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自由で活力ある経済部会報告 平成7年11月

目次

I.基本的方向 II.自由で活力ある経済社会創造のための政策 1.高コスト構造是正・活性化のための行動計画
(1) 高コスト構造是正・活性化のための諸政策
(2) 高コスト構造是正・活性化のための行動計画
2.新規事業のための資金供給
(1) 新規事業支援のためのベンチャ-・キャピタルの機能強化
(2) 公的支援制度の活用
(3) 資本市場を通じた資金調達の円滑化
(4) 民間金融機関による円滑な資金供給
3.科学技術の創造
(1) 知的資本整備の基本的方向
(2) 知的資本の総合的計画的整備の推進
4.人材の育成
(1) 情報活用能力の育成
(2) 国際的交流能力の育成
(3) 産業の高付加価値化等に対応した職業能力開発
(4) 社会の変化等に対応した大学の活性化
(5) 生涯学習の促進
(6) 能力の適切な評価の推進
5.情報通信の高度化の促進
(1) 制度・規制等の見直し
(2) 公的部門が果たすべき役割
6.雇用の創出と労働市場の整備
(1) 雇用の創出
(2) 参入しやすく転出しやすい労働市場の整備
(3) 企業内の人材の円滑なシフトの推進
(4) 中高年ホワイトカラ-、新卒者・若年者に対する支援
7.環境と調和した産業・社会の構築
(1) 地球温暖化問題への対応
(2) 市場の機能を生かして創る環境と調和した産業・社会

III.活力ある産業の展開と必要な諸政策
1.新たな産業の構築
(1) 既存産業の再構築と新規事業の展開
(2) 活力ある製造業とサ-ビス産業の形成
(3) ダイナミックな企業活動を促すための環境整備
2.創造的中小企業に対する支援
3.活力ある農林水産業の展開
(1) 農業者の創意工夫が発揮できるための条件の整備
(2) 意欲ある農業者の自立への支援
(3) 国土・環境の保全と農業
(4) 流域管理システムの確立と持続可能な森林経営の推進
(5) 資源管理型漁業・つくり育てる漁業の一層の推進

IV.活力ある地域社会の展開と必要な政策
1.バランスのとれた国土の発展
(1) 都市・農山漁村間の交流を通じた国土の有効利用
(2) 交通・情報通信インフラ等の国土基盤の整備
2.東京一極集中の是正
(1) 世界を代表する都市・東京の役割
(2) 首都機能移転と業務の分散
3.地域経済の発展
(1) 地域間経済格差の現状
(2) 広域的な経済圏の発展
(3) 地域経済の成長と国際的な産業再配置
(4) 地方分権、規制緩和の推進
(5) 情報化の推進と地域振興
4.農山漁村地域の活性化
(1) 多様な就業機会の確保
(2) 生活環境基盤の効率的・効果的な整備
(3) 都市と農山漁村との交流

V.災害等緊急事態に対応した経済社会システム等の構築
1.災害対策の基本的方向
2.災害対策の推進
(1) 災害の予防に関する取組
(2) 災害発生時の活動に関する取組
(3) 災害復旧・復興に関する取組

別 紙:高コスト構造是正・活性化のための行動計画
・物流
・エネルギ-
・流通
・電気通信
・金融サ-ビス
・旅客運送サ-ビス
・農業生産
・基準・認証、輸入手続き等
・公共工事
・住宅建設

参考資料:中長期的な我が国の産業・就業構造の展望

I.基本的方向

 我が国の経済社会システムは、これまで高い経済成長をもたらす効率的な経済を実現し、国民の生活水準を向上させてきた。しかも、高い経済成長と同時に、より公平な所得分配や治安の良さなどの社会的安定を実現してきたとして、国際的にも評価されてきた。
 しかし近年、バブルが崩壊し、これに加えて急激な円高の影響もあり、我が国経済は戦後2番目の長期景気後退を経験するとともに、金融機関等の不良債権問題が発生した。また、国際分業が進展する一方で産業・雇用の空洞化への懸念が高まっている。さらに、新規事業の展開の遅れに加え、内外価格差が産業の投入コストを高めている。これらの事態は、我が国経済社会に大きな閉塞感をもたらしている。こうした閉塞感を打破し、自由で活力がある経済社会を構築するためには、市場機能を活かしながらも、政府と民間、企業間、企業と個人のもたれあいが指摘されてきたこれまでのシステムの延長線上ではなく、新しい理念に基づくシステムへの変革こそが求められている。
 自由で活力があり、内外に開かれた経済社会を創造するためには、まずなによりも、自由な企業と個人のイニシアティブを活かし、市場経済の活力を十分発揮できるようなシステムを21世紀に向けて構築することが重要である。こうした観点から、今後、景気の着実な回復を図るとともに、我が国経済の中長期的発展を確保するため、以下の基本的な方策を講じることが必要である。
 まず第一に、競争阻害的な規制や商慣行の是正が必要である。
 特に、我が国産業の高コスト構造を是正し、新規産業を創造していくためには、規制緩和を早急かつ着実に推進することが必要である。さらに、規制緩和や商慣行の是正を通じた内外に開かれた市場の形成は、グローバルな視点での適切な分業体制の構築に資するものである。規制緩和等を通じた経済構造の改革は、国内において痛みを伴うこともあるが、それらの痛みに対しては、経済の活性化を進める中で、適切に対応を行いつつ、これを進めていかなければならない。
 我が国には、国際競争にさらされ、新規事業の創出を実現してきた高生産性部門と、サ-ビスなど国際競争から隔離されてきた低生産性部門が併存している。この低生産性部門は、企業の投入コストを高めているのみならず、消費者に身近なサービスを提供し、内外価格差の要因となっている部門でもある。こうした低生産性部門の比重が高いことは、逆にいえば、我が国が今後とも生産性を高める余地が大きいことを示している。したがって、低生産性部門の生産性が上昇することは、日本国民の生活水準を引き上げるとともに、我が国産業全体を効率化し、適切な国際分業体制の構築に資するものと考えられる。
 上記のような観点から、規制については、従来の経緯にとらわれることなく、廃止を含め抜本的に見直すべきである。また、本報告で提言された規制緩和を中心とした高コスト構造是正・活性化のための行動計画の着実な実施を図るべきである。
 第二に、規制緩和等を通じた経済活性化を支援する政策を推進していく必要がある。
 個人や企業の自由な発想を生かした新規事業への円滑な資金供給を図るとともに、独創的な研究開発の推進及び経済社会における科学技術の有効利用による経済フロンティアの拡大や豊かな国民生活の実現に向けて、知的資本の整備等を図る。また、経済社会の変化に対応した人材の育成を促進し、生産性の向上と新産業の創出をもたらす情報化を推進する。さらに、産業活動の自由度を拡大し、産業の活性化を促す観点から、企業を取り巻く法・制度等について見直しを行う。
 第三に、雇用の安定を図っていくことが重要な課題である。
 規制緩和を中心に経済構造を変革する過程では、雇用のミスマッチ等によって失業が増大する恐れもあるが、規制緩和等を通じた新たな事業展開を支援し、雇用機会の創出を図るとともに、労働の質の向上、労働力需給調整機能の強化等を通じて参入しやすく転出しやすい労働市場を整備することにより失業なき円滑な労働移動を図る。
 第四に、企業と消費者の自己責任原則の確立が必要である。
 市場経済の機能を生かした自由で活力ある社会は、また自己責任を求められる社会でもある。これまで、企業、消費者の行政依存傾向によって現行の規制が維持されてきた面もあるが、今後、規制緩和を推進する中で、企業と消費者の自己責任原則を確立することが重要である。また、そのためにも、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るとともに、民間の経済活動に関しても透明性を向上させるため、行政と企業においてより一層の情報公開を進める必要がある。
 第五に、活力ある経済は、同時に環境への負荷が少なく環境と調和した持続可能なものである必要がある。
 大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済活動を環境負荷の低減や資源・エネルギーの持続可能な利用の観点から見直すこととし、そのためには、可能な限り市場の機能を生かしていくこととする。また、環境関連産業等が新たな経済の活力の源泉の一つとなることが期待される。
 第六に、自由な企業や個人のイニシアティブを生かすという発想は、活力ある地域経済を創出する上でも有効である。
 地方分権を一層進め、地域や住民の自由なイニシアティブによって、個性ある地域経済を発展させるべきである。国民にとって地方居住が魅力を増している今日、一極集中を是正し、それぞれの地域ごとに特色ある発展を図り、多様な就業機会と魅力的な居住環境を提供することが重要である。東京一極集中の是正は、災害に強い経済システムの構築を通じて我が国経済の安全を確保するためにも重要な課題である。

II.自由で活力ある経済社会創造のための政策

1.高コスト構造是正・活性化のための行動計画

(1) 高コスト構造是正・活性化のための諸政策

 日本経済の高コスト構造を是正し、産業の活性化を促進するためには、競争阻害的な規制や商慣行を是正し、競争を活発化させ、自由な企業と個人のイニシアティブが十分発揮できるようにしていくことが必要である。また今後、規制緩和を推進する中で、企業と消費者の自己責任原則を確立することが重要であり、そのためにも、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るとともに、民間の経済活動に関しても透明性を向上させるため、行政と企業においてより一層の情報公開を進める必要がある。

