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構造改革のための経済社会計画-活力ある経済・安心できるくらし-の推進状況と今後の課題

表紙

平成8年12月

経済審議会

目次

はじめに
第1章 経済情勢の展開
第1節 経済計画策定時の現況認識
第2節 経済計画策定後の経済動向
第3節 構造改革への課題
第2章 高コスト構造是正・活性化のための行動計画
第3章 新規事業展開・既存産業再構築と雇用創出
第1節 新規事業展開等に資する諸施策の動向
第2節 雇用創出と職業能力の開発
第3節 成長期待分野の動向
第4章 住宅・社会資本整備
第1節 住宅
第2節 社会資本整備
第5章 財政・社会保障
第1節 現状
第2節 国民負担率及び財政・社会保障のあり方について
第3節 今後の対応
むすび
(別紙)「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」における10分野の推進状況

はじめに

昨年12月に閣議決定された現行経済計画「構造改革のための経済社会計画-活力あ る経済・安心できるくらし-」(以下、経済計画)は、「毎年、経済審議会は、内外 経済情勢及び施策の実施状況を点検し、毎年度の経済運営との連携を図りつつ、その 後の政策運営の方向につき政府に報告する」とした。これに基づき、経済審議会は構 造改革推進部会、行動計画委員会を設置し、審議を行った。
審議に当たっては、

  1. 経済計画策定後の経済情勢の展開
  2. 10分野の「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」
  3. 新規事業展開と雇用創出
  4. 住宅・社会資本整備
  5. 財政・社会保障問題
を重点として検討を行い、その結果を取りまとめた。
なお、本年の審議では時間的制約もあり、経済計画の柱の一つである「地球社会へ の参画」をはじめ、十分に扱えなかった重要課題も多い。これらについては、今後の フォローアップの検討課題としたい。
政府においては、本報告の趣旨を十分踏まえ、21世紀に向けて、活力ある経済・安 心できるくらしの実現のため、構造改革を一層強力に推進されたい。

第1章 経済情勢の展開

第1節 経済計画策定時の現況認識

経済計画は、我が国経済社会を取りまく潮流変化を、1)グローバリゼーションの進 展、2)高次な成熟経済社会への転換、3)少子・高齢社会への移行、4)情報通信の高度 化、の4つに整理するとともに、我が国経済社会がこれらの変化にフレキシブルに対 応できていないことから、1)新規産業の展開の遅れと産業空洞化、2)雇用に対する不 安、3)少子・高齢社会のくらしへの不安、4)豊かさの実感の欠如への不満、5)地球社 会における責任と役割の増大、といった5つの構造的諸問題に我が国が直面している との認識から出発している。
さらに、これらの構造的諸問題に対する構造調整が十分進まない段階で、バブルの 発生と崩壊、それに伴う不良資産問題、円高の進行等が加わり、我が国経済社会の先 行きに対する不透明感は一層強まることとなったと分析した。

第2節 経済計画策定後の経済動向

(景気動向)
経済計画策定時の景気の状況を振り返ると、平成7年央以降景気は足踏み状態にあ った。
その後、数次にわたる経済対策や公定歩合の引下げ等の金融緩和措置が採られたこと に加え、平成7年央以降円高是正が進んでいることから、平成7年末以降、景気には 明るい動きが見られるようになった。最近の動向をみると、設備投資は回復傾向にあ り、住宅建設は高い水準で推移しており、個人消費も緩やかな回復傾向にある。この ように、景気は回復の動きを続けている。そのテンポは緩やかであるものの、民間需 要は堅調さを増している。ただし、雇用情勢は改善しつつあるもののなお厳しい状況 が続いている。

(物価)
物価の動向をみると、国内卸売物価がやや弱含みで推移している。また、消費者物 価は安定している。(前年同期比で、国内卸売物価は、平成8年4 -6 月期▲0.9 % 、7 -9 月期▲0.7 %、消費者物価は平成8年4 -6 月期0.1 %、7 -9 月期0.2% )
このような物価の安定の背景には、需給の改善テンポが緩やかであることに加え、 1)海外からの原材料・部品の調達によるコスト削減や、生産拠点の海外移転等による 低価格の輸入品の増加といった生産構造の変化、2)消費財関連の流通経路の短縮化等 に見られる流通構造の変化、3)規制緩和の進展に伴う企業間競争の促進等、供給面で の構造的要因があると考えられる。

(対外収支)
経常収支黒字は、平成4年度をピークに着実に縮小してきており、対名目GDP比 も平成7年度は1.9 %、平成8年1-6月期には1.3%まで低下してきている。この 背景には、 貿易収支黒字の大幅な縮小やサービス収支赤字の拡大等があるが、特に輸入数量の増 加が大きい。これには、円高による価格効果に加えて、製造業の海外生産の本格化に 伴う逆輸入の増加等があるものと見られる。

(雇用情勢)
雇用情勢は、改善の動きが見られるものの、厳しい状況が続いている。労働力需給 を見ると、有効求人倍率は平成7年7月から9月にかけての0.61倍を底として、その 後上昇し、 平成8年9月0.71倍、10月0.73倍となっている。一方、完全失業率は、経済計画策定 後上昇し、平成8年5月及び6月に既往最高の3.5 %を記録したのち、9月3.3 %、 10月3.4 %となっている。完全失業率は若年層と高年齢層で特に高い水準にあるが、 その背景には、 若年層で就業意識の多様化等に伴う労働力需給のミスマッチが高まっていることや、 高年齢層で離職した後の就業機会が十分ではないこと等があるものと見られる。

