「物価レポート’95」の概要

                                                経済企画庁物価局 
                                                 平成7年10月  

                                  目        次

I 物価レポートの性格 II 「物価レポート’95」の構成 III「物価レポート’95」のポイント 1.最近の消費者物価動向の特徴 2.最近の卸売物価動向の特徴 3.消費者物価と卸売物価の乖離 4.価格破壊をもたらしている供給側の行動の変化 5.供給側の行動変化の背後にある経済構造の変化 6.価格破壊の背景 7.最近の物価の下落に対する考え方 8.円高メリットの浸透状況 9.阪神・淡路大震災後の物価動向 10.物価水準の地域間格差 11.生計費の内外価格差の現状 12.個別品目の内外価格差の現状

I 物価レポートの性格

      物価レポートは、消費者の物価問題に関する理解と関心を深めるために、昭
    和50年以来毎年作成されており、今回が21回目のものである。物価レポー
    トは、
      1)消費者の啓発
      2)物価関連施策の広報
      3)物価関連の調査・研究レポート
    等の役割を担っている。

II「物価レポート’95」の構成

  第1部  最近の物価動向
      最近の物価動向の特徴を、プラザ合意後の円高不況期と比較することにより
    明らかにするとともに、阪神・淡路大震災後も安定して推移した被災地の物価
    動向とその背景についてとりあげるほか、物価水準の地域間格差等をみている
    。

  第2部  物価の安定を支えるもの
      最近の物価が極めて安定した推移を示している要因として、 1993年以降の
    円高メリットの浸透、 2「価格破壊」とよばれる広範囲な価格下落現象とその
    背景について分析した後、最近の物価の下落に対する考え方を整理している。

  第3部  内外価格差の実態とその要因
      生計費調査等に基づき全般的な内外価格差の現状を記述し、内外価格差を生
    じさせている要因を概観した後、個別分野の内外価格差問題のうち、「住宅分
    野」と「生産財分野」をとりあげ、それぞれの内外価格差の現状、要因、是正
   ・縮小のための具体的対応策の検討を行なっている。

  第4部  政府と物価
      円高差益還元対策、緊急円高対策、阪神・淡路大震災に関する物価対策等の
    最近の物価政策や公共料金の動きを解説するとともに、一般消費者に身近な地
    方公共団体の物価行政について、神戸市が実施した阪神・淡路大震災に関する
    緊急物価対策等を紹介しつつ、説明している。    

