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物流ワーキング・グループ報告書

経済審議会行動計画委員会
物流ワーキング・グループ報告書
平成8年10月9日



目次

I 総論----------------------------------1
1 はじめに-------------------------------1
2 規制の撤廃------------------------------1
1) 参入規制の撤廃---------------------------2
2) 価格規制の撤廃---------------------------3
3 効率的な社会資本の整備と運営---------------------4

II 個別領域ごとの構造改革-------------------------6
1 内航海運の規制緩和--------------------------6
1) 船腹調整制度の廃止-------------------------6
2) 運賃に関する規制の廃止-----------------------7
3) その他の参入規制等の廃止----------------------7
4) 運用基準等の抜本的見直し----------------------8
5) カボタージュの問題-------------------------8

2 港湾における規制緩和等------------------------9
1) 港湾運送事業に係る免許制度の見直し、認可料金制度の撤廃等------9
2) 埠頭等港湾施設運営の効率化、民営化等----------------11
3) 水先に関する規制の見直し----------------------11

3 貨物鉄道事業の参入・価格規制の廃止等-----------------11
1) 運賃認可制の廃止--------------------------12
2) 参入規制の緩和---------------------------12

4 トラック輸送に係る規制の撤廃---------------------12
1) 営業区域に係る規制の撤廃----------------------13
2) 最低保有台数の撤廃-------------------------13
3) 事業遂行能力要件の廃止-----------------------13
4) 運賃・料金規制の撤廃------------------------14

5 その他--------------------------------14
1) 各種申請手続等の大幅な簡素化--------------------14
2) 幹線道路における重量制限の緩和等------------------15
3) 国内航空利用運送事業に係る外資規制の撤廃--------------15

参考図表---------------------------------17


経済審議会行動計画委員会物流ワーキング・グループ・メンバー

(座長) 中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
  諸井 虔 秩父小野田株取締役相談役
  寺田 一薫 東京商船大学商船学部助教授

I 総論

1 はじめに

 物流コストは、日本経済の高コスト構造の重要な要因として広く認識され、その低下が強く求められている。
 物流は産業にとって重要な中間財であり、その効率化が経済全体の効率化を左右する。また、物流は人流や食料品などの消費財と異なり、一般国民との直接の接触度合いは小さいが、最終的にはその効率化は消費者に大きな影響を与える。加えて、物流の技術革新によって宅配便や複合一貫輸送のような革新的なサ-ビスが生み出され、これが物流経路の多様化を通じて流通経路の多様化をも導く。
 しかし、物流分野における公的規制とそれに支えられた取引慣行・労働慣行は、そのような動きを阻害し、物流の効率化を妨げ、物流コストの硬直化と非近代性を温存し、荷主にコスト増をもたらすことによって経済全体の効率化と国民の生活改善を妨げているだけでなく、物流産業自体の近代化・発展をも阻んでいる。
 また、急速な円高とそれに平行した経済活動のグローバル化の進展のもとで、国際物流コストに対比した国内物流の高コストが痛感されている(図1)。アジア諸地域での運輸の拠点化が進むなかで、生産拠点の海外移転など産業空洞化への懸念と表裏して、物流産業自体の空洞化も懸念されている(図2)。
 したがって、物流分野における競争抑制的規制を撤廃・緩和し、競争の一層の促進と自由化が図られなければならない。

2 規制の撤廃

 物流を含む運輸部門は、極めて規制が強く、鉄道、道路輸送、海運、航空輸送等の輸送手段別に参入規制、価格規制等多くの規制が設けられている(表1)。平成2年の「物流二法」(貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法)の施行をはじめ、近年、物流分野においても規制緩和が進展してきているものの、競争抑制的な規制がなお広範に存在している。
 一般に、参入規制、価格規制などの経済的規制導入の根拠は、自然独占等の「市場の失敗」を補正することに求められるが、物流分野は、輸送手段別にみても競争的市場である場合が多く、また、輸送手段間の競争をも考えると国内物流市場全体としては、本来、競争的な市場になりうるものであって、経済的規制導入が不可欠な性質をもっている市場とはいえない。

