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第 I 部 海外経済の動向・政策分析

第2章 住宅価格の上昇と消費拡大の効果―アメリカ、英国を中心に―

第1節 国別の住宅価格動向とその背景

 90年代後半以降、アメリカ、英国を始めとした幾つかの先進国(2)において、住宅価格の上昇が目立つようになった。本節では、5つの国(アメリカ、英国、オーストラリア、スペイン、フランス)を取り上げる(3)

1.主要国の住宅価格動向

(1)アメリカ

●2003年半ば以降加速した住宅価格の上昇と2005年半ば以降みられる鈍化の兆し
 アメリカの住宅価格の動向をOFHEO(連邦住宅機関監督局)住宅価格指数でみると、90年代半ば以降上昇率が徐々に高まり、2000年から03年にかけて概ね6〜8%台の上昇を続けた後、特に04年に入って以降は10〜13%台と2桁の伸びとなった。これは80年代末の「住宅ブーム」時の伸び率を上回っている。

コラム "Bubble"でなく"Froth"―なぜ局所的に住宅が急上昇するのか―

 アメリカの住宅価格の高騰は、カリフォルニアやニューヨーク、フロリダ等、いわゆるリゾート地や主要大都市に集中しており、全国的な現象ではないとする見方がある。
 グリーンスパンFRB議長は05年6月以降、こうした局所的な住宅価格高騰現象について、"Froth(小さな泡)"という言葉を用いて、80年代後半に経験したような"Bubble"ではないものの、地域的には持続可能でない水準に達しているとした(4)。例えば、ボストンやニューヨーク、サンフランシスコ等の主要都市の住宅価格は、物価上昇分を考慮しても95年から10年間で75%も上昇しており、全国レベルの上昇率の約2倍となっている。その一方でヒューストンのようにほとんど上昇していない都市もある。

局所的に高い住宅価格上昇率

 同じ低金利下にありながら、住宅価格の動向が地域によって二極化する要因についてより詳細な実証分析がある(5)。これは、後述するように、住宅価格/賃貸料で住宅価格を評価するものである。
 今般、大幅な住宅価格上昇がみられている都市は、歴史的にみてもほぼ恒常的に全国平均上昇率を上回っており、今般の「住宅ブーム」局面におけるこれらの都市の上昇率は数字としては高いものの、80年代後半の明らかにファンダメンタルズから乖離した「バブル」的な状況(6)と比べると健全な状況にある。その根拠として、大都市の住宅保有にかかるユーザーコスト(7)が他地域よりも低下していることが指摘されている。ユーザーコストが大都市において相対的に低くなる最大の要因は、期待キャピタルゲイン上昇率が他地域に比べて高いことであり、期待住宅価格上昇率が高くなる背景として、住宅市場の需給関係が挙げられる。
 大都市では、集積のメリット等により、実際にそこに居住したいという需要が高い一方で、それに見合った供給量を確保するのは困難であるため、常に住宅の超過需要が存在し、均衡価格は時とともに高まっていくこととなる。また、将来においても高い上昇率が安定的に実現すると予想されるために、住宅購入希望者は、多少高額であっても転売の際のキャピタルゲインを期待して購入することを選択する。これらの要素が期待価格上昇率の高まりに拍車をかけている。現下の低金利によってユーザーコストが既に低い水準にある中、期待キャピタルゲイン上昇率の高まりによる追加的なユーザーコストの低下は均衡価格をより大きく押し上げることとなる。したがって、居住需要が高い大都市では、価格の上昇率が大幅に高まっていても必ずしも異常な状況だとはいうことはできない。
 しかし、地域的特性が住宅価格決定にあたり重要な要因であったとしても、局所的な住宅価格の高騰は、時とともに徐々に周辺地域に波及していく性質を持っている(8)。したがって将来的に"Froth"が"Bubble"となる可能性がないとはいい切れない(9)
 グリーンスパンFRB議長は、9月26日の時点では、まだこうした異常な動きが全国レベルに拡大するか否かについて判断するのは時期尚早としつつも、引き続き住宅価格の先行きについて警戒的な態度を崩さないのも、そうした住宅価格特有の性質も踏まえた上であろう。