III「物価レポート’95」のポイント


1.最近の消費者物価動向の特徴
  最近の消費者物価「総合」の動向をみると,1989年度から91年度までは前年度比
3%前後の上昇率で推移した後,年々上昇率が低下し,94年度には同 0.4%と極め
て低い上昇率となりました。また、「生鮮食品を除く総合」の対前年上昇率も,91
年度の 2.6%以降年々上昇幅が縮小してきており,94年度は 0.6%の上昇と極めて
低い上昇率にとどまりました。
  このように極めて安定した推移を示す最近の消費者物価の特徴をみるため、直近
の景気の山から最近までの4年間(1991年II期〜95年IV期)−今回−と,その前の
景気の山以降4年間(85年II期〜89年I期)−前回−の動きを比較しました。
  まず、「生鮮食品を除く総合」の動きを「総合」に対する寄与度でみると
(第1−1−3図)
前回は,当初今回と同様に上昇率の下落傾向がみられ,景気の谷(86年IV期)の直
後に一時的に上昇率がマイナスとなったものの,その後円レートが引き続き強含み
で推移しているにもかかわらず,景気の回復を反映して「生鮮食品を除く総合」は
上昇傾向に転じています。
これに対し今回は,景気の谷(93年IV期) を過ぎても上昇率は低下を続けており,
95年II期には下落に転じています。
  また、景気の山からの上昇率低下への寄与度を一般商品、一般サービス、公共料
金(広義)に分けてみると、一般商品が、前回、今回とも最大の引き下げ要因にな
っていますが,前回は景気の谷以降わずかの期間をおいて下落幅が急速に縮小して
いったのに対し,今回は景気の谷を過ぎてからも一貫して下落幅が拡大するといっ
た違いがみられます。また,前回はこれに加え,公共料金も引き下げ要因になって
いるのに対し,今回は前回ほとんど変化のみられなかった一般サービスの押し上げ
幅が縮小しています。
  次に一般商品の内訳を類別にみると
(第1−1−4図)
前回は、原油輸入価格の大幅な低下により,ガソリン,灯油等の価格が下落したこ
とから、その他工業製品の下落が特に大きくなっているほか、耐久消費財も大きく
下落していますが、繊維製品は押し上げ幅の縮小はみられたものの,一貫して押し
上げ要因にとどまっています。
  これに対し今回は、耐久消費財に加え繊維製品が主要な引き下げ要因となってお
り、その他の工業製品の下落は比較的小さなものにとどまっています。
2.最近の卸売物価動向の特徴
  最近の卸売物価の動向をみると、国内卸売物価は、1992年度に下落に転じた後、
93年度は下落幅が拡大しましたが、94年度は前年度比▲ 1.3%の下落と下落幅が縮
小しました。また、94年度の輸出物価、輸入物価は、契約通貨ベースでの上昇を円
高が相殺して、円ベースでは前年度比▲ 2.7%、▲ 1.5%の下落となりましたが、
93年度より下落幅が大幅に縮小しました。この結果、総合卸売物価は、91年度以来
下落を続けており、93年度までは下落幅も拡大していましたが、94年度は下落幅が
大幅に縮小し、前年度比▲ 1.6%の下落となりました。
  こうした最近の卸売物価の動向の特徴をみるため、国内卸売物価の推移を消費者
物価と同様に前回と今回とで比較すると、前回は、プラザ合意(85年9月)後の大
幅な円高に加え原油価格が大きく下落したことから、85年から86年にかけて大きく
下落しました。また、景気後退期にはその下落幅が拡大し、景気回復とともにその
下落幅が縮小する傾向がみられます。
  これに対し今回は、前回と比較して、円高の程度も輸入物価(契約通貨ベース)
の下落幅も小さかったことから、国内卸売物価の下落も緩やかになっていますが、
景気後退期にはその下落幅が拡大し、景気回復とともにその下落幅が縮小するとい
う傾向は今回も同様にみられます。
  次に、国内需要財の卸売物価の動向を、需要段階別に前回と比較してみると
(第1−2−6図)
、前回は、「素原材料」「中間財」「最終財」いずれも、景気の谷を境として下落
幅の拡大から縮小へと動き、国内需要財全体の動きと、ほぼ一致した推移を示して
います。特に、円高や原油価格の大幅な下落を反映して、「素材関連」や「石油関
連」の品目が多く含まれる「素原材料」や「中間財」の変動が大きくなっています。
  これに対し今回は、「素原材料」や「中間財」は、前回と同様に国内需要財全体
の動きと、ほぼ一致した推移を示していますが、「最終財」は、景気の谷を過ぎて
も、下落幅が拡大する傾向を示しています。なお、直近の動向をみても、「最終財
」の下落幅の拡大が続いており、消費者物価の下落基調の背景となっています。
3.消費者物価と卸売物価の乖離
  価格の下落が卸売段階、小売段階のいずれでより大きいかをみるため、今回価格
下落の幅が特に大きい繊維製品と耐久消費財をとりあげ、消費者物価の「衣料」、
卸売物価の「衣類」及び消費者物価と卸売物価の「耐久消費財」について、両者の
変化率の乖離幅を前回と今回とで比較すると、前回も乖離幅の縮小はみられたもの
の、卸売物価の下落率が消費者物価の下落率を一貫して上回っていたのに対し、今
回は景気の谷前後から消費者物価の下落率が卸売物価の下落率を超えており、流通
部門の競争激化等による消費者物価の下落傾向は、特にこの両分野で顕著にみられ
ることが分かります
(第2−2−2図)
4.価格破壊をもたらしている供給側の行動の変化
  価格破壊は革新的な流通業者の出現等供給側の行動の変化によるところが大きい
と言われています。このような価格破壊をもたらしている供給側の行動の変化の具
体的事例としては、
  1)百貨店やスーパーを初めとする既存の主要小売業が売上げの伸び悩みを続けて
いるのを傍目に、ディスカウントストア等の低価格での販売を訴求する業態が高成
長を続けていること
(第2−2−3図)
、
  2)以上のようなディスカウントストアの進展に対抗してスーパーなどの既存の小
売業態においても、商品の低価格化が進められており、これらの店舗間における価
格競争が近年激化していること
(第2−2−5図)
、
  3)加工食品、日用雑貨、衣類、家電製品などさまざまな商品分野で、小売業者が
商品開発と価格決定の主体となる格安なプライベートブランド商品を開発する等、
製造業者と小売業者が直接結びついた中間業者抜きの流通システムが模索されてい
ること、
  4)以上のような流通部門における価格競争の激化・商品の低価格化の動きが、メ
ーカーにも及び、特にCDプレーヤー等のオーディオビジュアル(AV)製品、家
庭用ファクシミリ、国産自動車等の分野において、技術革新、部品共通化による部
品数の削減、海外生産化等により低価格商品の開発が進められていること
  等があげられます。
5.供給側の行動変化の背後にある経済構造の変化
  供給側の行動変化の背後には、以下のような経済構造(生産構造、流通構造)の
変化があることから、今回の価格破壊はこれまでの景気低迷時にみられたような一
時的な現象とは異なり、今後も持続していく可能性が高いと言われています。