1) 規制緩和の推進

 規制緩和は、競争を活発化させ、日本経済の高コスト構造を是正し、企業の自由な創意工夫を引き出すことによって、新規事業を創出するものである。規制緩和による内外価格差の是正・縮小は、実質所得を増大させて新たな需要を生み、新規事業の創出と相まって雇用を増大させるものである。規制緩和はまた、市場アクセスを改善し、我が国経済を国際的に調和のとれたものにする上でも有効である。 規制については、従来の経緯にとらわれることなく、廃止を含め抜本的に見すべきである。3年間に前倒しされた「規制緩和推進計画」を踏まえ、以下の5原則で取り組むこととする。
 i 経済的規制については、原則自由・例外規制を基本とする。競争的産業における需給調整の観点から行われている参入・設備規制等については、事業の内容・性格等を勘案しつつ、廃止を含め抜本的に見直す。
 ii 社会的規制については、技術革新等の進展に伴いその意義、必要性が薄れてきたものもあるので、不断の見直しを進め、本来の政策目的に沿った必要最小限なものとすることを基本的な考え方とする。なお、安全・健康の確保、環境の保全等の社会的規制等の観点から、どうしても規制等が必要な場合もあるが、その場合にも、必要以上に新規参入等による競争を阻害することのないよう、直接的規制等の手段を選択するなど、可能な限り競争が行われるような環境を整備する。その際、特にその必要性が認められるもの以外については、規制の国際的整合化を図ることも重要である。
 iii 規制緩和策を計画的に推進するとともに、透明性を確保しつつ、内外からの意見・要望、行政改革委員会の監視結果等を踏まえ、定期的にその見直しを行い、改定する。
 iv 規制の新設は必要最小限にすることを基本方針とし、原則として当該規制を一定期間経過後に見直すこととする。
 v 地方公共団体においても、国・地方を通ずる規制緩和の推進の観点から、規制の見直しを進めることが重要である。

2) 競争政策の積極的展開

 日本経済における公正かつ自由な競争を一層促進することにより、日本市場をより競争的かつ開かれたものとするとの観点から、規制緩和とともに競争政策の積極的展開を図る。このため、競争制限的な行為が行われることのないよう独占禁止法を厳正・的確に運用する。さらに、競争政策の国際的調和の推進を図ることが重要である。
 個別法による独占禁止法の適用除外カルテル等制度(28法律、47制度) については、平成10年度末までに原則廃止する観点から見直しを行い、平成7年度末までに具体的結論を得る。また、その他の適用除外カルテル等制度についても、引き続き、必要な検討を行う。
 再販売価格維持制度について、指定品目の範囲の縮小後の状況等の調査を行い、平成9年度末までに、すべての指定品目(一般用医薬品14品目、小売価格が 1,030円以下の化粧品14品目)について、取消しのための所要の手続の実施を図る。医薬品については、現行指定品目に関し、上記調査を行い、調査の結果を踏まえ、平成8年度中に指定取消しのための手続きを実施する。また、再販適用除外が認められている著作 物について、平成9年度末までにその範囲の限定・明確化を図る。

3) 合理的な商慣行と消費者行動

 流通系列化、建値制、リベート制等を利用し、さらに再販売価格維持制度により行うものを含め、メーカーが小売価格の形成等に関与しようとする民間慣行等は価格形成の伸縮性を阻害し、価格を割高で硬直的なものとする傾向があった。またこれは、品質や業態による価格差を生み出しにくく価格選択の幅を狭くするため、日本人の消費者行動に、外国に比べ価格感応度が低く、品揃え、ブランドイメージ等を重視することや品質等について極めて要求水準が高いという傾向が観察される要因の一つとなっている。これらがコストを上昇させ、内外価格差の一因になってきた。
 このため、規制緩和等を促進することにより、競争阻害的な民間慣行が是正され、価格弾力的な消費者行動が可能となるような環境整備を図る。また、コスト構造や制度面の違い等を含めた広範な内外価格差調査及び要因分析を実施し、その結果を規制緩和に反映させるとともに、調査結果の適宜適切な公表等による情報の一層の提供を行うことにより、情報格差をなくし、事業者、消費者の合理的な行動を促進する。

4) 情報公開、ディスクロージャーの充実

 情報を公開し、経済全般の透明性を高めることは、「国民に対してより開かれた政府」の実現に資するものであり、また我が国市場への新規参入をより活発化させ、消費者等の多様な選択をより可能にし、自己責任原則の確立に資するものである。自由で活力ある経済を実現させるため、行政及び民間の経済活動に関して情報公開に努める。

 i 行政における情報公開等
 処分、行政指導及び届出に関する手続きに関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的として制定された行政手続法の趣旨を踏まえた行政運営を行う。
 行政を一層公正で民主的なものとし、行政に対する国民の信頼を確保する観点から、行政機関の保有する情報を公開するための法律の制定その他の制度についての本格的な検討を進める。公共料金の改定に当たっては、公共料金関連事業の内容の透明性を確保し、国民の十分な理解を得るよう、情報公開を進める。
 国民による公開情報の活用を容易にするため、急速に進歩しつつある情報通信技術の成果を行政分野に積極的に導入し、効率的、効果的な行政の実現を図るよう、行政の情報化に計画的に取り組む。

 ii 民間におけるディスクロージャー
 民間の経済活動に関しても、透明性を向上させるため、金融機関の経営内容や商品・サービスのディスクロージャーや、公益企業等の企業の事業内容、財務状況、経営方針など企業活動の投資家、利用者に対する適切なディスクロージャーに努めることが必要である。

5) 適切な公共料金政策

 公共料金等価格規制については、必要最小限のものとしつつ、低廉で良質なサービスの確保を図るため、競争的環境の整備、経営の効率化等の推進に併せ、事業の内容・性格等を勘案しつつ、価格設定の在り方の検討、料金の多様化、弾力化を推進する。
 公共料金のうち市場原理を導入できる分野については、競争的環境の整備を図る中で規制緩和を一層推進することとし、その一環として、事業の内容・性格等を勘案しつつ、上限価格制の是非を含め、経営の効率化を促す方策について検討する。
 公共料金の改定に当たっては、改定の理由、根拠、具体的な経営の合理化策、物価に及ぼす影響等を十分明らかにする等、公共料金関連事業の内容の透明性を確保し、国民の十分な理解を得るよう情報公開を進める。このため、必要に応じ公共料金をとりまく環境の変化に対応しつつ、事業者及び行政機関が公共料金に係る情報提供を推進する際の指針として、各所管省庁において、事業毎にその特性に応じてガイドラインを策定する等の措置を講じる。
 また、速やかに円高差益還元を図る。
 なお、物価安定政策会議基本問題検討会において、公共料金の価格設定の在り方について平成7年度中を目途に検討結果を取りまとめることとする。

(2) 高コスト構造是正・活性化のための行動計画

 経済活性化のためには、日本経済の高コスト構造を是正し、産業を活性化する規制緩和について重点的に取り組む必要がある。特に、労働コストや技術面でそれほど大きな違いがないと考えられる欧米諸国との比較で大きな内外価格差が存在することは、国土条件等により分野における差異はあるものの、一般的にはそれだけその分野における生産性上昇の余地が大きいことを意味している。
 規制緩和は、競争活発化という間接的な経路を通じて経済に影響を与えるものであり、かつ現実には技術進歩など他の効果とも相まって経済全体の効果となるものである。我が国経済の活性化及び国民生活の豊かさを実現するためには、高コスト構造を是正し、産業の活性化を促進することが焦眉の課題となっている。そのため、規制緩和を中心に、競争政策の積極的展開を図るとともに、競争制限的な商慣行を是正し、価格弾力的な消費者行動を可能とすること、情報公開、ディスクロージャーの充実に努めることなどの諸政策を総合した高コスト構造是正・活性化のための行動計画を策定した(別紙参照)
 行動計画においては、コスト削減・活性化に資する目標を設定するとともに、目標達成のために規制緩和、競争政策の積極的展開、商慣行の是正、インフラの整備をはじめとしたコスト削減・活性化に資する政策を示し、可能な限りその実施時期を明示した。なお、目標期間は、原則として平成12年度(2000年度)までとするが、流動的な内外経済情勢の下で行動計画の実効性ある推進を図るため、指標等を用い、毎年、実施状況等を点検する。今後さらに、その他の分野においても、高コスト構造を是正し、産業の活性化を促進するため、必要な場合には行動計画の策定を検討する。
 我が国の生産活動や消費生活の各分野に共通する財・サービスを生産する産業において、高コスト構造を是正し、その産業を活性化することは、その産業自体のみならず、各分野のコスト縮減、効率化に大きく寄与するものである。

2.新規事業のための資金供給

 新規事業の育成のためには、個人や企業の自由な発想を生かし、効率的で多様な資金調達の途を講じる必要がある。特に、担保力・信用力は不足しているが、研究開発力等を有する将来有望なベンチャー企業等に対する資金供給について、より一層の円滑化を図ることが課題となっている。

(1) 新規事業支援のためのベンチャー・キャピタルの機能強化

 ベンチャー・キャピタルは、ベンチャー企業への資金供給を行うとともに、経営ノウハウ等の専門的知識やマーケット情報等の様々な情報の提供を行いながら、総合的にベンチャー企業を支援するものである。特に、ベンチャ-・キャピタルによる創業・立ち上がり期にある企業への投資を強化することが重要である。
 今後、ベンチャー・キャピタルがより有効にその機能を発揮するため、資金源の拡充等により多様な資金を導入することを通じて、ベンチャー・キャピタル自身の財務面での基盤強化を図るとともに、ベンチャー企業の技術やリスクをより的確に評価できる審査体制を充実させるため、各事業分野における専門的知識等を有する、いわゆるベンチャー・キャピタリストを育成する。また、ベンチャー・キャピタルが大学・研究所等との間で情報や技術の交流を行う体制を構築することにより、情報提供等を通じたベンチャー企業への支援体制の充実を図る。

(2) 公的支援制度の活用

 創業・発展期のベンチャー企業や新分野に進出する中小企業への資金供給を円滑に進めるため、これらの企業に対する公的な支援制度を着実に実施するとともに、ベンチャ-企業等の多様なニ-ズの把握に努める。また、これらの制度に関する情報提供等を一層促進し、より利用しやすくする。

