経済審議会第3回経済主体役割部会議事概要

1.日時

平成9年10月15日(水)14:00~16:00

2.場所

共用特別第1会議室(1212号室)(第4合同庁舎12階)

3.出席者

(部会)
水口弘一部会長、荒木襄、潮田道夫、川勝平太、河村幹夫、竹内佐和子、樋口美雄、星野昌子、山内弘隆、吉野直行、米倉誠一郎 の各委員
(事務局)
尾身大臣、糠谷事務次官、林官房長、藤島日銀政策委員、高橋企画課長、中名生総合計画局長、高橋審議官、貞広審議官、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、大森計画官、安井計画官、田坂計画官、小島計画官、荒井計画官、道上計画企画官、福島推進室長、


4.議題

1)「6分野の経済構造改革」のフォローアップと拡大・深化

2) 官民の役割分担

3) 企業部門の課題

5.審議内容


1) 尾身大臣挨拶
 部会の途中に大臣より挨拶があり、景気の先行きに従来のような力強さが感じられない中、経済の先行きに対するコンフィデンスを高め、今後活力ある経済を作り上げていくためにも、各委員のご意見を参考にして政策に反映させていきたい、今後ともよろしくお願いしたい、との発言があった。

2) ワーキンググループメンバーについて
 部会長より、前回部会において部会長に一任された民民規制、NPO、雇用・労働の各ワーキンググループのメンバーが決定された旨報告があった。

3) 「6分野の経済構造改革」のフォローアップと拡大・深化について
 部会長から、「今月1日に尾身大臣より『経済の活性化を図るための経済構造改革等の行動方針の一環として、6分野の経済構造改革について、その拡大・深化を含めてフォローアップしてほしい。』との依頼があり、これに対して『景気の先行きが不透明の中で、6分野に限らず分野を広くとって短期的に効果のあるもの、中長期的な視点で行うものの両面で議論をさせていただきたい。』と発言し、お引き受けした」旨の報告があった。
 これを受けて、部会としては6分野を中心とする経済構造改革のフォローアップ作業と位置づけて作業を行うこととし、「経済構造改革ワーキンググループ」を設置し、今後進めるべき重要な規制緩和策等を盛り込んだ提言を早急にとりまとめ、経済構造改革のより一層強力な推進を図ることが決定された。

4) 官民の役割分担について
主な意見は次のとおり。

  • 民間活力の活用を検討する上では、80年代の第3セクターやそれ以外の事例も含めて問題点を総括した上での議論が必要。
  • 民間活力を導入する分野を検討する際には、官でやるのか民でやるのかどちらが効率的かを検討したうえで、具体的に何ができるかを議論すべき。
  • 社会資本整備が民間の投資、活力を促すように行われることが重要。また、景気引き上げのためにやるのか、地方の生産力効果を上げることを目的にやるのかを考えることが重要。
  • 民間活力の導入については、ここで議論されているBOTは民が造り、運営した後、官に譲渡するというものであるが、逆の官が作り民が運営するということも検討すべき。
  • 社会資本の整備の工夫については、生活関連環境整備社会資本では例えば下水道では、地方でも下水道管を長く整備しているが、人口密度が高いところではそれでも良いが、技術進歩があればコンパートメント方式で処理するということで、下水道整備を回避できる。
  • 地方での社会資本整備については、アメリカに見られる免税債(レベニューボンド)を発行するというような方法も良い。収益が悪くても住民自身が欲しいものならば、住民が投資する。
  • BOTは、投資額にみあう収益性が原則で、ミニマム以上のサービスでかつ非常にニーズが高く人口が密集しており、ある程度利用者の数が確定されるものに適している。
  • 日本の高速道路などは大規模なプール制になっており、収益性の観点からはBOTが十分可能であるが、あがった収益を他の地域の整備に回すという考え方があり、なかなか浸透しないのではないか。この際、現在の事業主体の組織見直しが必要。
  • 現在の過疎地域への配分が、所得再分配を目的とするものであれば、BOTでは解決できない。スリム化の手法として地域の財源とバランスの取れた配分が必要。利用効率の上がらないところに投資する時代は終わった。
  • プライオリティの問題で、一極集中の分散という立場になれば、コスト・ベネフィットだけではなく、日本のグランドデザインの中で一極集中の分散のために知識立国をするという視点からの議論もある。
  • 投資動機という観点ではBOTは適しているが、あらかじめ枠を決定して進み出すのではなく、民間に大型事業を提案させて、それを吟味しながら進むということもありうるのでは。
  • これからは地方圏の時代であるという流れを踏まえれば、大都市圏の住民から見て、より魅力的な地方圏を作るという方向性も必要。
  • 官民の役割を考える上での前提として、整備の対象、重点の置き方を整理した上での議論が必要。
  • 地域間の社会資本整備投資配分問題については、費用便益分析による検討は透明性があるという点でよいが、透明性という点が難しくなっても費用便益とは異なる価値観を導入した意思決定プロセスも必要。
  • 着実に社会資本を充実してきている地方中核都市を中心に既存の新幹線等の利用効率を上げていく方向の計画論も必要。