 しかし、05年以降、OFHEO住宅価格指数は4〜6月期まで高い伸びが続いているものの、住宅価格の鈍化を示唆する指標も散見されている。まず、実際に販売された住宅の価格動向を示す新築住宅販売価格上昇率は、昨年末より低下する傾向がみられ、04年の平均上昇率14%から、05年1〜9月の平均上昇率は6%弱となっている。また、10月の地区連銀報告(ベージュブック)では幾つかの地区で住宅需要が鈍化したとの報告がなされている。
 こうした動きの要因として、住宅価格がここ数年で大幅に上昇した結果、住宅購入需要を抑制する水準にまで達した可能性が考えられる。所得や住宅ローン金利等を踏まえ、総合的な家計の住宅取得能力を算出した住宅取得能力(アフォーダビリティ)指数をみると、本年に入って悪化する傾向がみられている(第2-1-2図)。また、ミシガン大学のアンケート結果においても所得は伸びているものの、価格が高いことを理由に住宅購入を見送ると回答する人が増加している。
 NABE(National Association For Business Economics)の経済見通し(9月)においても、06年の価格上昇率は前年比4.8%と、05年の10%を大きく下回ると予想されている。

(2)英国、オーストラリア

●英国
 英国の住宅価格は2000年1月に前年同月比15.7%まで上昇した後、01年1月に同1.2%まで鈍化した。しかし、その後再び伸び率が上昇し、02年から04年半ばまで15%を超える大幅な上昇が続いた。04年後半以降住宅価格上昇率は低下しているが、これまでのところ下落にまでは至らず足元では緩やかに持ち直しており、ほぼソフトランディングした(10)との指摘もある。

●オーストラリア
 オーストラリアの住宅価格が本格的に上昇し始めたのは、01年半ば以降である。その後も10%台の高い伸びを続け、03年には約18%上昇した。しかしそれをピークに04年に入ると住宅価格上昇率は鈍化し、05年には下落するに至った。

(3)ユーロ圏(スペイン、フランス)

 フランスでは97年、スペインでは98年頃から住宅価格上昇率がプラスとなり、02年頃から加速がみられ、フランスでは02〜04年の平均上昇率が11.8%増、スペインは同16.9%増と2桁の上昇となっている。

(4)住宅価格と2つのファンダメンタルズ指標

 以上、「住宅ブーム」が生じた主要国について、主として2000年以降の動きを概観したが、住宅価格の上昇率がファンダメンタルズを反映したものかどうかを考える場合、名目価格上昇率のみで評価するのは必ずしも妥当ではない。
 一般的によく使われる住宅価格バブルの概念は以下のとおりである。
 「住宅価格が今後も上昇し続けると投資家が信じているというだけで住宅価格が高騰しており、その高値を正当化するような裏付けとしてなんらファンダメンタルズ的要素が存在しないこと(11)」。
 したがって、住宅価格の水準が適正か否かは、ファンダメンタルズを踏まえて評価する必要がある。種々の基準が用いられているものの、通常よく用いられる指標として、既にみた実質住宅価格のほか、(i)住宅投資を収益性から評価する住宅価格/賃貸料比率、(ii)一次購入者等の取得能力から評価する住宅価格/所得比率がある。