(3) 資本市場を通じた資金調達の円滑化

 株式市場や社債市場等の資本市場は、幅広く投資家から資金を集め企業への長期資金の供給を行うという機能を有しており、ベンチャー企業等の株式公開が促進されることにより、公開に至る前段階での資金供給が活発化することも期待される。このため、ベンチャー企業等の資金調達需要に応える観点から、一定の要件を満たす新規事業を実施する企業を対象に店頭特則市場が開設され、さらに同市場の株式公開制度等について、所要の整備が図られたところであり、今後においても、株式市場を通じた資金調達の円滑化が進展することが期待される。また、平成8年1月より、企業が公募社債を発行する際の適債基準等を撤廃する。
 なお、これらの措置を実施する際には、投資家の自己責任原則の徹底を図ることが必要であり、公開により資本市場から資金調達することを目指すベンチャー企業等においては、投資家に対してリスク要因も含めた経営内容・財務状況を分かりやすく開示する必要があり、このため出来る限り早い段階から企業会計の重要性を認識し、その整備に努めることが必要である。また、ベンチャー・キャピタル等のベンチャー企業支援機関は、このための啓発を積極的に進めていくべきである。

(4) 民間金融機関による円滑な資金供給

  銀行等民間金融機関は、健全な経済活動に必要な資金を円滑に供給するという役割を持つとともに、企業への情報提供やアドバイス等の面でも重要な役割を果たすことが期待されている。バブル経済の崩壊に伴う資産価格の大幅な低下により増大した金融機関の不良債権については、早期に処理を進める。また、今後とも、自己資本をより一層充実させること等により、企業への円滑な資金供給を行っていくとともに、企業への融資に当たっては、事業内容、成長力等を的確に把握すべく引き続き事業審査能力の向上を図り、知的財産権を担保とした融資に取り組む等、適切な対応を行うことが求められている。

3.科学技術の創造

 独創的な研究開発を推進するとともに、科学技術を経済社会において有効に活用することにより、新規産業の創出等を通じた経済フロンティアの拡大を図り、豊かで安心できるくらしを実現する社会を構築していく。このため、研究開発という知的な創造活動によって得られる技術や知識に加え、研究開発を効果的・効率的に行うことを可能とする種々の資本を含む知的資本の整備を進め、「科学技術創造立国」を目指す。
 知的資本の整備にあたっては、フロンティア開拓型の研究開発への移行が求められている現状にかんがみ、官民における研究開発が積極的に進められるよう、研究開発施設・設備、研究情報ネットワークといったハードの側面のみならず、研究経費を確保し、その柔軟かつ効果的な活用を図るとともに、研究開発のインセンティブ付与、競争原理の導入、研究開発成果の市場化等を促進する観点から、国内外における産学官の交流・連携の円滑化、研究開発成果である知的財産の取扱い、研究開発を担う創造的な人材の育成・確保などの制度や仕組みの整備といったソフトの側面を併せて一体的に整備することが必要である。このため、政府は、研究開発基盤の整備や基礎的・独創的研究の実施、独創的な科学技術系人材の育成・確保など民間においては十分な取組が期待できない政策を積極的に実施し、研究開発に係る資源の充実を図るとともに、科学技術系人材の交流・転職等の円滑化や研究開発資金の調達・活用の円滑化、知的財産権の適切な保護強化及び開発者への付与、研究情報の蓄積・流通の促進など研究開発資源の効果的な活用を可能とする制度・仕組みの整備を行う。

(1) 知的資本整備の基本的方向

 以上を踏まえると、知的資本整備の今後の具体的な方向は以下のとおりである。

1) 将来の発展基盤となる知的資産の獲得

 研究開発活動によって得られた、知識・情報の蓄積である「知的資産」は、次の世代へと引き継がれ、将来の我が国産業・経済の維持・発展を導くことはもちろんのこと、地球的課題の解決、豊かな国民生活の実現を図るための鍵となる重要な役割を果たす。このため、基礎研究など独創的、先端的な研究開発を重点的に推進する。また、経済フロンティアの拡大を目指し、物質・材料、情報通信・電子、ライフサイエンス等の重要研究開発分野の中から、新たな産業の創出につながることが期待される研究開発を重点的に推進し、我が国の将来の発展基盤となる知的資産の獲得を図る。

2) 研究開発インフラ等の整備

 研究開発インフラは、研究開発施設・設備等のハードとデータベースやソフトウェアなどのソフトが相乗的にその機能を発揮する性質を有しており、その整備に当たっては両者一体的に整備していくことが必要である。このため、大学や国立試験研究機関を始めとした公的セクターの老朽化・狭隘化・陳腐化した施設・設備の改善を含めたハード型研究開発インフラの強化を図るとともに、研究情報ネットワークの早急な整備、研究開発の基礎となるようなデータ蓄積及びソフトウェアの開発の積極的推進、我が国で実施された研究成果を的確に世界に提供するデータベースの整備等を行う。

3) 研究交流・知的財産制度等研究開発環境の整備

 我が国研究開発がフロンティア開拓型へと転換していく中で、研究開発を取り巻く諸制度や仕組みをより自由で競争的なものに変革していくことが必要である。このため、研究開発の効率化のための研究開発現場の競争環境の強化や公的機関の研究開発活動に係る制度・慣行・手続き上の制約の緩和や弾力化、大学・国立試験研究所等における外部資金の導入の促進を図る。また、国際的人材の活用や国際的な共同研究の推進、研究交流制度の拡充及び科学技術系人材が転職等を円滑に行い得る環境の整備、産官学の交流・連携の円滑化のための環境整備、研究開発成果の円滑な事業化を促進する資金調達環境の整備、公的セクターにおいて実施された研究成果の産業界への普及活動の積極化等を推進する。
 研究者・技術者の研究開発とその成果の実用化へのインセンティブを高めるためには、研究者個人に研究資金を支援するグラント制度の量的質的拡充や研究者・技術者に対する能力と成果に応じた報酬をベースとした処遇システムの導入の検討等が必要である。また、知的財産制度については、審査処理期間の短縮化、権利付与範囲の適正化、権利侵害の合理的解決策の確立に加え、職務発明に対する補償の適正化等研究開発主体へのインセンティブの付与、知的財産取引の活性化、新技術分野における権利保護などの制度、慣行の整備改善とともに、制度・運用の国際的ハーモナイゼーションの推進等を強力に進める。国の研究成果については、成果普及の観点からの体制等の整備を行う。さらに、研究活動を円滑に進めるため、基本規格や試験・評価方法等の標準化を促進する。なお、従来の有形の資産に加えて、無形の資産である科学技術やソフトウェア等の知的財産の重要性が十分認識されるよう、これらについての普及・啓発を推進する。

4) 創造的科学技術系人材の育成・確保

 創造的な研究開発活動の実施には、その担い手となる科学技術系人材の量的質的確保が重要である。このため、創造的かつ高度な人的資本の供給源である大学院博士課程が学生並びに産業側にとっても魅力ある存在となるよう大学院の学生や博士課程を修了した若手の研究者に対する支援を行うなど一層の活性化を図る。また、「研究者・技術者」という職業の魅力を向上させるためには、企業、大学及び国立試験研究機関において適切な評価に基づく処遇等の改善が必要である。さらに、大学、国立試験研究機関等が、新しい時代の要請に応えて、それぞれ理念や目標を掲げ、個性を発揮することによって自由で多様かつ効果的な研究開発活動を行える体制を整備する。
 また、若者の科学技術離れにも対応し、青少年にも研究開発の夢やあこがれ、科学技術にみられる独創性・創造性が持つ魅力を正確に伝達するため、学校教育及び社会教育における科学技術に関する学習の振興を一層図るとともに、実際に科学技術に触れられる展示施設の整備や各種イベントの開催など多様な機会を提供していく。

(2) 知的資本の総合的計画的整備の推進

 知的資本の整備は、必ずしもその効果が即時に表れるものではないが、中長期的な我が国の発展基盤を構築する礎である。特に、経済活動が低迷する中、民間企業の研究開発投資は停滞しており、かかる停滞は研究開発費の売上高比率の減少にみられるように、過去の景気後退局面とは異なったものとなっている。このため、民間企業は、新規産業の創出につながる研究開発、基礎的・独創的分野における研究開発など、民間においては十分な取組みが期待できない分野において、大学、国立試験研究機関等の研究開発活動へ期待を高めている。このため、近年、財政的にも特段の配慮がなされてきているところである。他方、我が国政府の研究開発投資の対GNP比率については、各国の政府の大きさに左右される面もあるが、依然として欧米と比べて低く、また、産学官の連携を阻む制約が存在するなどの問題をかかえているのが現状である。以上のような状況にかんがみれば、政府は民間においては必ずしも十分な取組みが行われないものを中心に知的資本の整備を一層推進していくことが不可欠である。
 知的資本の整備にあたっては、大学、国立試験研究機関等の施設・設備の充実等の実施を念頭に置いたハード面の整備に加え、研究開発環境の整備・充実、研究経費の確保、科学技術系人材の育成・確保等のソフトの側面についても一体的に整備していくことが必要である。知的資本の整備を実効性あるものとするため、政府は、研究開発の推進に関する総合的な方針、研究施設等の整備、その他研究開発推進のための環境整備等知的資本の整備を内容とした「科学技術基本計画」を策定し、その総合的計画的な整備を推進する。また、できるだけ早期に政府研究開発投資の倍増の実現を図る。

4.人材の育成

 これからの経済社会の変化に対応していくためには、情報活用能力や国際的な交流能力を身に付けた人材の育成が重要である。さらに、日本が世界をリードしていくよう、新たな独自の科学技術の創造を支える人材が求められている。このような人材育成のためには、教育・訓練の環境を整備するとともに、人々が生涯を通じて自由に学習機会を選択して学ぶことができる環境が必要である。また、各自の能力が企業・社会において適切に評価されることが重要である。