1) 参入規制の撤廃

 物流部門における参入規制、価格規制は、市場失敗の補正とは異なる目的から行われていることが少なくない。すなわち、内航海運、港湾運送業などでは、零細企業が多いという産業特性に鑑み、自由競争の下では、力の強い荷主との間で公正な取引が行われず、運輸業者の経営基盤が脆弱となり、結果として、運輸サービスの安定的供給が確保されないと主張され、そのことが需給調整の観点からの参入規制、それに伴う価格規制の大きな理由となっている。
 しかし、こうした理由からなされる参入規制は、既存企業を新規参入者による競争の圧力から遮断することによって、その効率化へのインセンティブを損ない、非効率企業の存続によって、物流部門の高コスト構造の原因となっている。
 長年続いた競争抑制的制度は、零細事業者の保護に寄与した反面、業界再編成・近代化を遅らせてきた。物流産業を構成する多数の小規模・零細事業者は、競争的な環境のもとでこそ大手に比べて大きな効率性を発揮する。また、低コストの小規模事業者とともに、情報化・近代化が可能な大規模事業者も存在しなければ、荷主ニーズへの対応も一面的となる。両者の競争によってこそ荷主に効率的かつ多様なサービスが供給されるのであり、ひいてはそれが物流産業全体の発展につながるのである。
 この点はトラック業界と内航・港湾運送を比較すれば理解できよう。トラック業界では、実質的に競争的な経営環境の下で若干の寡占化が進むことによって、近代化・情報化投資が行われ、これが業界の発展を導いてきた。これに対し、内航海運業における船腹調整と港湾運送業における新規参入の抑制と横並び料金制度は、積極的な近代化投資と複合化を図る革新的な事業者の発展を阻害することによって、業界の再編と近代化を遅らせている。
 また、需給調整の観点からの規制が鉄道、内航海運、航空輸送などの輸送手段別に行われているが、本来これらの輸送手段間の競争が促進されるべきであり、手段ごとの需給調整が図られるべきではない。
 一つの分野だけを規制によって保護しても、産業分野間の競争と国際競争は規制の効力を無にし、結局当該分野の衰退をもたらす。内航海運には陸上輸送という競争相手が存在するし、外航船舶が直接最終港に向かうことによっても影響を受ける。また港湾荷役を避けるために、荷役作業の内陸化を進める荷主もみられる。
 さらに、内航海運と港湾運送が非効率であるため、外航船社においては、五大港を経由せずに日本の最終積卸し港へ直行させたり、近隣諸国の拠点港から外国のフィーダー船を用いて最終港に陸揚げすることによって、本邦における内航運賃や港運料金を節約する動きが現実化しており、ハブ港湾(拠点港湾)の周辺アジア諸国への移行とフィーダーの外国船化が進行中である。このような状況の下では、日本の中だけで規制を温存していても、結局国際競争から取り残されてしまい、自身の衰退につながるだけである。
 したがって、高コスト構造を是正するとともに、物流分野の近代化と発展を図るためには、需給調整の観点からの参入規制を原則として撤廃すべきである。その上で、
 1)零細運輸業者と荷主との間の公正な取引は、独占禁止法の運用強化で確保すべきであり、
 2)零細業者や労働者の保護・育成は、参入規制によるのではなく、必要であれば中小企業対策や所得再分配政策等の直接的・包括的な政策によるべきである。

2) 価格規制の撤廃

 価格規制は、参入規制と楯の両面の関係にある。すなわち、参入規制によって当該市場が独占ないし寡占的となるために、価格を企業の自由に委ねた場合には、不当に高い価格設定が行われる可能性があり、こうした弊害を解決するために、参入規制に価格規制が伴っている。したがって、上述のように参入規制を撤廃すれば、価格規制の根拠はなくなるのであり、当然に撤廃されるべきものである。
 現行の価格規制については、参入規制を前提に、運輸業者による利用者の差別的取扱を防止することにその必要性を求める見解もある。しかし、利用者の差別的取扱は競争が抑制されている場合にこそ可能であり、競争の促進はむしろ荷主の状況を一般的には改善する。無論、特殊なケースとして差別的取扱がなされる場合もあろうが、これは一般産業においても発生するものであり、それらについては独占禁止法で対応すればよい。また、物流の利用者は大部分が企業であり、一律の料金規制は多様な荷主の個別的なニーズに対応できず、結局料金規制の形骸化をもたらすか、そうでなければ代替手段への移転をもたらすだけである。
 価格は、競争の最大のツールであり、その自由なくして競争は実現しえない。様々な物流ニーズを満たす多様な形態の物流サービスの提供には、それに対応した多様で弾力的な運賃・料金設定の自由化が必要である。