(財政バランス)
我が国財政は、平成8年度末には公債残高が約240 兆円となる見込みであり、国債 費が政策的経費を大きく圧迫するなど、構造的にますます厳しさを増している。平成 8年度予算においては、平成元年度以来7年振りに、当初予算段階から償還財源の手 当のない特例公債の発行を行わざるをえず、多額の特例公債を含む公債発行額は約21 兆円、公債依存度は28%となった。また、現世代の負担(税収等)では、現世代の直 接の受益(国債費を除く歳出)すら賄えないという著しい不均衡状態にある。また、 地方財政についても、平成8年度において地方債依存度が過去最高の15.2%となると ともに、地方の借入金残高は平成8年度末で 136兆円になる見込みである等、厳しい 状況となっている。
国際的にも、平成8年において国・地方を通じた財政赤字対GDP比が▲ 7.4%、 債務残高対GDP比が88.8%となる等、主要先進国中最悪といえる状況に立ち至って いる。

(金融)
金融情勢については、公定歩合が平成3年以降9回にわたって引き下げられ、平成 7年9月には0.5 %と史上最低水準を更新し、現在までその水準が維持されている。 こうした中、短期金利、長期金利とも概ね低い水準で推移している。マネーサプライ に関しては、M2+CD(平均残高)の伸び率は平成7年末以降、概ね3%台で推移 している。

第3節 構造改革への課題

以上で概観したように、最近の我が国経済は回復の動きを続けているものの、構造 改革への取り組みなくしては、経済計画で描いたような中長期的な安定成長軌道を築 くことはできないことを改めて認識する必要がある。幸い、経済計画策定後、規制緩 和をはじめとした構造改革が必要であるという点については強い国民的コンセンサス が生まれつつある。
景気が回復の動きを続けているこの機を逃すことなく、「改革が展望を切り開く」と の認識の下、今後とも、経済計画において示された諸施策を実行し、構造改革を強力 かつ着実に推進していくことによって、我が国経済の足腰を強くし、中長期的に持続 的安定的な成長につなげていくことが不可欠である。


第2章 高コスト構造是正・活性化のための行動計画

高コスト構造是正・活性化のための行動計画は、別紙に示す通り、本年3月に閣議 決定された「規制緩和推進計画の改定について」に基づく施策をはじめ、行動計画に 掲げられた対応策が、各分野において逐次具体化され、実施に移されている。今後と も我が国経済の高コスト構造是正・活性化に向けて、一層の取組みが必要である。
行動計画のフォローアップに当たっては、指標等を用い、実施状況を点検すること としているが、計画策定後の初年度であるため、経済計画後の施策の効果を判断する ための統計数値が十分に利用可能ではない等の制約があった。次年度以降のフォロー アップにおいて、各分野の高コスト構造是正・活性化状況についての数量的な分析、 実施された施策の効果の把握等に努め、行動計画の進捗状況の点検を一層効果的なも のとすることとする。


第3章 新規事業展開・既存産業再構築と雇用創出

第1節 新規事業展開等に資する諸施策の動向

我が国産業の革新的な展開を図り、「自由で活力ある経済社会」を創造するために は、規制緩和と競争政策の積極的展開等により、高コスト構造による経済の歪みを是 正するとともに、独創的で幅広い産業のフロンティアを開拓する環境を整備すること が必要である。
このため、直接、間接的に新規事業展開と既存産業再構築を支援するための様々な 施策が行われている。

(ダイナミックな企業活動を促すための環境整備)
商法における合併手続の簡素化及び会社分割規定の整備については法制審議会商法 部会において、また、独占禁止法における合併・営業譲受等の届出制度の見直し等に ついては公正取引委員会において検討が行われている。法人課税のあり方についても 、税制調査会において幅広い観点からの検討が行われている。さらに、輸入・対内直 接投資の促進については、本年4月に輸入対内投資法に基づく税制の拡充、産業基盤 整備基金の債務保証の要件緩和等が実施された。

(ベンチャー企業等への資金供給の円滑化)
ベンチャー企業等への資金供給の円滑化を図るため、平成8年度予算においてベン チャー企業を支援する事業に対する補助金の創設等の公的支援策が講じられた。また 、資本市場において、各証券取引所における特則銘柄制度の創設、時価発行公募増資 のガイドラインの撤廃、公募社債の発行に係る適債基準の撤廃、無担保社債の発行に 係る財務制限条項の設定義務付けの撤廃等が行われた。民間金融機関についても、ベ ンチャー企業向けの貸出制度を整備する銀行等が増加している。

(創造的中小企業に対する支援等)
本年3月に改正された「中小企業創造活動促進法」に基づく、ベンチャー財団を通 じた直接金融支援の促進等の施策等、中小企業の技術開発や新規創業の支援策が拡充 された。また、中小企業の人材確保・育成、インターネット利用推進等の情報化、製 (メーカー)・配(卸)・販(小売)のネットワーク作りに代表される中小流通業の 効率化及び特許情報利用促進事業の創設等中小企業による知的財産権の活用等に係る 施策が強化された。

(人材の育成、科学技術の創造、情報通信の高度化)
人材の育成、科学技術の創造及び情報通信の高度化による発展基盤の確立を推進す る必要がある。人材育成に関しては、本年7月の中央教育審議会からの答申に基づい て、教育課程の改善等の教育改革の積極的かつ総合的な推進に向けた取組が講じられ ている。科学技術の創造に関しては、本年7月に、新たな視点に立って、変革を目指 した科学技術政策を総合的、計画的かつ積極的に推進するため、「科学技術基本計画 」が策定された。同計画では、社会的・経済的ニーズに対応した研究開発の推進、基 礎研究の積極的な振興を研究開発推進の基本的方向とし、任期付き任用制の導入等の 研究者の流動化の促進や産官学の連携・交流強化など新たな研究開発システムの構築 、望ましい研究開発基盤の実現、科学技術に関する学習の振興・幅広い国民的合意の 形成、政府の研究開発投資の拡充について提言している。また、情報通信の高度化に 関しては、本年1月に「電線類地中化五ヵ年計画」が、5月には、平成12年(2000年 )までの情報通信高度化目標及び推進方策を取りまとめた「情報通信高度化中期計画 」が策定されるとともに、8月には光ファイバー網の整備について特別融資制度の拡 充等が行われた。