(1) 情報活用能力の育成

 初等中等教育においては、情報機器の適切な活用体験等を通じ、児童・生徒が基礎的な情報処理・活用能力を身に付けることができるよう環境を整備する。
 高等教育段階においては、情報関係の学部・学科等の整備や情報教育関係施設の設置を進めるとともに、システムをサポートするスタッフの確保、情報処理教育の質的充実のための標準カリキュラムの開発、情報処理教育研究集会、講習会の開催等の施策を講じる。

(2) 国際的交流能力の育成

 国際化に対応するためには、語学力とともに、他国や自国の文化に対する理解や国際舞台で議論し行動できるコミュニケ-ション能力が必要である。
 初等中等教育においては、生徒が直接外国人と接し、ネイティブスピーカーから生きた言語を学ぶ機会を得るため語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)を推進するとともに、他国の歴史や文化の理解などの国際理解教育の推進を図る。高等教育における留学生の交流の活発化のため、留学生の学習環境・生活環境を整備し、留学生受入の促進を図る。

(3) 産業の高付加価値化等に対応した職業能力開発

 産業界をリードしていく企業等の部門管理者、研究者・技術者等の能力開発を推進するため、能力開発のための時間の確保、外部教育機関等との交流促進など環境 整備に努める。
 また、中小企業の人材育成、技能振興を支援するため、人材高度化支援事業の推進、優秀な技能者の登録・情報提供等活用体制の整備などを図る。
 公共職業能力開発施設では、産業界の先端分野にも対応できる多様かつ高度な技能者養成のため、施設・設備、訓練内容、指導員体制の整備を図る。

(4) 社会の変化等に対応した大学の活性化

 各大学が教育理念・目標を明確にした上で社会のニーズに対応した教育研究活動を自由に展開していくことができるよう、大学における学部学科の改組をはじめとした教育研究体制の見直しや、カリキュラムや教育方法の改善充実等教育研究の個性化・高度化・活性化を目指した改革をさらに支援していく。

(5) 生涯学習の促進

 生涯を通じた学習機会を提供するため、生涯学習関連施設の整備や学習情報の提供、在宅学習の機会の拡充を図る。また、高等教育機関における社会人の再教育を推進するため、学習情報の提供や放送大学の全国化を図る。

(6) 能力の適切な評価の推進

 個人の能力の社会における適切な評価を確保するため、産業界、個々の企業等においては、現在取り組んでいる雇用管理システムの見直しについての検討を進め、多様な人材を有効に活用できるような採用・処遇の基準や方法を充実することなどが期待される。また、これらのうち能力評価システムについて客観性が確保されるなど、労働者、産業界等にわかりやすいものにしていくことを促進する。

5.情報通信の高度化の促進

 高度情報通信社会は、国民にとって多様な選択と自由な参加をもたらすとともに、産業分野にとっては、生産性の向上と新産業の創出をもたらすものである。高度情報通信社会は、利用者のニーズを的確に把握した魅力的なサービスが、通信コストの低減と相まって需要の拡大を生み、それがサービスの高度化・多様化をもたらし、さらに利用者の自発的参加を呼ぶことで構築されていく。高度情報通信社会の構築は、自由な競争の下に基本的には民間主導で進めるべきであり、政府は、諸制度の改善とともに、民間主体による通信に関連した社会資本の高度化を促進し、必要性を勘案しつつ公的部門の情報化を進めるなど、所要の環境整備を行う。

(1) 制度・規制等の見直し

1) 情報通信の高度化のための諸制度の見直し

 高度情報通信社会の構築には、産業分野の積極的な参加が必要である。自由な競争の促進、通信コストの低減、利用者のニーズに合った多様なサービスの提供、新産業の創出等のため、「規制緩和推進計画」に盛り込まれた措置を着実に実施する。また、情報通信の高度化を想定していない諸制度については、その目的に配意しつつ検討を行い、その結果を踏まえて見直しを進め、電子化された情報の処理への早期の移行を目指す。まずは、書類の電子データによる保存及び申告・申請手続きの電子化・ペ-パ-レス化について、高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会等において検 討を行い、その結果を得次第、これを踏まえ、所要の規制緩和措置を講じる。

2) 著作権等の在り方に関する検討

 高度情報通信社会の実現のためには、新しい魅力あるコンテンツが積極的に創作・供給され、コンテンツを適切かつ円滑に利用することができる環境の実現が重要である。このような観点から、著作権等の保護と利用の円滑化のための仕組みを含め、著作権等の在り方について早急に検討を進める。

(2) 公的部門が果たすべき役割

1) 公的部門の情報化

 情報通信の高度化の立ち上がり時期においては、公的部門の積極的な情報通信の高度化への取組やハードウェア及びソフトウェアの調達等において、先導的な役割を果たすことが期待されている。公的部門は、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」及びこれを受けて各省庁が策定した実施指針に基づき、公的部門自らが利用者として、庁舎内や庁舎間LANの整備など公的部門におけるネットワークの整備を行うとともに、公的アプリケーションの開発・導入等の施策を講じる。また、平成7年度を初年度とする5か年計画である「行政情報化推進基本計画」に基づいて、電子化された情報の処理への移行を実現する。
 公的部門の情報通信の高度化には、ハードウェアの整備のみならず、運営のための人材やソフトウェアが必要な場合が少なくない。そのため、「公共投資基本計画」の考え方に沿って公的部門の情報通信の高度化に必要な社会資本の整備を進めることとし、その際、高度情報通信社会の構築に不可欠な、人材の育成や使いやすい魅力あるソフトウェアの整備が極めて重要であることにかんがみ、その確保についても適切に配意する。

2) 情報通信の標準化

 情報通信の高度化においては、ネットワークにおける相互運用性・相互接続性の確保が重要である。国際的な標準化の動向を踏まえ、利用者の利便性の向上を重視しつつ、公的標準の一層の普及と実施を推進するとともに、データ形式や接続手順等について、公的部門自らの標準化により社会全体への波及を図る。

6.雇用の創出と労働市場の整備

 景気に十分な回復がみられない中で、製造業を中心とする国際分業の進展等の影響もあって厳しい雇用情勢が続いているが、雇用の安定は国民生活の安定の基礎となるものであり、経済社会の変革期における最大の課題である。
 このため、新たな失業の発生の防止や離職者等の就職促進に努めるとともに、我が国経済構造の変革が円滑に遂行されるよう、雇用の創出や、産業構造及び労働力供給構造の変化に対応した労働市場の整備を図る必要がある。特に、今後、中長期的には新卒就職者が減少するなかで、転職といった外部労働市場を通じた産業間・企業間労働移動がこれまで以上に大きな役割を果たすことになる。こうした労働移動については、新規入職などと比較して失業を経る可能性が大きいので、できる限り失業を経ることなく労働移動が円滑に行われるようにすることが必要であり、参入しやすく転出しやすい労働市場を整備することが今後求められる。さらに、我が国では構造変化に対しては企業内で人材のシフトを図るケースが多く、これらの促進を図っていくことも求められる。
また、規制緩和等の進展に伴って産業構造が転換する過程で労働力需給の不適合による失業問題が発生する恐れがあり、こうした面への対応も重要である。

(1) 雇用の創出

 雇用機会の創出のためには、適切な経済運営により持続的、安定的な経済成長に努めつつ、これまで述べたような、規制緩和による新規事業の展開、新規事業への資金供給の円滑化、既存の産業の事業革新の支援、技術創造の環境整備等の施策を実施し、経済の活性化を図る必要がある。
 特に、わが国経済の活力の源泉である中小企業について、産業政策と雇用政策の連携を図りつつ、雇用機会の創出のための環境整備を積極的に行っていくことが重要であるため、魅力ある職場づくり、出向や雇入れを通じた新分野展開を担う人材の確保に対する支援策を講じていく。
 雇用機会が創出される分野等において高付加価値化や新分野展開を担い得る人材を育成するため、人材高度化に向けて、能力開発の方策に関して各種の相談援助を実施するとともに、事業主団体又は事業主が計画的に行う訓練に対する支援を実施する。また、民間の教育訓練機関の多様な展開を図ることが重要である。

(2) 参入しやすく転出しやすい労働市場の整備

1) 労働力需給調整機能の強化等

 転職による労働移動の増加、年齢間のミスマッチの拡大等に対し、円滑な労働移動を図るためには、労働力需給調整機能を一層強化していく必要がある。このため、国及び事業主団体等の民間部門の連携に立った雇用情報等を迅速・的確に提供するネットワークも含めた情報提供機能、転職に必要な知識の修得等のコンサルティング機能の強化を図る。同時に、創業者が事業展開にあたって必要とする人材を円滑に確保できるよう公共職業安定所の労働力需給調整機能を強化する。
 また、有料職業紹介事業について、取扱職業の範囲及び紹介手数料の在り方に関し、平成7年中に、検討を開始する。労働者派遣事業の適用対象業務の範囲について、中央職業安定審議会の審議を踏まえ、見直しを進め、平成7年中に、検討結果を取りまとめる。
 転職とともに増加すると考えられる系列外企業への出向・移籍を円滑に行うため、産業雇用安定センターにおける新たな出向システムの機能の強化を図る。さらに、産業構造の変化の下で、移動を余儀なくされる労働者に対しては、企業において再就職のあっ旋等失業なき労働移動のための積極的対応が行われることが望ましい。このため、業種雇用安定法の機動的な運営を図るとともに、「失業なき労働移動」の円滑化のための企業に対するコンサルティング等を行うことによって、雇用の安定のための企業の取組を支援していく。