3 効率的な社会資本の整備と運営

 企業や消費者のニーズに合った物流サービスを安価に供給していくためには、競争強化を通じた物流部門でのコスト削減努力が必要であり、それを促すための規制緩和・撤廃が不可欠であるが、それとともに複合一貫輸送等を通じ社会全体として効率的な物流サービスの提供を実現していくためには、コンテナターミナル等の港湾施設、トラックターミナル、貨物鉄道施設など各種の社会資本整備が進められなければならない。しかし、こうした社会資本についても、これまでの整備方式を見直し、効率的な社会資本整備とその運営を実現しなければならない。
 とりわけ、物流は経済活動を支える基盤であることから、全国一律に容量、数の拡大を行っていくのではなく、隘路となっている大都市部とその周辺を中心に効率の高い選択的な投資を行う必要がある。また、複合一貫輸送等、異なる輸送手段を効率的に利用してドア・トゥ・ドアのサービスを効率的に提供していくために、空港と高速道路、あるいは、港湾と高速道路などの連結を視野に入れたインターモーダルな施設整備が図られなければならない。
 さらに、社会資本の建設から運営の全てにわたって「官」「中央」が行う必然はなく、市場メカニズムの活用、民営化と地方分権化を進めることによってコスト効率の改善及び受益と負担の一致を図るべきである。また、高速道路、港湾、空港などの社会資本は、その外部経済性によって、周辺地域にいわゆる開発利益をもたらすが、国や地方公共団体には法的に周辺施設との一体的経営が許されていないことが多いなどの理由により、開発利益を内部化できず、また、そのために一体的経営によって利益をあげようとする意欲にも乏しい。したがって、民営化等の検討を含めて整備運営制度の見直しを行うことによって、「開発利益の還元」を容易にし、経営効率を高め、社会資本整備にかかる納税者の負担を軽減していくことが必要である。
 物流社会資本の運営に当たっては、高速道路や空港整備特別会計のような全国プール制による内部補助のメカニズムを見直し、受益と負担の一致を図っていくことも、需要に見合った効率的な社会資本整備のために重要である(図3)。また、施設利用のピーク・オフピークに応じた弾力的な料金の導入など、料金体系の多様化等の工夫も不可欠である。

II 個別領域ごとの構造改革

1 内航海運の規制緩和

 内航海運は、大量の貨物を安価に輸送することが可能であり、鉄鋼、原油、セメント等バルキーな生産財を中心に、トン・キロベースでは、全輸送量の43.8%(平成6年度)と我が国の輸送において重要な地位を占めている(図4)。しかし、以下に述べる船腹調整制度等の諸規制が内航海運の近代化、効率化を遅らせていることから、これらの規制の見直しを早急に行うべきである(図5)。