新規事業展開等の遅れは、我が国産業の空洞化を招く等、日本経済にとって極めて 重大な影響を及ぼすものである。したがって、引き続き、規制緩和の一層の推進、競 争政策の積極的展開、知的財産権の活用や産官学の交流・連携円滑化のための環境整 備等の諸施策を積極的かつ強力に押し進めることにより、企業の自由な創意工夫を引 き出すことが必要である。また、次代を担う成長産業への円滑な資金供給、新たな可 能性を目指して積極果敢な挑戦を試みる中小企業に対する十分な支援、経済社会の発 展を支える基盤となる人材の育成、「科学技術創造立国」の実現及び高度情報通信社 会の早期構築を行うことが重要な課題である。

第2節 雇用創出と職業能力の開発

経済計画にも示されているように、構造改革の過程において雇用の安定を図ること は、国民生活をめぐる最大の課題であり、同時に変化に柔軟に対応できる人材が育成 される 「能力開花型社会」を構築していくことが必要である。
これらの課題を達成するためには、新規事業の展開等の支援を通じた新たな雇用の 創出や各人の個性を活かした職業能力開発を支援していく必要がある。その際、女子 労働者が自ら可能性を追求でき、その能力を十分発揮できる環境を整備していく視点 が重要である。
平成7年12月に閣議決定された第8次雇用対策基本計画や本年2月に閣議報告された 第6次職業能力開発基本計画は、こうした方向に沿ったものである。

(これまでの政策対応)
政策面では、第1に、雇用創出のための環境整備として、ベンチャー企業等新分野 展開を目指す中小企業が行う人材の確保・育成、魅力ある職場づくりの活動を支援す ることを目指し、平成7年10月に「中小企業労働力確保法」が改正され、同年11月よ り、同法に基づき創設された中小企業新分野展開支援人材確保助成金等の運用が開始 された。
第2に、職業能力開発のための支援策として、ビジネス・キャリア制度の拡充や、 上記の平成7年改正「中小企業労働力確保法」に基づく中小企業人材高度化能力開発 給付金の運用が実施された。

(今後求められる対応の方向性)
今後とも、雇用創出状況の把握に努めつつ着実な施策の展開を図っていく必要があ るが、 把握にあたっては、個々の産業分野における生産性の動向等についても留意する必要 がある。また、新たに雇用が創出された場において、個々の労働者が十分に能力を発 揮しているのかという点にも留意する必要がある。
同時に、経済計画では、地方経済の役割を積極的にとらえ、魅力ある産業立地環境 を実現することとしているが、現在、産業・雇用の空洞化への懸念が広まる中で、特 に国際競争力等の基盤となる技能が集積されている地域においては、このような技能 を発展的に継承していくためのシステムづくりを通じて雇用の安定等を図ることが求 められる。さらに、 自己啓発等、個人主導型の職業能力開発についても一層の政策を展開し、生涯にわた って労働の質の向上を図っていくことが必要である。
併せて、経済計画において、男女雇用機会均等法や労働基準法上の女子保護規定等 の見直しに向けた検討を行うこととしているが、現在、婦人少年問題審議会において 、雇用の分野における男女の均等な取扱いを一層促進するための具体的方策について 審議が進められており、その早急な取りまとめが期待される。

第3節 成長期待分野の動向

経済計画では、上記における施策が進められた結果、今後、高い成長が期待できる 分野(いわゆる「成長期待分野」)として

  1. 高度情報化の推進による「情報通信関連」、
  2. 多様化する企業ニーズを充足させるための「企業活動支援関連」、
  3. 労働の質の向上等のための「人材関連」、
  4. 少子・高齢化の進展等に対応した「医療保健・福祉関連」、
  5. 所得水準の向上や自由時間の拡大等を背景とした「余暇・生活関連」、
  6. 高度化・多様化する居住ニーズに対応するための「良質な住宅関連」、
  7. 地球環境問題の顕在化等に伴う「環境関連」、
の7分野を挙げた。
これら各分野の計画策定後の動向について、現時点での統計上の制約の下、個別事 例から判断すると、移動体通信総契約数、コンピューターリース件数、環境装置生産 額等において高い伸びを示している。全体としては、一部に近年の景気変動の影響を 強く受けているものもあるものの、総じて、規制緩和の効果等により、概ね着実に拡 大しているものと判断できる。
また、同様にこれら各分野における就業者数の包括的動向を現時点で把握すること も統計上の制約から困難であるが、平成2年から平成7年にかけて、例えば、移動体 通信等を含む「その他の電気通信業」、「老人福祉事業」、「遊戯場」、「物品賃貸 業」等が高い雇用者の伸び率を示しており、7つの成長期待分野がこの間における雇 用創出の源泉となってきたことがうかがわれる。
なお、7分野以外にも、例えば、バイオ関連、金融、ショッピングセンター等に 代表 される分野において、近年、規制緩和や科学技術の振興等を背景に大きな変化 があらわれつつあるなど、今後の成長の核と成り得べき分野が出現してきている。

今後とも、これら成長期待分野における新規事業の展開状況を注意深く見守りつつ 、ベンチャー企業等への資金供給の円滑化、創造的中小企業の支援、新分野展開等を 担う人材の確保・育成の支援、科学技術の創造の推進等の施策を適切に実施し、新規 事業展開と既存産業再構築を促す環境整備を行っていくことが必要である。