2) 労働の質の向上

 需要の減少が見込まれる分野の雇用減少数と新規需要が見込まれる分野の雇用増加数がほぼ等しいとしても、両分野で求められる労働の質の内容が異なれば、労働移動が円滑に行われない恐れがある。
 失業なき円滑な労働移動を可能とするためには、生涯を通じた教育訓練等により、労働の質の向上が図れる環境を整備することが必要である。このため、高等教育機関における社会人の再教育、ビジネス・キャリア制度の拡充等による専門的知識の段階的かつ体系的な習得を促進するとともに、在職者、離職者に対する効果的な職業訓練の充実、職業能力開発関係の情報の整備、提供を図る。また、在職者がある程度長期にわたって高度で専門的な能力開発を行えるよう、長期休暇制度の普及を図るほか、自ら職業能力開発に取り組む勤労者の費用負担の軽減のための援助などの支援方策について検討する。さらに、労働移動を円滑にするためにも、勤労者の持つ技能・知識を具体的に評価・診断する方法を整備する。

3) 労働移動に関して非中立的な制度の見直しの検討

 転職によって経済的に不利にならないようにするという観点から、労働移動に関して非中立的な諸制度の在り方について検討する。具体的には、適格退職年金における年金間のポータビリティの確保、退職一時金の算定基礎・支給率の見直し、勤続年数を資格要件とする福利厚生制度の見直しなどの問題について企業において検討する必要がある。

(3) 企業内の人材の円滑なシフトの推進

 構造変化に対して就業面で円滑に対応するためには、需要の減少が見込まれる分野の企業が前向きな事業展開を行い、それに対応し得る人材を自社で育成することを促進する必要がある。こうした観点から、教育訓練に係る相談援助を行うとともに、事業展開に伴う配置転換により雇用の場が確保される場合や、その配置転換の前後に教育訓練が実施される場合に支援を行う。また、公共職業能力開発施設における在職者向けの訓練コースの一層の充実を図る。

(4) 中高年ホワイトカラー、新卒者・若年者に対する支援

1) 中高年ホワイトカラーに対する支援

 事業の再構築等によって雇用調整が避けられない場合、年功的処遇制度は変化しつつあるとはいえ当該制度の下では調整が中高年に向けられる可能性が高く、特に中高年ホワイトカラーが高度で専門的な能力を習得する必要性が高まっている。このため、事業転換に伴う配置転換や異なる企業への転職等が円滑に行えるよう、ビジネス・キャリア制度の拡充を図るとともに生涯能力開発センター(仮称)の整備に努めるなど、中高年ホワイトカラーに対する専門的能力の開発・向上のための教育訓練を充実すべきである。さらに、産業雇用安定センターによる機動的な出向等のあっ旋や情報の提供等により、産業間・企業間における失業なき労働移動を支援する。

2) 新卒者・若年者に対する支援

 第2次ベビーブーム世代の労働市場への参入等により、当面、新卒者・若年者の就職については厳しい状況が続くことも考えられる。新卒者が円滑に職業生活をスタートできるようにするためには、出身校で限定されることのないオープンな学卒労働市場の形成を促進しつつ、学校歴より学習歴を重視した人物評価の普及・定着を推進する。また、応募機会の確保、職業紹介、さらには今後の産業構造・就業構造の変化の方向等に関する情報提供等、積極的な支援策を講じると同時に、長期的な展望に立って採用活動を行うよう企業に働きかける。
 さらに、新卒者等若年者の採用の在り方については、採用選考期間を年に複数回設けることや、未就職卒業者やいわゆる第2新卒者にも広く採用選考の門戸を広げること等について、社会的な議論を深め、企業が適材を確保するとともに、若年者が広く応募機会を享受できる環境づくりを促進する。
 一方、転職志向の強い若年者については、こうした変化の方向について十分な情報を得つつ主体的に職業を選択できるよう、相談援助の充実を図るとともに、総合的な職業情報の提供と職業に関する体験の機会を提供する施設の設置準備等を進める。

7.環境と調和した産業・社会の構築

 近年の環境問題は、地球温暖化等の地球環境問題、廃棄物に起因する問題及び大気汚染・水質汚濁問題等、経済活動と密接な関連を持つとともに、長期的には経済活動の存立基盤に関わるものとなっている。このため活力ある経済は、同時に環境と調和した持続可能なものである必要があり、経済活動を環境負荷の低減や資源・エネルギーの持続可能な利用の観点から見直し、積極的に環境と調和した産業・社会の構築に努める。また、そのための方策として様々な対策を複合的・総合的に組み合わせていくことが重要であり、その中で可能な限り市場の機能を生かしていくこととする。

(1) 地球温暖化問題への対応

 地球温暖化問題は地球規模の問題であり、一部の国のみによる取組では不十分である。特に、今後、世界全体のCO2 排出に占める比率の上昇が予測されている途上国等の取組・参加を確保していくためにも、「共通だが差異のある責任」の考えを踏まえ、先進国が率先して対策に取り組む必要がある。このため、我が国としては、国際的に定められている気候変動に関する国際連合枠組条約を着実に実施し、国際的連携を図りつつ、地球温暖化防止行動計画に定める目標を達成するものとする。
 我が国のCO2 排出総量は、93年度には冷夏、不況によるエネルギー需要の伸びの鈍化や、原子力発電の増加等により前年度比で若干減少したが、92年度には既に、一人当たり排出量が90年度水準で安定化した場合の2000年度の見通しの水準に達していた等、2000年における目標の達成に向けて一層の努力が必要な状況にある。また、上記条約で措置を明確に定めていない2000年以降の取扱いが国際的には大きな課題となっている。即ち、先進国には例えば、2005年、2010年、2020年といった時点でのCO2 等の温室効果ガス排出量の抑制及び削減目的の設定や、政策手段の設定の検討が求められている。このため、我が国としても、一層のCO2 等の温室効果ガスの排出抑制や吸収・固定の拡大等に努める。具体的には、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく報告書や、環境基本計画で示した対策を早急かつ強力に実施するとともに、先進国・途上国を含む世界的取組等に関する国際的な枠組みづくりに努力する。また、対策技術の研究・開発、普及促進等のための国際協力、経済的措置の活用等、一層、積極的な対策の検討を行い、適切なものから国民の理解と協力を得るよう努力し、早期に実施する。

(2) 市場の機能を生かして創る環境と調和した産業・社会

1) 市場の機能を活用する方策

 「規制緩和」の趣旨である、できるだけ市場の機能を生かし経済を活性化するという基本的考え方は、環境保全についても言える。即ち、産業・社会を環境と調和させていく際にも、可能な対策メニューの中で同じ環境保全の効果を得るための対策費用は可能な限り抑制すべきと考えられ、可能な分野では、市場の機能を積極的に活用していくこととする。このため、汚染者負担の原則の下に、以下の施策の総合的な整備・実施を促進する。
 まず、市場の機能を生かして、環境と調和した産業・社会を構築するためには、市場に参加する全ての生産者・消費者等が、十分な情報を持ち合理的に行動できることが重要である。このため、学校等での環境教育の充実等各種の啓発、情報提供活動を一層強化するとともに、情報提供の基礎となる環境問題及び、環境と経済・社会の関係等に関する正確な知識の拡充のため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等と連携した地球温暖化問題に関する調査・研究、監視・観測、環境勘定を付加した新たな国民経済計算体系の整備等、調査・研究及び監視・観測を充実させる。
 また、ISO(国際標準化機構)等で進展している国際的な動向や、「貿易と環境」問題との関連にも留意しつつ、環境管理・監査制度の構築、環境ラベル事業の適切な指導、ライフサイクルアセスメントの手法検討、環境保全に配慮した製品規格の制定や普及等により環境関連分野における民間・企業部門の自発的取組を支援する。
 さらに、環境以外の目的による規制について、環境負荷の低減の観点から再検討した上で、可能なものについては規制緩和を進め、市場が働く範囲を拡大する。他方、様々な規制緩和を進めるに当たっては、環境面への影響を十分配慮し、必要に応じそれを補う政策対応をとることとする。  加えて、環境問題が継続してきた根源には、経済社会活動等による環境負荷への認識が明確でなく、価格に反映されてこなかったことが挙げられる。従って、環境コストを価格に反映させるというルールを国民の理解を得て確立し、その実現のための経済的措置の活用について検討を進める。また、その具体的措置の導入に際しては、国民の理解と協力を得るよう努力する。

2) 環境関連産業発展のための基盤整備、技術開発支援等

 環境問題への対応は大きなビジネスチャンスであり、環境関連産業は、業種横断的な有望な新規産業と捉えることができる。この環境関連産業の発展に資するため、情報のネットワーク化支援等の基盤整備を行う。  他方、地球環境問題等の環境問題における技術の役割は大きく、画期的な技術革新が求められる。このため、新エネルギー等環境問題に関連する基礎的な技術開発を中心に、国等による研究開発の推進や、そのための基盤整備を進める。  また、環境と調和した経済社会の構築のためには、市場機能を活用する方策や技術開発の促進に止まらず、所要のインフラの整備やより直接的な措置、情報化と環境の関係の調査研究等を含め複合的・総合的に対応しなければならない。

III.活力ある産業の展開と必要な諸政策

1.新たな産業の構築

 これまで製造業を中心とする生産性の上昇には目ざましいものがあった。しかし、円高の進行やアジア諸国の工業化により、我が国の国際競争力が強いと言われてきた分野についても、アジア諸国の激しい追い上げを受けており、また、情報通信部門などの新しい製品・サービスの開発力においてもアメリカに大きな格差を付けられ、競争力の向上が求められている。さらに、製造業以外の部門については、アメリカやEU諸国よりも生産性の低い業種も多く、一層の効率化に努めることが必要である。
 一方、経済社会の国際化の一層の進展に対応するためには、国際的な競争が活発に行われる国内外に開かれた市場を形成し、適切な国際分業体制の構築を促していくことが重要であり、こうした取組を通じて、産業の活性化を図ることが求められている。