1) 船腹調整制度の廃止

 内航海運の用に供する船舶の新造等については、日本内航海運組合総連合会の「保有船腹調整規定」で、スクラップ・アンド・ビルド方式による引き当て船舶の解撤が義務づけられ、船腹量が一定に制限され、新規参入への障壁となっている。
 また、この結果、スクラップ船の引当権利が値を付け、市場で売買されるという状況を生み出している(図6)。このため、新規に参入したり、規模の拡大や事業内容の変更をしようとする事業者が新たに船舶を建造したり、既存の船舶を購入する場合には、船舶そのものの費用に加えて、極めて高額の引当権利価格を負担しなければならないのが現状であり、これが新規投資のコスト増要因となるとともに、採算面からの大きな参入障壁となっている。なお、独占禁止法適用除外カルテルのうち、設備調整カルテルを実施しているのは、現在では船腹調整制度のみとなっている。
 平成8年3月に改定された規制緩和推進計画においては、「コンテナ船、RORO船を平成10年度末までに船腹調整事業の対象外とするよう措置する、その他の船舶については荷主の理解と協力を得ながら5年間を目途に所要の環境整備に努め、その達成状況を踏まえて同事業への依存の解消時期の具体化を図る」等の対応が決定されている。しかしこの対応策は、5年間もの環境整備の後にも、同事業の解消を確約したものではないため事業者の構造改善へのインセンティブを高めるものとなっていない。規制緩和推進計画の他の措置に比べても5年間の経過期間は長すぎるものであり、構造改革が喫緊の課題となっている今日の状況を踏まえ、環境整備等の経過期間を大幅に短縮するとともに、その後は即刻同事業を解消することを明示、確約すべきである。また、複合一貫輸送の担い手となるコンテナ船、RORO船については直ちに対象外とすべきである。
 既述のように、船腹調整制度が既存船舶に引当権利という資産的価値を生み、実際にそれが金融取引上の担保となっていることから、船腹調整制度の撤廃が引当資格の担保評価の下落を招き、地域的な金融上の困難をもたらすとの指摘もある。しかし、規制の撤廃・緩和に伴う困難を理由に不合理な規制を存続させるべきではなく、規制撤廃・緩和を前提に、これに伴う困難を処理すべきである。
 なお、現在の環境整備計画では、解撤比率(新造船舶のトン数に対するスクラップ船のトン数の比率)を一時的に引き上げることにより需給バランス改善の促進を図るという手法がとられているが、この手法は合理化、近代化に向けた新規投資のコスト負担をさらに高める一方、既存事業者への過剰な所得移転効果を持ち、結果として設備近代化等、業界の構造改善を遅らせる危険性が高く、見直すべきである。

2) 運賃に関する規制の廃止

 海上運送法により独占禁止法の適用除外として認められている運賃協定については、平成8年3月改定の規制緩和推進計画において、平成8年度末に北海道定期航路運賃同盟等4協定が、平成10年度末までに内航タンカー運賃協定及び内航ケミカルタンカー運賃協定が廃止されることとなる等、規制撤廃へ大きく前進した。平成10年度末までとされた内航タンカー、内航ケミカルタンカーの運賃協定についても、可能な限り早期の廃止に努めるべきである。

3) その他の参入規制等の廃止

 自家用船舶を内航運送の用に供するための規制は、届出制とされているが、自家用船舶を建造し、又は使用しようとする場合は、その建造着手前又は使用計画着手前に届出を行うよう指導するとともに、内航海運業の用に供する船舶でないことを確認するために、日本内航海運組合総連合会の意見書を徴するなど、著しく参入を困難にする運用が行われている。かかる運用の根拠となっている届出制を即刻廃止すべきである。
 定期航路における貨物船による自動車航送貨物定期航路事業(自動車とその搭乗者及び積載貨物をあわせて運送する輸送形態、いわゆる貨物フェリー)については、内航RORO船に係る船腹調整制度の実効性を確保するため、内航RORO船と競合関係にある長距離航路において、新たな貨物フェリーの許可等を行わないこととする調整措置がとられてているが、この措置を即刻廃止し、新規参入を自由化すべきである。
 また、旅客フェリーも、現実には貨物輸送の役割を担っている場合が少なくないが、内航RORO船(内航海運法)が自由運賃であるのに対し、旅客フェリーの運賃は、硬直的な認可制(海上運送法)となっており、RORO船との自由な価格競争を阻害している。したがって、競争促進のためにも旅客フェリーにおける運賃の自由化、弾力化を行うべきである。

