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第2章 景気回復力の違いと消費底堅さの要因

第4節 底堅い消費の要因

 最後にこれまで検討してきたことを要約しておこう。
 第一に、消費が底堅く増加するためには、雇用が増加するなど所得環境が着実であることが必要である。景気が後退し所得環境が悪化する場合にも、潜在成長率の低下が回避され将来の所得見通しが維持されるならば、所得減少下においても消費は平準化され底堅く推移すると見込まれる。また、中国やタイでは雇用に伴う所得が大幅に増加したことが、消費の持続的拡大をもたらしている。
 第二に、減税や金融緩和等の政策は、家計の所得環境を改善させ、消費の増加につながっている。しかし、財政赤字が構造的に拡大し財政の持続可能性に疑問が生じるような場合においては、家計のマインドに悪影響を与えると考えられる。さらに、金融緩和が過度に進められ、住宅市場や信用取引が過熱する場合においてはバブルの発生が懸念され、過剰債務問題等を通じて消費への悪影響が懸念される。先進国のみならず、アジア経済にもこれは当てはまる。
 第三に、アメリカやイギリスでは住宅価格上昇が家計の流動性増加をもたらしたことが、底堅い消費にとって大きな効果を与えた。長期金利上昇がアメリカやイギリスの家計債務負担を困難にするとの指摘があるが、既に低金利への固定ローンに相当切り替わっており、その影響はそれほど大きなものにはならないとも考えられる。しかし、住宅価格が下落するようなことになれば、担保割れを引き起こし債務返済が困難になる事態もあり得る。他方、日本やドイツでは住宅ローン負担が家計にとって重荷になっているとみられ、消費環境を厳しいものにしている可能性がある。


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