(1) 既存産業の再構築と新規事業の展開

 我が国産業の革新的な展開を図っていくため、高コスト構造による経済の歪みを是正するとともに、社会のニーズを的確に把握して潜在的な需要を発見し、独創的で幅広い産業のフロンティアを開拓する環境を整備することが必要である。
 このため、事業革新法の活用等を通じて、企業レベルにおける異業種間事業提携や共同研究開発による新しい商品開発や生産方式の導入、製造業と流通業の提携・協力関係の形成による新取引方式の導入等による事業革新の円滑化を支援する必要がある。このような取組と消費者・ユーザーのニーズに的確に対応した商品・サービスの提供への努力があいまって新たな事業分野を開拓していくことが求められる。その際、規制緩和等の推進を図ると同時に、主に公共主体によって提供されてきた福祉等のサービスの市場化を促進することは、民間経済主体による多様な商品・サービスの供給促進と消費者の選択肢の拡大をもたらし、産業の新たな展開にもつながる。特に、規制緩和は、企業の自由な創意工夫を引き出すことによって、新規事業を創出するものである。
 こうした企業努力とこれに対する環境整備を図ることにより、今後、高い成長が期待できる分野(いわゆる「成長期待分野」)としては、高度情報化の進展による情報通信関連(例えば、コンピュ-タ等の情報通信機器、移動体通信等の高度通信)、多様化する企業ニーズを充足させるための企業活動支援関連(例えば、リ-ス、広告)、円滑な労働移動や労働の質の向上のための人材関連(例えば、専修学校、社員教育サ-ビス、人材派遣)、少子・高齢化の進展等に対応した医療保健・福祉関連(例えば、在宅医療関連、福祉用具)、所得水準の向上や自由時間の拡大等を背景とした余暇・生活関連(例えば、旅行、文化・芸術鑑賞、外食)、高度化・多様化する居住へのニーズに対応するための良質な住宅関連(例えば、高齢者住宅、住宅リフォ-ム)、地球環境問題の顕在化等に伴う環境関連(例えば、廃棄物処理、公害防止装置、低公害車)等が考えられる。

(2) 活力ある製造業とサービス産業の形成

 我が国の製造業は、国内の生産拠点を海外へシフトさせる動きを活発化させている。日本企業の海外進出は、アジア諸国を中心とした国際的な経済的相互依存を深化させ、ひいては、世界経済の発展にも資するものである。一方、現状の高コスト構造の下では、本来比較優位を有するはずの産業が海外に進出し、低生産性部門のみが日本に残るという産業の空洞化の懸念があることから、規制緩和の推進や民間慣行の見直し等による高コスト構造の是正に加え、創造性があり、技術優位性のある産業への展開を通じ、グローバルな視点での適切な分業体制の構築を図る必要がある。その際、既存分野の発展や新規分野の開拓につながるような幅広い研究開発力の向上、生産に係る技能・ノウハウの維持・向上など産業自らの積極的な努力が行われなければならない。
 このため、製造業における製品・サービスの調達コストの低減や、創造的研究開発の推進等を行い、さらに、一層効率的な生産・供給体制の構築、部品の共通化・標準化、生産・取引方法の改善等の企業努力に関する環境整備及び支援を図る。
 また、我が国経済の大きな部分を占めているサービス産業は、総じてみれば、製造業に比べ生産性が低く、欧米諸国に比べて大きな内外価格差を有している。今後、経済のサービス化が一段と進展し、サービス産業の他産業における中間投入係数が高まると予想されることから、サービス分野における生産性の向上が図られなければ、他産業の国際競争力を低下させるとともに、我が国経済全体の成長を抑制することにもなる。また、サービス産業は国民生活のゆとりと豊かさを支える面もあり、自らの経営の効率化、人材・技術面の整備に取り組み、サービスの質や生産性の一層の向上に努めることが求められる。
 このため、生活関連サービス、ビジネス支援サービス関連分野をはじめとする関連分野において、民間部門の競争環境の整備を図り、既存サービスの効率化と新規サービスの創出によって、サービス産業の活性化を図る必要がある。

(3) ダイナミックな企業活動を促すための環境整備

 産業活動の自由度を拡大し、産業の活性化を促す等の観点から、規制緩和と競争政策の積極的な展開を図るとともに、企業を取り巻く法・制度について可能な限り速やかに見直しを行う。法人課税については、幅広い観点から検討を行い、また、内外の企業による多様な競争を通じた国内経済の活性化等に資するため、輸入・対内直接投資を促進する。さらに、国際的な企業活動を支援するため、国際的な交流機能の強化を推進する。

1) 法・制度の見直し

 企業組織関連法・制度については、商法における合併手続きの簡素化、会社分割規定の整備、独占禁止法における合併・営業譲受等の届出制度、株式保有の報告制度及び役員兼任の届出制度について、制度の趣旨・目的、企業の負担軽減、国際的整合性の確保等の観点から、見直しを図る。また、持株会社規制については、事業支配力の過度の集中を防止するとの趣旨等を踏まえつつ、事業者の活動をより活発にする等の観点から具体的検討を行う。

2) 法人課税のあり方

 法人課税については、公正・中立を基本とし、我が国経済の国際化の進展、産業構造の変化等を踏まえ、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという基本的方向に沿って、我が国の税体系に占める法人所得課税の地位に留意しつつ、幅広い観点から検討を行う。

3) 輸入・対内直接投資の促進

 輸入の促進や対内直接投資の拡大による競争を促進させる観点から、市場開放措置や輸入促進地域、輸入関連インフラ等の整備、税制、金融上の措置等の輸入促進支援策を実施するとともに、我が国の高地価等の対内直接投資阻害要因や、競争制限的な慣行等の輸入阻害要因の是正に努める。また、対内直接投資を行う外国企業等に対し、事業展開の円滑化等を目的とした税制、金融等における政策的支援等を行う。

4) 国際的な交流機能の強化

 ダイナミックな企業活動が国際的に展開されていくためには、我が国に人、物、情報等の国際交流拠点が形成されていることが重要である。そのため、社 会資本整備を通じた空港及び港湾の国際的な交流拠点機能の強化並びに情報通信インフラの整備拡充を推進する。

2.創造的中小企業に対する支援

 中小企業は、柔軟な加工・生産システムやきめ細かいサービス等の機能面から産業の生産・販売体制を支え、また、こうした生産活動等を通じて雇用の場の提供や地域経済の発展、新規事業の開拓といった役割を果たしてきた。中小企業はこのような特性を生かしつつ、市場ニーズの変化への対応等を通じ、産業構造の変革を担っていくものとして期待されている。その際、単に保護の対象となる弱者としてではなく、市場での活発な競争を促進するとともに、産業のフロンティアや規制緩和によって広がるビジネスチャンスに積極的に挑戦し、新たな産業やビジネスの形態を生み出していく母体と位置づけられる。
 将来の産業発展に資するような新たな事業展開を図るためには、経済環境の変化に即応した新規開業や、新製品・新サービスの開発、生産工程や流通方式の改善等の技術開発とその成果の事業化といった創造的事業活動が求められ、その担い手として企業家精神に富み、迅速かつ柔軟な対応のきく中小企業への期待が大きい。このため、個々の意欲ある中小企業や創業者等に対する支援の充実を図る観点から、中小企業創造活動促進法、中小企業新分野進出等円滑化法等の活用により、以下の施策を講じる必要がある。
 i 中小企業の新分野進出、新製品・新サービスの開発や経営基盤の強化、さらに創業者や創業前の個人に対する経営資源の補完等のため、研究開発等事業による技術革新、情報化、人材の確保・育成等に対する支援を行う。
 ii 中小企業の情報ネットワークの構築、企業連携、融合化等異業種間の技術交流、公的機関による技術指導・情報提供等の施策を推進するとともに、企業集積の再構築に対する支援を行う。
 iii 中小企業の海外展開、海外製品の取り扱い等積極的な国際的事業活動の推進のため、事業展開に係るアドバイス、輸入関連情報等の提供等の支援を行う。
 iv 流通構造の変化に対応した中小卸売業者の物流効率化、共同化、情報化等を促進するとともに、中小小売業者が行う商業基盤施設の整備、情報化への対応、ソフト事業の推進、国際化への取組、事業の共同化等の事業の革新を支援する。

3.活力ある農林水産業の展開

 良質・安全・新鮮な食料が適正な価格で安定的に供給されることは、生活の安定の基本であり、より効率的で多様な選択ができる食料供給システムが求められている。一方、我が国農林水産業は、労働力の減少と高齢化が進行しており、その活性化が急務となっている。このため、より生産性の高い生産構造の実現に向けた農林水産業政策を展開するとともに、加工・流通面における一層の合理化・効率化を進める。特に、農業については、国内農産物、輸入農産物及び備蓄を適切に組合わせつつ食料の安定供給に寄与することを旨とし、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の着実な実施等により、農地、人材等の生産資源を効率的に活用した生産性の高い農業や多様なニーズに対応した農業の展開を促す。

(1) 農業者の創意工夫が発揮できるための条件の整備

 経営感覚に富んだ農業の実現のためには、市場を通じた消費者・食品産業等のニーズの的確な伝達、ニーズに応じた自由な経営展開を可能とする条件整備が必要である。このため、農産物の生産・流通の合理化・効率化を進めるとともに、米については、新たに制定された「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」等に基づき、流通規制の緩和や生産調整手法の改善を図る。また、肥料・飼料、畜舎、農業機械等投入資材に係る規制の緩和、農協による事業運営の見直し等、農業者がコスト削減を行える条件を整備する。さらに、農産物の品質・生産方法等についての正確な情報が消費者に伝達される客観的な規格・表示基準の整備・普及に努める。加えて、農業への人材流入が自由に行われるよう、農家子弟以外の者も積極的に参入できるための条件整備に努める。