第4章 住宅・社会資本整備

第1節 住宅

住宅の分野では、経済計画に掲げられている、ゆとりある住宅・住環境の形成、職 住近接の都市構造の実現、住宅建設コストの低減に向けて諸施策が推進されている。

(ゆとりある住宅・住環境の形成)
最近の住宅供給の状況をみて見ると、住宅着工戸数は低水準の金利等を背景として 比較的高水準で推移しており、また、供給されている住宅の規模についても、全国ベ ースでは給与住宅を除き、安定的な伸びを示している。なお、本年3月には、21世紀 初頭に向け、国民の住生活の質の向上を目指した住宅政策を積極的に推進することを 目標とした「第七期住宅建設五箇年計画」が閣議決定された。
今後とも、平成12年度を目途に住宅一戸当たりの平均床面積を 100m^2程度とする目 標の達成に向けて、良質な住宅の建設や宅地供給の促進を図り、良質で多様な住宅ス トックを形成していくことが必要である。併せて、既存の住宅ストックの有効活用を 図るため、既存住宅流通市場やリフォーム市場をより一層充実するとともに、定期借 地権制度の普及促進等による利用面を重視した低廉で良質な住宅建設の促進、特定優 良賃貸住宅や公団賃貸住宅の供給促進等によるファミリー世帯向けの賃貸住宅ストッ クの充実、高齢社会に対応した住宅のバリアフリー化や福祉政策と連携した住宅整備 の促進、水と緑豊かな開放空間の確保や良好な街並み形成による良好な住環境の形成 等を図っていくことが重要である。

(職住近接の都市構造の実現)
最近の住宅立地動向を見ると、地価の横這い・下落傾向の続くなかで、大都市圏の 住宅市場は分譲マンションを中心として活況を呈しており、比較的都心部に近いとこ ろでの立地が増加してきている。こうした状況も反映して、首都圏において新規に住 宅を取得した者のうち通勤時間が1時間以内である比率は、約56%(平成5年度)か ら約65%(平成7年度)に増加しており、職住の近接は着実に進んできている。なお 、本年4月には、都心地域等における住宅供給の促進の追加等を内容とした「大都市 地域における住宅及び住宅地の供給に関する基本方針」の変更がなされた。
今後とも、低未利用地・市街化区域内農地の有効活用、低層密集住宅地の整備等に よる住宅宅地供給の促進、都心居住の推進、長時間通勤の是正に資する交通政策等の 諸施策を積極的に推進し、こうした動きをより一層確実なものとしていくことが必要 である。

(住宅建設コストの低減)
平成12年度までに標準的な住宅の建設コストがこれまでの水準の3分の2程度に低 減することを目指し、本年3月には「住宅建設コスト低減のための緊急重点計画」が 策定されるなど、その実現に向けた具体的な諸施策が展開されている。
今後とも、国民の住宅に関する幅広いニーズを踏まえつつ、低廉で良質な住宅の供 給を促進するとともに、経済構造改革を推進する観点からも、住宅の生産性の向上、 流通の合理化、市場競争の促進、規制の合理化等住宅建設コスト低減のための施策を 確実かつ効率的に実施していくことが必要である。

第2節 社会資本整備

社会資本整備については、平成8年度を初年度とする新たな長期計画として、本年 3月に「第七期住宅建設五箇年計画」を閣議決定したほか、特定交通安全施設等整備 事業、下水道整備、都市公園等整備、海岸事業、空港整備、港湾整備及び廃棄物処理 施設整備の7分野の五箇年計画について閣議了解された。
予算面でみると、平成8年度予算では、公共投資重点化枠等を通じ、国民生活の質 の向上に直結する下水道、都市公園、廃棄物処理施設、住宅対策、市街地整備等の事 業に重点的に配分し、また、活力ある経済社会の基盤として重要な新幹線、空港、高 規格幹線道路、 特定重要港湾等、防災対策の充実として高規格堤防等の事業にも配慮されたものとな っている。さらに、平成9年度概算要求基準においては、公共投資重点化枠が拡充さ れ、投資の重点化の一層の推進を図ることとしている。

(「公共投資基本計画」の推進)
今後とも、国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するため、人口構成が若く、 経済に活力のある現在のうちに、後世代に負担を残さないような財源の確保を前提と して、社会資本整備を一層促進していくことが必要である。このため、直接的に国民 生活の質の向上に結び付く分野への投資の重点化を引き続き行うとともに、高コスト 構造是正等構造改革が求められている我が国の活力ある経済社会の基盤の整備等に資 する分野への投資の重点化を一層推進していくことが重要である。その際、社会資本 整備における官民及び国と地方の役割分担にも留意し、民間主体による社会資本整備 のための条件整備や財政関係も含めた地方分権の推進に取り組んでいく必要がある。 また、地域別配分については、多極分散型国土の特色ある発展を図ることを基本とし 、重点的、効率的配分を行い基礎的条件整備を積極的に推進していく必要がある。

(社会資本の整備目標)
経済計画では、社会資本整備の政策目的を、1)快適な生活環境の形成、2)安全で安 心できる生活の確保、3)新しい日本経済の発展基盤の構築、の大きく3つに整理し、 これらの政策目的を踏まえつつ、利用者の視点に立った社会資本の整備目標として26 項目(32目 標)を掲げている。その進捗状況は別表の通りであり、その達成に向け整備が進めら れているところである。