(1)生産構造の変化
  価格破壊の進展に伴い、メーカーでも、固定費の削減や海外からの原材料・部品
の調達等によるコスト削減のほか、設計の変更、部品の共通化や削減等により商品
の低価格化が進められています。また、近年、円高に伴い安価な労働力等を求めて
、我が国の製造業の海外進出が盛んになっており、海外に現地法人を有する製造業
の現地生産比率も上昇しています
(第2−2−8図)
。これに伴い、逆輸入が増加しており、低価格の輸入品の増加の背景となっていま
す。

(2)流通構造の変化
   1)流通段階の効率化
  「卸売の販売額」と「小売の販売額」との比率(W/R比率)の低下傾向等から
、消費財関連の流通経路が短縮化していることがうかがわれます。消費財のなかで
は、特に食料品関連でスーパー等の大型店、コンビニエンス・ストアなど新業態店
の進展により、メーカーとの直接取引が増加していることなどを反映した流通経路
の短縮化が際立っています。
   2)建値制の変化
  我が国では、これまで家電産業を始め広範な製品分野で「建値制」が採られてき
ましたが、近年、安価な輸入製品を大量に仕入れている量販店を中心に価格競争が
激化したこと等により、家電製品や食品の分野ではメーカーが希望小売価格を設定
しないオープン価格制が広まりつつあり、メーカーの価格に対する影響力は弱まっ
てきています
(第2−2−11図)
6.価格破壊の背景
  価格破壊を生じさせた背景として、1)消費者の低価格志向の高まり、2)円高の進
展等による安価な輸入の増加、3)規制緩和をあげることができます。

(1)  消費者の低価格志向の高まり
  所得の伸び悩みの長期化等を背景として消費者は価格に対してより敏感になって
きており、より安価な商品を購入しようとする消費行動が広まってきています。

(2)円高の進展等による安価な輸入の増加
  円高の進展、アジアNIES等の生産技術の進歩等を背景とした安価な輸入品の
増加によって、輸入浸透度が高まっており、輸入品との競合から国内品の価格も低
下しています。耐久消費財や繊維製品の分野では、輸入浸透度の上昇、輸入通関価
格の下落に伴って消費者物価が下落しており、安価な輸入品の増加が消費者物価を
引き下げる効果をもったことがうかがわれます
(第2−2−14図)
。

(3)規制緩和の進展
  競争を促進するという観点から、以下に述べるような規制緩和の推進が、価格破
壊に大きな影響を与えたと見られます。

  1)大店法の規制緩和
  94年5月の大店法の運用基準の緩和措置により、1千平方メートル未満の出店が
原則自由化されました。これに伴い、第二種大規模小売店の出店申請、特に運用基
準が緩和された1千平方メートル未満の出店の申請が大幅に増加しています
(第2−2−15図)
。