(i)住宅価格/家賃比率による評価

●一般的な評価方法
 住宅価格/家賃比率の基本的な考え方は、個人が住宅を取得する際のコストと、住宅を借りると仮定した場合に支払う家賃を比較して、住宅保有にかかる機会費用(株式の収益率に相当)を計算し、過去の長期的なトレンドの値と比較することで、住宅価格が適正な水準にあるかどうかを判断するというものである。
 もし、住宅価格が余りにも高ければ、相対的に賃貸料のほうが安くなるため、賃貸への需要が増加を通じ、やがては均衡水準(トレンド)へ戻る力が働くはずである。よって、乖離が長期にわたって継続、もしくはさらに乖離幅が拡大するような状況であるならば、それは住宅価格の上昇がファンダメンタルズに基づかない、投資家の価格上昇期待のみによることとなるため、過大評価となっている可能性がある。
 そこで、ここ数年の住宅価格/家賃比率の動向をみると、英国、オーストラリア、スペイン、フランス、アメリカ(12)、いずれの国においても02年以降、上昇率に加速がみられる。上昇率が高かった英国、オーストラリアについては、既に04年に入ってから若干の低下傾向がみられている。アメリカの上昇率は05年に入って若干上昇率が高まっているものの、ほかの国々と比べればいまだ落ち着いた動きを示している(第2-1-3図)

●住宅価格/家賃比率の均衡値自体が上昇した可能性
 しかし、上でみた指標の欠点としては、低金利がもたらす影響が十分捉えられていないという点がある。金利要素を考慮した住宅購入価格/賃貸価格の理論値は、より厳密に式で表すと、以下の式で与えられることになる。
 P/R=1/(r+σ-π)
 P:実質住宅価格
 R:実質純賃貸料(賃料からメンテナンスや管理コストを除いた後の現在価値)
 r:実質リスクフリー金利
 σ:リスクプレミアム
 π:実質純賃貸料の期待上昇率

 NY連銀が05年9月に出したスタッフレポート(13)においても基本的にこの考え方が採用されており、右辺の分母である住宅保有にかかるユーザーコスト(割引率に相当)をより詳細に定義した上で、現在の住宅価格上昇率は歴史的にみて必ずしも高いとはいえないという結論を導きだしている。ただし先行きについて必ずしも楽観視しているわけではない。
 また、この式の項目のうち、(1)世界的に実質長期金利が低位で推移していること、(2)期待物価上昇率が低下するとともに物価の変動が縮小し、また、金融取引技術が進歩した結果、リスクプレミアムが従来に比べ縮小していることなどから、住宅価格/賃貸価格比の均衡値自体が上方シフトしており、過去のトレンドよりも上方にあるとしても、必ずしもファンダメンタルズから乖離した水準であるとは限らないという指摘もある(14)
 実質金利が低水準となっている状況下では、ほかの資産の収益率も低下するためそれらの魅力が薄れる一方で、モーゲージ金利の低下により、利払いが容易になり、借換えやホームエクイティローンにかかるコストが低下するため、住宅投資の実質金利に対する感応度がさらに高まるとの指摘もなされている(15)

(ii)住宅価格/可処分所得比による評価

●2002年から総じて急上昇
 住宅価格/可処分所得比は最も単純な形でアフォーダビリティ(住宅取得能力)を示す指標であるといえる。この指標でも、英国が突出して高くなっているが、04年以降、住宅価格の騰勢が一服したことを受け、横ばいから低下傾向となっている。オーストラリアは、住宅価格上昇率では英国に接近しているにもかかわらず、住宅価格/可処分所得比率でみると、英国を90年代後半以降、全期間を通じて大きく下回っている。また、04年に入ってからは低下に転じ、ほかの国々の水準に近づいているが、この背景として、オーストラリアの急速な所得増加を挙げることができる。アメリカは、5か国の中では04年以降最も低い比率で推移している。(第2-1-4図)
 以上、2つの指標をみたが、いずれにおいてもアメリカの住宅価格は上昇傾向にあるものの、他国と比べ比較的安定的な動きをしていることが分かった。また、大幅な住宅価格の上昇がみられた英国では、賃貸料の上昇も背景にあったと考えられること、また、オーストラリアでは可処分所得の増加も一因となっていることが示唆された。