(公共事業の建設コスト縮減と効率的・効果的実施)
公共事業に対しては、国民のコスト意識の高まりや公共事業に対するニーズの高度 化・多様化等を背景に、建設コスト縮減や効率的・効果的実施に関しての社会的要請 が極めて強いものになっている。このため、1)重点化等による投資の質の向上(重点 投資する分野の明確化、施策・事業の総合化のための省庁を横断する協議調整機関の 設置等)、2)事業の効率化(コスト縮減対策、類似事業間調整の推進等)、3)事業実 施過程の透明化(費用便益分析の実施、事業採択基準の公表等)等の諸施策について 、行動計画を策定し実施する等積極的な取組みが行われることとなっている。今後は 財政改革が喫緊の課題であることにも鑑みて、これらの行動計画や協議機関等におけ る取組みを着実に実行し、早急にその成果を上げていくことが肝要である。

(ストックの維持・更新)
今後は、蓄積された社会資本ストックの増加に伴う維持費の増加及び耐用年数の経 過に伴う大量の更新需要の発生が予想される。また、更新に当たっては、既存の機能 の維持だけではなく、文化・環境への配慮、高齢化、高度情報化、耐震性の向上等新 しいニーズに対応した機能のアップが求められる。このため、今後は、技術革新の進 展等を踏まえ、効率的な維持・更新のあり方が検討される必要がある。


第5章 財政・社会保障

第1節 現状

経済計画では、構造改革を推進していくに当たっては公的部門の改革を進める必要 があることを強く打ち出している。
経済計画が策定されてほぼ1年が経過する中で、最も目立つのは財政事情の悪化で ある。
平成8年度予算においては、当初予算としては7年振りの償還財源の手当てのない特 例公債の発行を含め、21兆円にものぼる公債発行に依存せざるをえない状況となった 。公債残高は急増し平成8年度末には約 240兆円に達している。また、社会保障部門 においては、医療保険制度については依然として財政の赤字構造体質を抱えたままで あるほか、公的年金制度については今後相当程度、保険料率が上昇していくことが予 想されている。
こうした状況に対して、本年5月に総理大臣より、「我が国経済社会の活力を維持 するためには、税と社会保障負担の二つを合わせた国民負担の水準をどの位に置くべ きか等について、考えないといけない時期にきている。この財政構造改革あるいは国 民負担の問題について、四審議会(経済審議会、財政制度審議会、税制調査会及び社 会保障制度審議 会)がそれぞれの問題意識をもって取り組んでもらうとともに、審議会の壁をこえて 連携を取るようにお願いしたい。」との指示があった。
財政制度審議会においては財政の果たすべき役割や守備範囲の見直し、財政健全化 に取り組むに当たっての目標について審議中であり、税制調査会においては社会経済 の構造的変革に伴い税制はいかにあるべきかといった観点から審議を進めている。ま た、社会保障制度審議会年金数理部会においては「公的年金制度の再編成の推進」( 本年3月閣議決 定)を受けて公的年金の財政状況の検証を行うこととしている等、各々の審議会で制 度改革に取り組んできた。また、産業構造審議会においては、経済活力の維持の観点 からみた財政・社会保障のあり方を審議してきたところである。

第2節 国民負担率及び財政・社会保障のあり方について

国民負担率について、経済計画においては、経済の発展、社会の活力を損なわない よう、 極力その上昇を抑制することが必要であるとしている。また、社会保障にかかる中長 期的な見通しを提示し、今後のあり方について国民的議論を展開し、あらゆる世代を 通じたコンセンサスを得ることが必要であるとしている。
こうした点を受けて、経済審議会構造改革推進部会では、国民負担率及び財政・社 会保障のあり方についての検討を行った。この検討の過程において、同部会の財政・ 社会保障問題ワーキング・グループでは新たに開発した計量モデルによるシミュレー ション分析を試みた。国民負担率の分母(国民所得)と 分子(租税・社会保障負担) 、それぞれとマク ロ経済(成長率、経常収支、労働供給など)は相互に依存しあいな がら変動している。こ うした依存関係を考慮しながら国民負担率、財政・社会保障 問題の将来の姿を展望するには、計量モデルによる分析が不可欠である。
なお、財政社会保障制度及び人口構造の変化を明示的に組み込んだ計量モデルによ る検討は、ほとんど初めての試みでもあり、未だ検討すべき課題も多いが、今回のシ ミュレーション分析結果から、概ね次のような3つのインプリケーションが得られて いる。
第1に、財政・社会保障の現状は、潜在的には「維持不可能」なものとなっている ことが明らかとなった。
すなわち、現行制度及び現時点で想定される税率あるいは保険料率等を放置したま ま推移すれば(以下、現行ケースという)、社会保障基金は2025年度以前に底を打ち 、一般政府債務はファイナンス困難な可能性があるほど膨れ上がるという結果となっ た。財政・社会保障制度についての、それぞれの性格に応じた、大幅な見直しが必要 である。
第2に、財政・社会保障問題は、単に財政・社会保障分野の問題であるにとどまら ず、国民経済全体の問題であることが明らかとなった。
すなわち、現行ケースでは、財政赤字の増加及び高齢化の進展に伴う国内貯蓄の減 少により、対外経常収支は赤字化し、2025年度までには純債務国に転落するという姿 が示されている。これは、現状を放置すれば、1980年代のアメリカと同じ道をたどる ことによって、 「双子の赤字」が発生し、国民の実質所得の伸びも低下していくことを意味しており 、財政・社会保障の将来は、国民経済全体にとっての問題であることを意味している 。
第3に、通常の国民負担率には、財政赤字が考慮されていないという限界があるこ とが明らかとなった。
すなわち、通常の国民負担率のみを見ていたのでは、これまで述べてきたような、 財政・社会保障の維持可能性、国民経済的な対外経常収支の問題点などを見逃してし まう恐れがある。全ての公共サービスが究極的には国民負担に裏付けられるものであ る以上、その負担は中長期的には財政支出規模の水準に見合うべきであり、将来を展 望する際には、財政赤字が多額に上っている状況が将来の国民負担率の上昇要因とな ることに留意する必要がある。ちなみに、現行ケースでは、国民負担率は1994年度の 35.8%から2025年度には50%を上回ることとなるが、国民負担率に財政赤字を加えた 「潜在的な国民負担率」は、1994年度の39.2%から2025年度には70%を上回ることと なる。