  2)再販制度の見直し
  再販売価格維持が例外的に認められている商品のうち、指定再販商品(一部の化
粧品と医薬品)については、93年4月に、一般用医薬品26品目のうち10品目(95年
1月に2品目を追加)、化粧品24品目のうち12品目の指定を取り消しました。現在
起きている化粧品の価格低下には、こうした再販制度の見直しも大きな影響を与え
ているものとみられます。  また、法定再販商品である著作物については、規制緩
和推進計画において、98年3月末までにその範囲の限定、明確化を図ることとされ
ており、こうした中で、音楽用CDや本の値引き販売も一部で行われはじめていま
す。

  3)酒類販売業免許制度の緩和
  酒税法に基づく酒類販売業免許制度については、行革審第3次答申を受けて93年
7月から、1万平方メートル以上の全ての大型小売店舗に対して申請があれば自動
的に販売免許が付与されることになりました。この結果、大手チェーンストア等の
大型小売店は、低価格の輸入ビール、洋酒等の販売が容易になったと考えられます
。また、こうした動きにあわせて一部では国産ビールの安売りもみられるようにな
りました。
7.最近の物価の下落に対する考え方
  物価の下落がどのような場合に生じるかを、経済学の教科書でよく用いられる総
需要曲線、総供給曲線の概念図で考えると、物価の下落は、総需要曲線の左下方シ
フト、総供給曲線の右下方シフトのいずれかによって生じることがわかります
(第2−2−17図)
。
  総需要曲線の左下方シフトが起きる代表的な例として、景気の後退に伴って需要
が減退する場合をあげることができます。他方、総供給曲線の右下方シフトの代表
例としては、生産部門や流通部門における生産性の上昇や円高等による輸入原材料
コストの低下によって価格が低下する場合があげられます。このほか、円高等によ
る輸入品価格の低下、安価な輸入品の増加も総供給曲線の右下方シフト要因となる
と考えられます。
  最近の物価の下落と両曲線の下方シフトとの関係について考えてみると、1)景気
回復期に入ってから物価が下落していること、2)消費者物価の下落幅の拡大が卸売
物価の下落幅の拡大を上回っており両者の乖離が縮小していること等は、最近の価
格の下落が、流通部門、生産部門における効率化の動きを反映した「価格破壊」に
よるところが大きいことを示唆しており、総供給曲線の右下方シフトが大きく寄与
しているものと推察されます。
  ところで、デフレとは単に物価が下落する状態をさすという考え方もありますが
、通常は、物価の下落が所得、雇用の縮小をもたらし、これが更に物価を下落させ
るという形で景気後退と物価下落が併存する状態をさすと考えられています。
  ここで、典型的なデフレを経験した戦前の大恐慌の時代(29〜31年)と最近の状
況を比較してみると、当時は実質GNPが横ばいあるいは微増で推移するなかで、
物価は卸売物価、消費者物価ともに大幅に下落し、この結果名目GNPも大幅に減
少しました
(第2−2−18表)
。
これに対し今回も景気は回復過程にあるとはいえ、実質GDPは緩やかな増加にと
どまるなかで、卸売物価の下落が続き、消費者物価もほぼ横ばいで推移しており、
名目GDPも95年に入って減少しています
(第2−2−19図)
。
従って、当時と状況は似通っているとの主張があります。
  しかし、先のデフレの定義で述べたように、デフレであるか否かのポイントは付
加価値、即ち賃金や企業収益の動向にあります。第2−2−18表から明らかなよう
に、大恐慌時には物価の大幅な下落に伴い、賃金、企業収益も大幅に減少し、これ
が総需要曲線のさらなる左下方シフトをもたらしました。それにもかかわらず実質
GNPが横ばいで推移したのは賃金、企業収益の大幅な下落に伴い総供給曲線も右
下方シフトしたためと考えられます。これがさらなる価格の低下をもたらすことか
ら、物価の下落は一層大きくなりました。
  これに対し今回についてみると、賃金上昇率は93年までは景気の後退とともに低
下したものの、景気の谷以降高まっており、企業収益も94年半ば以降増加に転じて
います
(第2−2−20図)
。
それにもかかわらず付加価値の物価であるGDPデフレーターが低下しているのは、
こうした賃金、企業収益の増加を上回る生産性の上昇があったためと考えられます。
このような生産性の上昇が総供給曲線を右下方シフトさせ、物価を下落させている
のです。このように考えると、最近までの経済の動きを総じてみれば、先に定義し
た意味でのデフレではなかったと考えられます。
  ただし95年にはいってからは、賃金や企業収益の増加率の低下がみられることに
加え、失業率は高水準で推移しています。したがって、政府としては総需要曲線の
左下方シフトが生じる可能性が高い場合には、総需要を拡大し、景気回復を確実に
するための適切な政策対応をとり、デフレ状態に陥ることのないようにする必要が
あります。
  一方、現在生じている総供給曲線の右下方シフトによる物価の下落は、生産、流
通部門における生産性上昇を反映したものであり、経済の効率化、消費者の実質所
得の増加をもたらし、内外価格差の縮小につながります。したがって、この過程で
生じる雇用への短期的な影響に配慮しつつ、規制緩和、競争促進政策等によってこ
うした動きを促進することが重要と考えられます。
8.円高メリットの浸透状況
  円高差益は、主に輸入品を始めとする商品の価格の低下を通じて消費者に還元さ
れます。そこで、消費者物価指数及び小売物価統計調査において輸入品を調査対象
としている品目のうち、輸入通関価格と比較できる25品目について、今回の円高が
進展し始めた当初(93年1月〜6月)と最近(95年1月〜6月)の輸入通関価格及
び小売価格(消費者物価指数または小売物価)の変化の関係を散布図としてまとめ
たのが
第2−1−9図第2−1−10図
です。
  これをみると、ブランドイメージを維持するために輸入総代理店が小売価格に強
い影響力を及ぼしていると考えられるブラジャー、電動かみそり、ゴルフボール等
については輸入通関価格の下落率に対する小売価格の下落率が小さく、円高差益の
還元が進展しにくい傾向にありますが、食品類・酒類については輸入通関価格の下
落率に対する小売価格の下落率が比較的大きく、円高差益の還元が進展しやすい傾
向にあることがうかがえます。
  また、経済企画庁が95年6月下旬から7月上旬にかけて物価モニター 4,200名を
対象に行った意識調査によると、円高差益還元等による輸入品のフェア等が「増え
た」と答えた者の割合は61.3%で、その割合は93年3月時点の30.5%、93年6月時
点の41.5%に比べ増加してきており、円高メリットの還元が着実に浸透してきてい
ることをうかがわせます。
(第2ー1ー13図)
さらに、輸入品の購入などを通ずる円高メリットの実感について尋ねたところ、
「大いに実感している」、「ある程度実感している」と答えた者の合計は7割に達
しています。
(第2ー1ー14図)