2.住宅価格高騰の背景

このような住宅価格高騰の背景には、主として下記の要因があったと考えられる。

(1)世界的低金利、低インフレ下の住宅価格高騰

 今般の「住宅ブーム」と過去の住宅価格高騰局面の異なる特徴として、過去においてはいずれも「高インフレ、高金利」下でのブームであったが、今回は80年代後半の日本と同様、「低インフレ下での低金利」であるということがある(第2-1-5表)
 低金利であることで、家計は住宅ローンに容易にアクセスできるようになり、住宅投資を活発化させ、住宅価格を上昇させる効果を持つ。例えば、名目利子率15%、物価上昇率12%の状況と、名目利子率5%、物価上昇率2%の状況を比較する。実質利子率はいずれの場合も3%であるが、仮に年収の4倍を借り入れた場合、1年目の年収に対する利払いは、前者の場合は60%にも上りローンを組むのは無理であろうが、後者であれば20%程度となることから、よりローンを組みやすい状況になるといえよう(16)
 以下では各国でとられた低金利政策の動向について簡単に述べる(第2-1-6図)

●アメリカ
 アメリカでは、01年から04年半ばにかけてFFレートの引下げ(6.5%から1%)が行われ、超低金利政策が実施されたことにより、モーゲージ金利も大幅に低下した。金利引上げ局面に転じた04年半ば以降も、モーゲージ金利は世界的な長期金利の低下傾向を受けて大きく変化せず、05年に入ってからも依然として歴史的に低水準の6%前後で推移している。

●英国、オーストラリア
 イングランド銀行(BOE)は、政策金利を01年から02年にかけて6%から4%へと2%ポイント引き下げ、その後も段階的に引き下げた結果、03年半ばには3.5%となり、モーゲージ金利(基本住宅金利)も5.3%と歴史的最低水準となった。政策金利は03年11月まで据え置かれた後、引上げに転じ、04年8月までに5回引き上げられて4.75%とされ、基本住宅金利も連動して6.6%程度まで上昇した。
 オーストラリアは、01年に連続6回政策金利を引き下げ、6.25%から4.25%とした。その後02年5月、6月に再び利上げを行って4.75%としたが、高い住宅価格上昇率が続いたため、03年11月、12月の2度の利上げを行い5.25%としたことを受けて住宅金利も緩やかに上昇し、04年以降住宅価格上昇率は低下した。更に05年3月にも追加利上げを行って5.5%とした後、4〜6月期の住宅価格上昇率はマイナスとなっている。

●ユーロ圏
 欧州中央銀行(ECB)は、2000年9月より政策金利を4.75%から段階的に引き下げ、03年6月に歴史的にみても最低水準の2%まで引き下げた後、据え置いている。ユーロ圏の住宅金利も基本的に政策金利の動きを反映して低下している。

(2)モーゲージ市場の整備及び住宅取得促進策

 今般の「住宅ブーム」が起きた国の特徴として、フランスを除き、住宅持ち家比率が高いという特徴がある(17)。これらの国で持家率が高い背景には、80年代、90年代を通じて住宅取得促進策がとられたことがある。高い持家率は、持ち家を担保とした借入れをより多くの家計が行えるための土台となっている。
 住宅取得促進政策は、住宅取得の促進を目的とする財政的な措置と、モーゲージ市場を育成し、家計がより住宅ローンを組みやすくする制度整備に大別できる。前者はローン利子所得控除等が中心となり、後者は80年代以降の金融市場の規制緩和が果たした役割が大きい。以下では、各国の住宅取得促進策を概観する。

(イ)アメリカ

(i)モーゲージ市場の整備

 アメリカで本格的なモーゲージの運用が開始されたのは、75年頃からである。HUD(住宅都市開発省)等の監督の下、政府機関であるジニーメイ(連邦政府抵当金庫)や、ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)、フレディーマック(連邦住宅金融抵当金庫)といったGSEs(政府支援機関)が中心となり、従来からのモーゲージへの公的保証の付与や買取りに加え、80年代に入り証券化業務も行うようになった。その後の10年間でMBS(Mortgage−Backed Securities)発行額が飛躍的に増加し市場の整備が進み、90年代に入って、モーゲージの証券化業務への民間機関の参入を促す下地が築かれた。