5) 企業部門の課題について
主な意見は次のとおり。

  • 金融機関(メインバンク)の機能については、これまで経営危機の救済策の方に大きなウェイトがあって、経営を細かくチェックしていたわけではなく、今後もそのようなチェック機能が高まることはないのではないか。
  • 機関投資家については、企業の資金調達において内部資金のウェイトが高い日本では、その発言力が今後強くなっていくという状況は考えにくいのではないか。むしろ社外監査役の強化など、企業の中の内部資金の使い途、利益配分のポリシーに関してもう少しオープンな情報開示をできるようなシステムを日本的に作れないか。欧米の企業では優秀なエコノミストを外部情報収集のブレーンとして活用している。日本でも社外監査役に限らず、様々な方法について検討しても良いのではないか。
  • 日本のコーポレートガバナンスは汎用性が高いのではないか。従業員を大切にし、不況に強いシステムで非常にうまくいってきたし、システムの改善は必要であるが、これを捨て去る必要はない。むしろ、これまでなぜうまく企業が発展してきたかという面を考慮してもよいのではないか。資料にある会計等のグローバルスタンダードの面をしっかりやれば、日本の企業はかなりのレベルまでいくのではないか。
  • 産業の空洞化を防ぐためにも、いかに中小企業に資金を流したらよいかということも考えた方が良い。また、資本市場から資金を調達できない起業家等へのリスクマネーの提供方法についても、個人の金融資産の選択という観点を含めて検討していきたい。
  • 1990年頃のアメリカの論文では、アメリカ人は短期に利益を求めすぎ、それが人材等資源の無駄遣いにつながるという指摘が多数あり、株式を長期的に保有する日本的な考え方は良いと言われていた。長期、短期保有のバランスも考えながら議論を進めた方が良い。
  • 資料に示された金融、規格等のグローバルスタンダードの事例は、日本がグローバルスタンダードからずれているがために不利になっているものという基準で選ばれたと思うが、そうだとすれば、この他にもあると思われる。また、他国と違うことにより有利になっているものがあるのではないか。加えて、日本型という言葉を使って「日本対その他諸外国」という図式を作りだすのはどうかと思う。例えば雇用システムについて、よく「日本型労働慣行」などと言われるが、実は日本独自のものではないことが分かってきたし、各国のシステムもそれぞれ異なっている。
  • グローバルスタンダードを考える際には、国際的に見て日本が石油や穀物等の価格形成力を持たないことの不利を認識すべき。コーポレートガバナンスについては、社外取締役等をすべて経営者のトップが任命しているという現在の状況では、制度面からの改革はなかなか難しい。重要なのは経営者が企業倫理を守ることを前提に、ディスクロージャーをすすめることである。
  • 日米の経営者の違いは株価に敏感かどうかということである。日本の経営者は株価が下がっても責任をとらされない。これまで、企業の株価に対する信頼感が十分でなかったことを鑑みて、証券市場の問題を考える必要がある。
  • グローバルスタンダードという意味は、金融、情報通信等グローバルなマーケット、グローバルな競争社会が形成されている分野では、デファクトスタンダードが当然グローバルスタンダードになっていくとの想定の下、その場合現在の状況から見て、日本はどうなっていくのかという問題提起だと思う。
  • コーポレートガバナンスについては、ステークホルダー(地域社会、従業員など)キャピタリズムとシェアホルダーキャピタリズムという二つの考え方がある。日本の場合は、不祥事などの背景もあり、法律制度面に議論が行き過ぎているので、ここでは本質的な議論をしておきたいし、企業部門の課題としてコーポレートガバナンスに限らず議論を進めて行きたい。
  • ここでいうグローバルスタンダードとは、アメリカないしアングロサクソンのもので、所有者イコール経営者であり株主が重視されることが前提にされている。日本は戦前に経営の倫理性が非常に強かったが、戦後に崩れたことが良くなかった。日本企業の場合、経営者からの法人格の自立性が高いのだが、グローバルな競争の中で、単なる利益追求主体になり、目標を失っているということもあり、日本型の経済文化のスタンダードが出せなくなっている。企業は日本社会、文化に奉仕するものであるという概念がないのが現状だ。

(速報のため、事後修正の可能性あり。)

連絡先 経済企画庁総合計画局物価班
TEL 03-3581-1538