  以上のように、円高メリットは、輸入消費財等の小売価格の低下を通じて、相当
程度かつ広範囲に消費者に還元されていると考えられますが、この点は消費者の意
識面からも裏付けられています。
9.阪神・淡路大震災後の物価動向
  震災による被害が最も大きかった神戸市と震災のあった阪神地域及び淡路島が含
まれる近畿地方の消費者物価指数の対前年同月上昇率の推移を、震災の前後にわた
って全国平均の推移と比較すると
(第1−5−1図)
震災後の被災地の物価は全体的に安定した推移をしたことがわかります。特に神戸
市の指数をみると、震災前には全国や近畿地方よりもやや高い上昇率で推移してい
たものが、震災後には全国や近畿地方より大きく下落しており、神戸市において震
災後の物価が非常に安定していたことがわかります。
  消費者物価指数を構成する10大費目別にみると、神戸市で特に安定して推移した
費目として、住居、家具・家事用品、被服及び履物、交通通信があげられます
(第1−5−2図)
。
このような生活関連物資の価格が安定していたことは、震災後の生活に物資面での
不安や混乱を招かなかった重要な要因であったといえます。
10.物価水準の地域間格差
  消費者物価地域差指数(全国の平均物価水準を100 とした場合のある地域の物価
水準を示す指数)を都市階級別にみると、94年では最高が大都市(人口100 万人以
上の都市)の105.7 、最低は町村の95.6となっています。大都市以外の都市階級は
すべて平均値(100) を下回っており、大都市の物価水準はかなり高いといえます。
ここ10年の動向をみると、大都市は他の都市階級と比較してかなり高い水準のま
ま上昇傾向で推移している一方、町村については若干の下落傾向にあり、格差はや
や拡大していますが、92年以降はほぼ横這いとなっています
(第1−4−1図)
。
  94年について費目別にみると
(第1−4−4図(1))