(ii)税制上の持家取得促進策

●住宅ローン利子所得控除制度
 アメリカでは、持家取得促進のため、住宅ローンを借り入れる際、住宅ローンの利子を連邦所得税の課税所得から控除する制度がある。控除額の上限は、100万ドル(夫婦合算申告者の場合)と世界的にみても高いことに加え、適用範囲も広い(18)ことから、適用対象となる世帯はかなり多くなるため(19)、特に高所得者の住宅購入を過度に招いているとの批判もされている。そのほか、住宅を担保としたほかの債務については10万ドルの控除額の上限が設定されている。

●住宅売却に伴うキャピタルゲインの課税繰り延べ
 97年納税者救済法(the Taxpayer Relief Act 1997)により、売却前5年間のうち2年間住居として使用された住宅のキャピタルゲインについて、50万ドル(夫婦合算申告者)まで非課税扱いとされている(20)

(ロ)英国

(i)モーゲージ市場の整備

 英国では、86年に始まる金融市場の自由化(ビッグバン)の流れの中で、モーゲージ市場も規制が緩和され、それまで住宅金融組合(Building Society)(21)が住宅ローンの貸出しをほぼ独占して行っていたが、商業銀行の参入が可能となった。90年代には住宅金融専門会社(Centralized Mortgage Lenders)等、新たな貸出主体も現れ、金融機関間の競争が活発化した。
 また、2000年6月、金融サービス市場法が成立し、それまで業態別に自主規制団体が行ってきた金融業の規制・監督機能が、金融サービス機構(FSA)へと監督体制が一元化されたことで公正な競争環境の整備が整った。
 その結果、英国では多様な金融商品が登場するようになり、住宅ローンを組むにあたり返済方法や金利の支払い方法を自由に選択できるようになっている。英国の住宅金利は元来、変動金利型が中心であり、現在においても依然主流ではあるが、80年代には固定金利型が導入された(第2-1-7図)

(ii)税制上の持家取得促進策

●住宅ローン利子減額控除
 英国の住宅金融制度の改革は、80年代のサッチャー政権以後本格的に着手され、その主なものとして持ち家の住宅ローン利子減額制度がある(22)

(ハ)オーストラリア

 オーストラリアの住宅取得政策は第2-1-8表のとおり。なお、オーストラリアのモーゲージ市場はほぼ英国に準じる(第2-1-8表)

(ニ)ユーロ圏(スペイン、フランス)

 これまでのところ、スペイン及びフランスでは、モーゲージ市場整備政策は余り進んでおらず、活用度も余り高くはない。
 スペインでは、持ち家促進を目標とした税制優遇措置をとっているため、持ち家比率はユーロ圏内において最高の約85%となっている。この優遇税制により住宅価格は過大評価されているという推計もある(23)
 フランスの住宅政策は、政府主導の下、住宅供給の促進や適正な住宅費の負担の実現等を目標として財政面での支援が中心となっている。また、ドロビアン法等のように景気刺激策としてとられることもある。

(3)人口等その他の要因による実需の拡大

 このほか、住宅需要の着実な増加を支えているのが人口要因である。多くの先進国で少子高齢化が見込まれる中、各国で労働力の移動についても規制が徐々に取り除かれつつあり、「住宅ブーム」の生じている多くの国でも移民の受入れが増加し、住宅取得層が増加している。また、彼らの高出生率に支えられて若年層も増加している(アメリカ、英国、スペイン等)。日本、ドイツが21世紀前半には、人口が減少すると見込まれるのに対し、今般「住宅ブーム」が起きている国においては、移民の積極的な受入れ等を通じて人口は安定的に増加している。
 また、世代的な要因も寄与している。中でもアメリカでは、ベビーブーマー(55〜64年生まれ)によるセカンドハウス需要等もあり、住宅取得層が拡大している。今後においてもベビーブーマーの子供世代(エコーブーマー)による世帯形成需要が見込まれることから、住宅需要は当面は底堅いということができよう。

(4)土地利用規制による供給制約

 英国では、サッチャー政権以後、住宅建設は都市計画の一環として位置付けられており、その結果住宅の建築許可に数年を要するなど手続きに時間を要するため、住宅供給が慢性的に不足する傾向にある(24)


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