4) 運用基準等の抜本的見直し

 内航運送業に係る許可においては、使用船舶が原則として3隻以上であること、自己所有船舶及び期間3年以上の定期用船(又は裸用船)が全使用量の60%以上であること、取扱貨物の過半数は直接荷主から引き受けるものであること、使用船舶のうち一定以上の船舶は自己所有船であること等の要件が定められている。これらの規制は経営基盤の安定のために必要であるとされているが、結果的には新規参入を阻害し事業者の自由な業務展開を妨げることから、業界全体の構造改善を促進するために、これらを早急に廃止すべきである。また、内航海運が本来的に自然独占等の問題がなく競争的でありうる市場であることから、内航運送業の許可制度そのものも届出制などへ緩和する方向で見直すべきである。

5) カボタージュの問題

 内航海運業法においては、外航海運に使用している船舶を内航海運に供してはいけないとしてはいないが、内航運送の許可基準等により、実質的に使用できないこととなっている。
 一方、船舶法においては、「日本船舶ニ非ザレバ不開港場ニ寄港シ又ハ日本各港ノ間ニオイテ物品又ハ旅客ノ運送ヲ為スコトヲ得ズ」と定められており、日本船舶でない船が日本の港間の運送を行うことはできないと規定されている。
 このような国内輸送を自国運送業者へ留保するという考え方はカボタージュと呼ばれ、現在、世界の主要国においても、我が国と同様に、他国籍の輸送手段による国内輸送を認めないことが当然とされている。
 しかし、国境を越えた企業活動の展開に伴う経済活動のボーダーレス化、世界経済における我が国の占める位置等に鑑み、我が国は率先して市場を開放していく役割を担っている。したがって、我が国は、運輸部門においても外国企業の参入を認め、また、同様の市場開放措置を世界に働きかけていくべきである。外国の船会社による内航運送及び外航船による内航運送の実施は、競争の強化によって我が国の内航運送業界の合理化を促進し、物流コストの低減を通じて経済全体の活性化に資するものと考えられる。

2 港湾における規制緩和等

 港湾サービスは、外航海運及び内航海運と陸上輸送との結節点であるにも関わらず、諸外国の港と比較して質の劣るサービス、高い料金等の問題が国内外から指摘されている(図7、表2)。特に近年、船社の間では、不便で割高な我が国の港湾を避けて、近隣アジア諸国の主要港に拠点港を移す動きが活発化していると言われている。また、非効率、高コストの港湾地区を避けて、港湾地区の外で荷役を行う企業が現れているという状況が、我が国の港湾サービスの劣悪さを象徴している。
 港湾サービスに係る問題点には、各種の慣行によるものも多いが、これらは基本的には船社、港湾運送業者、港湾労働者(労働組合)という民間の当事者間の協議により解決すべき問題であるとされてきた。しかし、これらの中には政府の行っている各種規制の競争抑制的効果に起因する問題点も多いことから、政府としても以下の規制の見直しを行うことにより、経済活動の基盤である港湾において、諸外国並みのサービスが実現されるよう取り組むべきである。