、光熱・水道、保健医療、教養娯楽耐久財の3費目を除く全ての費目で大都市の方
が高くなっていますが、特に大都市における地価の高さを反映して住居の格差が大
きくなっています。
  バブル崩壊以降地価は下落傾向で推移しており、それにつれて住宅価格・家賃の
上昇率も低下しています。特に大都市圏においては、この傾向が顕著であり、今後
地価の下落効果がさらに浸透してくれば、地域間格差を縮小させる要因になると考
えられます。
11.生計費の内外価格差の現状
  ニューヨークと比較した生計費の内外価格差の推移をみると
(第3−1−4図)
、1985年11月から94年11月にかけての、円のドルに対する購買力平価は、85年11月
の 194円/ドルから94年11月の 155円/ドルまでほぼ一貫して円の購買力が改善す
る方向で推移しており、内外価格差を縮小させる方向に働いています。こうした購
買力平価の推移は、我が国の消費者物価の上昇率が米国と比較して低かったために
、日本の物価水準が相対的に低下し、円の日本における購買力がドルの米国におけ
る購買力と比較して相対的に向上したことを意味しています。
  他方、ニューヨークに対する東京の内外価格差は、85年11月には0.81倍と東京の
物価水準の方が低い状態にありましたが、86年11月には1.13倍と東京の物価水準の
方が高くなり、以降、94年11月の1.52倍へと円高の進行に伴い概ね拡大しています
。このように内外価格差が拡大しているのは、円高の進行による効果が購買力平価
の改善による効果を上回ったことによるものです。
  また、94年11月時点の欧米各都市に対する内外価格差を費目別にみると、大半の
費目で東京の方が割高になっていますが、特に食料品、被服・履物、エネルギー・
水道の「エネルギー」、家賃において内外価格差が大きくなっています
(第3−1−5表)
12.個別品目の内外価格差の現状
  消費者物価のウェイト、生活との関連度等を基準に選定した33品目の小売価格に
ついて、経済企画庁が行なった94年11月時点における国際比較調査結果(東京と欧
米6都市との比較)をみると
(第3−1−7表)
、1)食料品関係については、概して欧米各都市よりも東京が割高の傾向にあります
が、鶏卵は総じて東京が割安、2)その他の消費財については、ガソリン、スカート、
コンパクトディスク等で東京が割高である一方、ティッシュペーパーは東京がかな
り割安、3)サービスについては、映画観覧料は東京がかなり割高であるが、写真焼
付け代は東京がかなり割安となっています。

                    「物価レポート '95」95年11月上旬刊行予定

○  物価レポートは、国民の皆様に物価問題についての理解と関心を深めていただ
    くことを目的として、経済企画庁物価局が昭和50年以降毎年作成している冊子
    です。本年度は、円高メリットの浸透状況、価格破壊の現状や内外価格差の実
    態など物価問題全般について、図表等を用いてわかりやすく解説しています。

○  政府刊行物センター、大規模書店の政府刊行物コーナー等でお求めください。

○  物価レポートの内容、入手方法等については、下記までお問い合わせください。

       経済企画庁 物価局 物価調査課 (担当 吉田、浦山)
         TEL 03-3581-9369(直)
         FAX 03-3581-4772