第3節 今後の対応

こうしたいわば「破局」シナリオを回避し、かつ、豊かで安心できる少子・高齢社 会への円滑な移行を図るためには、財政構造改革及び社会保障制度改革の実施が急務 である。この点についても、前述の計量モデルを用いた代替的シミュレーションの結 果によると、次のような結果が得られている。

  1. 財政構造改革により実質的な歳出の伸びを抑制するケースにおいては、政府部 門におけるバランスが改善されるものの、社会保障基金制度における給付と負担 の乖離が依然として大きいことから、2025年度において社会保障基金制度は機能 を果たせなくなっている。
  2. 社会保障制度改革により、給付と負担のバランスを確保していくケースにおい ては、 社会保障制度は維持可能となるものの、一般政府財政赤字は大きく、一般政府純 債務残高も高水準であり、依然深刻な状況にある。
こうした結果からみても、財政構造改革及び社会保障制度改革の双方を合わせ実現 していくことが必要である。今回のシミュレーションにおいても、2つの改革を同時 に実現することにより、政府債務の累増が回避され、かつ、社会保障基金が維持でき るとともに、国民負担率の大幅な上昇が抑制されることが示されている。
すなわち、財政運営にあたっては、主要先進国の財政健全化努力を勘案しつつ、国 ・地方を通じ健全化目標を設定し、まず歳出面において徹底した洗い直しを行い、公 的部門が国民経済に占める比率が上昇することを極力抑制するとともに、歳入面にお いてもあらゆる努力を傾注することにより、財政構造改革を一層強力に推進するべき である。こうしたことにより、公債依存度の引き下げ等を行い、公債残高が累増しな いような財政体質を作り上げるよう努める必要がある。また、今後の我が国の社会保 障の給付と負担を公平かつ適切なものとすることとし、予防的施策の充実、個々の施 策間の連携等、社会保障制度を効率化することにより、社会全体の負担を抑制する必 要がある。
なお、財政・社会保障問題に取り組むに当たって、経済審議会としては、本年5月 の総理大臣指示を踏まえ、今後、関連する審議会との間で連携を取りつつ、講ずべき 措置等について引き続き検討していくこととする。

むすび<

「構造改革のための経済社会計画」は、1)自由で活力ある経済社会の創造、2)豊か で安心できる経済社会の創造、3)地球社会への参画の3つを基本的方向としており、 その根底をなす理念は、自立した個人・企業が自己責任の下で自由にその創造力を発 揮できるように構造改革を推進することである。これにより、中長期的に持続的安定 的な成長を確保していくことが重要である。
経済計画策定後ほぼ1年が経過したが、上に述べた理念の下、構造改革に向けて様 々な取り組みがなされつつあり、既にその効果があらわれている例も見られる。しか しながら、 構造改革への取り組みはまだ緒についたばかりであり、「構造改革なくしては新たな 発展はない」という経済計画の理念を改めて認識し、構造改革への努力を一層傾注す るとともにその実行を急ぐべきである。21世紀の活力ある経済・安心できるくらしの 実現は、構造改革断行の成否にかかっているのであり、しかも、そのために残された 時間は少ない。政府における真摯な取り組みを改めて要望するものである。


(別紙)「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」における10分野の推進状況

  1. 物流
    1. 総論
      複合一貫輸送の推進に関しては、モーダルシフト船を平成10年度末までに船腹調整 事業の対象外とすることが閣議決定された(平成8年3月)。
      効率的な物流体系の構築に資する物流拠点の整備に関しては、平成8年度税制改正 において、流通型倉庫に対する割増償却、固定資産税の特例等の税制の特例制度を創 設した。また、自動車ターミナル法を改正し、自動車ターミナル事業の参入を免許制 から許可制へと緩和し、事業参入を容易にした(平成8年5月公布、同年11月施行予 定)。更に、平成8年度は、博多港等19港において複合一貫輸送に対応した内貿ター ミナルの整備を推進している。
      情報化の推進に関しては、平成8年11月に「物流EDI推進委員会」が発足し、本 委員会において、標準メッセージの管理・普及、倉庫業務等新メッセージの開発を行 うこととしている。また、国際物流について、港湾物流分野への国際標準準拠のED Iモデルの調査に着手した(平成8年6月)。更に、コンテナターミナルの自動化、 港湾管理者に提出する各種書類のEDI化に関する調査を平成8年度より開始した。

      なお、鉄道貨物におけるパレタイズ貨物の割合については、平成7年12月には16.9 %であったが、平成8年6月に20.1%にまで向上し、また、RORO船、コンテナ船 (モーダルシフト対象船種)の船腹量は従来の伸びを下回らない水準で増加しており 、現時点では、 それぞれ目標を達成している。