(2) 意欲ある農業者の自立への支援

 輸入農産物との競合が強まる中で、国土条件等に制約のある我が国において生産性の高い農業を実現するためには、創意工夫が発揮できる条件整備と併せて、意欲ある農業者に対する支援が重要である。特に、土地利用型農業については、担い手へ農地の過半を集積する必要があり、利用権の設定等を通じて過去10年間の実績の2~3倍に相当する農地の流動化を行うため、農業経営基盤強化促進法等の積極的運用を図る。同時に、作業効率の向上、労働時間の短縮に資する大区画ほ場整備等の高生産性農業基盤整備等を重点的かつ加速的に推進するとともに、生産性向上、高付加価値化等を支える生産現場に直結する技術開発を加速する。このほか、市場や消費者との情報交流、技術情報等の幅広い収集・分析を可能とする情報通信の高度化を促進するとともに、意欲ある農業者の規模拡大等に必要な資金の円滑な供給のための支援を行う。

(3) 国土・環境の保全と農業

 農業・農村は、その適切な生産活動を通じ国土・環境保全に寄与しているが、近年、中山間地域等においては耕作放棄地が増加している。このため、農地の保全・管理と有効活用のための総合的な対策を講じる。また、生産性との調和を図りつつ環境への負荷軽減に配慮した環境保全型農業の確立・推進が重要であり、土づくりや生産技術の研究開発、家畜ふん尿のリサイクル、農薬・化学肥料の節減等を進めるとともに、生態系の保全等に配慮した農村整備等を推進する。

(4) 流域管理システムの確立と持続可能な森林経営の推進

 森林は、木材等の供給源であると同時に、国土・環境の保全、CO2 の吸収・固定、水資源のかん養、レクリエ-ションの場の提供等の公益的機能を有している。一方、林業は、木材価格の低迷、林業労働者の減少・高齢化等極めて厳しい状況にある。
 このため、流域内の関係者の合意の下に民有林・国有林を通じた木材の生産から加工・流通にわたる一体的連携による森林の流域管理システムの確立を図り、機械作業体系の確立、林道等道路網や加工・流通拠点の整備等を通じて木材の安定供給と供給コストの低減を図るとともに、森林の多面的機能を十分に発揮させる複層林や育成天然林等の多様な森林の整備を推進する。また、森林の公益的機能に対する国民の要請が高まる中、ボランティア等による国民参加の森づくりや第3セクターの活用等を通じて、森林の整備と山村の活性化を図る。国有林野事業については、組織機構の簡素化・合理化、要員規模の適正化等による経営改善を進める。
 さらに、地球温暖化や熱帯林の減少等地球的規模での環境問題が深刻化している。このため、世界の森林の保全と持続可能な経営の確立に向け、国連等の場での議論へ積極的に参加するとともに、国際協力や国内における取組の一層の推進を図る。

(5) 資源管理型漁業・つくり育てる漁業の一層の推進

 水産業については、国内需要が堅調に推移している一方、生産量は国際漁業規制の強化や我が国周辺水域の資源水準の低下により減少している。このため、我が国周辺水域においては、漁業生産基盤の効率的な整備、漁業経営の体質強化と併せ、地域の漁業者による漁期・漁法の管理等を通じて資源の合理的利用を図る資源管理型漁業の実施・定着を推進する。また、生餌から配合飼料への転換を進める等漁場環境の保全に配慮した養殖業、種苗の生産・放流等により資源の維持増大を図る栽培漁業など「つくり育てる漁業」を積極的に推進する。さらに、国連海洋法条約に沿った漁業制度や生産体制の整備を図るとともに、海外漁業協力や国際協議の場等を通じて世界の海洋資源の持続的利用を進める。
 水産物の流通・加工については、産地における流通・加工機能の高度化や、川上と川下の情報交流、水産物表示の適正化等により、消費者等のニーズに即した流通・加工体制を整備する。

IV.活力ある地域社会の展開と必要な政策

1.バランスのとれた国土の発展

 国土全体にわたって、交通・情報通信インフラ等の国土基盤の整備を進めることにより、各地域内及び地域間の交流条件を改善し、バランスのとれた国土の発展を推進する。

(1) 都市・農山漁村間の交流を通じた国土の有効利用

 大都市における過密等の弊害を緩和するとともに、地方において活力ある地域経済の発展を可能とするため、各地域において拠点地域を中心とした広域的な特色ある経済・生活圏域を形成し、大都市から農山漁村までを含めた国土全体の交流条件を改善することにより、美しく快適な生活環境を有するバランスのよい国土の発展とその利用を図る。

(2) 交通・情報通信インフラ等の国土基盤の整備

 都市・農山漁村間の交流をはじめ、圏域内の交流を円滑なものとし、地域の住民や企業が各都市に集積する様々な機能を相互に利用して活動することを可能とするために、地域において交通・情報通信インフラ等の整備を一層推進し、機能面において全国均質な発展基盤の提供を図る。

2.東京一極集中の是正

 我が国が今後とも世界経済の中で主導的役割を果たしていくためには、東京圏が中枢機能の純化を図り世界を代表する都市圏として発展していく必要がある。なお近時、東京圏においては、地方との地域間経済格差の縮小もあって人口が転出超過になるなど、一極集中の進行は沈静傾向にあるので、この機会をとらえて、生活環境の改善を一層推進する必要がある。

(1) 世界を代表する都市・東京の役割

 東京は、政治・行政の中心であるのみならず、経済、学術、文化、情報、ファッション等あらゆる分野の高次都市機能が生まれ、集積している。こうした高度の集積を背景に、東京は世界とのネットワークを形成しつつ、世界を代表する都市の一つとしての地位を築いてきた。しかし、この大規模な集積は、同時に高い地価、遠・高・狭の住宅事情、長距離化と混雑が続く通勤・通学、深刻な交通渋滞、行き詰まりつつあるゴミ処理問題など、多くの歪みと非効率を生み出している。今後とも、東京が世界を代表する都市としての地位を確保し、さらに効率の高い経済活動の場として発展していくためには、豊かな生活圏としての再生を図りつつ、金融・情報・文化活動・国際拠点機能等の中枢機能の機能純化を図る必要がある。
 このため、既成市街地の整備、都心部の居住機能の回復、豊かな自然とコミュニティの形成等により生活環境の再生を図りつつ、東京内部においては臨海副都心を含む副都心等への機能再配置を、東京圏においては多極法等に基づき、大宮・浦和地区や横浜など業務核都市等への機能再配置をさらに推進することで、圏域としての中枢性の維持と効率性の向上を図る。あわせて、円滑な交流に資する高速交通、高度情報通信などの経済発展基盤の一層の整備を進め、グランドデザインとしての多核多圏域型の都市構造の構築を推進する。さらに、金融の自由化・国際化を推進し、国際金融センターとしての我が国金融・資本市場のより一層の効率化・活性化を図る。
 これら施策の推進により、東京が21世紀においても世界中から、情報、資本等の集まる国際中枢都市としての輝きを発揮することを可能とする。

(2) 首都機能移転と業務の分散

 一極集中を排除し、多極分散型国土の形成に資するとともに、地震等の大規模災害に対する脆弱性を克服するため、国会等の移転に関する法律に基づき、世界都市としての東京都の整備に配慮しつつ、国会や行政・司法に関する機能のうち中枢的なものの東京圏外への移転の具体化について、積極的に検討を進める。
 また、行政、経済、文化等の諸機能が全国にわたり適正に配置され、それぞれの地域が有機的に連携しつつ、その特性を活かして発展するよう、首都圏から特に地域の拠点となる地方中枢・中核都市等へ、高度な専門性と創造性を必要とする産業・業務機能の分散を図る。

3.地域経済の発展

 首都圏以外の都市圏では、特に地方中枢・中核都市を中心に、人口・産業等の集積が進みつつあり、広域的な経済・生活圏が形成され、圏域内及び相互間の交流により発展している。この背景として、地方都市圏における雇用、所得、地価、諸物価等を総合的に評価した場合、地方の生活水準が中央に近づきつつある傾向があり、地方定住の条件が整いつつあるといえる。
 今後、さらに地域経済を発展させるためには、地方分権・分散及び規制緩和等の施策を総合的に推進し、地域における企業や個人のイニシアティブを活かすことが重要である。また、情報化等全国共通の生活・交流基盤の整備等を図りつつ、多様な就業機会の創出や教養・文化基盤の充実等を進め、首都圏と同水準の都市機能の享受を可能とすること等により、豊かな経済・生活圏の形成を一層推進し、UJIターン等の推進によって、地方定住志向を定着させる必要がある。この場合に、東京を経由しない国際化を視野に入れた地方経済の発展を図ることも必要である。

(1) 地域間経済格差の現状

 東京都と地方の経済格差は、昭和50年代後半から60年代にかけて拡大してきたが、平成元年を境に4年にかけて縮小に向かってきており、東京圏における人口の転出超過にも影響を与えている。この格差縮小は、東京圏におけるバブル崩壊の影響がある一方で、戦後ほぼ一貫して推進されてきた工業等の地方分散政策及び全国的に進展したインフラ整備の成果を示すものであり、今後とも適切な施策を持続的に講じ、全国的な産業構造の転換等に的確に対応することにより、当面の間継続するものと考えられる。

