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第 II 部 第2章のポイント

1.原油価格の高騰とその背景

●国際石油市場における原油価格が高騰している。2003年に上昇を始めた国際石油市場における代表的指標銘柄であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)先物価格(中心限月)は04年には55.2ドル/バーレル(終値)に達し、2005年には8月30日に69.8ドル/バーレル(同)と過去最高額を記録した。またWTI以外の主要銘柄である北海ブレント、ドバイの価格もそれぞれここ数年で大幅に上昇している。
●この背景には、アメリカ、中国等を中心とした原油消費量の増加といった需要側の要因、地政学的不確実性や新油井開発不足、石油精製能力が十分でないなどの供給側の要因、並びに国際石油市場への投機資金の流入といった要因があるとされている。

2.原油価格の高騰が世界経済に与える影響

●原油価格の上昇は、原油消費国から原油生産国への所得移転効果を伴う。また企業の原材料調達コストの上昇を通じて企業収益を圧迫し、石油製品等の価格上昇を通じて家計の実質所得を減少させることになる。
●各種見通しによると05年から06年にかけて原油価格(WTI先物価格)は60ドル台と高い水準で推移することが見込まれている。
●世界の物価上昇率は原油価格の上昇により若干上昇しているものの、いまだ穏やかな水準にとどまっている。主要先進国のコア物価上昇率は概して穏やかであり、インフレ期待も比較的抑制されている。アジア諸国ではインフレ圧力は先進国より若干強まっている。
●先進諸国では原油価格の高騰の影響は軽微と考えられる。この要因としては省エネルギー指向や産業のソフト化が進んだ結果、実質GDP1単位当たりの原油消費量(原単位)が主要先進国を中心に低下していることから、原油価格の上昇が実体経済へ与えるインパクトが相当程度弱まっていることが考えられる。
●一方、アジア諸国は過去30年程度でみても、エネルギー原単位は改善していないなど、エネルギー効率性は低い。多くの国では燃料補助金制度によって原油価格の高騰の物価への影響を限定的にしているものの、原油価格が継続的に高い水準を維持する場合には、財政赤字額の増加を通して経済に対して悪影響を与えることが予想される。


第 II 部 世界経済の展望

第2章 国際石油市場の動向と世界経済への影響

 国際石油市場における原油価格が高騰している。2003年に上昇を始めた国際石油市場における代表的指標銘柄であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)先物価格(中心限月)は04年には55.2ドル/バーレル(終値)に達し、05年には8月30日に69.8ドル/バーレル(同)と過去最高額を記録した(第2-1-1図)。またWTI以外の主要銘柄である北海ブレント、ドバイの価格もそれぞれここ数年で大幅に上昇している。
 今回の価格上昇は過去の2度のオイルショックの時と異なり、一時的な供給ショックによるものではなく、構造的な要因が背景にある点が特徴としてある。中国やアメリカ経済の堅調な拡大に伴う消費増、及びそれに比して供給能力が十分なものではないという需給面の要因に加え、原油が国際的に投機対象となっている点がそれにあたる。05年8月から9月にかけての急激な高騰は、アメリカメキシコ湾岸に上陸したハリケーン被害という一時的な要因はあるものの、その背景として存在するこのような状況は当面解消される見込みは薄く、原油価格の高止まりが世界経済に与える影響が懸念されている。また、中長期的な展望については供給サイドの開発投資の動向、代替エネルギーの開発やエネルギー効率性の改善等も考慮に入れる必要がある。


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