    2. トラック
      規制緩和については、平成8年4月に、2営業区域の拡大及び全国の市町村の44% について最低車両台数基準の引下げを行った。また、事業用自動車についてメンテナ ンスリースを認めるとともに、事業開始後3年を経過しなければファイナンスリース による車両の使用を認めないとする規制を緩和した(平成8年3月)。
    3. 内航海運
      船腹調整事業については、その解消に向けて、日本内航海運組合総連合会から環境 整備計画が報告された(平成8年6月)。
      また、内航海運業者の受注機会の均等化等を図る観点から、内航海運業法施行規則 を改正し内航運送業への参入基準を緩和した(平成8年6月)。
    4. 鉄道貨物
      運賃規制の在り方については、「物流市場の特性等を踏まえ見直しを行い、弾力的 運賃設定を可能とする(実施予定時期:平成8年度以降)」ことが閣議決定された( 平成8年3月)。
      また、鉄道貨物輸送トンキロに占めるコンテナトンキロの比率は平成6年度の74.7 %から平成7年度は77.8%に増加しており、平成8年3月のダイヤ改正においても、 JR貨物が紙輸送列車のコンテナ化を行った。
  2. エネルギー
    1. ガソリン
      特石法が平成8年3月末に廃止され、輸入に係る規制が大幅に緩和された。また、 ガソリンスタンドに係る指定地区制度が平成8年10月に全廃された。
    2. 電力
      改正電気事業法により卸発電部門への参入が原則自由化され、平成8年の入札では 募集規模に対し4.1 倍の応募があった。電気料金については、平成8年1月の電気料 金の改定時よりヤードスティック方式による査定等が導入された。
    3. 都市ガス
      改正ガス事業法により、一般ガス事業者による供給区域外の大口需要者への供給と 一般ガス事業者以外の者による大口需要者への供給が実施されている。ガス料金につ いては、平成8年1月のガス料金の改定時よりヤードスティック方式による料金の査 定等が導入された。
  3. 流通
    規制緩和推進計画の改定に伴い大店法に基づく提出書類の簡素化、たばこ小売販売 の許可申請手続きの簡素化、平成8年度末までの再販指定商品(化粧品、医薬品)の 指定取り消し等を新規事項として追加し、その推進を図るとともに、流通取引慣行の 実態調査の公表を通じた商慣行の是正や、物流コスト低減に向けた物流コストの実態 把握調査等を実施している。また、地域中小企業がコンピュータ・ネットワーク等を 事業に活用するための中小企業先進的情報化基盤整備事業の創設等による中小卸、小 売業の情報化及び活性化を推進している。さらに、地域活性化の視点から流通業の活 性化を図るため、まちづくりとの一体的な商店街等整備を促進するための特定商業集 積整備事業の拡充等を実施している。
  4. 電気通信
    長距離通話料金の引下げにより、料金の遠近格差は計画策定時の17倍から13倍に縮 小した。一方、マルチメディア時代にふさわしい定額制等の需要喚起型料金の実現に 向けて、「マルチメディア時代のユニバーサルサービス・料金に関する研究会」(平 成8年5月)で検討が行われ、新たな料金体系のあり方についての提言が出された。 更に、料金制度の在り方等について総合的に検討するため、本年10月から、「マルチ メディア時代に向けた料金・サービス政策に関する研究会」を開催中である。
    2010年に完成をめざす光ファイバー網整備については、その整備促進を図るため、 平成7年7月に創設された特別融資制度の融資対象設備の拡大等の制度の拡充が行わ れている(平成8年8月)。
    また、「規制緩和推進計画の改定について」において、平成8年度中の移動体通信 料金全般の届出化、平成8年中の国内公専公接続の完全自由化など、実施時期の明確 化・前倒し等が行われるとともに、平成8年中にNTT地域通信網に係る相互接続の 基本的ルールとして策定すべき基本的な内容を決定することとされた。このうち、規 制緩和措置の更なる前倒しを図るため、移動体通信料金の届出化を本年12月中に実施 することとしたほか、本年10月から国内公専公接続を完全自由化した。更に、本年4 月から「接続の基本的ルールの在り方」について電気通信審議会において審議が進め られているところである。なお、 NTTの在り方については、同計画において、「次期通常国会に向けて結論を得るこ とができるよう引き続き検討を進める」こととされた。
  5. 金融サービス
    規制緩和に関しては、主なものとしては、公募社債の発行に係る適債基準の撤廃、 無担保社債の発行に係る財務制限条項の設定義務付けの撤廃(平成8年1月)、及び 時価発行公募増資のガイドラインの撤廃(平成8年4月)がなされた。また、CPの 取扱いについて発行適格基準及び償還期間制限の実質的な撤廃(9ヵ月以内→1年未 満)がなされた (平成8年4月)。
    商慣行の是正等に関しては、社債管理会社を置かないで普通社債を発行するケース が増えており(平成7年9月以降、8年9月末までの間に計 134銘柄、2兆3,530 億 円発行されている)、社債関連手数料の低減が進んでいる。
    インフラの整備に関しては、社債流通市場の整備について、社債受渡し・決済制度 研究会報告書「社債受渡し・決済制度の改善に向けて」の取りまとめがなされ(平成 8年5 月)、平成9年中のオンライン・ネットワークの稼働が見込まれている。
  6. 旅客運送サービス
    1. 航空
      割引運賃の多様化に関しては、5割以内の営業政策的な割引運賃については認可制 から届出制とした結果、航空各社が営業判断に基づき、利用者ニーズを踏まえ、各種 割引制度を拡充している。例えば最大50%に至る各種の事前購入型割引をはじめ、早 朝便割引、特定便割引など多様な割引制度が現れている。
      普通運賃の弾力的設定に関しては、平成7年12月に標準原価を上限とする一定幅内 で、各航空会社が営業判断に基づき自主的に価格を設定できる幅運賃制度を導入し、 平成8年5月以降に航空各社とも幅運賃に移行した。
      ダブル・トリプルトラック化の弾力的運用に関しては、平成8年4月にダブル・ト リプルトラック化基準を緩和した結果、平成8年10月現在、ダブル化路線5路線、ト リプル化路線2路線について新たに申請を受け、認可し、ダブル路線は29路線、トリ プル路線は22路線となっている。
