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9 タイ     The Kingdom of Thailand

<2004年>

タイ経済のこれまで

<2005年の経済>
 2005年の経済成長率は、4%程度になるものと見込まれる(政府見通し3.8〜4.3%、民間機関9社の平均4.3%(05年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(05年5月時点5.1%)に比べ、下方修正されている。05年前半は、スマトラ島沖大地震による津波の被害によって外国人旅行客数が1〜6月期は前年同期比3.7%減となるなど観光業を中心に不振となったことに加え、年前半の干ばつにより農作物の生産が落ち込んだ。また、原油価格の高騰の影響による消費者物価の上昇及び消費者マインドの低下等があり、1〜3月期の経済成長率は前年同期比3.3%、4〜6月期は同4.4%と前年に比して景気の拡大は緩やかになっている。政府は景気を下支えしてきた個人消費の鈍化に対し、7月より、公務員給与及び公務員退職金の引上げ、最低賃金の引上げ、従業員の福利厚生に関わる税制上の優遇政策、農村への補助金交付等の政策を実施している。タイでは原油高を抑えるため、補助金により燃料価格を低く抑えてきたが、04年10月のガソリン価格に続き、05年7月にはディーゼル価格への補助金を廃止した。そのため、7〜9月期の消費者物価上昇率は同5.6%と急速に高まっている。

タイの主要経済指標

<2006年の経済見通し>
 06年の経済成長率は5%程度になると見込まれる(政府見通し5〜5.5%、民間機関9社の平均5.8%(05年10月時点))。
 成長を支える要因としては、今後5年間にわたり1.7兆バーツの規模で交通・情報通信等の基盤的な社会資本の整備を目的とした公共投資が行われることによる内需の拡大、低失業率、最低賃金及び公務員給与の引上げによる雇用者所得の増加が個人消費の下支えとなること等がある。
 下方リスクとしては、(1)原油価格高騰によって生産コスト・消費者物価の上昇が続くことによる生産や消費への影響、(2) 鳥インフルエンザの流行が与える農業及び観光業への影響、(3) 最南部3県の治安悪化によるタイ経済に対する信頼感の低下と海外からの直接投資減少や観光業への影響等がある。

<財政金融政策の動向>
 アジア通貨危機以降、財政赤字が続いていたが、05年度(04年10月〜05年9月)は企業業績の好調による法人税収の増加、消費拡大による付加価値税(VAT)収の増加により、歳入は前年度比14.3%増の1兆4,743億バーツとなり予算を7.9%上回った。その結果、財政収支は約1,200億バーツの財政黒字に転じた。10月から新会計年度に入り、06年度(05年10月〜06年9月)予算を実施している。政府は前年度比8.8%の増加となる1兆3,600億バーツの歳出を予定しており、主に空港や鉄道建設等のインフラ整備に充てられる。
 金融政策については、原油価格の高騰を受け物価上昇率が高まってきていることから、タイ中央銀行は政策金利である14日物レポ金利を04年8月以降0.25%ポイントずつ段階的に引き上げており、特に05年に入ってからは5回実施し、そのうち9月及び10月は0.5%ポイントずつ引き上げ、現時点では3.75%となっている。


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