(2) 広域的な経済圏の発展

 こうした地域間経済格差の縮小のなかで、地域の国際化をも念頭においた交通・情報通信インフラの整備や諸機能の地方中枢・中核都市等への集積が進み、これら地方中枢・中核都市を中心に人、モノ、情報等が広範囲に交流する広域的な経済活動圏域が成長しつつある。
 近年における地方の経済圏域の成長を支えているのは、企業所得の確保とこれによる雇用の確保であり、今後さらに対個人サービス、対地方政府サービスのみならず、事業所向けサービスの成長による多様な雇用機会の創出など、第三次産業を視野に入れた総合的な雇用吸収力を地方圏で持続的に確保していくことが不可欠である。このためにも広域的な観点から、頭脳立地法・地方拠点法等に基づき、地域の拠点となる地方中枢・中核都市等の地域において、本社機能をはじめ、企画・管理、研究開発、都市的サービス等の高度な専門性と独創性を必要とする業務の育成・誘致を図り、地域経済の高度化の推進を図る。
 また、地方中小都市等を含むその他の地域については、産業構造の転換のなかで地場の産業等既存の集積を生かしつつ、研究開発基盤等を整備し、先端的な産業の育成・誘致を進める。さらに、地域において高度な専門技術を活かし、相互に連携して生産活動を行う中小企業の集積は地域産業の基盤を形成するものであり、積極的にその育成に努める。

(3) 地域経済の成長と国際的な産業再配置

 従来、地方経済の成長は工業団地等の誘致により支えられてきた面が強かった。しかし、労働、土地、中間投入等の高コスト構造に加え、円高等の進行や東アジアの経済発展等により、企業の海外進出が進展するなど、企業が国を選ぶ時代を迎えた現在、地方経済は直接海外との競争に直面している。
 このため、先端産業や研究開発及び地域の生活・産業に密接に結び付いた生活関連サービス、産業支援サービス等の業務を行う企業の誘致・育成や、各々の都市の規模と経済条件に応じた産業・機能の集積を図るとともに、高コスト構造の是正や中長期的な経済発展を見据えたインフラの整備等により、グローバル化の進展に対応した国際的にも魅力のある産業立地環境を実現することが必要である。
 また、このような状況は別の評価をすれば、アジア地域における各国の経済発展を背景として、国際的分業体制の再構築が一層進展すると見込まれる中で、地方の企業が高度な専門的製造技術を基に、多品種小ロットの製品を生産する都市型加工・組立製造業の集積を進めること等により、こうした新たな国際経済体制の一翼を担うことも視野にいれ、積極的かつ長期的なビジョンのもとに対応する機会としてとらえることもできる。
 したがって、地域の企業が事業の転換を図る場合或いは海外へ展開する場合、これを地域経済の発展のための積極的な事業展開として捉え、政策的に支援する。他方で、地域の企業が海外へ展開しても制度の違いや慣習等の理解不足などから行き詰まる場合もあることから、行政等において情報の収集・提供等を通じ、適切にガイドする必要がある。

(4) 地方分権、規制緩和の推進

 個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現のため、住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理することを基本として、地方分権を推進する。また、行政における企画的な業務等を分散させることにより、地域における高度で魅力的な就業機会の提供に結び付け、地域ニーズにあった自立・地域密着型の地域運営を可能にする。さらに、情報通信、流通等の規制緩和を進めることにより、地域における新たなビジネスチャンスの創出を図る。あわせて、地方学習拠点等を活用し、地域の運営に自ら責任を持つ自立した人材を育成し、そのイニシアティブを生かした産業の振興を推進する。

(5) 情報化の推進と地域振興

 大容量・双方向の通信を可能とする高度な情報通信は、テレワーク等の新たな就業形態を生み出し、遠隔地においても、距離と時間に制約されることなく産業・業務の立地を可能とするなど、新規事業のビジネスチャンスを創出するものである。特に、今後は音声、データ、映像など多様な形態の情報をいつでも、どこでも、相互に送受信できる高度情報通信社会が到来することが予想されるが、これは、娯楽、ショッピング、文化・芸術等のサービスを、全国どこでも享受し、また提供することが可能となるなど、地方の産業・業務が多様な発展を遂げる契機となりうるものである。このため、地方圏において、光ファイバー網や先進的なアプリケーション等の高度な情報通信インフラの整備を推進することにより、地域産業の高度化・効率化を図るとともに、現在首都圏等の大都市圏に集積しているこれら都市型サービスや本社等の中枢機能、その他の専門的・独創的な産業・業務の地方圏への分散を図る。
 また、高度な情報通信インフラを利用して、医療、教育、研究、道路交通等の情報化を進めることは、地域の住民に大都市と変わらない便利な都市機能を提供し、豊かで、安心できる生活を実現するものであるので、情報通信利用分野における諸規制の見直しやサービス手法の開発支援等を積極的に推進する。

4.農山漁村地域の活性化

 農山漁村地域、特に中山間地域においては、人口の自然減と高齢化の進行が顕著であり、人口減少に歯止めをかけることが地域活性化の前提として必要である。このため、農林水産業をはじめ多様な就業機会を確保するとともに、都市に比べ遅れている生活環境基盤の効率的・効果的整備を図る。また、地域の特色を活かした都市との交流を進める。

(1) 多様な就業機会の確保

 農山漁村、特に人口の減少と高齢化が著しい中山間地域においては、消費者・食品産業等の幅広いニーズを踏まえ、地域の自主性に基づき、多様な経営が相互に連携しつつ、地形、気象条件、文化・伝統等地域ごとの条件を活かした特色ある農林水産業を展開する。このため、コスト意識・マーケティング能力の向上、地域としての取組の促進、これをリードする人材の育成、新規参入の環境整備を進め、地域特産品のブランド化や新規作物の導入等を通じて地域の活性化を図る。また、農林水産業以外の就業機会の確保のため、食品加工業を含む製造業や観光業等、業種間での連携にも配慮した多様な就業機会の創出や、近隣都市への就業等を容易にするアクセスの改善を促進する。

(2) 生活環境基盤の効率的・効果的な整備

 農山漁村の人口減少に歯止めをかけるため、関係省庁の密接な連携及び国と自治体の適正な役割分担の下に、生活排水処理施設、医療体制等都市に比べ遅れている生活環境基盤の効率的・効果的整備を進めるとともに、経済活性化にも役立つ情報通信の高度化を促進する。

(3) 都市と農山漁村との交流

 農山漁村のアメニティに対する都市住民の需要が高まっていることを踏まえ、地域の文化や良好な環境の保全・形成に対する地域住民を中心とした取組を促す。また、農山漁村での滞在型余暇活動のための条件整備等、地域の特色を活かした都市との交流の促進を通じ、農山漁村の活性化を促す。

V.災害等緊急事態に対応した経済社会システム等の構築

1.災害対策の基本的方向

 我が国は災害列島であり、これまでも、国土保全事業の積極的推進、防災体制の充実等により、災害による被害の軽減に努めてきた。今後とも、これらの施策を引き続き推進するとともに、今般の阪神・淡路大震災による大規模な被害の経験にかんがみ、災害による被害を最小化する観点から、あらかじめ、経済システムを支える災害に強い国土の形成や防災体制の整備を図る。

2.災害対策の推進

 今後とも我が国において発生が予想される地震、台風、火山噴火、異常渇水等の災害への対応を図るため、防災インフラの整備や災害に迅速に対応できるシステムの構築等を進める。特に震災については、あらかじめ以下の対策を講ずる。

(1) 災害の予防に関する取組

1) 国土構造における防災性の向上

 大都市圏に集中した経済的な中枢機能の防災性を向上させるとともに、幹線交通網・情報通信網の整備を進め、人口・機能を分散させることにより、経済的リスクの軽減を図る。また、国土構造の形成において、防災インフラの整備を図る。この場合、各種ネットワークシステムの多重化を一層進めるとともに、ゆとりをもたせた構造、いわゆるリダンダンシーの発想の導入を行う。

2) 災害に強いまちづくりの推進

 災害に強いまちづくりを推進するため、コストの増大と防災能力の向上との関係を勘案しつつ、既存の構造物に係る耐震性の点検・補強、新設の構造物に係る耐震性の確保、耐震基準の整備等を図る。また、防災拠点としての防災安全街区、都市公園、幅員の広い道路等の整備や木造密集市街地の解消を、住民の意見を取り入れつつ進める。さらに、ライフライン共同収容施設としての共同溝・電線共同溝の整備を、各種ライフラインの特性等を勘案し、各事業者と調整を図りつつ進める。

3) 防災マニュアルの充実

 国等において、大地震による被害想定の見直し、初動期の対応等の観点からの各種防災計画の見直しを行うとともに、自治体相互間の広域応援体制の充実・強化を図る。また、民間企業等においても、特に通信・物流等の確保に留意しつつ、緊急時の対策マニュアルの見直し等を推進する。さらに、国民個々の自主防災を支援するため、国等において自主防災マニュアルを作成し、その充実・普及に努める。

4) 地震予知の調査・研究等の推進

 地震予知の調査・研究の充実や観測施設の整備等により、災害予知能力を向上させる。また、防災対策に関する研究開発を推進する。

(2) 災害発生時の活動に関する取組

1) 災害発生時における情報の収集及び伝達の充実

 防災関係通信の充実等による被災状況、災害規模等に関する情報収集の迅速化、官邸等への情報伝達の迅速化や災害対策に係る指示の一元化等により、被害の最小化を図る。また、情報伝達手段については、通信衛星等による無線ネットワークやパソコンネットワークを活用するなど、その多様化を図る。

2) 応急対策の充実等

 応急対策を迅速に行うため、警察・消防・自衛隊・海上保安庁等防災関係機関の連携の強化等により、緊急時における輸送路や情報通信の早期確保を図る。また、地域において、食料、飲料水等の備蓄を充実させるとともに、防災訓練の強化やプライマリー・ケアに関する知識の普及等により、国民の自主防災能力を向上させる。さらに、ボランティア活動に対する支援の強化やその活動の 一層の円滑化を図る。

(3) 災害復旧・復興に関する取組

 被災地においては、被災市街地の迅速な復旧・復興を図るほか、工場等の操業の早期再開のための支援、産業関連基盤の整備、新産業の創出等により、その経済の円滑な回復を図る必要があり、国等はそれに十分に配慮する。また、災害の経済的影響に関するマクロ分析をあらかじめ行う必要がある。


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