      顧客サービスの充実については、各航空会社においてCRS端末機の拡大、インタ ーネット予約、FFPにおける特典の種類の拡大(他社搭乗、宿泊等)を実施してい る。
    2. タクシー
      運賃・料金の多様化に関しては、名古屋地区において遠距離割引、長時間割引等が 導入されたところであり(平成8年5月認可)、また、タクシー運賃制度研究会の報 告(平成8年4月)に沿って、事業者の創意工夫と自主性を尊重しつつ、利用者ニー ズに則した多様な運賃料金が設定できるように検討が進められている。
      個人タクシー免許等に際しての審査基準、審査方法に関しては、平成7年6月及び 9月の審査基準、審査方法の改善に続き、平成8年6月に試験制度の見直しを行った 。
    3. 鉄道旅客
      割引運賃・料金について、平成7年4月にグリーン料金、寝台料金等について認可 制を届出制に緩和するなどの措置がとられ、各種の割引運賃・料金の導入が行われた 。
      また、運賃設定方式の見直しについては、「規制緩和推進計画の改定について」に おいて「旅客鉄道運賃ワーキンググループの結論に基づき対処」することとされ、平 成8年11月に総括原価方式の下での上限価格制の導入やヤードスティック方式の強化 等の改善措置が盛り込まれた新しい旅客鉄道運賃制度の導入が決定された。
  7. 農業生産
    農地や労働力を有効かつ効率的に活用できる活力に満ちた農業構造の実現と良質・ 安全・新鮮で適正な価格の農産物を安定的に供給していくことを前提とした農業生産 の将来方向を示す「農産物の需要と生産の長期見通し」が策定(平成7年12月)され 、農地流動化や農業生産基盤整備を促進する施策や農業生産資材のコスト縮減に向け た取組み等が実施されている。
    具体的には、ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の着実な実施、経営改善支援 センターによる経営相談・指導体制の充実、担い手への農地利用の集積にかかる取組 体制の整備、農業生産資材の製造、流通、利用の各段階による資材費低減に向けた「 行動計画」の策定・推進(平成8年3月~)、規制緩和推進計画の改定(平成8年3 月)に伴う肥料・農薬に関する届出・報告等の緩和の追加及び推進、配合飼料の混入 規制の緩和(平成8年4月)、生産者・地域の自主性を尊重した生産調整の実施や生 産者の米の売渡し先の多様化等「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」の適 切な運用(平成8年5月~)、新規就農青年の確保に向けた「在職者就農準備校」の 開設(平成8年5月~)、農林水産業及び関連産業に係る研究の重点化方向と推進方 策を示した「農林水産研究基本目標」の策定(平成8年7月)等の施策が講じられて いる。
  8. 基準・認証、輸入手続き等
    本分野においては、「規制緩和推進計画の改定について」における「基準・認証、 輸入関連」の規制緩和措置において新規に 110事項を盛り込み、合計 357事項につい て規制緩和措置を決定した。
    また、「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応(平成8年3月26日 市場開放問題苦情処理対策本部決定)」において19項目の対応を決定した。
    さらに、我が国の「個別行動計画(平成8年11月APECマニラ閣僚会議において 「マニラ行動計画」の一部として公表)」においてボゴール宣言の実施のために策定 された大阪行動指針に基づく行動を包括的に提示した。
    加えて、12月6日開催予定の第19回貿易会議において、第8回輸入協議会(平成8 年9月開催)における民間委員からの意見・要望を報告するとともに、同会議におい て「対日市場アクセス改善の推進について(仮称)」を決定すべく作業を進めている 。
  9. 公共工事
    公共工事分野においては、61の具体施策について全て着手済みであり、主な具体策 は以下の通りである。
    資材費の低減については、例えば、輸入資材活用モデル工事の実施に関して、平成 6、7年度に引き続き、平成8年度も直轄及び公団において58件のモデル工事を実施 しているところである(一部未着工)。また、輸入資材・機器利用促進展示会を昨年 に引き続き、対象資材および品目を拡大して平成8年5月から1ヵ月間開催した。 生産性の向上については、例えば、標準設計の見直しとシステム化に関して、「設 計標準化検討委員会」を設置し、設計標準化の基本的考え方(ガイドライン)を策定 し全国に通知した(平成8年6月)。また、中高層共同住宅などにおけるエレベータ 基準の合理化に関しては、平成8年3月に「中低層共同住宅用エレベータ設計指針」 を策定し、公表した。
    新技術の開発については、例えば、鉄線籠を用いた新型護岸の開発・普及に関して 、一層の普及を図るため鉄線籠型護岸の設計施行技術基準(案)を策定し、全国の直 轄・補助工事の河川事業で実施した。
    なお、平成8年8月に建設省直轄工事及び公団工事において直接的、短期的に一定 の効果が得られた施策について、第1次中間報告として公表したところである。
    さらに、建設省及び都道府県政令市において建設コスト縮減に関し、情報の交換及 び施策の推進支援を図るため「建設費縮減推進連絡会議」を各地方ブロックごとに設 置した(平成8年10月)。
    また、中央建設業審議会基本問題委員会において、受注者の技術力、創意工夫を活 用できるよう、価格ばかりでなく、品質、工期、安全性なども勘案して落札者を決定 する技術提案総合評価方式、建設費縮減や品質向上が図れる改善提案を認めるVE( バリュー・エンジニアリング)方式等の検討を進めることとしている。
  10. 住宅建設
    住宅建設の高コスト是正の着実な実施を図るため、平成8年3月に建設省、法務省 、厚生省、通商産業省が共同して「住宅建設コスト低減のための緊急重点計画」を策 定し、その一層の具体化を図ったところである。
    この計画に基づき、1)給水装置の工事業者規制の見直しに係る水道法の改正(6月 )、2)我が国の枠組壁工法に係る海外規格適合資材の受入れ(4、7、9月)、3)輸 入住宅情報ダイアルの設置(4月)等の施策が既に実施されている。
    また、目標値を実現した"プラス・YOU"住宅の実用化が進められ、既に7提案 について実用化が行われている。
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