1) 港湾運送事業に係る免許制度の見直し、認可料金制度の撤廃等

 港湾運送事業とは、船積貨物の積卸し、はしけ及びいかだによる運送、上屋その他の荷捌き場における搬出入等のいわゆる港湾荷役を行う事業と、検数、鑑定、検量を行う事業を指す。
 港湾運送事業法が規制対象とするのは指定港における港湾運送事業及び港湾運送関連事業であるが、指定港には五大港をはじめ主要港湾における運送事業は全て含まれる。
 港湾運送事業に関する免許は、事業の種類及び港湾ごとに極めて細分化されており(表3)、また、需給調整要件を含む免許基準が定められている。これらの規制のため、新規参入は極めて困難となっている。
 このように新規参入が困難である上、免許が港湾ごとに与えられ、他の港湾で事業に従事するには新たな免許が必要であること、免許が細分化されており、さらにそれぞれ限定が付されていることから、ひとつには、事業者間の競争が抑制され、生産性が低下することによって、今ひとつには、複合的なサービスを積極的に展開しようとする革新的な事業者の行動を妨げることによって、港湾運送事業の効率性の低下をもたらしている(表4)。
 港湾運送事業も、本来的に自然独占等の問題が存在しない競争的でありうる市場であり、需給調整の観点からの参入規制の必要性はない。したがって、競争を制限している需給調整要件を廃止するとともに、港湾ごとの免許制度、免許区分や免許取得の際の条件について、廃止を含めた抜本的な見直しを行うべきである。
 また、港湾運送料金については、認可料金制度により、港類(5大港、一類港他)別の同一料金となっている。料金の認可制と硬直的な料金体系が競争意識を欠如させ、経営の弾力化を阻害し、港間での料金、サービス面での競争を妨げていると考えられることから、価格規制を廃止し、当事者間の自由な交渉に委ねることが適当である。
 さらに、平成2年に施行された物流二法のうちの貨物運送取扱事業法において、従来各運送事業法ごとに規定されていた運送取扱事業の制度が横断的、一元的な制度に改められ、各輸送手段を組み合わせた複合的かつ多様なサービスを合理的に供給することによって輸送の効率化が図られることが期待されているが、港湾運送業務及び港湾運送業務を委託する行為については同事業から除外されている。このため物流の一貫輸送は結節点である港湾で途切れてしまうことになり、輸送ニーズへの合理的な対応が不可能であるばかりでなく、運賃についても海運を利用する場合にはポート・トゥ・ポートについて別建ての運賃設定を求められる形になり、ドア・トゥ・ドアの複合一貫輸送が制約され、顧客ニーズへの適切な対応を阻害している。
 したがって、輸送の一貫性を保ち、かつ効率的な物流ネットワークを貨物運送取扱事業が構築できるよう、同事業に港湾運送事業を含めるべきである。
 また、以上の対応が取られた後に民間の慣行が自由な参入を妨げないようにすべきである。

2) 埠頭等港湾施設運営の効率化、民営化等

 港湾における埠頭には、不特定多数の船社の利用を前提とし、地方公共団体の管理する公共埠頭及び、特定の船社への専用貸付を前提とし、埠頭公社の管理する公社埠頭とがある。このうち、公共埠頭は、建設費用、固定資産税の負担等の面で優遇されている一方、コンテナヤードの未整備やEDI化をはじめとした近代化の遅れ等により、大型コンテナ船の利用に適していない。一方、需要の拡大している大型コンテナ船に適した公社埠頭は、その建設コスト、運営コスト負担額は公共埠頭に比べて高く、新設、拡大が困難になっている。
 埠頭をはじめとした港湾施設のニーズに対応した効率的運用を図っていくためには、国や地方公共団体の建設した施設の第三セクター等への貸与も含め、港湾運営の弾力化を図り、さらには民営化をも検討すべきである。

3) 水先に関する規制の見直し

 水先に要する費用についても、我が国は諸外国に比べて高いという批判が多く存在する。水先料金は、現在水先法の規定により運輸省令で定められているが、かかる規制を撤廃し、料金を自由化すべきである。
 また、船舶の近代化に伴い、水先人の必要性は次第に低下しているにもかかわらず規制の見直しが進んでいないことから、安全面からの必要性の範囲(海域、船舶の大きさ等)について随時見直しを行い、必要最小限の範囲に留めるべきである。

3 貨物鉄道事業の参入・価格規制の廃止等

 鉄道貨物輸送は、トラックに比べて少ない人員での大量輸送が可能であり、環境へ与える負荷も少ない等、多くの利点を有しているにもかかわらず、我が国においてはそのシェアは低迷している(図4)。したがって、鉄道貨物輸送に適した物流市場での競争が十分に行われるための条件を整える必要がある。
 鉄道貨物輸送を積極的に活用するためには、荷役設備、貨物線等のインフラの整備や、使いやすいサイズのコンテナの増備等の貨物鉄道会社の営業努力、利用しやすいダイヤの設定を可能にするための仕組みの整備等が不可欠であるが、政府の行っている規制の撤廃等も、荷主のニーズに合った運賃の設定を可能にすること等を通じて、鉄道貨物の利用の促進につながるものと考えられる。
 なお、鉄道事業の参入規制の見直し、鉄道貨物運賃規制の見直しの問題については行政改革委員会規制緩和小委員会においても検討されており、その結果も踏まえて政府としての対応策を決定すべきである。

