において、国によって相違はあるものの概していえば、その有効性を高め、中長期的な物価安定と経済のボラティリティの縮小に寄与してきたと考えられる。その背景としては、中央銀行の独立性と金融政策運営の透明性の向上、経済分析能力の向上、そして経済財政政策に対する考え方がスタグフレーション等の経験から中期的安定性を志向するものに変化してきたことなどが挙げられよう。これらを背景に、明確なコミットメントを示して市場との対話を行い、経済主体の期待形成に影響を与えつつ、フォワードルッキングな、すなわち将来の経済情勢と政策効果を見越して予防的な政策運営を行う政策運営スタイルが定着し効果を発揮していると考えられる。
 金融政策がこのように進歩していることも、財政政策について、中期的な安定性を重視することが有効であると考えられる理由となる。Taylor (2000)は、金融政策の適切性・有効性が近年大幅に向上している一方で財政政策については時間的ラグや政治的コンセンサスを得ることの困難という従来から指摘されてきた問題が依然として続いていることを指摘し、「景気調節機能は金融政策に委ねるべき」としている。さらに、財政政策が裁量的に行われる場合には、金融政策の与件としての「財政政策の予測に時間を費やすこととなり」、「連銀の任務を困難にする可能性」すらあるので、そうした理由からも「財政は自動安定化機能に焦点を当てる」べきとしている(38)
 実際に、各国の金融政策においては、物価の安定とともに、景気の要因も考慮して行われていると考えられる。これは、物価の安定と景気の調整の二つの要因で金融政策の変動を説明する「テイラー・ルール」により、先進各国の金融政策をかなりの程度説明できることから実証的にも裏付けられていると考えられる(39)。したがって、景気との関係では、金融政策の役割が相対的に高まっていると考えられる。


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