1) 運賃認可制の廃止

 貨物鉄道事業の運賃制度については、鉄道事業法によって認可制となっており、運賃の柔軟な変更等が妨げられている。また、営業割引限度額についても認可運賃の5割以内と規定されている。しかし、コストを重視する荷主のニーズに対応し、競合関係にあるトラック輸送との間の競争を促進するためには、積載率が低い列車等の利用に関して大幅な値下げを行う等、柔軟な運賃設定を行う必要があり、したがって貨物鉄道事業に係る運賃認可制を廃止すべきである(表5)。貨物鉄道事業は、トラック輸送など代替輸送手段との間で実質的な競争状態が出現しており、自然独占等に基づ く価格規制の根拠は失われている。

2) 参入規制の緩和

 貨物鉄道事業を行うためには、鉄道事業法に基づく免許を取得する必要がある。しかし、貨物鉄道事業の効率化、近代化を推進するためには、新規参入を促進することが望ましい(表6)。このため、参入要件の緩和(需給調整の廃止など)等の措置を取り、新たな企業の参入を促すべきである。

4 トラック輸送に係る規制の撤廃

 トラック輸送は我が国の物流の中で最も中心的な役割を担っている(平成6年度の全輸送量の、トンベースで90.1%、トンキロ・ベースで51.5%を占める。)。平成2年の物流二法の施行により規制緩和が行われ、運輸業の中では最も競争的な分野となっているが、しかし、なお、数多くの規制が競争抑制的に作用している。トラック輸送に係る規制緩和に対する反対意見として、トラック事業者に零細業者が多いことから、規制緩和による競争強化が、過労運転、過積載に結びつくという問題点が主張される(表7)。しかし、過労運転、過積載の問題については、労働者保護、交通安全等の観点から、これらを直接的に規制する方法を取るべきであって、規制のもつ競争制限的効果によるべきではない。したがって、以下に述べるような参入抑制的な規制の撤廃により、革新的な新規参入業者の創意工夫を通じたトラック輸送の近代化、効率化を促進すべきである。

1) 営業区域に係る規制の撤廃

 貨物自動車運送事業法により、トラック事業者は、貨物の発着地のいずれもが営業区域にかからない輸送活動は禁止されている。この規制は、事業立地に制約がないトラック業界において全国での自由な営業区域を認めた場合、通常行われるべき営業管理や輸送の安全上の管理ができないことを防止するために行われているとされている。しかし、この規制により、帰り荷の確保が困難である等、輸送効率の低下を招いており、また、競争を営業区域ごとに分断する等、競争の制限を招いている。したがって、営業区域規制については全廃すべきである。同規制の目的のうち、営業管理等は本来、事業者の自己責任によるべきであり、また、過積載等による安全上の問題は取締りや罰則の強化等直接的規制により対応すべきである。あわせて、特別積合せ運送事業の規制は当然に廃止されるべきである。

2) 最低保有台数の撤廃

 零細企業の乱立による過労運転及び過積載を回避する等の目的により、営業区域ごとに最低保有台数基準が設けられている(表8)。平成8年3月に改定された規制緩和推進計画においては、最低保有台数規制について、将来的に全国一律5台となるよう、スケジュールを明確化し段階的に引き下げていくこととされているが、各営業区域ごとに配置する車両の台数は個々の企業がその実状、技術革新の状況等に応じて適切に判断することが最も効率的である。過労運転、過積載については取締りや罰則の強化等の直接的な方法により防止すべきであり、最低保有台数基準は撤廃し、1台での運行も可能とすべきである。

3) 事業遂行能力要件の廃止

 トラック事業には表面的には需給調整要件は存在しないことになっているが、事業遂行能力要件(過労運転や過積載等の防止のため、適確な推定運輸数量に応じた適切な運行管理体制をとることが法令等で義務付けられている。)が需給調整要件と同様の効果を生み出していると言われている。運行管理体制については、個々の企業が自己責任原則に基づいて適切に整備することが最も効率的であり、また、過労運転や過積載等の防止には直接的取締りによるべきであるので、最低限の項目を届け出るだけでの運行を認めるべきである。

4) 運賃・料金規制の撤廃

 トラックの運賃・料金については、事業者の事前届出制となっており、事業者は届出運賃の上下10%以内での運賃の設定が可能とされている。また、届出の際には、原価計算書その他の基礎資料を添付することが義務づけられている(平成8年3月改定の規制緩和推進計画においては、将来はその添付を廃止する方向で検討し、その検討結果を踏まえ、必要な措置を講ずることとされている。)。なお、運輸省は、消費者保護の観点から、届出運賃等が適正な水準を超える場合や、利用者を不当に差別する場合については、変更命令によりそれを是正することができるとされている。また、トラック事業者は、荷主に対して、収受した運賃又は料金の割戻を行ってはならないこととされている。
 市場においてはトラックの運賃・料金はかなりの値引きが行われているが、そのような実態も踏まえ、また、事業者の創意工夫を一層活用するため、運賃・料金の届出等についてはこれを廃止すべきである。優良事業者を消費者が認知する方法、不公正な取引の排除は、他に担保すべき手段があり、運賃・料金規制にこれを担わせるべきではない。

5 その他

1) 各種申請手続等の大幅な簡素化

 運輸関係の規制については、規制の内容もさることながら、提出書類の分量の多さ、煩雑さ等の手続面での負担を訴える業者が多く存在する。また、各種業界団体が申請手続等の窓口に委託されている場合、業界団体加入者と非加入者で実効上の不公平が生じているのではないかとの疑念をもつ業者も存在する。各種申請手続等については、公平性保持の上からも透明性を確保し、最低限の労力で済ませられることが当然であり、そのために以下の対応を取るべきである。
  ・ 申請書類の大幅簡素化と処理期間の大幅短縮
  ・ 申請手続に関する優良事業者への負担減免措置
  ・ フロッピーディスク等の電子的媒体による書類提出範囲の拡大
  ・ 関連業界団体非加入者への機会の公平

2) 幹線道路における重量制限の緩和等

 トラック(単車)の積載重量制限については平成5年11月にそれまでの20トンの上限が軸重に応じて25トンに引き上げられた。また、平成9年度末までには、セミトレーラを用いた船舶コンテナの道路輸送の際の重量制限が、ISO規格に定められた値まで緩和される予定である。
 しかし、重量制限が緩和されたあるいは緩和されるルートについての情報が不足しているという苦情が存在することから、通行可能なルートについてより積極的に広報する必要がある。
 また、25トン車の通行可能なルートについては、需要の多い区間を重点に、今後ともその延伸に努めるべきである。
 一方、軸重に係る規制に関しては、現行の10トンから欧州並みの11.5トン(駆動軸重)への緩和を求める声が根強く存在している。また、高さに係る規制に関しては、40フィートコンテナ用シャーシ上への20フィートコンテナ2個の積載を認めるべきとの意見が存在する。
 軸重、高さの規制に関しては、道路の設計基準の見直し及び道路の改良を伴うものであり、容易にはそれを緩和できないとする主張がある一方で、現行の設計基準でも多くの区間においては緩和が可能であり、それらの区間に限定してでも緩和すべきであるという主張も存在する。
 何れにしても、これらの規制の緩和を求める声が広範に存在していることは事実であることから、政府は、例えば、欧州で一般的に用いられている車両(セミトレーラ連結車、フルトレーラ連結車を含む。)の軸重、高さ等を一つの基準として、道路の設計基準の見直しを行うことも含め、規制を緩和する方向で検討すべきである。なお、道路の改良等を行う場合には、特に需要の多い区間を重点的に整備する等、道路整備の効率化を図るべきであるが、このためには、総論で述べたように道路整備システムの見直しが求められるところである。

3) 国内航空利用運送事業に係る外資規制の撤廃

 現行制度の下では、外国法人等による国内航空利用運送事業は認められていない。しかし、トラック、鉄道、内航海運といった他の輸送手段に係る利用運送については外資規制がないこと、外国事業者の参入により近年伸長しつつある航空貨物運送事業の一層の活性化が期待できること等に鑑みれば、外国事業者についても国内航空利用運送事業を認めるべきである。

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